19.シークレットストーカー





噂にて、時の神殿の封印が解かれたのは7年前。


それは、丁度一国の姫が乳母と共に何処かへ去った日と同じく、


何者かが精霊石を集めきった日と同じく、


少年と少女が離れ離れとなった日と同じだった。







シークレットストーカー







「ナボールさん…帰ってこないですね」

「そうだね」


いきなり話しすっ飛んでどうもこんにちは、元女子高生です。
…いえ、もう女子高生と言ってもいい年齢にはなれただろう。

あたしがこの摩訶不思議な世界に来て早7年。今は17歳となり、この世界に来る前の年齢に戻れた。
あたしは最初の頃に比べ十分に成長しましたよ。

身長は前の世界と同じだけど。
まあ、前の世界よりも胸が幾分(ちょびっとね)でかいという特典が喜々(ぐっ)


「ナボール様の事だから大丈夫とは思うんだけどねぇ…」

「でも出て行ってからもう7年ですよ?いい加減怪しいですよ!」


そう、あたしを拾ってくれ、尚且つ馬の乗り方などを教えてくれたナボールさんが、7年前から行方不明となっている。
ふとある日、『砂漠の女神』がどうのこうのとか言ってたけど…


「(帰ってこないな〜…)」

「舞、今日はここまでだよ。ま、もうあんたも幾分か覚えたから、もう教える必要はないだろう!」

「あ、はい。ありがとうございます」


この人はゲルド族の1人であり、ナボールさんがいなくなった日から彼女の代わりにずっと面倒を見てくれている。
持ってきていた本を幾らか持ち、部屋から出て行く。

あたしはボーっと窓から外を見るだけ。


「(もうハイリア語も覚えたし、馬の乗り方も大分良くなった)
リンク〜…まだなの?」


あたし達が別れてもう7年経ってるんだから、もうそろそろ来てもいい筈なんだけど…
まさか、もう死んじゃってるなんて事ないわよね?


「ふぅ…もういいわ、今日はシャワー浴びてさっさと寝よう…」


何故か何時もよりも疲労感が溜まってしまった。
大きく背伸びして、愛用しているバスタオルを持って部屋を出て行く。








「―――………。」



その時、影から誰かに見つめられている事も知らずに……











*****






ホー…ホー


「…ぅ……ふあ〜ぁ…っ」


ふくろうも鳴く夜明け前。こんな中途半端に起きるなんて…
窓から入ってくる月の光を浴びながら、あたしはベッドの上で目を擦る。

もう一度寝ようとしたけど、一度覚めた目は中々眠たくはならない。


「…散歩でもしようかな……」


あまり夜の砦を回った事がなかった。少し湧く楽しみの気持ちを抑え、毛布とランプだけを持って部屋を出る。


あまり強い光は発せられない。他に寝てる人たちに悪いからね。

障害物のない平らな地面には、裸足で歩くあたしのペタペタという足音しか聞こえなかった。




そのまま道を沿って行くと、辿り着いたのは砦の上。
何気なく歩いてみたら、結構凄いところに来るものなのね(汗)


「さ、寒…っ」


なら何故出てきたなんていう突っ込みは抜きで。
夜の砂漠は、とても昼があんなに暑いとは思えない程寒い。気温変化が激しいからだ。

足を放り出すようにして、あたしは砦の端っこに座った。


「えーと…あの月の位置からして今は……約4時前?」


ココには生憎時計がない。だけどその代わり月や太陽の傾きを見て時間を計ることを教えられた。
口まで覆い隠すぐらい、あたしは毛布をずり上げる。


「まさかこんなに帰るのが遅くなるなんてねー」


帰るというのは元の世界へ、という意味。
でも、もしかしたらもう帰ることはできないやもしれない。

あの夢の中で聞いたお告げのようなものを聞いたのも7年前。いろいろとまた不安になってくる。


「リンクにナビィ…まだなのかな〜…」













―――ポロロン…。


「…?何?」



「異世界からの遣い。その小さくか細い体に課せられた使命は、とても過酷で残酷なもの」

「!?だ、誰!?」


おっとー、あんまり声は大きくしちゃいけないんだった。
声はすれども姿は見えず、相手の姿を見つけるため、首をきょろきょろと動かす。


「悲しき運命。だがそれを変えるには、光の少年と共に手を取り合うことしかないだろう」


さっきよりも大きく聞こえるようになった。
声のするのは…上!?

バッと砦の頂上に首を上げる。


いた。でも、月の逆光で顔が見えない。


「こんな所で立ち止まっていては、キミの未来に光は指さないよ?」

「知ったような口ぶりね。あたしだってそんな迎えが来てくれるのを祈ってるのよ。
どうでもいいけど、貴方そこから降りてきたらどう?」


っていうかそれ以前に光の少年て誰。
相手は暫く考えたけど、軽やかな動きでこっちまで降りてきた。しかも1回ジャンプしただけで。

うわっ、みっがる〜…


「悪かった、いきなり吃驚させてしまったね」

「まあ、吃驚はしたけど…」


ちょ、今見たら何この人?めちゃくちゃ美形じゃないのんさ。(何)
髪はリンクと同じ金色で、瞳の色は赤。

口元を覆う服は、何だか変わった模様が描かれている。
………ピッチリ全身タイツ?


「あの、貴方は誰?」

「…僕はシーカー族のシーク。キミは舞、だろ?」

シーカー族?何、それ。それに…何であたしの名前…」

「キミのことは良く知っている。それに、リンクの事もね」


見た目と言い、何とも不思議な人物だろう。
彼、シークは一見凄いカッコいい美形さんなんだけど…ま、まさか…


す、ストーカー?

「言うと思ったが激しく違うよ」


読まれてたか


「僕は情報収集が得意でね、いろんな所でキミ達の情報を聞いたんだ。」

「(その情報源は一体…)え、え〜っと…ねえ、さっき言ってたシーカー族って何?」

「シーカー族は王家に遣える者達。ただ僕はその生き残りだけどね…」

「あ、ご、ごめんなさい…」

「いや、別に構わないさ。」


そう言ってシークは小さく笑った。
…ごめんなさい、不外だけどこの状況で彼の笑顔に胸キュンしてしまいます(黙れ)

いつか鼻血が出た時の為にティッシュを用意。

そう思ってあたしはポケットを探る。その時、何かがポケットから落ちた。


カタンッ――カラカラ……


「あ。」

「?それは…」


落ちた物が何かは分からないけど、あたしは慌ててそれを拾った。
それは少し以前より色褪せた、サリから貰った『オカリナ』


「そう言えばこれ、7年前にリンクと別れる前に持ってきたんだ…」

「……。キミは、オカリナが吹けるのか?」

「あはは、まっさかー。あたしが吹いたらそれこそナボールさんに引っ叩かれて怒られるほど音痴よ

「そ、そうか…」


今言ったのは事実です。実際7年前、一度吹いてみたんだけどあまりの音痴さにナボールさんに叩かれて一時没収された。
ただオカリナ如きに何故!?


「でもせめて、サリアに教えてもらった歌だけは吹いてみたいな。
何時でも困った時にサリア召喚できるのに…!!」

「そんな事の為にかい?(汗)」

「いや、本音は違うけど。だって怖いし


いくらか便利になるけど、その代わり幾らかの恐怖もセットで付いてきそうだからね(ぶるぶる)
シークは震えるあたしを他所に口元に手を置いて考えていた。


「…。なら、僕が教えようか」

「へ?で、でもシーク…貴方先を急いでるんじゃないの?」

「いや、僕は別にコレと言って目的があるわけじゃないからな。
それに、一曲だけ教えるならすぐだろう。キミは物覚えが速い」

「そりゃ、ありがと」


う、うーん…教えてもらえるならそりゃ助かる事この上ないんだけど…
でも断るのにも何だか失礼な気が…

唸りながら悩む事2分。あたしは答えを出した。


「じゃあ…よろしく、お願いします?」

「ああ」


シークの了解の言葉を得たと同時に、空から見える光が一層強くなった。
二人一緒にその光の許へと視線を移す。


「どうやら、もう夜が明けたみたいだね。
…オカリナを教えるのは今晩にしよう。今日と同じくらいの時間帯に、また此処に来てくれるかい?」

「ええ!ありがとう」


あたしの言葉に頷く。下のほうから声が小さく聞こえた。
ゲルド族の人たちがもう起きてきたんだ。

シークは「それじゃあ」と言って煙玉を使って消えてしまった。
何だろう何処となくなんだけどね、


「インパさんに似てるなー…」

「おーい舞!起きてるのかい!?」


ゲルド族の呼び声が聞こえる。慌てて返事を返して、呼ばれるままにあたしは降りて行った。
サリアから貰ったオカリナをポケットに入れなおして。
















****







リンク…

目覚めよ…選ばれし者……


リンクよ――…。







「…っ、…ん……?」


知らぬ声に目を覚ます。まるで長い眠りから覚めたような気分だった。
でも驚く点は其処じゃない。周囲に広がるは、見たことのない神秘的な場所。


「こ、此処は…?」


きょろきょろと辺りを見回すけど、全く検討がつかない。
光景ばかりに驚いていると、目の前に光が生まれ、その中から威厳のあるおじいさんが現れた。


「貴方は…」

「ワシの名はラウル
その昔、時の神殿を造り…聖地との道を繋ぎし者じゃ。此処は賢者の間

「賢者の間?」


ラウルと言うおじいさんは、一度目を伏せた。


「聖地の要である光の神殿に残された最後の砦…お前が時の神殿の台座から抜き取った退魔の剣、マスターソード。
それが聖地への最後のカギだったのじゃ…。」


言葉を続けながらラウルはこっちを指差した。


「リンクよ…落ち着いて己の姿、見るがよい!」


自分の姿を?
不思議に思いながらも、言われたとおりに体を見た。

あれ?何だか、目線が前より高い?掌も大きくなってるし、触ってみれば耳にピアスもあった。


あ、あれ?もしかして【オレ】……


『リンク!大きくなってる…成長してるヨ!!』

「う、うっそ〜…?」


自分でも信じられないぐらい、オレは大きくなっている。
あれ?何でオレ、一人称が【オレ】になってんだろう…


「(ま、いっか)」←+思考

「マスターソードは、心悪しき者は決して触れぬ事の出来ぬ聖剣。そして時の勇者としての資格ある者が台座から抜き放つ事の出来る剣。
しかし…お前は時の勇者としてまだ幼すぎた…」

『10歳だったものネ。』

「それ故お前の魂は7年の間眠り続けた。そして、今時の勇者としての目覚めの時が訪れたのじゃ。
どうじゃ、己が運命理解したか?」

「は、はい!」


目の前のいるのが賢者の一人で、オレはハイラルを救う時の勇者になって…
その為に今、7年の時をさかのぼった…で、いいんだよな?うん(←馬鹿)


「今一度、思い出すがよい。

ハイラルの平和を願ってお前が開いた【時の扉】からこの禁断の聖地へあろうことか…ゲルド族の盗賊王ガノンドロフが侵入してきたのじゃ!」

『ええ!?でで、デもラウル様のお力があればあんな奴止めれるんジャ…!?』


オレもそう思うんだけど…そう言いたげに視線を移す。
でも、ラウルは眉を寄せて首を縦ではなく、横に振った。


「止めようとはした…だがそれよりも先に、奴は聖地の中心…この光の神殿でトライフォースを手に入れ、その力で魔王となったのじゃ。
奴の魔力は神殿を通して流れ出し、わずか7年でハイラル全土を魔物の国と変えてしもうた。

もはやこの聖地でさえワシの力がおよぶ場所は、ごくわずかな場所。この賢者の間だけにすぎぬ。」

「そ、そんな……」


オレが眠っている間に、ハイラルがそんな危機に陥っていたなんて…
そんな事になったら、オレもナビィも大変になるし、それに舞も……  !!


「そ、そうだ!舞は!?舞はあの後、どうなったか知ってる!!?」

『そう言えバ…舞、ガノンドロフに…』

「案ずる事はない、まだ彼女は生きている。今はある場所で確保されておるじゃろう」

「そ、そうか。良かった…」

「だが、油断してはならぬ!ガノンドロフはあの娘を狙っている、一刻も早く彼女を連れ戻し、お主が守らなければならぬぞ」

「!…はい!」


ハイラル全土を救うより、今は彼女の身が心配だ。
オレは握っていた拳を一度解き、もう一度強く握りなおした。


『で、デモ…それじゃあ手も足も出ないんじゃナイんですカ?』

「いや、まだ希望はある…我らには賢者の力が残っておるのだ!
7人の賢者の力が目覚めし時、賢者の封印は全ての悪しき力をその彼方に閉じ込める。このワシ、ラウルもその賢者の1人…そして、賢者達と共に戦う力…それが時の勇者なのじゃ!!」

「オレが…その時の勇者なんだね?」


ラウルは何も言わずに頷く。


「さればマスターソードに選ばれし勇者よ!我が光をその身に宿し、賢者の力をおのが力とせよ!!」


ラウルが両手を上げるとそれに応えるかのように頭上から『メダル』が降りてきた。
それは少しずつスピードを落とし、いつの間にかオレの方へ移動してきた。

中央に不思議な絵が描かれ、金色に光り輝くメダル。


「これは…」

「我が光の賢者が守る【光のメダル】じゃ。」


ラウルの言葉が聞こえた途端、ぐらりとオレの体が揺れた。
ナビィの声も聞こえるけど、それよりも先に意識が落ちようとした。








―――6人の賢者に会い、ハイラルを救うのじゃ!!










―――――−−-・





「…っ!!」

『ア…時の神殿。戻ったんだネ!』


まるで夢のような一瞬の出来事。
けれど、それを夢じゃないと証明するメダルがオレの腕の中にある。

早く…舞を見つけないと!7年前、ガノンドロフに連れて行かれる彼女の姿がまだ頭の中を駆け走る。


「行こうナビィ、舞を探すんだ!!」

『勿論ヨ!』


マスターソードを大きくなった鞘に納め、神殿の入り口へと向かって体をUターンさせた。
そのまま出て行こうとする
……が、後ろに突然気配が【現れた】


「!?」


直ぐにマスターソードを引き抜き、後ろを振り返る。

そこには、台座の前に仁王立ちしている―― 一人の青年が


「あんたは…」

「待っていたよ、時の勇者」


突然現れたそいつは、静かな神殿にハープの優しい音色と靴音を響かせた。


「僕はシーク、シーカー族の生き残り。僕は、キミが目覚めるのを待っていたんだ。」

「どうしてオレなんかを?」

「…世界が魔に支配されし時、聖地からの声に目覚めし者達五つの神殿にあり

一つは深き森に…

一つは高き山に…

一つは広き湖に…

一つは屍の館に…

一つは砂の女神に…


目覚めし者達、時の勇者を得て、魔を封じ込め…やがて平和の光を取り戻す。
我らシーカー族に残る神殿についての言い伝えだ。」

『シーカー族…』

「伝説の聖剣…マスターソードを持つ者…それが時の勇者。キミが言い伝えを信じるなら五つの神殿を探し、五人の賢者を目覚めさせる他はない…

今、森の神殿で一人の賢者が目覚めの時を待っている。キミがよく知っている者だ。」


森の神殿…?森って言ったら、【コキリの森】か?だとしたら…
……!!


「そ、そうか!」

「気がついたかい?」

ミドなんだな!?あいつが賢者って感じしないけどさぁっ!!」

ずっ(シークの足が滑る音)


エぇぇ!?み、ミドなノ!?

「……あぁ、まあそういう事でいいよ


小さくシークが何か呟いたけど、小さすぎて聞こえなかったけど…
ミドが賢者か〜…そうは見えないけどな!(ぷんぷん)


し、しかし神殿に巣食う魔物の力で聖地からの声を伝える事は不可能だ。
そして今キミには神殿に入ることさえ出来ぬはず。僕の言葉を信じるなら、先ずカカリコ村へ行くがいい…いいねリンク……」

「ああ。でも…今はオレもやることがあるんだ。」


一刻も早く世界を救うため、賢者達を助けなきゃいけないのは分かってる。
けど、彼女の事が心配だし、ラウルだって言ってた。


ガノンドロフが……舞を狙っている。


シークがじっとこっちを見た後、一瞬悲しそうな顔をしたのに気がつかなかった。


「舞、か?」

「!!な、何で知って…っ」


まさか、こいつ…
シークに対しての警戒心が強くなった。けど、それを読み取ったように彼は瞳を伏せて口を開く。


「僕はガノンドロフの手先じゃないさ。只、キミの事と、彼女の居場所を知っているだけ」

『(それだケで十分に危ナイと思うノはナビィだけ?(汗))』

「舞の居場所を知ってるのか!?お、教えてくれ!彼女は何処にいる!?」


シークの目がゆっくりと開かれ、赤い瞳にオレ達が映させる。





「僕がキミに伝えるのは、次の賢者が眠る地へ導く導(しるべ)だけだ」


「っ!!」


ダンッ!!―――ガッッ!

『ア!り、リンク!?』


ナビィの制止の声が聞こえるけど、今はそんな事気にする余裕もない。
オレの体はシークの言葉に反応して、気がつけば彼の胸倉を掴んでいた。それでも動じないシークに苛立ちを覚える。


「教えろ!!舞は何処にいる!!」

「行動に移す前に、そうやって他人の力を頼りにするのかい?」

「う、煩いっ黙れ!!急がないと、早くしないといけないんだ!オレが彼女を…守って……っ」


『リンク!!冷静になってヨ!舞が言ってたジャない、何時でも慎重に冷静にナッテって!!』

「!」

ナビィの言葉にオレの暴走は止まり、やっと我に返った。
そうだ、彼女が言ってたじゃないか。ゾーラの里に行く前に…


「…っ!!」


怒り狂い、まだ頭の整理がついてないオレは、乱暴にシークの胸倉を離した。
オレはナビィの許に戻り、それでもずっと俯いたままで…


「ナビィ…ごめんな…」

『いろんな事一気に言わレて、頭の中グルグルしちゃってルんダヨね?』

「オレ、舞を早く見つけないといけないんだ。
…ガノンドロフに連れ去られた日、舞…凄く怖がっていた」

『ウン…』

「泣いてたんだ!泣きながら助けを求めてたんだ!!
それなのに、守ってやれなくって…だから、オレ…!!」

『リンク…』


『(あれは助けを求めテタというヨり、寧ろ奇声をあげてたンダと思う、なンて言えナイ)』


心の中で尤もらしい考えを呟く妖精N


『べ、別にいいんダヨリンク!
それに、謝るならナビィじゃなくて…彼に、ネ?』


きっと、いや間違いなくナビィが言っている彼はシークの事を言ってるんだろう。
少しだけ落ち着き、それでもまだムカムカする気持ちを抑える。


「悪かった…」

「いや、気にすることない…。

………。彼女を求めるのなら、早く森の神殿へ行くといい。彼女も…きっとそこへ向かうだろう」

「!ほ、ホントか!?」

「多分だが、な」


シークはそう言ってまた目を伏せた。
舞が…彼女がそこへ行くのか。シークの言葉に心の中で、怒りや不安、嬉しさといろんな感情が交じり合い駆け巡る。

オレは一度シークに目を向けて、直ぐに体の向きを入り口へ戻した。


「シーク、ありがとうな!行こうぜナビィ!!」

『え!?あ、りょ、了解!!』


自分の相棒が慌ただしく後ろから着いて来る。シークの気配はまだ消えない。






「……皮肉なものだね」


重苦しい使命を背負った時の勇者が去っていく姿を見つめ、姿が見えなくなると視線を上に上げた。

ステンドガラスから、夕焼け色の橙色が透けて見えた。







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