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いつか一緒に

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「僕がロミオなら、ジュリエットは是非日柳さんに。」

満面の笑みで加地が提案をする。

「え…ええと、それでよければ多数決を…」

加地の勢いに押される学級委員長は提案を飲もうとした。
音羽は思わず立ち上がる。

「よ…よくありません!」
「ダメかな?似合うと思うんだけどな、日柳さん。」

ニコニコしながら言う加地に、音羽は脱力して座った。



「あー…俺のクラスにまで広まってたぜ、ソレ。」

放課後、学内コンクールメンバーは金澤に第2音楽室に呼び出された。
文化祭で、コンクール参加者全員で合奏することに決まったらしい。
土浦と一緒に向かう最中で、ご愁傷様という雰囲気を前面に出しながら言う彼に音羽はギョッとする。

「嘘っ!?」
「本当だって。」
「うわ〜…」

音羽は顔を真っ赤にして頭を抱える。

「加地なあ…あいつ、ヤルことがいちいち目立つんだよな。派手な奴…で、やるのか?ジュリエット。」

土浦は面白いものを見るかのように音羽を見る。

「やらない!断固拒否!!」

文句を言うように音羽は答える。

「土浦君のクラスは何をやるの?」
「俺のクラスはお化け屋敷に決まったぜ。」

上を見て思い出すように土浦は言う。

「そっちの方がいいな…。劇だけは勘弁してほしいよ…。加地くんのロミオは見たいけどね。」

音羽は、はーと深く溜息を吐き俯いてしまう。
このところ急に色々と予定が入ってきて、正直これまでにない忙しなさなのだ。

「どうした?まだ他に何か心配事か?」

彼女に元気がないのに気付き、土浦は声をかける。
音羽はパッと顔をあげ、

「あ…ううん。土浦君、甘やかし過ぎ。」

照れたように笑った。

「コンクールまで時間がないってのに、文化祭で演奏か。確か11月後半だよな?」
「そうそう。」
「お前はコンサートもあるし。」
「…コンサートはもうすぐだから。」
「金やんからチケット貰ったぞ。楽しみだな。」
「ホントに配ったんだ…。浜井美沙だけ見ていてね?」
「何言ってんだか。」

苦笑いながら土浦は音楽室の扉を開ける。
そこにはメンバーが既に揃っていた。
暫くすると吉羅と金澤も現れ、概要が説明された。

「さて…きみ達を呼んだのは、来月の文化祭の事についてだ。2日目のメインとして、ステージで演奏してもらうことに決定した。あれだけ盛り上がった今回の学内コンクールだ。我が学院のアピールには、またとない場だと思う。」
「そういや、毎年お偉いさんとか来るしなあ…。教育委員会やら、OBやら…」
「そうです。」

金澤が頭を掻きながらボソッと言ったことに、吉羅は相槌を打つ。

「そのことを頭において、選曲や練習の仕切りもきみ達に任せたい。きみ達にならできると期待している。がっかりさせないでくれ。」

冷たいようだが確固とした眼差しでメンバーを見る吉羅に、7人の纏う雰囲気も変わる。

「ああ…それと、月森君と日柳さんは1位だったからソロも演奏してもらう。」
「はい…」
「いいね、いいねっ。そうこなくっちゃ。楽しみだな〜、合奏も2人のソロも!」

火原はニコニコしながら音羽と月森を見る。

「特に…月森君は留学前にステージで弾く最後の演奏になるかもしれないな。楽しみにしているよ。」
「…はい。」

吉羅の言葉に、火原は人一倍驚いたように月森に近づいた。

「えっ!?ええっ、月森君留学するの!?ホントのホントに!?」
「あ…ハイ。」
「ええっ!?聞いてないよ〜。」

火原の質問攻めや志水の羨ましそうな視線に困ったように対応する月森を、音羽は黙って見ている。

「でも…月森先輩なら、向こうに行ってもきっと…うまくやれますよね…」
「…うん、そうだね。」

冬海の言葉に、音羽は優しく笑って返事をした。


2013.09.30. UP




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夢幻泡沫