Main



Eternal love to you

13



「お連れ様のご到着にございます。」

予約していたレストランの仕切りカーテンが開けられて蒼乃が連れられてくる。

「遅くなってごめんなさい。」
「気にするな。」
「お仕事お疲れ様。待たせた?」
「Ah〜…いや、そこまでは待ってない。」
「疲れてるのにごめん。」
「気にするなって言ってるだろ。それより、いつものでいいか?」
「あ、うん。」

ボーイが引く椅子に腰を掛けながら蒼乃が嬉しそうに笑う。
それを見るだけで疲れが緩和されるのだから、少しぐらい遅くなろうが気にすることねえのに。
提供される食事に舌鼓を打ちながら蒼乃と会話をすると、付き合って長いっていうのにいつも新しい発見がされるから面白い。
きっといつまでも新鮮な気持ちでいられるんだろうな。

「蒼乃、会社の方はどうだ?」
「大変だよ、まだまだ新人に近いから。だけど、雑用係からは完全に外れたかな。プロジェクトでもサブリーダーの位置にいるし、疲れるけど楽しい。会社の人もいい人が多いしね。」
「そうか。」
「政宗は?」
「こっちも相変わらずだ。小十郎がうるせえ。でもまあ、会社の内情はだいぶ知れたか。」
「そう。次期社長に向けて着々と進んでいるのね。」
「…」
「政宗?」
「ああ、そうだな。…なあ。」
「うん?」
「…Ah〜、ここじゃ言いにくい…な。部屋に行ってからでいい。いつもの部屋、行こうぜ。」

このホテルに来る時は、大抵泊まっていく。
何でかって?
俺も蒼乃もまだ実家暮らしだ。
親がいるところじゃ、いくら自室だからと言ってもシたいこともできないじゃねえか。
エレベーターに乗り最上階に近い部屋に行けば、煌びやかな夜景が俺達を出迎えた。

「いつもありがとう、政宗。」
「蒼乃が気にすることじゃねえ。俺がしたいからしてるだけだ。」
「ありがとう。」
「ああ。」

ルームサービスに頼んだシャンパンを開けながら答えると、蒼乃がにっこりと微笑んでグラスを用意する。
そこに注げば、パチパチと軽やかな音が弾ける。
カチンと合わせて一気に呷ると、蒼乃がクスクスと笑いながら新しく注いでくれた。

「いつ見ても綺麗な夜景ね。」
「…そうだな。」
「ここのホテル、ゆっくりできるから好き。」
「Me too.」
「それで?話って何?」
「ああ。…親父から打診された。次の総会で俺に社長職を譲るって。」
「うわぁっ、おめでとう!」
「Thanks. …でだな。」
「うん。」
「そうなると俺が社長になるわけだ。」
「そうだね。20代の社長かぁ。カッコイイ!」

…コイツ、自分が誰と付き合ってるのか分かってんだろうな?
のんきな感想を言う蒼乃に毒気を抜かれる。

「…分かってるのか?」
「うん?」
「蒼乃が付き合ってんのは誰だ?」
「え?政宗でしょ?」
「そうだ。このままだとアンタ、一部上場の社長と付き合うことになるんだぞ?」
「え…あ…そ、そうか…そうなるのね。」
「…このまま付き合えば、いずれ結婚も考えなきゃいけない。」
「…あ…」
「俺はずっと考えているけどな。」
「…政宗…?」
「蒼乃、俺の隣にいてほしい。爺さん婆さんになって、どっちかが死ぬまで…俺の隣にいてくれないか?」
「ま…さむ、ね…」
「蒼乃、愛してる。アンタと結婚したい。」
「っ…」
「家を継ぐとなるといろいろ面倒なことがある。社長夫人ともなりゃあ、大変なこともたくさんある。間違いなく苦労をかける。だけど…だけどな、蒼乃。俺はアンタと結婚したい。」
「…」
「…隣にいてくれないか?」

声が震える。
俺と結婚するというのは伊達グループに飲み込まれるということ。
しなくてもいい苦労を背負わせること。
…何が甘やかす、だ。
何が大事にする、だ。
約束したことと正反対じゃねえか。
…でも、隣にいてほしい。
俺が求めているのは蒼乃なんだから。
背負わせてしまう分、俺の全てで守るから。
願うように蒼乃を見つめていると、突進するように抱きしめられた。

「…当たり前でしょ!私を見くびらないで?」
「蒼乃…」
「『いてくれないか』なんて、らしくない。政宗だったら『いろ』じゃないの?」
「…そうだな。隣にいろ、蒼乃。」
「はい…。」

よくできました、と言わんばかりに蒼乃が腕に力を込めた。

「…ありがとう、政宗。すごく嬉しい。」

スンと鼻をすする音が愛しい。
涙声が愛しい。
ぎゅっと密着してくる蒼乃が愛しい。

「愛してる、蒼乃。」
「私も…愛してる、政宗。」

蒼乃の左薬指に煌輪をはめる。
一丁前に緊張をしてしまい俺の指が震えてるのを見て、蒼乃と一緒に吹き出した。
照れくさそうに笑う彼女に口付け、そのままなだれ込むようにベッドに誘う。
俺達は約束を確かなものにするように愛し合った。


2016.05.16. UP




(13/16)


夢幻泡沫