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もうキミ以外欲しくない

05



初めて会った瞬間に目を奪われた。
本当に綺麗な人で、現実とは思えない顔立ちだった。
自分が生業としているアニメに出てきそうな容姿に、思考が停止してしまった。
茉季さんは光兄さんと同い年だから僕より年上のはずなのに、彼女はそうは見えなかった。
京兄との会話は真面目そのものだったし、椿やかな兄の悪ノリにも適当に相槌を打てていたから、やっぱりいい大人なんだろうけど。
そばにいたいと思った。
だから、普段だったら避けるはずの引越しの手伝いも買って出た。
茉季さんのことを全然知らない。
…もっと知りたい、な。

「梓ー★」
「なに、椿?」
「梓、茉季ちゃんのこと気に入ってんだろ?」
「えっ…ちょっ…!?」
「うわっ、珍しく動揺してる!」
「っ…椿!」
「梓ってば分かりやすーい★今日一日、茉季ちゃんにベッタリだったじゃん。俺、梓を取られた気分っ!」

食事後、リビングのソファにだらしなく座りながら椿がすぐ下の弟に絡んでいた。
バッと振り向いた梓は途端に顔を赤く染め、焦ったように意味もなく手を振る。
けれどその態度は認めているようなもの。
椿はニヤリと笑いながら弟の肩に手を回した。

「なになに?茉季ちゃんのどこがいいわけ?」
「…どこ、って…別に僕は…」
「そお?俺は茉季ちゃんのこと気に入ったよ?ちょーキレーだし、性格もよさそうだし、オトナの付き合いができそうじゃん!?」
「椿っ!?」
「梓がいかないんなら、俺がいっちゃおうかなー★」
「…」

覗き込むようにして自分の顔を見ていた椿に、梓ははあ…と深く息を吐き出す。

「…分かってるんでしょ?」
「もっちろーん!梓のことはなんでも分かるって★で…どこがいいの?」
「…まだ会って間もないんだから、どこがいいのかは分からない。」
「じゃあ一目惚れってヤツ!?」
「そう…かもね。」
「珍しいな、梓が最初っからなにかに興味を持つなんて。」
「…」
「しょーがねーなー、お兄様として弟の恋の行く末を見守ってやろう。」
「…からかうのなら余計なお世話だよ。」
「ちぇっ、冷てーの★」
「椿?」
「ジョーダンだって。梓、ガンバっ!」
「…頑張れ、ね。とりあえず、ありがとうって言っておくよ。」

照れくさそうに視線を逸らした梓に、椿は笑みを深くした。


2016.05.12. UP




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夢幻泡沫