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可愛くしてあげる

03



「絵乃ちゃん、いっしょにあそぼう!」
「うん、いいよ!なにしてあそぼっか?」
「えっとねー…ブランコ!」
「うん!」
「キャー!たかーい!!」
「あははっ。たのしいねー!」
「うん!そういえば、絵乃ちゃんパパってテレビに出てるんでしょ?」
「うん、たまにだけどね。」
「すごーい!ねーねー、わたしサインほしいなー。」
「いいよ。パパにおねがいしてみる。」
「ありがとうっ!絵乃ちゃんだーいすきっ!!」
「わたしもっ!」
「わたしたち、ずっとともだちでいようねー!」
「うん。」
「やくそくだよ!?」



「はいっ!パパからもらってきたよ!」
「うわーっ!すごーい!!ほんもののサインだー!!」
「うん。それでー、今日はなにをしてあそぶ?」
「今日はあそべないんだ。」
「え?」
「というか、もうあそばない。わたし、ずっとおもってたんだけどさ。絵乃ちゃんってなんでもできるから、わたしのことバカにしてるでしょ?」
「えっ!?そんなことないよ!なんできゅうにそんなこと言うの!?」
「きゅうじゃないし、してるでしょ!ゆうめいじんの子供だから今までがまんしてたんだもん。もう絵乃ちゃんとはあそばない!!」
「えっ…ちょっとまっ…」
「絵乃ちゃん、きらいっ!」



「そっかあ。さみしいね。」

ちがう、さみしいんじゃない!

「でもね、その子にもなにかおもうところがあったのかもしれないよ?」

そんなことないもん…
だってきのうまでいっしょにあそんだし、だいすきって言ってたもん!

「だいじょうぶ。絵乃にはまだおともだちがたくさんいるよね?」

え…
それだとなにもわからないままだよ?
あの子とはどうなるの?
このままなの?

「それに絵乃がいい子だってわたしはしってるし、パパもしってるよ。わたしとパパは絵乃のみかただよ!」

みかたがほしいとかじゃなくて。
わたしにわるいところがあるならおしえてほしいの。

「わたしからもその子にたのんであげる。またいっしょにあそんでって。」

やめて!
そんなことしないでっ!!



ガバリと起き上がり、胸に手をあてる。
心臓がうるさいぐらいバクバク騒いでいた。
…嫌な夢を見た。
有名人のサインが欲しくて私に近づいた友達。
その子も私も悪くないと一生懸命慰めてくれたお姉ちゃん。
どっちの気持ちも結局分からずじまいに終わった。
あの事があって以来、私はお姉ちゃんの事が苦手になった。
それに…お父さんのこともパパとは呼ばなくなったし、周りに対して日向麟太郎が父親だと言わないようにした。
お父さんを…家族目当ての友達なんか作りたくない。

…ああ、そうか。
だから私は朝日奈家の人が苦手なんだ。

この家の人の何人かは芸能活動をしているし、揃いも揃ってイケメンだらけだから。
深く息を吐き出せば、うるさかった心臓が少し収まる。
部屋がだいぶ白んできた。
カーテンを開けると、眩しい朝日に目を細める。
深呼吸を何度もして気持ちを落ち着けると、私は水でも飲もうと5階へ向かった。


2015.05.14. UP




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夢幻泡沫