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いつか一緒に
54
「んふふふ、大盛況大盛況!稼がせてもらったわぁ!これだから文化祭って大好き。」
ホクホク顔の天羽に音羽は呆れかえる。
「報道部って…。そんなに売れるのね…写真。」
「しょうがないじゃない。部の予算そんなに出ないんだから、こうやって賄っているわけよ。」
これあげると言いながら、天羽は文化祭の写真を何枚も音羽に渡した。
「いいの?ありがとう!」
音羽はもらった写真を早速見る。
「ついこの間のことなんだけど、こうやって改めて見ると懐かしい…っていうか…いいものだね。」
「それより…アンタはどうなのよ?相変わらず男子に囲まれて。」
「え?」
「後夜祭だって結局3人と踊ってたじゃない。」
音羽の肩に手を回しながら、天羽は写真を覗き込む。
「あっあれは…」
「あれは?何かなかったの?何か白状しなさいよ。」
「天羽さん!白状…って言ったって…」
音羽は額に手を当てて考え込んでしまう。
土浦に体育祭の時に言われた言葉。
あれから何もないけれど、土浦が醸し出す空気が何となく優しくなったような…。
少なくとも音羽にとってそれは居心地のいい、それでいて面映ゆくなるような感覚になる。
何と言えばいいのか…
包み込まれるような、甘いような…
色々思い出してみると、
「…え?あれ?」
音羽は頭が混乱してきた。
正直なところ、土浦と一緒にいることが音羽も嬉しかった。
…嬉しい?
「え?何で?」
「どうしたの、音羽?あれ?ごめん、言いすぎた?」
「うぅ…」
一人で混乱している音羽を見て天羽は慌てて謝った。
「…っと、噂をすれば月森君だ。」
「天羽さんの意地悪。じゃあね!」
そう言って音羽は月森のところに走り寄った。
「蓮!」
「…音羽か。」
「見て見て!天羽さんから文化祭の写真をもらったの。」
「写真…?」
「うん!ほら、みんなで写っているのとか…蓮が写っているのもあるよ。」
音羽は写真の束から月森が写っているのを彼に見せた。
「これ、いる?」
その言葉に固まってしまった月森を見て、音羽はまずいことを言ったかと慌てる。
「あ…ごめん。いらなかったね。」
「…いらないとは言っていない。」
写真を持つ手を引っ込める音羽からそれを取りあげるように、月森ははにかみながらも掴んだ。
「もっといる、蓮?」
「…いや、これで十分だ。」
そんなことをしながら歩く2人の後ろ姿を、天羽はじっと観察をする。
「これはこれは…ずいぶんと仲がよくなっちゃって、まあ。何があったワケ?」
「天羽?何をブツブツ言ってるんだよ、そんな所で。」
よっと後ろからかかる声に、天羽は顔だけ向ける。
「土浦梁太郎。いやあ…きみに言っていいものなのかどうか。…と、心優しい菜美さんは考えるのだよ。」
「はあ!?」
腕を組みながら真剣に悩む天羽に、土浦は呆れたような表情を浮かべる。
「あれよ、あれ。」
「あれ…って、ええと日柳と月森…か?」
「ずいぶん仲良くなったなあ…って。」
「ああ、幼馴染みだからだろ?」
「うーん…そうなんだけど…」
人差し指を顎に当てながら天羽は言葉を探す。
「主に月森君?雰囲気が変わったって言うか…」
その言葉に表情を険しくする土浦を、彼女はチラッと確認するように見上げる。
「…んだよ?」
「うかうかしちゃいられませんねぇ、旦那!」
「…誰が旦那だ、誰が。ただでさえ、体育祭やら文化祭やらで練習ができていないんだ。お前に構っている暇はないな。」
「あっ、そうだよね。コンクールまであと一週間!ちなみに今の心境は?」
「…」
そう、あと一週間…
土浦は深く息を吐き出すと、スタスタと歩きだした。
「ちょっと!無視しないでよ〜!!」
後れを取るまいと、天羽は小走りで彼を追いかけた。
放課後、土浦は練習室が空いているか確かめに職員室へ行った。
淡い期待を持っていただけに、全て埋まっていたとなるとやっぱりいっぱいか…と溜息を吐く。
「しょうがないな…」
「お、土浦。どうした?」
「あー…少し弾いてから帰ろうかと思ってたんですけどね。予約でいっぱいでした。」
「ああ、練習室か。それなら…」
ちょうど通りかかった金澤が白衣のポケットをごそごそと漁る。
「コレ、音楽室の鍵やるよ。あそこのピアノ、使えるだろ?」
「え…いいんですか?金澤先生。ありがとうございます。」
「なあに、気にするな。丁度、今から鍵をかけに行かなきゃならなかったんだ。というワケで、終わったら戸締まりヨロシク。」
「あー…ハイハイ。」
嬉しそうにチャリンと鍵を渡す金澤から、土浦は呆れたように受け取った。
2013.11.08. UP
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夢幻泡沫