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それは、甘い
10
「やっば…沁み渡っていくのが分かる…」
生きるってすごいね。
枯渇しているエネルギーを欲する力って。
戦国武将ズに質素な朝食を提供した後、私は部屋に戻って一人10秒でチャージ的なゼリーをちゅうちゅう吸った。
そして、これから必要そうなものをリストアップしていく。
まずは食器類でしょ。
それから衣類も。
あとはお布団セットもだよね。
あぁ、靴もか。
歯ブラシも。
タオルとかも?
次から次へと出てくるものに、だんだん気が滅入り…。
「やぁめた。」
ポイっとボールペンを机の上に置いた。
ありすぎる。
マズいぞ、これ。
慌てて預金通帳を引っ張り出し、ペラペラとページをめくる。
あ、意外にある。
おぉ、私って堅実な暮らしをしてたんだ。
「…てことは、逆に何があるかをリストアップした方が早い?」
そうと分かれば、メモ帳片手に部屋を渡り歩く。
まずは、お布団セットが3人分。
階段を下りてリビングへ戻ると、みんなが一斉にこっちを向いた。
「ちそうに なったで ござる。 おいしゅう ござった!」
「そう。それはよかったわ。こっちでは『ごちそうさまでした』って言うのよ。」
「ごちそうさまでしたで ござる!」
弁丸君、ホントに可愛い。
もうちょっと仲良くなれたら、抱きしめて撫でくりまわしたいわぁ。
そんなことを考えながらキッチンへ。
食器類は…うん、やっぱりない。
それぞれ揃えた方がいいな。
それから忘れちゃいけないのが食材。
てことは、フライパンやお鍋も少し買い足すべきだよね。
どれくらい食べたのだろうとお皿を片付けつつ見る。
「え…完食!?」
あらビックリ、炊けるだけ炊いたご飯がなくなっていた。
卵も。
まとめてシンクへ持って行き、お鍋をのぞいてみると…
「あれ?お味噌汁、余ってなかったっけ…?」
「ごめんよ〜。みんな腹が減ってたみたいでさー、勝手に食っちゃった。」
「温め直せましたか?」
「うん、猿飛がやってくれた。おいしかったよ。」
「それならいいです。」
スポンジに洗剤をたらして、食器を片していく。
あぁ、洗剤やシャンプーなども必要になりそうだね。
あと、ハンガーとか洗濯バサミとかも。
思いついたものは忘れないうちにメモ帳に書き留め、武将ズをリビングに呼んだ。
「ご飯、足りましたか?」
「…」
「え…足りなかった、とか?」
「あー…欲を言わせてもらうなら、もう少し食いてえなあ。」
「…そうですか。長曾我部さんがそうなら、大人の皆さんはもう少しあった方がよかったってことですね?」
一人ずつ確認するように顔を見ていけば、控えめに逸らされた視線が肯定を物語っていた。
わぉ…食費、ハンパなさそう。
「弁丸君達は?」
「それがしは まんぷくで ござる。」
「おれも腹がいっぱいだ。」
「鈴沢、甘味はどこぞ?」
…松寿君は、デザートは別腹の子なのね。
でも、子供達だけでもお腹いっぱい食べられたようで一安心。
「次からは量を増やしますね。それで、今日の予定なんですけど。」
時計を見ると、結構いい時間。
のんびり過ごしていたらしい。
「それぞれの部屋を決めてもらいます。それから買い物へ出かけます。家の外にもルールがたくさんあるので、しっかり覚えてください。脅すわけではないですが、最悪大怪我じゃすみません。」
言外を含めれば、みんな一様に首を上下に振った。
「じゃあ、まずお部屋を決めに、2階へ行きましょうか。」
階段を上がると、4部屋ある。
一つは私の寝室。
「残りの3部屋を相談して決めてください。ここの部屋は本がたくさんあります。汚したり破いたりしなければ、どれを読んでもいいです。あっちの部屋は私の着るものがしまってあります。勝手に見ないでくださいね。そっちの部屋は私の趣味のものが置いてあります。繊細なものばかりですので、触らないでください。」
さぁ、選んでちょうだい。
「我は冊子のある部屋がよい。」
「松寿君は本の部屋を希望なのね。」
「希望ではない、決定ぞ。」
「…仰せのままに。」
「なら、弁丸様は着物の部屋かな〜。」
「分かりました。弁丸君と猿飛さんは洋服部屋と言うことで。」
「は?」
「え?」
「…忍びが主と同じ部屋なんて考えられないんだけど。」
「じゃあ、松寿君と同じ部屋で。」
「却下。」
そんな嫌そうな顔しないで、松寿君。
「…猿飛さん。見ての通り、3部屋しかないんです。この世界では身分の差などほぼないに等しいので、弁丸君と一緒の部屋で妥協してくれませんか?」
「さすけ、 それがしは そのようなこと きにも ならぬ。 ともに つかうぞ。」
「でも〜…」
「さすけっ! まりどのを こまらせるで ないっ!!」
「…御意。」
「ありがとうございます、猿飛さん。弁丸君もありがとう。梵天君はどうする?」
「…小十郎と趣味の部屋でいい。」
「梵天丸様っ!?家臣と主君が同じ部屋など…」
…従者2人、めんどいなぁ。
ここでは関係ないって言ってるじゃん。
「おれがいいって言ってるんだ。」
「…はっ。」
「片倉さんもありがとうございます。梵天君もありがとう。」
「じゃあ、残った俺らは松寿と同じ部屋だな。」
「おう。」
「却下。」
「おまっ!?じゃあどこで寝ろって言うんだ!?」
「我には関係あらぬことよ。」
「ひどいな〜、松寿。」
「気安く呼ぶでない。」
「松寿君、ごめんね。お部屋がもうないのよ。前田さんと長曾我部さんと一緒に寝てください。」
たっぷり沈黙した後、コクリと頷いた松寿君の頭を思わず撫でる。
受け入れる体制は徐々に進んでいる…のかなぁ?
2017.09.04. UP
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夢幻泡沫