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それは、甘い

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帰り道も同じところを通るのだから、とまずは屋台街の端まで行ってみることにした。
私には何の変わり映えもない屋台。
オーソドックスなお店もあれば、ちょっと風変わりなものもあるけれど。
これと言って関心を持つものはない。
けれど武将ズには違ったようで、キョロキョロと左右に首を振りながら歩いていた。
屋台街の終点は広場のようになっていて、食べ物関係のお店ではなく遊戯関係のお店がいくつもあった。
そこもぐるりと覗いて興味がある物はあったかを聞く。

「それがし、 そこに ういている ものが きに なるで ござる!」
「ああ、ヨーヨーだね。ヨーヨー釣りかぁ、してみる?」
「しもうすっ!!」

弁の要望で屋台に行けば、小さい子達が群がっている。
空いている一角に弁と梵と松寿をしゃがませて、お店番に声をかけた。

「お兄さん。子供3人分、お願いします。」
「はいよー!」

威勢のよいお兄さんから、元気な声と共にこよりを3本渡される。
「はい、これで釣るんだよ。水につけるとちぎれちゃうから、なるべく水につけないようにするのがコツだからね。」
「わかり もうした!」
「輪ゴムがわっかになっている部分に引っ掛けて釣るんだよ。いろんな色や柄があるから、好きなものを探してごらん。」

子供達にこよりを渡して邪魔にならないように後ろに下がる。
3人とも真剣な目つきで探した後、それぞれめぼしいものに挑戦した。

「…取れた!」
「おっ!おめでとう、梵。」

梵が選んだのは青いヨーヨーだった。
カラフルな水玉が散らばっていて派手なもの。

「梵は青が好きなの?」
「ああ、青は伊達の色だから。」
「そっか。こよりが切れてなかったら他のも釣っていいよ。」
「まりは?」
「うん?」
「まりはどれが好きなんだ?」
「私?そうだなぁ…あ、透明のかわいいね。」
「分かった。」

え?
分かったって…?

「まり、我も取れたぞ。」
「おぉっ!」
「貴様、透明のもの以外に好むものはあるか?」
「えっ?う、んと…黒のもいいかもね。」
「そうか。」

そう言って松寿がまたヨーヨーの方へ向き直る。
もしかして梵も松寿も取ってくれる、とか…?
少し期待してニマニマしていると、弁の泣きそうな声が聞こえてきた。

「…きっ、 きれて… しも、うた… ああ…。」
「あらら。弁丸様、ざ〜ん念。」
「うるさい! さすけは だまって おれ!」
「ちょ…っ!?弁丸様、酷くない!?」
「ううっ… まりどの…」
「大丈夫だよ、弁。もう1回する?」
「するで ござる…。 つぎこそ つって みせるで ござる…」
「頑張って!お兄さん、もう1回お願いします。」
「はいよー!」
「…弁、ちょっとだけ下の方を持ってごらん。それからこよりの部分を濡らさないようにして、輪ゴムのわっかが水に浮いているのを狙うといいよ。」

弁に耳打ちをすると、擽ったそうに肩を上げながらキラキラとした目で見てきた。

「じょげん いただき、 かんしゃ しもうす。 それがし、 まりどのの きたいに こたえるべく!」
「うん。ちゃんと見てるからね。」
「かたじけない!」

ポンポンと頭を撫でられた弁が満面の笑みでヨーヨーに向かう。
しゃがんだ後ろ姿からは見えないけれど、きっと真剣な目つきで狙いを定めているはず。
頑張って、と心の中で応援していると。
弁の隣に座っていた梵がプラプラと透明のヨーヨーを釣り上げていた。

「まりにやる。」
「え?いいの?」
「ああ。」
「嬉しい!ありがとう、梵。」

きゅうと梵を抱き締めれば、『簡単だったぜ』なんて軽口を叩きながら梵もきゅっと背中に手を回してくれる。
ああっ、可愛い!

「退け、梵天丸。まり、我もこれをやらぬでもないぞ。」
「松寿もまた取れたの?すごいねぇ。」
「いるのか、いらぬのか!?」
「いる!欲しい、ちょうだい!」
「ふん、受け取れ。」
「まり!松寿丸からのものなどいらないだろう!?」
「煩いわ、梵天丸。」
「松寿丸こそおれのじゃまをするな!まりと話していたのはおれだぞ!」
「え、ちょ…2人とも!何でケンカになってるの!?梵のも松寿のも嬉しいよ。2つ貰っちゃダメ?」
「…まりが望むんなら仕方ないな。」
「ふん…」

険悪になりそうな梵と松寿に焦る。
あれ、ちょっと欲張り過ぎた?
だけど、梵も松寿も私が言ったものを釣り上げてくれたし。
すぐに私のところへ持ってきてくれたし。
気持ちが嬉しいじゃない!
欲しいって思ってもおかしくないよね!?

「…まりどの! みてくだ… あ…っ!」
「弁、釣れた…」
「…うう…っ…」
「釣れた!釣れたよ!だって持ち上げたもん!ねえ、お兄さん!」
「…なれど、 おちて しもうた…」
「釣れたって!お兄さん、オッケーですよね!?」
「ははっ、オッケーすよ。持っていってください!」
「ありがとうございます!ほら、弁!釣れたってお店のお兄さんも認めてくれてるよ!」
「まりどの…」
「弁が釣ったのはこの赤いのだよね。お兄さん、貰っていきますね。ありがとうございます。」

パシャリと揺れる赤のヨーヨーをプールから掴み取る。
納得のいってなさそうな弁の頭を撫でながら渡すと、小さな声でお礼を言われた。

「弁、よくがんばったね。次に挑戦する時はもっとうまくできると思うよ。コレは努力賞ってところかな。」
「それがし、 つぎこそは かならずや…」
「うん、期待してる。」

もう一度グリグリと頭を撫でると、ようやく弁らしい笑顔を見せてくれた。

「梵と松寿も。ヨーヨー、取ってくれてありがとう。」

傍らにいた2人の頭も撫でる。
お祭りなんだから、楽しく過ごさなくっちゃね。

「ヨーヨーは人にぶつけちゃうかもしれないから、持ってるだけね。振り回しちゃダメだよ。」
「どう つかうので ござるか?」
「お家に帰ったら説明するね。さ、次に行こうか。」

屋台はまだまだたくさんある。
どこに行きましょうかねぇ、武将のみなさん?


2018.11.12. UP




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夢幻泡沫