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花は輝き月は笑む

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「Hey, kitty. How are you doing?」
「…伊達様。」

後ろから声を掛けられた桃花は、驚いて目を大きくする。
慌てて頭を下げれば、彼の後ろから喜多と小十郎が会釈をしながら近づいてきた。

「桃姫様、急なお渡りで驚きでございましょう。実は床几を取りに戻りましたところ、政宗様が御部屋にいらしていましたのでお連れ致しました。」
「そうですか。ありがとうございます、喜多さん。」
「桃姫様。いきなりお訪ねしましたこと、お詫び申し上げます。」
「気になさらないで下さい、片倉様。」

撫で下ろすように胸に手を当てながら小さく笑い、桃花は小十郎と喜多に会釈を返す。
喜多の手には桃花愛用の床几が持たれていた。
せっかく持ってきてもらったが使うことはないだろう。
と言うより、一人にしてくれる為にわざわざ喜多は口実を作ってくれたのだ。
申し訳なさと有難さが同時に押し寄せてくる。

「喜多さん、折角ですけれど…部屋に戻ります。」
「An?桃、この後なにかすることでもあるのか?」
「…いえ、特には…」
「なら、庭の散策に付き合えよ。」

ニッと笑って歩き出した政宗の後ろ姿を、桃花は呆けて見る。

何故、己に構うのだろう?
言ってはなんだが滅多に会わない正室より、いつもそばにいる側室の方が一緒にいて楽しいだろうに…。

輿入れの一件以来、桃花は伊達の者と一線を画してきたつもりだ。
喜多はともかく機嫌伺いにくる小十郎達にも、聞かれたことに短く答えるだけでほとんど話しかけていないつもりだ。
出来るだけ身の回りのことも己でやり、侍女も部屋に入れていないつもりだ。

伊達様は一体何をお考えなのだろう…。
己の態度が気にくわないから、一言言いに来たとか?
私は正室という立場なのだから、もっと愛想よくしろとか?

「…どうした?気分でも悪いか?」
「あっ…いえ…」
「桃姫様、どうぞ政宗様のお隣に行かれて下さいませ。」
「あの…」
「桃、come on.」

立ち止まって振り返り、手を差し伸べる政宗は楽しそうに笑っている。
思わずドキリと鳴った桃花の胸が身体を震わす。
…忘れていた。
この人は無駄に顔がいいんだった。
何て絵になる様なのだろう…と、不覚にも見惚れてしまう。

「桃姫様?」

喜多の声にハッと現実に戻り、ゆっくりと歩みを進めた。

「さっきのは歌か?」
「…え、と…」
「Ah〜、父と子の物語みてえな…木の実を見ると思い出す、みてえな?」
「あ…」

危なかった。
『パパ』の部分を『父』に変えておいてよかった…。
と言うより聞かれていたのか…

背中に嫌な汗が流れる。
誰もいないつもりで口ずさんでいたのに、恥ずかしいにも程があるだろう。

「…お忘れ下さいませ。」
「何でだよ?聞いたことなかったが、良いと思ったぜ?」
「…ありがとうございます。」
「で、歌なのか?桃が育ったところのか?」
「はい。」
「もう一度聞きてえな。また歌ってくれないか?」
「…遠慮致しとうございます。」

そりゃ残念、と政宗はクツクツ笑う。
どうやら機嫌が相当いいらしい。
このまま何事もなく終わってほしい、と心の中で桃花は願った。


2014.11.17. UP




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夢幻泡沫