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それは、甘い
18
洋服が決まれば、後は早い。
商品がどれも同じ値段のお店に行って、食器類と日常用品を人数分ずつ揃える。
カラーバリエーションがあってなによりだよね。
それぞれイメージや希望に合った色が被ることなく、すんなりと決まって一安心。
それからタオル専門店に行ってフェイスタオルとバスタオルを必要になりそうな分だけ買い漁った。
案外、こういうところの方がまとめて買うには安かったりするんだよね。
質もいいし。
フワフワ大事!
その後にアイランド的なホームセンターによって、お布団セットを4つ買う。
敷マットから枕カバーまでセットになってこのお値段。
他じゃなかなか見つからない。
「流石に持って帰れないよなぁ…」
「お客様、軽トラックの貸し出しを無料でしておりますが。」
「わっ、ホントですか?貸していただけるとありがたいです。」
実は運転免許だけは取ってあるんです。
ここら辺は片田舎だから道幅もそこそこあるし。
家の前の路地なんかは心配だけど。
「1時間以内となっておりますが、よろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です。」
往復を考えるとギリギリセーフかな。
「…申し訳ございません。ただ今全て貸し出しておりまして、30分程お時間いただいてもよろしいでしょうか?」
「はい。」
「では時間になりましたらこちらのレシートを持って、カウンターまでお越しください。お荷物はお預かりしておきますね。」
「よろしくお願いします。」
ふむ、ちょうどいいや。
説明する時間ができた。
みんなでぞろぞろフードコートへ移動する。
とりあえず確保した席に座ると、やはり疲れていたのか肩を回したり、ふうと息を吐き出したりする人が多かった。
「いきなり連れ回すようなことをしてすみません。」
「…いや。俺達に必要なものなんだろう?」
「まぁ…」
「俺達こそ、金子(きんす)を使わせてしまってすまねえな。」
「あ、いえ。それは気にしないでください。」
片倉さんはやっぱり大人。
こういう気遣いができる人っていいよね。
「それでですね。今まで買ったものを一度家まで運ぼうと思うんです。」
「だが、あの大きさは…」
「さっきのお店で軽トラを無料で借りられることになりました。軽トラは車の一種で…」
「俺、乗ってみてえっ!」
「あっ、俺も!!」
…何で元親さんと慶次さんが真っ先に反応するかなぁ?
「…車を運転するのは、国から認められた人じゃないといけないんです。」
「車と人がぶつかると大変なことになるから、か?」
「松寿、賢い。その通り。それで一応なんですけど、私は運転を認められてて…」
「じゃあ問題ねえな?」
「運転自体は問題ないんですけど。軽トラは荷物を運ぶのに特化した車で、人が座れる部分が少ないんです。だから、全員はまず乗れません。」
「…」
「公平を期すためにも、ここはみんなで待っていてくれませんか?急いで家まで荷物を運んで、すぐに戻ってきますから。」
「…おれ達を置いていくのか?」
ポツリと聞こえた声。
そっちを見れば、俯いた梵天君の頭が見えた。
「違うよ、梵天君。置いてくんじゃなくて、ここで待ってて欲しいの。」
「だが、お前は戻ってこなくてもいいんだろ?」
「うぅん。戻ってこなくちゃダメなの。軽トラは借り物だから。借りた物は必ず返さなくちゃいけないでしょ?」
「…それがしは まりどのと いきたいで ござる。」
「おれも行く。」
梵天君の淋しげな声に感化されたのか、隣に座っている弁丸君が洋服の裾をきゅっと掴んで見上げてくる。
眉をハの字にしちゃって…ヤバい、可愛い。
梵天君もばっと顔を上げて私を見た。
必死な目をしていて、心がズキンと痛む。
でも、この2人が名乗りを上げたとなると…
「それなら、俺様も。」
「俺も乗せてもらう。」
…やっぱりそうなるよね。
従者が黙っているわけがない。
「…無理です。子供達だけなら何とかなるかもしれませんが、大人は無理です。」
「なれば、我も乗せよ。」
「松寿もとなると、ますます無理だなぁ。弁丸君、梵天君。あなた達だけなら乗れると思うけど、片倉さんと猿飛さんが一緒だと無理なの。どうする?」
「さすけは ここで まて。」
「小十郎もだ。」
おや、潔い。
「なっ!?弁丸様、なに言ってんの!?そんなの無理に決まってんだろ!」
「梵天丸様も同様にございます!」
「むりでは ない。 まりどのの めを みれば わかる。 このかたは うそを つくような おひとでは ござらん。」
「心配ない…きっと…」
「まりどのは それがしたちを きずつけぬと やくそくして くださった。 やくそくを たがえるようなおかたでは ござらぬっ!!」
「問題ない…たぶん…」
…ちゃんとフォローしてよ、梵天君。
ぼそっと心配なフレーズを加えないでくれる?
「まり、約束の時間とやらはまだなのか?」
「え?あっ、もうこんな時間!そろそろ行かないと!松寿、ありがとう。」
「ああ。」
「松寿はどうする?」
「行くぞ。」
「ん、分かった。ちょっと待ってて。」
慌てて席を立つと近くのお店で大人の分だけドリンクを買う。
きっと子供達だけでついてくるのだと予想して。
トレイの上のドリンクを訝しげに見ながら大人組の目が私に注目した。
「これ、こっちで大人がよく飲むものです。私は苦手だから飲みませんけど。これを飲んで待っていてください。」
「だが…」
「荷物、置いていきます。このバッグの中に私の全財産が入っていますので、盗られないように守ってくださいね。」
運転免許証と家の鍵だけポケットに入れると、バッグごと慶次さんに渡す。
「うん?俺でいいのかい?」
「誰でもいいの。でもそのバッグがなくなったら、私もあなた達もこれから生活してけないから。お願いね?」
「ああ、守ってみせらあ。」
その言葉、信じるからね。
元親さんの頼もしい言葉に一つ頷いて、子供達を見る。
キラキラとした目で見つめ返してくる彼らは、きっと楽しみなんだろうなぁ。
床に置かれていた大人組の荷物を持ち、行こうかと促す。
…結構な量だよ、これ。
2017.10.30. UP
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夢幻泡沫