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いつか一緒に

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歓声が構内に響き渡る。
帰国した月森と音羽が連れだって学校に訪れたところ、これまで以上にあっという間に人垣に囲まれてしまった。

「この間のコンサート、かっこよかったです。」
「他のメンバーは、同じ学校の人なんですか?」
「インタビューが載った雑誌は全部買いました。」
「サイン下さい!!」

余りの凄さに月森も音羽も引いてしまっている。
その騒ぎを校舎内から土浦が見ていたのだが、2人は気がつかない。

「…音羽、分かれて行動するとしようか。」
「うん…そうだね。」

顔を引き攣らせながら言う月森に、音羽も乾いた笑みで答える。

「今日は家に戻るんだ。家族全員いるから、一緒に夕飯を食べないか?」
「わあ、嬉しい。ありがとう。」
「じゃあ、また家で。」

月森は音羽の頬に軽くキスをすると、さっさと歩きだした。
その行動にきゃあと歓声がまた上がるが、その隙に彼女も目的地に向かって人垣から抜け出た。
職員室でいくつか確認した後、音羽は校舎の中を歩く。
まだ土浦もいるはずだから…と、とりあえず教室に向かう。
そっと中を覗くと、土浦が一人で窓の側にいた。

「…土浦君。」

音羽の小さな声に、彼はバッと振り向く。

「おかえり、音羽。」
「ただいま…」

他には誰もいない教室で、2人はそっと抱き合う。

「長かったな。」
「うん、好評だったみたいで…。それは嬉しいんだけど…」

それ以上は言葉にしないで、音羽は土浦に回した腕に力を込めた。

会いたかった、土浦君に…
メールだけじゃ全然満たされなかったの…

そんな音羽の気持ちが分かったのか、土浦は彼女の頬に手を添えた。
自然と見上げる形になった音羽の顔に、自身の顔を近づける。
二つの影が重なった後、真っ赤な顔をした音羽は俯いて抗議した。

「…誰かに見られちゃう…」

そんな彼女を可愛いと思いながらも、さっき見た月森との光景が土浦の頭の中でチラつく。

「月森とは堂々と外でしてるくせに、か?」
「え?」
「たくさんの人に囲まれながら、月森もお前にキスしてたじゃねえか。」
「あ…見ていたの?あれは挨拶だよ?2人とも海外生活が長かったから、蓮もついしちゃったんじゃない?」

拗ねたようにプイッと横を向いて腕を組む土浦に、音羽は困ったような笑顔を向けた。

「…久しぶりに会えたのに、怒っているの?」
「怒っちゃいねえ…」
「じゃあ、こっち見て?」

音羽は土浦の手を取って引っ張る。

「…悪かった。」
「うぅん…」

天羽の言葉が脳裏をよぎり悪態を吐いてしまった土浦は、バツが悪そうに頭を掻いた。
それでも不安を払拭できないのか、ついポロリと思いを漏らす。

「…俺にもしてくれ。」
「え?」
「挨拶のキス、俺にもしてくれよ。」
「ここで…?」
「ああ。」

土浦の即答に、音羽は焦ったようにまごつく。
それでも辺りをきょろきょろ見回すと、

「…目、閉じて?」

頬を染めて土浦にお願いをした。
言われるままに目を閉じた土浦の唇に、温かいものが触れた。
驚きに目を瞠る彼の前に、さっきよりも染まった音羽がポソッと言う。

「土浦君は友達じゃないでしょう…?」
「…そうだな。」

嬉しそうにニヤッと笑った土浦は、音羽の顎に手を掛けてその唇を心ゆくまで味わった。


2014.05.01. UP




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夢幻泡沫