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花は輝き月は笑む

02



どうする〜?
連れて参れー!
ほっとけばぁ?
そのようなわけに参るか!上田の民だぞ!?
え〜っ?でもすっごく綺麗な子だし、ほっとけないよねぇ〜!
おっ、女子なのかっ!?
…俺様、さっき『女の子』って言ったよね?



ぼんやりとそんなやり取りが頭の中に入ってきた。
何だろう…この固い言葉と緩い言葉の応酬は。
はっきりとしない頭でのんびりと聞いていた桃花は、次の瞬間に叩き起こされた。

「はっ…破廉恥でござるぁあああ!!」
「うわぁっ!!」

ガバッと上半身を起こした桃花の目の前に、迷彩柄が背を向けていた。

「あ、起きた。おはよう。」
「…おはよう、ございます…」
「お嬢さん、何者?こんなところで何しているの?」
「え…あ…道に、迷った…みたいで…」
「え〜?本当に?だってここ、街道から離れているよ?」
「…ですよね。」

くるりと振り向いた迷彩は、にっこりと笑って挨拶してくると矢継ぎ早に質問してきた。

にっこり笑っているけど…顔にペインティング?
額から顎にかけてあるのは…何?
それに迷彩柄って…しかも、ポンチョ?

「ええと…すみません、サバイバルされているんですか?」
「…さば、いばる?」
「…いえ…何でもありません…」

考えられないところで区切られてしまい、ヒクリと桃花の頬が引き攣る。
キョロキョロと周りを見渡しても、入ってくるのは相変わらずの長閑な風景。

「取りあえずさ、向こうに旦那を待たせてるから行こう?」

あっちと指された方は、川の対岸だった。

「…や、行くって言っても…」
「だ〜いじょうぶだって。」
「佐助ぇ!何をしておる?」
「旦那、待ってて!すぐ行くから!!…ちょっと失礼するよ〜。」

単に言っているだけだと分かる軽い断りの後、迷彩はひょいと桃花を姫抱きにした。

「きゃあっ!?」
「これ、お嬢さんの?」
「あ、はい。…じゃなくて、降ろしてください!」
「これもお嬢さんの?」
「…そうですけど。」

何これ?と訝しげに色々な方向でミュールを眺めながら手に取ると、鞄と一緒に桃花の上に乗せる。

「ちゃんと掴まっててね〜。」

その後に感じたのは、浮遊感と風を切る音だった。



「佐助っ!はれっ…破廉恥であるぞぉおおお!!」
「はいはい。旦那、うるさいから。」

来ている衣服同様に顔を真っ赤に染めたその人を軽くあしらうと、佐助と呼ばれた迷彩は桃花を地面に下ろそうとした。

「はい、到着〜ってね。お嬢さん、草履は?」
「…草履、ですか?」
「足の裏よごれてないから、裸足でここまで来たわけでもないでしょ?草履じゃなかったら、草鞋は?履物、持ってないの?」
「え…これですけど…」

草履、草鞋と滅多に聞かない単語に首を傾げながらも、桃花は己の身の上に置かれたミュールを指す。

「え、それ履物なの?ふ〜ん、じゃあ履いちゃってよ。さすがに裸足のまま地面に立たせるのはよくないしね。」
「あ…どうも…」

片膝を立てて迷彩は座り、地面につけた方の太腿に桃花を座らせる。

「はっ、はれっ…破廉恥っ…!!」
「静かにしないと団子抜き!」
「それは困るっ!!」
「…何でこんな綺麗な子より団子の方が上なの?俺様、分かんな〜い。ほら、お嬢さんも早く履いて。」

己の口を両手で塞ぐ赤い人に白けた目を向けた後、迷彩は安定させるために桃花の腰に腕を回した。
そんな扱い方を受けたことのない桃花は、大いに慌てながら急いでミュールをつっかける。

「すみません、ありがとうございました。」
「いいえ〜。…で、お嬢さんは何者なの?」

さり気なく手を掴んで桃花を立たせた迷彩は、スッと目を細めそれまでとは全く異なる雰囲気を纏った。


2014.01.13. UP




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夢幻泡沫