Main



いつか一緒に

46



2学期はどの学校も行事が多い。
星奏学院も、今日は体育祭が行われている。

「音楽科選抜、3年B組火原和樹!速い!2位以下を引き離しての断トツ1位です。100メートル走、3年連続の無敗!!」
「うわっ、速い!火原先輩って3年間ずっと参加しているんだね、体育祭。」
「音楽科は自由参加だもんね。」

おめでとうございます、と火原に手を振りながら美緒と話していると佐々木に小突かれた。

「いったぁ!ちょっと佐々木くん!?」
「自分の組を応援しろよっ!」
「いいじゃない、これくらい。」
「今年も5組の土浦と、賭けでもしてるんでしょ?」
「何だよ、そうなのか?佐々木、こりねーな。お前も。去年、惨敗だろ?」

周りから次々に暴露されるたびに、佐々木の顔が赤くなっていく。

「とっとにかく、応援するなら加地にしろ!お前の応援があれば、尋常ならざる力を発揮するハズ!!」

佐々木がビシッと指さした先にいた加地が何事かと音羽達に近寄る。

「どうかしたの?」
「あ、うぅん。何でもないよ。加地君、これからだっけ?100メートルだよね?」
「うん。」
「頑張ってね。」
「ありがとう、日柳さん。必ずや優勝旗を日柳さんの手に!」

心から嬉しそうに微笑むと、片膝をついて加地は音羽の手を取った。

「よしっ、その意気だ!行くぞ、加地!!」

転校してきてよかった〜と言う加地を引きずって、佐々木は招集場所へ向かう。

「確かに、異常な力は発揮されそうだよね。」
「ねえ、音羽ちゃん…って?」

美緒と直が振り返ると、音羽は顔を真っ赤にして固まっていた。

「音羽先輩。」

振り向くと、冬海も体育祭に参加していた。

「冬海ちゃん!参加していたんだね。」
「ハイ…100メートル走だけですが。その…ビリで皆さんの足を引っ張ってしまって申し訳なくて…」
「何言っているの、冬海ちゃん。大丈夫だって。」

苦笑しながら音羽は冬海の方を叩く。

「でも…火原先輩や志水君もすごく活躍してて…」
「そりゃ、火原先輩や志水君はまた別格…」

そこで音羽は止まった。

「…え?志水君も出ているの!?」
「はい…あそこの騎馬戦に。」

冬海が指さす方を見ると、騎馬の上に志水が乗っていた。
しかも器用に避けて、相手の鉢巻を奪っている。

「…志水君の意外な特技だね。」
「はい。」

ニッコリ笑う冬海の方を見ると、彼女の後ろから騎馬が倒れてきた。

「っ…危ない!!」

音羽は咄嗟に冬海を引き寄せる。

「いったぁ〜…」
「すみません、音羽先輩。」
「…冬海ちゃん怪我は?」
「大丈夫です。す…す、すみません…」
「私も大丈夫よ。」
「で…でも…血が…」
「あー…ホントだ。保健室で手当てしてくるね。」

音羽は冬海に笑いかけると、保健室へ向かった。



「失礼します…」

ガラリとドアを開けて中に入る。

「今丁度、先生いませんよ。…って、日柳?」
「えっ?土浦君!」
「うわっ…転んだのか?」

音羽の怪我した足を見ながら土浦は眉を顰める。

「ちょっとね。土浦君は、どうしたの?」
「ああ、俺は肘をすりむいただけだから。ほら日柳、そこに座れ。」
「ありがとう。」

音羽を支えるようにして、土浦は椅子に座らせた。

「傷は洗ったのか?」
「うん。」
「じゃあ、取りあえず消毒だな。足、見せろよ。」
「え!?いいよ、土浦君。自分でやるから!」

当然かのように言う土浦に、音羽は慌てて断る。

「いいから。ホラ、足出せって。」
「…ごめんね、ありがとう。」
「いいって、気にすんな。しっかし、この程度で済んでよかったな。」
「うん。冬海ちゃんと話していたらね〜。」
「冬海!?出てんのか?」
「ビックリだよね。志水君も出ているんだよ。」
「志水もか…」
「志水君、騎馬戦で大量に鉢巻を奪っていたよ。」
「やるなー。」

話しながら器用に土浦は消毒をしていく。

「柚木先輩や蓮が出ていないのは何か納得だよね。」
「ああ…まあな。」
「こんな怪我したら、蓮に怒られそう。そう言えば、前に蓮にもこうやって手当てしてもらったな。」

苦笑しながら言う音羽に、土浦の手が止まった。


2013.10.04. UP




(46/69)

夢幻泡沫