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それは、甘い
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「すごい量だね〜。」
「…だが、見たことねえ野菜ばかりだな…」
「知ってるのもいくつかあるけどね〜。」
…あそこだけ異様なオーラなので近づきたくないのですが。
野菜を睨みつけるって…大のオトナが。
小十郎さんって野菜好きじゃなかったっけ?
何が気に食わないんだろう。
「…小十郎さん、どうかしましたか?」
「ああ、まりか。…ここにあるのは、知らねえ野菜ばかりだな。」
「え?そうなんですか?野菜って昔からあるものだと思っていましたが。」
「知ってる方が少ないね〜。」
「そうですか。ところで、何を買う予定ですか?」
「葱と牛蒡と…大根、茄子、里芋…これは人参、か?」
「はい。小十郎さんが知ってるニンジンと違いますか?」
「俺が知ってるのは、もっと細長い。」
「へぇ…同じ名前でも違うものもあるんですね。」
「右目の旦那〜、はじかみ欲しくない?あと、唐菜と胡瓜。おっ、葡萄も梨もあるじゃん。知ってるのが少ないって言ったけど、種類はたくさんあるんだね〜。」
言いながら入れていく2人に、籠の底が見えなくなってくる。
「今は年中収穫できるような技術が発達しているんです。それでも、やっぱり旬のものがおいしいですけどね。」
「ふ〜ん。ほんと、便利な世の中になっちゃって。」
「私は2人と被らないものを買おうかな。」
「それは山芋かな〜?」
「はい。これは昔からあったようですね。」
「何だ、それは?」
「タマネギです。異国の葱です。火を通すと甘くておいしいんですよ。」
「それは?異様に赤いけど。」
「トマトです。さっぱりしていて美味しいんですよ。」
「そのごつごつしたのは?」
「え!?ジャガイモもなかったんですか?馬鈴薯とも言います。」
「知らねえな。」
「お芋の一種で、今はお芋と言えばジャガイモのことを指します。里芋とはまた違って、ほくほくした食感です。どんな味付けにも合うんですよ。やせた土地でも栽培可能なので、昔はお米がない時に代わりに食べたって聞いてますけど。」
「…そうなのか。どこで栽培されているんだ?」
「え、全国的にですけど。日本中で栽培されてます。有名なところは北海道、蝦夷ですね。」
「蝦夷地か…」
「やっぱり飢饉とかあったりするんですか?」
「…飢饉とまではいかねえが、戦の後なんかは食糧が足りなくなることはあるな。武田のところもそうだろう?」
「まあね〜。戦になればまず田畑をやるのが定石だから、な〜んにも残らないね。日照りや逆に雨続きでも、作物はすぐに駄目になっちゃうし。」
「ジャガイモは少ない水で育ちますよ。帰ったら探してみてはどうですか?」
戦なんかしなければいいのに。
なんて、武将ズの前では言えないけど。
「長ネギとニンジンは私も買っていきます。そんなに使うつもりはないので、余ったら使っていいですよ。それを踏まえて買うものを決めてくださいね。」
他に買ったものは、と籠の中を見せて確認する。
「あ、そうだ。お店の中を1周して、何がどれくらいするのか確かめておくといいかもしれません。ここで買う事が多いと思いますから。」
「分かった。」
「お米は重いので、後で買います。小十郎さん達は買わなくていいですからね。」
「了〜解。」
「それじゃ、私は弁達の様子を見てきます。ごゆっくりどうぞ。」
さらに重くなったカートを押しつつ、お菓子コーナーへ。
あの子達が他のお客さんの邪魔になってなければいいんだけど。
なんて思いながら棚があるところまで行くと…
地べたに座りそうな勢いでじぃっと凝視している子が3人いるじゃない。
辺りを見渡せば、運がいいことに他のお客さんはいなかった。
…いや、私が来る前はいたかもしれないけど。
もしいたら申し訳ないけれど。
小さい子達が一生懸命選んでると思って、温かい目で見てほしいなぁ。
「決まった?」
「あ、 まりどの!」
「悩んでる?」
「こちらの かしは、 いろどりが ゆたかで ござるな。 それがし、 めうつりして しまい…」
「食べたい物を見つけるのが大変?」
「…もうしわけ ござらん。」
「謝らなくていいのに。知らないお菓子がたくさんあるだろうから、分からなかったら聞いてね。私の買い物は一応終わったから、ここにしばらくいられるし。」
「マジで!?」
「うん。」
「助かったー。さっきから質問はされるんだけど、知らないもんばっかだから答えられなくてさー。」
「あぁ、考えなくてもそうだよね。ごめんね、慶次さん、元親さん。」
「いいってことよ。食ったって問題ねえもんばかりなんだろ?」
「そりゃ、もちろん。」
「なら、気になったのを買ってみりゃいいんだよ。なあ、松寿。」
「馬鹿鬼は黙っておれ。まり、これは何ぞ?」
「それはいろんな味のお餅だよ。お餅って言っても、普通のお餅と感覚が違うけど。」
「何と!餅とな!?」
「うん。」
「まり、色によって味が違うのか?このような極彩色を食して、体に異変はきたさないのか?」
「体に影響のないものを使っているから大丈夫だよ。」
「なれば、いくつまで買える?」
「お財布の中身を確認して、計算してごらん。」
「…いつつ、まで…か?」
「お、当たり。すごいね、松寿。」
「当然ぞ。」
たっぷり時間を置いた後、松寿は正解を言い当てた。
そのドヤ顔。
可愛いよ、松寿。
と言うか、全部お餅にする気!?
「まりどの! これは なんで ござるか!?」
「それ?金平糖だよ。」
「なっ!なんとっ!!」
「え?」
「これが こんぺいとう なる もので ござるか!? なは きいた ことが ありもうすが…。 なんばんの かしで ござろう?」
「そうだね、ポルトガルから来たんだっけ。でも今じゃ、立派な日本のお菓子だよ。」
「それがし、 これに いたす! まりどの、 いただいた きんすで たりるで ござろうか?」
「自分で確かめてみようか。無理だったら、慶次さんか元親さんと一緒でもいいからね。」
「わかりもうした。」
「梵天君は?」
「…これ。」
「シガレット!懐かしいなぁ、小さい頃、私もよく食べた。」
「しがれっと…」
「タバコって言う意味なんだけどね、形がそうなっててちょっと大人の気分になれて好きだったなぁ。」
紺色のパッケージが懐かしい。
駄菓子は子供の味方だよね。
でもね、食べ過ぎて虫歯にならないようにっ!
2018.02.12. UP
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夢幻泡沫