10.女子高生界初冒険記




私はこのハイラルを統べる王の娘。すなわち…ハイラルの王女。


誰もが皆口を揃えて言うわ
「お姫様って羨ましいね」「欲しい物は幾らでも貰える」

「平穏に暮らす事ができるんでしょ?」

って……


平和な事はいい事よ。でも、私は世界が壊れてきている現状を目の辺りにして、何もしないで優雅に暮らせと言われるとどうしても我慢できない。


兵士として、戦場に赴き平和を取り戻す事の方が、私には嬉しい事です。


兵士として生まれたのなら右手には剣を、左手には盾を。
全てに勝ち誇った時、剣も盾も捨てて両手に抱えるのは勝利と本当の価値ある平和。


花を摘み、鳥と戯れる事にはもう我慢なりません。


だから…非力な私に貴方の力を貸してくださいませんか?






女子高生界初冒険記




「り、リンク?それにナビィも…」


ま、まさかさっきの話聞いてたんじゃないわよね。


「舞…っ、異邦人ってどういう事?」


聞いてたか!!
どうしよう…ど、どうしよう?(汗)とにかく異世界から来たって事は聞かれたのよね。


「何で!舞異世界から来たの!?」


へ?
いや、さっきゼルダが理由言ったじゃない…
……っ!まさか、リンクは理由の所は聞いてないの?だとしたら、まだ言い訳はできるかも。
あたしが口を開きかけた時、後ろからゼルダ姫が先に言葉を発した。


「彼女は私がこちらにお呼びしました。手違いの所為により私が呼んでしまったのです。」

「あれ?」


さっき言った事と違う…
あたしは首だけ後ろに向ける。ゼルダ姫が人差し指を唇に持ってきた。
運良くもリンクは俯いていたから見られてなかった。


「ですが私は彼女が異邦人であろうと謙遜するつもりはありませんわ。
…貴方はどうですか?」

「僕、は……」


尚俯いているリンクを見下ろすようにゼルダが彼を見つめた。
暫く黙っていたけど、ゼルダは優しい表情に戻すとリンクの名を呼んだ。


「リンク、貴方もいらっしゃってください」

「…?」


首を傾げながらもリンクはあたしとゼルダに近寄ってきた。
その際あたしと視線が合うと、気まずそうに視線を逸らした。…悲しい(涙)


ゼルダはあたしに話した時と同じような説明をリンクにした。


「リンク、貴方が森から来た人なら【森の精霊石】を持っていませんか?
緑色のキラキラした石…」

「【森の精霊石】…これのこと?」


そう言ってリンクが懐から取り出したのは【コキリのヒスイ】
それを見た途端、ゼルダは嬉しそうに笑った。


「私は最近同じ夢を見るのです。このハイラルがまっ黒な雲に覆われてどんどん暗くなっていくのです。
その時一筋の光が森から現れました。
そしてその光は、雲を切り裂き大地を照らすと…妖精を連れて、緑に光る石を掲げた人の姿に変わったのです。それが夢のお告げ」

「妖精、緑に光る石…リンクに当てはまるわね!」


夢の中と言えど、自分の偉大さに気づいたリンクは口を開けてポカーンとしている。
その時小声で「まあ、何てアホ面v」って聞こえた声は流す。


「舞には既に名乗りましたが、私の名はゼルダ。宜しくお願いしますねリンク」

「う、うん…、…?あれ?僕名前教えたっけ?」

「(Σハッ!!)」

「何言ってるんですか、さっきご自分で名乗ったでしょうv」

「あれ、そうだっけ?」

「『(絶対ウソだ…!)』」


あたしという証人がいるんだもの、絶対教えてないわ!でも彼女の言葉を安易に信じるこの時点で、彼は馬鹿だと分かる。
多分ナビィも同じ事を考えているんでしょうね…(汗)


「今から貴方方に、このハイラル王家だけに伝わる聖地の秘密をお話します。
誰にも言ってはいけませんよ?もし言ったのならリンク限定で、アッパーカットぶっつけて三段ロッドのコンボでブッ殺vよ?ウッフフフフv」

「い、言いません!!(ガタガタ)」


言う勇気がありません!(ブルブル)言った時が命の最期だと知ってて誰が好き好んで言うもんですか。
しかもリンク限定って…(汗汗)


「ではお教えしましょう。
――それはこう伝えられているのです…






三人の女神様はハイラルの何処かに神の力を持つトライフォースを隠されました。
その力とは、トライフォースを手にした者の願いを叶えるものでした。

心正しき者が願えば、ハイラルは善き世界に変わり…
心悪しき者が願えば、世界は悪に支配される…そう伝えられていました。


そこで古の賢者様は、心悪しき者からトライフォースを守るため、時の神殿を造られました。








そう…時の神殿とは、この地上から聖地へ入るための入り口なのです。
でも、その入り口は【時の扉】と呼ばれる石の壁で閉ざされています。

そして、その【扉】を開くためには…三つの精霊石を集め、神殿におさめよ…と伝えられているのです。」

『じゃあ、ナビィ達が持ってきた【コキリのヒスイ】は【時の扉】を開くための、鍵…?』

「ええ。ですが、さらにもう1つ必要なもの…言い伝えと共に王家が守っている宝物…」


そこまで言うと、ゼルダはポケットから何かごつごつしたものを取り出した。
胸の高さまで持ち上げてからようやく分かった。それは青い色で塗られたオカリナ。


「この【時のオカリナ】です!私のお話分かりました?」

「うん、何とか。」


何とか…大丈夫なのかな?まああたしが分かったから何かあった時は大丈夫でしょ!


「よかった。…貴方たちが来るまで、私はこの窓から奴を見張っていました。
夢のお告げのもう1つの暗示…黒い雲…それがあの男」


ゼルダが見つめる先には、忠誠を誓う騎士のように方膝をついているガノンドロフ、もとい脂ギッシュな筋肉質のおやっさんがいた。
あたしはあんまり見ないようにしてるけど…(おぇッ)


「ゼルダ、この事をお父さんには話したの?」

「ええ…けれどお父様は私の夢のお告げを信じてくださいませんでした…」

「その後【お父さんは】無事だったの?」

「まあ無事無傷では終わりましたけど。
秘密兵器の涙目攻撃でも聞かなかった野郎に頭の中の糸がぷっちん切れちゃって、
思わず壁に立て掛けてある斧でぶった切ってやろうとも思いましたわ!」



やっぱりかーーーーーーー!!
いいの?自分の親ぶった切って!?【ゼルダ姫親である王を殺害!?実は中身がまっ黒だった!!】
ってでかでかと記事に載るわよ!?


「寸でのところでインパが止めに入ったものですから、計画を実行に移すことは出来ませんでしたけど(ふぅ)」

「(インパさん!?)」


後ろを見れば、額に浮かんだ冷や汗を拭っているインパさんが見えた。
命を懸けて頑張ったあの人に心の中で盛大に拍手っ!


「まあ邪なオーラを大量に放った事と、夕飯にシェフに頼んで弱力の毒を盛りましたから、
一週間は寝込みましたけどねv」

「鬼め」


多分ゼルダ一人でガノンドロフの野望阻止できると思うね(真面目)
というより、シェフに頼んだって言うかシェフを脅したんでしょ?どうやったらこんなに黒い娘が出来上がるのよ王様…!!


「ガノンドロフの無謀な狙いは、おそらく聖地におさめられたトライフォースです。
それを手に入れるためにハイラルにやってきたのでしょう。
そしてハイラルを…いえ、この世界そのものを我が物にしようと……」


無謀て


「舞、ついでにリンク…今ハイラルを守れるのは私達だけなのです!」

『リンクついでなんでスカ!?』

「寧ろ力借りるべきなのは彼の方でしょ!!」

「??」←分かってない

「信じてください、お願いです!」


今さらっとスルーしたな。
それよりリンクはどうなんだろ?あたしはリンクがもし信じるなら、彼に着いて行くだけだから。

あたしは視線をリンクに向けると、彼の目とバッチリ合った。
今度は視線を逸らすことないからあたしは笑っておいた。一瞬は驚いたものの、安心したようにリンクもにこっと笑い返してくれた。

意を決したように顔を上げる。リンクの目は真っ直ぐ前を見据えていた。


「うん、信じるよ!!」

「あたしも」

『ナビィも!』

「ありがとう…!」


見方が出来た事が嬉しいのか、ゼルダは嬉しそうに優しく笑った。
いつもこんな純粋な笑顔だといいのにねー…(汗)


「とにかく、ガノンドロフにトライフォースを渡してはなりません!
【時のオカリナ】は、何とかしてあの男の手に渡らぬように守ります。貴方たちは残る2つの精霊石を見つけてください。
ガノンドロフよりも先にトライフォースを手に入れてあの男を倒しましょう!」

「大丈夫。ゼルダならできるよ!」

「ありがとう舞!」


気にしないで。本心だから(遠い目)


「それから…この[手紙]を渡しておきます。きっと役に立つはずです。」


ゼルダは何処からか出した紙に何処からか出したペンで、さらさらと何かを書いた。
それをあたしに渡すと、一言「お願いします」と頼んできた。


「大丈夫だよゼルダ!僕と舞…それにナビィだっているんだから。絶対見つけてくる!」

『ゼルダ姫、また会いましょウ!』

「ありがとうゼルダ、またね!」

「気をつけて…」


ゼルダに見送られながら、あたしとリンクとナビィは段差から降りた。
そのまま走ってインパさんのいる入り口へと向かった。


「少年、そして舞よ…ゼルダ姫様の願いを叶えに行くか」

「うん!」

「そうか…ならばこの歌をお前に教えよう。
元々はゼルダ姫様がご幼少の頃に子守唄として歌ってきた。…だがこれは王家に伝わる歌。
世界を救う旅に出るために教えよう。

王家に伝わる【ゼルダの子守唄】を聴け」


インパさんがお手本として指笛を吹いた。
静かに流れる曲は正しく子守唄と言える。…でも王家に伝わる曲が【ゼルダ】ってついてるわよね?
まさかそんなところまで黒の手が…!?

リンクも懐からサリアに貰ったオカリナを取り出すとインパさんの音に合わせて音を奏でた。
2つのハーモニーが重なり、1つの曲が完成。

それが【ゼルダの子守唄】


「スッゲェェ!舞!僕吹けたよ!!」

「よかったわね〜リンク」


嬉しそうに飛びついてくるリンクの頭を撫でてやったら「えへへ〜」と嬉しそうに目を細めた。
くっそぉぉぉ!此処にナビィ達がいなかったら…
いなかったら即ここでいただきますvしてやったのに!!


「衛兵に見つかると厄介だ、私が外まで送ろう」


あたしの邪な考えに気づいたのか、インパさんはあたし達を馬に乗るように促した。
またあの馬野郎と勝負ね…今度こそ勝ちは譲らないわ!!


「ねえナビィ」

『ん?ナ〜にリンク』

「舞とあの馬の間に火花が見えるんだけど、あれって何?」

『……(言葉が見つからない)』


何だか後ろでこそこそと話してる2人。何を話してるの?
疑問を抱きながらも、先にリンクに乗ってもらいあたしもそれに続いて馬に乗ろうとした…


「舞!」


何故か寸ででゼルダに止められた。何で?
一応呼ばれたから行ったほうがいいな、と思い、段差から降りてきているゼルダの近くに駆け寄った。


「どうしたのゼルダ?」

「…貴方をこの世界に呼んだことは、リンクにはまだ打ち明かさないでください」


声を小さくしてゼルダが喋ってきた。あたしも習って声を小さく…


「どうして?さっきも本当の理由を言わなかったけど…」

「彼にはまだ言わないほうが…もし今言えばパニックを起こすかもしれません。
それに、それを理解するにはまだ幼すぎる。貴方は元々17歳だから話しましたが、今の彼だと分かりません」


ああ、ゼルダはあたしを連れて来た張本人だから本当の年を知ってるのね。


「貴方もきっと完全には把握してないと思います。
…時が来れば、貴方にも異変が起きるので気づくでしょう。」

「分かったわ、それまではあたしもリンクと普通に接していくから」

「舞〜〜!早く来なよ!!」


馬に乗っているリンクが手招きしてる。返事を返して戻ろうとすると、またもやゼルダに止められた。
あら、まだ何かあるの?


「舞!先ほど言うのを忘れていましたが、夢のお告げの中に、リンクの隣にもう1つ影がありました。
その影は彼を支えるように手を繋いでいました。
…きっとその影は貴方です。貴方は例え力がなくとも彼を支えるという重要な立場にいるのです。どうかそれを忘れないで…
そして無事に戻ってきてください。私に…普通の女の子の遊びを教えてくださいね」

「ゼルダ…もちろんよ。
精霊石を手に入れて、ガノンドロフに打ち勝ったら、真っ先に貴方の許へ帰ってくるわ!
それまでに…」

「…?どうしたんです?」

「い、いや…(まさか黒い性格を直しておけなんて…堂々と言えないしな〜)」


我ながら適切な判断だと思った。


「じゃああたしは行くわね。ゼルダはしっかりガノンドロフから【時のオカリナ】を守ってて」

「はい!」


あたしはゼルダに手を振りながらリンク達の許に走って行った。
彼女なら大丈夫でしょう。…いろんな意味でね……(汗)
















***







「またもや完・敗…っ!!」

『どーどー』


いきなり何だと思った方どうもすいません。

城の外へ出るまでの短い間、結局あたしは馬に勝てず、またもや振り落とされそうになった。
降りた時に馬野郎が勝ち誇ったように鼻で笑ってきたのがムカついた。


「あれはゴロン族が住まうデスマウンテンだ、あの山に炎の精霊石があると聞いたことがある。」

インパさんが高い山を指差して語りだした。

「山のふもとのカカリコ村は私が生まれ育った土地・・・山へ向かう前に寄るといいだろう。」

「カカリコ村…」


隣のリンクを見ると、恍惚な視線で山を見つめていた。
コキリの森にはあんな高くてごつごつした山はなかったから、きっと見入ってるんだろう。


「我々はこの美しきハイラルを守らねばならない。」


山に見入っているリンクから視線を外し、インパさんに視線を向ける。
あたしの視線に気づいたインパさんがあたしとリンクを見ながら言った。


「リンク、そして舞…このハイラルの平和はお前たちの勇気にかかっている。
ゼルダ姫様もそれを信じ、お前たちの帰りを待っておられる…それを忘れないでほしい…
この精霊石探しの旅、まさに使命と言っても過言ではないはずだ。」


インパさんが告げた重みと責任感を感じる言葉にあたしは唾を飲み込んだ。
だって、今まで生きてきた中でこんな大役、ましてや世界の為なんだから。

そんな大問題任されるなんて、夢にも思わなかった。


「何かあった時はまた戻ってくるがいい、微弱ながら力を貸そう」


インパさんは馬の近くまで下がった。そして…


「お前たちの旅…健闘を祈る!」


―――カッ!


「うわっ何!?」


今まで山に見入っていたリンクが突然の音に思わず振り返った。
インパさんは煙玉を使って馬共々姿を消してしまった…


「(まだ…まだあいつに仕返ししてない!)」

「舞〜、何悔しそうにしてるの?」

「いや、何でも…」


心の中で馬の仕返しをしてないことに悔やんでたら、どうやら顔にも出てたようね(汗)
溜息をついてリンクとナビィの許に歩み寄った。


「じゃあ先ずはカカリコ村に行こうか」

『きっとデスマウンテンへの道もあると思うカラ、それが妥当だネ!』

「よし!カカリコ村まで競争だ!!」

「あっ、ちょっとリンク!?」


意気込んで真っ先に駆け走ったのは、我らが勇者リンク。
あたしは隣にいるナビィと一緒に溜息を吐いた。


「仕方ないわね〜、追いかけなくちゃ」

『………ねえ舞、ナビィ一個気になったんだけど』

「ん〜?」


『リンク、カカリコ村と反対方向に行ってない?』



…………………。

あたし達から真っ直ぐ行ったところに見えるカカリコ村。
リンクが走ってったのはあたし達から見て後ろ。


「Σリンク―――――!!?ちょっ、ストップストップ!!逆だってばっ、ちょっとーーー!?」

『聞こえてないネ〜アレ』


日も暮れかけてるというのに…仕方ない、追いかけるしかないわね。

無駄に早い鈍感リンクを追いかけて、あたしはナビィと一緒にリンクを追いかけた。

夕日をバックに、爽やかな青春ダッシュなんてできる訳なく、何だかリアル追いかけゴッコなるものをしてしまった…。


よ、翌日筋肉痛決定ね…!!地味に痛いのよーアレ(涙)






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