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Eternal love to you
05
暑苦しい夏が終わり、すっかり風が秋になる。
秋は学校行事がたくさんある。
大体の3年は部活を引退し、2年が主導権を握って新体制を作る。
その最初が文化祭じゃねえかな。
…文化部はどうだか知らんが。
ずっとバッテリーを組んでた小十郎も野球部を引退し、受験勉強に打ち込むようになってきた。
必然的に帰りもバラバラになることが多くなってくる。
その中で久し振りに小十郎と一緒に帰ることになって、そのまま帰るのもつまんねえからブラブラ街を歩いていた。
そしたら藤原が猿飛とお茶してるところに出くわした。
俺の視線に最初に気づいたのは猿飛だった。
ヒラヒラと手を振ってから、何かをして俯いてる藤原の前の机を叩く。
頭を上げた藤原に俺らの存在を教えると、一瞬眉をしかめられた。
「…政宗様、何かいたしましたか?」
「What!?なんでそうなるんだよ。」
「彼女が嫌そうな顔をしたように見えたものですから。俺に接点はないので、政宗様が原因かと…」
「…」
あながち間違っちゃいねえな…と小十郎から視線を逸らして猿飛を見れば、手招きをしている。
「…アイツ、デート中じゃねえのかよ。」
「いかがいたしますか?」
「Ah〜、そこまで野暮なつもりはねえが…」
「…しかし、藤原も手招きをしておりますな。」
ああ、溜息が出る。
なんで藤原は猿飛になんか合わせてるんだ?
デートなんだから邪魔されたくねえだろうに。
もう一度深く息を吐き出すと、俺は小十郎とそこへ入っていった。
「旦那方〜、こっちこっち。」
「…あのなあ、なんで手招きすんだよ。」
「え?だって目ぇ合ったし。」
「デート中なんだろ?そこまで空気読めなくねえ。」
「まあまあ、大勢の方が楽しいし。蒼乃もいいよね?」
「うん。」
そう言いながら藤原は広げていたノートをバッグにしまって、猿飛の隣に座りなおした。
藤原が座っていた椅子に腰をかければほんのりと温かい。
尻がむず痒く思えた。
「勉強してたのか?」
「あー…うん。どうしても分からないところがあって。佐助に聞いてたの。」
「俺様ってば優秀だからね〜。」
「そうかよ。で、俺達に何か用だったのか?」
「別に特別ってことはないけど、文化祭の場所確認でもしとこっかな〜って。」
「それについては話がついてるはずだろ?野球部とサッカー部でグラウンドを折半、で手を打ったはずだ。」
「ん、了〜解。そっちは何をやるんだっけ?」
「キックターゲットだ。野球部はストラックアウトだったか?」
「そうそう、似たようなもんだね。負けないよ〜。」
「それはこっちのセリフだ。」
引退したはずの小十郎と猿飛が鋭い視線を飛ばし合う。
傍らでそれを見ていた俺は、藤原に話を振った。
「吹奏楽部は何をするんだ?」
「音色喫茶。注文したときに、聴きたい楽器を指定して1曲リクエストできるの。あ、しなくてもいいんだけど。部員がそれを演奏できればそのままだけど、できなかったりかなり失敗した時は注文したものが半額になるんだよ。」
「へえ、面白そうだな。」
「うーん…面白い、かなあ?」
「何だよ、乗りきらないじゃねえか。」
「だって毛利君が張り切ってるんだよ。なにか罠があるとしか思えなくて。」
「…分からなくもねえな。」
「でしょ!?」
力説してきた藤原が苦笑を零す。
「でも、毛利君は全員の分のピアノ伴奏をするって言ってるからね。彼って言うからにはやるでしょ、私も気が抜けないなあって頑張ってるトコ。」
「毛利がピアノ?」
「そう。毛利君、ピアノ上手だよ。」
「なんか機械的な演奏になりそうだな。」
「伊達君って演奏会に来たことないんだっけ?毛利君が指揮している時の。」
「いや、ある。」
「じゃあ分かるでしょ?毛利君の解釈は繊細で豊かだよ。今回は伴奏だから多少は抑えると思うけど、きっと私が考えてる以上の伴奏をしてくれると思うな。だからこそプレッシャーだけどね。」
「Fum, 聴きに行くか。」
「えっ!?来なくていいよ。」
「…おい。」
「だって伊達君、耳が肥えてるだもん。そんな人にソロ演奏なんて聴かれたくない。」
「アンタ…それでも吹奏楽部かよ?」
「いいの!とにかく来ないでね!」
両手を振って拒否する藤原にムッとしたが、興味が一段と湧いた。
文化祭当日、音楽室へ行ってみれば廊下に行列が出来ていた。
いろんな楽器の演奏を聴いたが、藤原のトランペットが明るく華やかで一番大きな歓声をもらっていたということしか印象に残らなかった。
2016.03.10. UP
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夢幻泡沫