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いつか一緒に

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「…月森が?」
「え?…うん。」
「手当て!?あいつに手当てなんて器用なことができるのか!?」
「うん。絆創膏を貼ってもらっただけ、だけど。」
「…て言うか、どこかケガしたの?お前。」
「ケガって言うか、この間コンサートを一緒に聴きに行って。久々に履いた靴だったから、靴ずれが…ね。」

恥ずかしそうに苦笑しながら言う音羽から視線を外すと、土浦はボソッと呟く。

「ふうん…仲いいよな。何気に…」
「え?何?」
「いや…それより日柳、大丈夫か?コンクールがある上に、文化祭のソロまで増えて。」
「…両方ちゃんと頑張るもん。」
「本当かよ、オイ…」

顔引き攣ってるぞと、土浦は呆れる。

「だって、文化祭が最後かもしれないじゃない。このメンバーでやるの。やっぱり特別…って言うか、学内コンクールには思い入れがあるから。だから…」

少し寂しそうに言う音羽を、土浦は見守る。

「そうだな…。なあ…日柳。」
「ん?」

自身から話し掛けておいて、土浦は続きを話さない。
そのまま素早く手当てを終わらせた。

「…よし、いいぞ。」
「ありがとう!手際いいね、土浦君。」
「ああ。部活でこのくらいの怪我、しょっちゅうだったからな。」
「そっか。それで、何?」
「実は、俺もお前に話したいことがあるんだ。」
「え!?まっ…まさか、土浦君も留学ー!?」
「いや、音楽のことじゃないよ。だから、コンクールが終わってからでいいんだ。」

優しく微笑む土浦を、座っている音羽は見上げる。

「さて…と、次はリレーか。そろそろ行かないとな。」
「あ…うん。土浦君も出るんだっけ?」
「そうだぜ。日柳もだろ?」
「うん。」
「俺は負けないぜ!?」

土浦は音羽の手を引っ張って立たせた。
その一部始終を音羽の怪我が心配で追いかけてきた加地が聞いていたなど、2人は知る由もなかった。



「プログラムも残り少なくなってきましたが、さて次は各組代表による組別対抗リレーです。男子の注目選手を紹介します。3年1組陸上部キャプテン、多田久志。そして意外や意外、音楽科選抜1年志水桂一。同じく選抜3年、陸上部他多くの運動部から勧誘を受けた火原和樹。5組代表は、本命中の本命!2年、土浦梁太郎。4組代表、こちらも2年バスケ部橋本徹平。そして2組代表2年、未だ未知数の転校生加地葵。」

それぞれ名前が挙がるごとに歓声がわき上がる。

「おおっと!これはすごい歓声、加地選手!只今トップは4組、しかし以下混戦です。リレーの順位によっては、大幅な入れ替えが考えられます。」
「すげーな、加地。歓声が。」
「例年以上に頑張っているんじゃないですか?音楽科。」
「そうかなあ…なかなかかなわないよ、普通科には。加地君こそすごい活躍じゃない。100メートル走も余裕で1着だったし。」

召集所に集まりながら土浦と火原が加地に話しかける。

「いいな…土浦。」
「は?」

どこか冷めた眼差しを向ける加地に、心当たりのない土浦は間抜けな声で返す。

「土浦だけじゃないよ、火原先輩だって…コンクール参加者はみんな羨ましいよ。」
「…加地?」

視線を地面に落とす加地に、2人の声も自然と小さくなる。

「えっと…何かした?」
「いえ…?」
「加地くん、どうかしたの?」

そこへ音羽が近づいてきた。

「…日柳さん、頑張ろうね!!」

パッと明るい表情を浮かべて、加地は音羽の手を取る。

「火原先輩。昨年は俺、火原先輩に抜かされてますからね。」

土浦は火原の肩にポンと手を置いた。

「そう言えばお互いに代表だったよね。当時は面識なかったケド…」

土浦と火原は去年を思い出しながらライバル意識を燃やす。

「あー、去年のリレーは盛り上がりましたね。あの時は、音楽科の人が頑張っているって意識しかなかったですけど…あれ、火原先輩だったんですね。」

音羽も去年を思い出す。

「土浦君、今年は頑張ってね!」
「おう!」
「火原先輩も頑張ってくださいね!」
「うん!!」
「加地君。ちゃんとバトン受け取ってね!」
「もちろん!」
「じゃあ私、あっちなので…」

三人に手を振りながら音羽は移動する。

「今年は負けませんよ、火原先輩。」
「土浦。」
「僕も負けるつもりはありませんよ。」
「いいね、いいねっ!そうこなくっちゃ!」

火原は土浦と加地の肩に自身の腕を掛け、嬉しそうに笑った。


2013.10.07. UP




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夢幻泡沫