
Main
Eternal love to you
09
「う…わ…」
開いた口が塞がらない、といった様子で藤原が門の前で立ち止まる。
確かに俺の家は古い。
代々家業を継いで、俺で17代目になる。
「ほら、入るぞ。」
「ちょっ…待って…心の準備、が…」
「そんなもんいらねえだろ?」
「いやっ!いるからっ!!」
ふうと息を深く吐き出して再び門を見上げた藤原は、額に手を当てて軽く頭を振った。
「…頭が痛くなりそう。伊達君っておぼっちゃまだったのね。」
「単に昔から続いてるってだけだ。」
「それをおぼっちゃまって言うんでしょ!?…あー、伊達君の顔で『おぼっちゃま』もおかしいかぁ。」
「An?」
「ええと…じゃあ…御曹司?」
「…いいから行くぞ。」
どうでもいいことを考える藤原の手を引くようにして歩き出す。
わっ!とか言いながらついてきた藤原は、門の中に入ると忙しく首を左右に動かしながらついてきた。
「筆頭!おかえりなさいませ!」
「おう。」
「ずいぶん綺麗なお嬢でございますね!筆頭のイイ人ですか?」
「そのうちな。」
「さすが筆頭!やるっすね!!ようこそお越しくださいました。どうぞゆっくりしていってください!」
威勢のよい出迎えに藤原がビクリと足を止める。
「気にすんな。行くぞ。」
「…伊達君って…御曹司、じゃなくて…若様?」
「はあ!?」
「え…もしかして伊達組と、か?」
「違えっ!」
確かにこの家とコイツらのおかげで勘違いされやすいが、れっきとした一部上場の会社を運営してる。
「政宗様、おかえりなさいませ。」
「小十郎か、帰った。」
「そちらのお嬢様は…ああ、藤原か。久し振りだな。」
「片倉先輩!?あ…お、お久し振りです。…伊達君、えと…同棲?」
「同居だっ!!」
「下宿にございます。まだ正式に伊達グループで働いているわけではございません。」
「固えな。」
「…やっぱり若様?」
「違うっつってんだろ!いいから俺の部屋に行くぞ。小十郎、茶を用意してくれ。」
「畏まりました。」
一礼している小十郎のわきを通り過ぎて、自分の部屋へ向かう。
藤原も小十郎にペコリと頭を下げるとついてきた。
「うわ…広い。綺麗にしてるんだね。」
「まあな。」
アンタが来るってんなら、気合を入れて綺麗にするさ。
見られて困るモンは全部押し入れにしまってあるし、な。
「そこ、座れよ。」
ローテーブルを指して言えば、お邪魔しますなんてカワイイことを言って藤原は部屋に入ってきた。
「あ、これこれ。大変失礼いたしました。」
そう言ってバッグから取りだしたのは俺のノート。
受け取ってパラパラと見ていると、藤原は勉強道具を取り出して準備を始めていた。
「伊達君はそっちの机でお勉強するでしょ?私、この机を借りちゃっていい?」
「Ah〜…いや、俺もそっちでやる。」
「え!?」
「は?」
「いや、狭くない?せっかく学習机があるんだから、そっちでやった方がはかどるんじゃないかなあって思ったの。」
「狭くはなるだろうが…何だよ、俺がそっち行くと不都合でもあるのか?」
「別に不都合とかないけど、狭くない?」
「じゃあいいだろ。ほら、つめろよ。」
「…狭い。」
「文句言うな。」
隣で勉強できるだけでこんなにテンションが上がるんだから困ったもんだ。
教科書やら参考書やらを床に置いて藤原の隣を陣取れば、諦めたように肩を竦めると藤原は自分の勉強を始めた。
俺もはじめ…
…られるわけねえ、よな。
ずっと藤原のことが気になって頭ん中に入ってこねえ。
英単語をノートに練習するとか無意味なことばかりやってると、藤原が不意に話しかけてきた。
「…伊達君、集中してないね。私、邪魔?」
「ちげっ…邪魔じゃねえ。」
「でも勉強進んでなくない?やっぱ、あっちの机でした方がいいんじゃない?」
「こっちで大丈夫だ。」
「でも…」
「いいから!」
「…そう?」
勉強がつまんねえんだよ、とよく分からない弁明をしてみる。
藤原は訝しそうに俺を見たが、確かにねとシャーペンを置いて一つ伸びをした。
「ああ。そうだ、勝負しないか?」
「勝負?」
「テスト結果が上の方が勝ち。負けた方は勝ったヤツの言うことを一つ聞く、でどうだ?」
「イヤ。」
「…何で即答なんだよ?」
「…」
「何で黙ってるんだ?」
「…自惚れてるわけじゃないけど…」
「は?」
「伊達君の要求が…薄々分かってるから。」
「ほう…何だと思った?」
「…」
「言ってみろよ。」
「…」
「言えって。」
「…『俺と付き合え』。」
「残念だな、それは違う。」
「え!?」
「なんだ、言ってほしいのか?」
「違うからっ!」
「そんなにすぐ否定すんなよ、冷たいヤツだな。まあ、それも捨てがたいんだが…。俺を見てないヤツと付き合ったって虚しいだけだろ。藤原のことは必ず振り向かせてみせるからいいんだよ。」
「…」
「だが、俺が他の男よりもアンタと仲がいいところを周りのザコどもに示しておきたいからな。俺が勝ったらアンタのことを『蒼乃』って呼ばせてもらうぞ。」
「…やっぱり俺様。」
「何とでも言っとけ。負けるつもりはないが、まあ…一応、アンタが勝った時の要求も考えとけよな。」
「私、受けて立つなんて言ってないよ。」
「楽しみだぜ。」
そう言って片笑めば、藤原はもう!と片頬を膨らました。
結果?
俺がこういう勝負で負けるわけねえだろ。
2016.04.11. UP
← * →
(9/16)
夢幻泡沫