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それは、甘い
15
まず向かったのは靴屋さん。
「ここでは、私が履いているようなものを買います。指の先まで保護されているので、安全になっています。」
「へえ〜。」
「サイズ…大きさが決まっていますので、窮屈だったり緩かったりするのは自分に合わないということです。自分に合うかどうか試すことができますので、ほしいものがあったらまず私に見せてください。このお店の中であれば自由に見て回っていいですが、みんなで行動しますか?」
そう聞けば、バラバラに見たいと言う。
どうぞと答えると、ホントにバラバラになった。
協調性がないな、武将ズ。
その間に私は近くのお店へ。
靴下がないと店員さんだって試着を嫌がるだろう。
サイズだけ確認して急いで買う。
これも、とりあえずでいいから。
さっきの靴屋さんに戻ると、弁丸君と梵天君が従者を連れてウロウロしていた。
「あ、 まりどのっ!」
「弁丸君、決まった?」
「それがし、 これが ほしゅう ござる!」
「梵天君は?」
「おれはこれ。」
2人が手に持っていたものは、靴紐もマジックテープもいらない新タイプの足にフィットして走りやすいと評判のもの。
弁丸君が赤色で、梵天君が青色。
「なるほど。じゃあ試着してみようか。片倉さんと猿飛さんは決まったんですか?」
「いや、まだだ。」
「それなら私が2人を見てますから、選んできてください。」
「だが…」
「行ってこい、小十郎。」
「さすけもだ。」
後ろ髪ひかれつつ離れていく従者がいなくなる。
靴下を用意しながら小さな主達を見た。
「頼りになるね。」
「はいっ!」
「大事にしなきゃね。」
「ああ。」
「…私も早く信用してほしいな。」
「まりどの?」
「なんてね。これ、靴下って言うの。うんと、足袋みたいなもの。これを履いてから靴を履くんだよ。」
スツールに座らせて弁丸君に履かせながら説明していると、隣のスツールに梵天君が座り見よう見まねで履いた。
「…これでいいのか?」
「うん、上手に履けたね。じゃあ、この靴を履いてみて。」
また弁丸君に履かせて見せると、梵天君が真似をして履いた。
「指がまっすぐ伸びてる?」
「はいっ!」
「おれは少し…」
「きゅってなっちゃってる?」
「ああ。」
「じゃあ、もう一つか二つ上のサイズだね。弁丸君は靴の中で足の指を広げられる?」
「もんだい ありませぬっ!」
「ん。そしたら少し歩いてみてごらん。」
「おおっ! あしの うらが やわらこう ござるっ!!」
「うん。指に力が入る?」
「はいっ!」
「スポンって抜ける感覚ない?」
「ございませぬっ!」
「じゃあ弁丸君はそれでちょうどいいかな。」
通りかかった店員さんに梵天君のサイズがあるか確かめてもらっている間に、弁丸君の靴を一度脱がす。
残念そうに足先を眺めている弁丸君に買ったらすぐ履こうねと約束をすると、ぱあっと嬉しそうに笑った。
「鈴沢、我はこれがよい。」
「松寿君。どれどれ…」
「おおっ、 しょうじゅまるどの。 それがしや ぼんてんまるどのと おなじ ものに ございますなっ!」
「…やはりこれは好かぬ。」
苦味が走った顔でくるりと背を向けた松寿君。
いやいや、それにしようよ!
小さい子のお揃いって可愛いんだよっ!!
「松寿君っ!それ、すごく似合ってると思うよ!」
「だが…」
「その靴ね、このごろ流行ってるんだって!ここにきてまだ1日しか経ってないのに、もうこっちの世界のことを分かってるんだぁ!すごいなぁ、松寿君っ!!」
「ふんっ、当然のことよ。鈴沢、履き方を教えろ。」
…謀神と言えど、さすがお子様。
その得意げな顔が可愛いわ。
弁丸君と場所を交代し、履き心地を確認する。
自分のサイズが分かってるよ、この子。
一発で当ててきた。
梵天君は結局2サイズ上だった。
子供達の靴を選んでいる間に、大人組もそれぞれ気に入ったであろうものを手に持ってきた。
慶次さんはキャンパス。
分かる、そんな気がする。
元親さんはスニーカー。
これも分かる。
猿飛佐助はハイカット。
あぁ、何となく分かる。
片倉さんがレザー。
おぉ、大人オサレ…だけど。
「…片倉さん。これだと長時間歩く際に疲れる可能性がありますが、大丈夫ですか?」
「そうなのか?」
「はい。それと、たぶん水にあまり強くないと思います。雨の日にはあまり向いていないですよ。」
いや、靴ってどれもそうなんだけど。
「あと、猿飛さんのは申し訳ないですが予算オーバーです。第二案を持ってきてください。」
「おおばあ?」
「予算を超えてしまっています。」
「ふ〜ん、分かった。でも俺様、こっちの価値が分かんないから。一緒についてきてくれると嬉しいんだけど。」
と言うことで、メンズコーナーへ移動し片倉さんと猿飛佐助の靴を見る。
「これは?」
「オーバーです。」
「じゃあ、これは?」
「オーバーです。」
「…これは?」
「オーバーです。」
「これもっ!?まりちゃん、俺様だけに厳しくない?」
すみませんねぇ、しがない身分なもので。
値段が分からないっていうのはホントらしい。
前のより高いものを手に取ってる。
「そんなことないです。これはさっきのより高いですよ。」
「あ、そうなんだ。も〜いいや。まりちゃんがいくつか選んでよ。その中から俺様が決めるから。」
あ、その手があったか。
私が選ぶ。
イケメンズが決める。
うん、ちょっと楽しくなってきた。
2017.10.09. UP
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夢幻泡沫