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いつか一緒に
13
「うまーい、コレ。こんなに食べちゃって大丈夫?」
3個目のケーキを口にしながら、火原がニコニコと聞く。
「頂きものなんですが、うちではあまり食べないのでかえって助かります。」
「蓮、キッチン借りたわ。」
人数分の紅茶をお盆に載せながら、音羽はリビングに入ってくる。
カチャカチャと手慣れた様子でテーブルに並べる音羽にお礼を言いながら、火原は興味津々に月森を見た。
「月森君ちってお父さんとお母さんと月森君の3人なの?」
「いえ、祖父母もいます。今日は出かけていますが…」
「へえ、そうなんだ。」
そう言いながら4個目のケーキを皿に取る火原に呆れた声がかかる。
「つーか、よくそんなに食えますね。見てるだけで胸やけが…」
「まったくだ。」
図らずも同じ意見を言う土浦と月森は、互いに顔を見合わせた後ふいっと逸らす。
「ねえねえ、月森君!これ、月森君だよね!」
声の方を見ると、ケーキを食べていたはずの火原が写真立てを持っていた。
両親と写っている小学生の頃の写真を音羽と見ている。
「かーわいい。なんかちっちゃくても『月森君』ってかんじだよね。」
「あはっ、確かに。」
「勝手にさわらないでください!」
月森は疲れた表情でバッと写真を取りあげる。
「じゃあさ、月森君の部屋見せてよ。すげー見たい!」
「火原先輩!!」
「お前でもあせることあんだな、月森。」
くくっと笑う土浦に、月森はムッとした顔を向ける。
「…ずいぶんと余裕だな、セレクション前に。」
「どーってことないだろ、このくらい。それとも何か?一分一秒も惜しんで練習しなけりゃいけないほど、音楽科のエリート様は余裕がないってか?」
ハッ…と挑発するような笑みでソファに座っている土浦は月森を見上げる。
「そういうわけじゃないが、参加するからには最善の結果が欲しい。」
「優勝ってことか。」
「当然だろう?このコンクールに、他になんの意味がある?」
「ふん、当然…ね。まあ、お手並拝見といきましょうか。」
この話はお終い、と言わんばかりに土浦が片手をあげる。
「あーっ!こっちにも月森君の写真がある。…ってあれ?これ、日柳ちゃん?」
火原が新たに持った写真立てには幼稚園ぐらいの月森と音羽が並んで写っていた。
「え?あぁ、私ですね。」
彼に写真を見せられた音羽は懐かしそうに微笑む。
「へえ、こんなちっちゃい時から知り合いだったんだ。日柳ちゃんもかっわいー。月森君、笑ってるねー。」
「だから勝手にいじらないでください。」
「トロフィーまであるよ。すげー!」
「火原先輩!!」
「つーか火原先輩、とっとと残り食っちゃってくださいよ。もう時間も遅いし。」
「ごめーん。」
笑いながら再びケーキを食べ始める火原を見て、月森は溜息を吐く。
「蓮、まだ具合良くないでしょう?直ぐ帰るつもりだったのにゴメンね。」
「いや、音羽のせいではないだろう?」
「ありがとう。ねえ、焦らずにいこう?プレッシャーとか緊張とかなしに。」
「いつも緊張している音羽に言われたくはない…!」
図星をさされたのか、月森は顔を赤くしながらふんっと顔を横に向ける。
そんな彼を見て、音羽はぷっと吹き出してしまった。
「…俺の方こそ今日はすまなかった。」
「うぅん。」
「余ったケーキ、持って帰ってくれないか?」
「いいの?ありがとう。」
ニッコリ笑って礼を言う音羽に、月森の顔も穏やかになった。
「第2セレクション頑張らないとね。」
「あ?」
帰り道、ポツリと呟いた音羽の言葉を土浦が拾う。
「蓮があんなに真剣なんだもん、私も甘えてられないよね。」
「あいつは…真剣つーかなんていうか、性格なんじゃねえの?超負けず嫌い。プライド高そーだもんなあ。」
「土浦君もかなりの負けず嫌いそうだけど?」
笑いながら隣を歩いている土浦を見上げる音羽に、彼は慌てる。
「オイ、あんな奴と一緒にするなよ!…まあ、負けず嫌いなのは否定しないけどさ。」
「ごめんごめん。」
クスクス笑い続けている音羽を、土浦はこっそり盗み見る。
「今日は普通だな。」
「…え?」
「いや…なんとなく元気がない時があったから…」
「あー…まあ…あるにはあるんだけど…」
「…んだよ、それ。…ったく、言えよ?何か困ったことあったらさ。普通科のよしみで相談のってやるよ。」
少し困ったように笑いながら言う土浦に音羽は何とも言えない表情になる。
「ん?どうした?」
「…うぅん。土浦君、ありがとう。」
音羽はポソリと言って俯いた。
2013.05.10. UP
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夢幻泡沫