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いつか一緒に
21
「だ…大丈夫、蓮?」
「…ああ。」
若干青ざめながらよろめく月森に、音羽はだから言ったでしょと心配そうに寄る。
「怖かった〜。」
「ったく、叫びすぎだろ。ああいうの苦手だったよな、そういや。」
はぁと深く息を吐きだす崎本に、土浦が呆れたように声を掛ける。
仲がよさげな2人を音羽はチラリと見た。
「日柳。」
「え?」
「お前は大丈夫なのか?」
「私?全然平気だよ。むしろ、大好き!」
ニッコリと笑って言う音羽に土浦は驚きの目を向ける。
「へえ、意外だな。」
「そう?絶叫系、大好きよ。」
「ほお?今日は楽しめそうだな。」
音羽と土浦のやり取りを見ながら、崎本が月森に声をかける。
「…みんなは同じクラスなの?」
「いや、全然バラバラだ。同じクラスになったことは一度もないな。」
「えっ、そうなの?」
何か言いたげに2人を見る崎本に、月森は興味なさげにちらりと視線を向けただけだった。
「で?次はどうする?」
「う…んと、あれ。」
満面の笑みの音羽が指さしたものに、月森は嫌そうな顔をする。
「なんだよ。情けねーな、月森。これだからお坊ちゃんは。」
「別に問題はない。」
「へえ〜…」
静かに始まった男2人のバトルに音羽はしょうもない…と苦笑いする。
それからも絶叫系に乗ったり、コーヒーカップに乗ったり、バスケに、UFOキャッチャーに…と意外に楽しめた。
お昼時になり、音羽は崎本と園内のファスト店に入る。
「ねえねえあの2人、かっこよくない?」
「あ、ホントだ。」
「ねー。」
その声に後ろを向くと、どうやら月森と土浦を差していた。
「確かに目立つかもね、あの2人。」
「土浦君って、中学の時からあんな感じ?結構しっかりしているよね。」
「うーん、そうかも。背はすごく伸びたような気がするけど。」
「へぇ〜。」
何か想像がつくとクスクス笑う音羽を崎本はじっと見る。
「…音羽ちゃん達って、クラスが同じとかじゃないんだよね?どういったつながりなの?」
「聞いてないの?」
「え?」
「学校でやっている音楽コンクールのメンバーだよ。あの2人はすごいよ〜。」
食べ物を受け取りながらさらっと答える音羽に、崎本は驚きを隠さない。
「…音楽…コンクール?」
「うん。」
「梁太郎が…?」
初めて聞くと言った感じの崎本に、音羽の笑顔が固まる。
「…知らない?」
「知らないも何も…梁太郎が音楽…?」
「ピアノだよ?ものすごくうまいわ。」
「ピアノ!?あ…そう言えばお母さんって、ピアノの先生だっけ…。ええ!?梁太郎がピアノ…!?ピアノが弾けるなんて、聞いたことなかった…」
うそーと驚いている崎本に、音羽は余計なことを言ってしまったのかと心配になる。
慌てて違う話題を振ろうと、何となく心に引っかかっていたことを口にした。
「私の方こそビックリしているよ。土浦君のこと、名前で呼び捨てしているから。うちの学校でも聞いたことないよー。」
「あ、うん。中学の時、付き合ってたんだ。」
「えっ…あっ…やっぱりそうなの!?」
今度は音羽が驚いて崎本を凝視する。
「やっぱり?」
「あ、ごめんなさい。今でも…よく会うの?」
「ううん、この間たまたま本当に久しぶりに会ったの。それで…懐かしくて話こんでいるうちに、グチ聞いてもらっちゃって。悪いことしたなあ…あの時は。」
そんな2人の姿を見て通りがかりの少年達が可愛いだとか綺麗だとか言っていた。
「…まあ、日柳が綺麗なのは否定できないな。」
「そうだな。」
珍しく意見があった途端、お互いに目を見合わせる。
直ぐに気まずそうに身体の向きを変えたが、
「…にしても、まさかお前が来るとはな。」
土浦が月森に話しかける。
「たまには違う環境に身を置くのも悪くないかと…」
「お前が?一体どういう風の吹きまわしだよ。」
「…音羽が…」
何か言いたげな月森だったが、音羽達が戻ってきたことでまた黙ってしまった。
2013.06.10. UP
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夢幻泡沫