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それは、甘い
05
疲れた。
ホントに疲れた。
下手すれば11連勤より疲れた。
巷で流行りの空想が現実になるなんて、ね。
でも、まぁ…
あの中だったら前田さんか長曾我部さん辺りが順応早そうだし、警戒も解いてくれそう。
片倉さんは様子見ってところ。
でも、それでいい。
信用はしてほしいけど、いきなり信用されるのは無理だと分かってる。
戦国武将って言うんだから、私よりも疑って当たり前だよね。
徐々に警戒心を解いてくれればいいんだけど。
問題は…
鏡に映っている自分の顔に溜息が深くなった。
バシャリとお湯を顔に掛ける。
体中をくまなく洗ってシャワーをザーザーと浴びる。
短時間ならこっちの方がエコだ。
バスタオルを取ろうと扉を開ける。
次の瞬間、私はお風呂場へ逆戻りした。
いや…させられた。
床に仰向けに押し倒され、手首を纏め上げられ、腰に跨られている。
上から薄ら笑いを浮かべて見下ろしていたのは…
猿飛佐助だった。
「…い〜い眺め。」
「…はな…し、て…」
「白い肌だね〜。傷一つない。ねえ…アンタ、本当は一体どこのお姫さん?」
「はなして…」
「誰に頼まれて俺様達を拐したの?」
「ちがっ…」
「正直に言った方がいいよ。この体勢…分かんないわけじゃないよね?」
ゴツゴツした手が腰を撫であげる。
「うわっ、肌すべすべ。」
やだっ!
気持ち悪いっ!!
ビクリと反応した私に、猿飛佐助はにんまりと口端を上げた。
「何?シてほしいの?」
「違うっ!」
「な〜んだ、色を待ってたのね。俺様、戦忍なんだけどな〜。」
「やだっ!」
「でもアンタ具合よさそうだし?俺様を楽しませてよ。」
「やめ、てっ…!!」
恐怖に血の気を失っていくのが分かる。
声も上ずってうまく出せない。
やっぱり家にあげるんじゃなかった。
なんでこんな目に遭わなきゃいけないのよ…
後悔している間に、猿飛佐助の手や舌が胸を弄び始めてしまった。
気持ち悪くて、そんな感覚から逃れたくて、顔を背ける。
でも、分かってる。
先に逃げた方が負ける。
猿飛佐助が私を軽く扱っていて、馬鹿にしたような態度に腹が立ち悔しくてしょうがなかった。
「あは。ココ、かたくしちゃって。か〜わい〜。」
ツンとはじかれた胸先の刺激に腰が揺れてしまう。
「ふ〜ん、感じやすいんだ。いいよ?楽しもうよ。」
舌はそのままに、手が体の線をなぞりながらおりていく。
まさぐるように内腿を触り、付け根に指が到達した。
「ぁっ…」
反射的に声が零れた。
「…へえ、イイ声で啼きそう。」
胸で遊んでいた猿飛佐助の顔があがる。
私を見てにやりと笑う姿に、ゾクリと背中が粟立つ。
でも、やっと。
声が出た。
「や、めて…やだっ!!」
今まで出せなかった分、大きな声で叫ぶ。
すると、ドカドカと大きな足音と一緒に洗面所のドアが乱暴に開けられた。
…ここが引き戸でよかった。
壊されずに済んだ。
的外れなことを思いながら、猿飛佐助の行為が中断したことにほっと息を吐く。
「おいっ、何が…っ!?」
洗面所の奥にあるお風呂場に驚いた顔を見せたのは、長曾我部さんだった。
「…やめろ、猿飛。離れろ。」
ぐい、と腕を持ち上げられた猿飛佐助はすんなりと私からどいた。
「乳首かたくしてるし、こんなに濡らしてるくせに。ねえ、よかったんだろ?」
てらりと光った指先を見せつけるようにされ、かっと頬が熱くなる。
「レイプしようなんて最低っ!あんたなんか大っ嫌い!!今すぐ出てって!!」
出てけ!
今すぐっ!!
蹲ったまま、睨んで叫ぶ。
「…慶次、猿飛を頼む。」
そう言いながら、猿飛佐助の腕を掴んで引きずるように長曾我部さんがお風呂場から出ていく。
洗面所の扉も、お風呂場の扉も、鍵をかけしっかりと閉める。
シャワーを勢いよく出して頭から浴びれば、気持ちがほんの少しだけ落ち着いた。
もてぶられたところ、触られたところを入念に洗い直す。
というか、シャンプーやボディソープの匂いに噎せるくらいじゃなきゃ気がすまない。
猿飛佐助の存在を体中から消し去り、ようやく痞えていたものを吐き出せた感じがする。
誰もいないのを確かめて、洗面所でお風呂上りのケアをした。
ドライヤーの音がうるさくても構うもんか。
全部、猿飛佐助が悪い!!
いつも以上にバカ丁寧に終わらせると、そっと洗面所の扉をスライドさせた。
「…よお。」
お、どろいた…
暗がりに誰かいるなんて思いもしないし。
心臓バックバクだよ…。
「…ち、長曾我部さん…」
「あー…大丈夫か?」
「…はい。最後までは、いってなかったので…」
バツが悪そうに切り出した長曾我部さんは、私の返答に明らかにホッとしていた。
「…そうか。あー…悪ぃ、何て言っていいか分かんねえけど…無事でよかった。あ、いや…無事ではねえな。」
「…」
「猿飛がすまねえ事をした。」
「…いえ。長曾我部さんに謝ってもらう事ではないですから。」
「表には出さねえが、あいつも動揺してんだよ。分かってくれとは言わねえが、頭の片隅に入れといてくれねえか?」
「…それを言うためにわざわざ?」
だとしたら。
長曾我部さんは面倒見がいいと言うか、お人好しと言うか。
緊張が体から抜けていった。
「明日、会えないことを願っています。」
「ん?…そうだな。」
「おやすみなさい、長曾我部さん。」
わざわざ待っていてくれた長曾我部さんには悪いけど。
私が猿飛佐助を憎むことは許されると思う。
2017.07.31. UP
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夢幻泡沫