21.ミステリアン王子到来
どうしても、あのこけた時から不安が胸を過(よ)ぎる。
どうしたんだろう…何か、オレの身の回りで何かが起こっているのか?
シークに言われた力になるもの…死んだダンペイさんの霊と追いかけごっこみたいなのをやって手に入れた『フックショット』
これがあれば、遠くにある物に引っ掛けて移動する事が出来るらしい。
ナビィが言うには、コキリの森の様子が可笑しいと言ってる。急いでそこに向かわないといけないとな!
でも、舞は一体何処にいるんだ?
まさか、彼女の身に大変な事が起きてるんじゃないだろうか。
彼女の居場所が分からないだけでこんなに自分が慌ただしくなるんて思わなかった。
ミステリアン王子到来
こんにちは、いやこんばんは?辺りが夜に包まれているにも関わらず、目も精神もパッチリ覚醒している女子高生です。
ところで、あたしは今何処にいるの?さっきまで森に行ってたはずなのに…
今までの記憶を穿り返そうとしたけど、頭に響く鈍痛が邪魔をした。
「あ、頭が…」
痛む所を触れた手を見ても血はついていない。どうやらそこまで外傷は酷くないようだ。
けれど何より気になるのは、あたしの目の前に聳える蔓状の柱。それも数本
この光景は見覚えがある。それもつい最近に。
「またもや監獄行きの身となったのか自分」
緑が混じっているところを見ると、きっと草がモチーフにされた柱ね。
けどそんな事どうでもいい、何であたしはまたもや牢屋に入れられ、しかも目下に数匹魔物がいるわけ?
「此処は…」
【オ?オイ!人間ガ目ヲ覚マシタゾ!!】
多数いる魔物の内の一匹があたしに気がつき他の魔物達に知らせた。
周りにいる魔物達が集まっていく。二足で立つゴブリンが5体、植物系が5匹、狼の魔物が2匹、後は小さくも大きくもない骸骨が数十体…
何時の間にこんなに集まったのか、檻で吊るされているあたしの下にぞろぞろと魔物達が集まってくる。
「ちょ、ちょっとちょっと…」
【あの方のノ許ニ早ク持ッテイカナイトネ〜】
【ナア、最近人間食ッテナイカラサー、チョット味見シテモイイカ?】
【ナラオレニハ右手食ワセロヨ!】
【ジャアオレハ足ダ】
何勝手に人を食うプランを立ててるのよ!
下のほうでがやがやしている魔物達に寒気がしながら、あたしはじっと檻の中で待った。
【馬鹿言ウナヨ、コレハガノンドロフ様ヘノ謙譲物ナンダカラナ。勝手ニ食ッタラ殺サレルゾ!】
【ア、ソレヤダナ。オレマダ死ニタクネエモン】
突然人を食べようとするのを止めて、渋々と言った感じで魔物達が持ち場へと戻っていった。
今あたしの聞き間違いでなければ、魔物達の台詞の中で…
ガノンドロフという単語が
…まさかあたし…あの変態の所へ連れて行かれようとしてるの?
「それだけは嫌ぁぁぁぁぁ!!(ガッシャガッシャ!)」
【コ、コラ人間!何ガ嫌ナノカ知ラネエケド、大人シクシテロ!!】
またもや柱が取れ掛けに。…やっぱりあいつに対しての熱弁でだとこうなるんだ。
それにしてもどうしよう。このまま大人しくしてても、只あいつのところへ連れて行かれるだけ(らしい)…
となったら今出てくる答えは1つ、ココから逃げなくちゃ。
「(と言っても…魔物達が見張ってるのよね)」
それに此処は魔物達から言えば頭上であり、地上から数十メートルある。
万が一魔物達の目を盗んだとしても、ココから飛び降りるのは至難の業だろう…
為す術がないとはこの事ね(汗)
「ねえちょっと、ココって何処なの?」
すぐ下にいるゴブリンに聞いてみる。
【ン?此処カ?此処ハハイラル平原ノ一角ダ。
モウスグデガノン城ヘト戻ルンダド】
何だか訛り口調の魔物があっさり教えてくれたけど、此処はどうやらハイラル平原の片隅。
ガノン城っていうのが気になるけど、今はそんな事考えてる場合じゃない。
早く此処から抜け出して、リンクだって探さなくちゃいけないし、
本来の目的、森で助けを呼んでいるサリアの所へ行かなくちゃいけない。
「(あたしは剣だって持ってる…
此処から上手く飛び降りれば、木に紛れて骨折は免れるかもしれない。)」
じっとしていても、それは奴らにとっての都合のいい時間をとらせるだけ。なら自分で動かないと。
自分の心の中で解決案を出して、あたしは一度握り拳を作る。
そうと決まれば、先ずはこの柱を切らないと…
マントで上手く隠れていたのか、無事に腰元に取り付いてあるコキリの剣を手に持った。
蔓状で出来ている柱だから普通の鉄よりも切り易い。前(下)で見張っている奴に気づかれないよう、なるべく音を立てないようにして蔓に刃を入れる。
ゆっくりと何度も繰り返していると、ぷつっと小さな音が聞こえた。
それを見やれば、蔓状の柱が切れていた。一本目の柱が切れた!心の中でよしっと呟き、次の二本目の蔓に手を掛ける。
【バウバウバウッ!!】
「!?」
二本目に取り掛かろうとしたら、突然目の前に白い狼と黒い狼の二匹が牙を剥きだして来た。
「ヒッ…!」
搾り出すように出した声は掠れ、あたしの体は後ろに倒れた。
後ろにも…魔物がいたんだ。
【人間!勝手ニ逃ゲ出ソウトシテンジャネエド!!】
下にいたゴブリンが渇を浴びせ、その短い手を伸ばした。
その途端、さっきあたしが切ったところがもう一度再生して元通りになった。
しかも今度は、蔓に植物の魔物の首がついている。
よく見かける、デクババだ。こいつは所謂…見張り。
【大人シクシテルド】
ゴブリンは怒った風にまた見張りに戻る。後ろから迫ってきていた狼の魔物達も唸りながら持ち場に戻った。
きっと狼だから、小さな音だろうが聞こえたんだわ。迂闊だった…ちゃんと見ておくべきだった。
「というか…何であたし、剣を持っているのに使わなかったの?」
そう、片手には蔓を切っていた時に使っていたコキリの剣がある。
何故使わなかったのか。そう思いながらあたしは剣を持っている手に視線を下ろした。
剣を持っている右手はかたかたと震えていた。
違う…使わなかったんじゃない。使えなかったんだわ。使いたくとも、目の前に迫った魔物に自然と体が恐怖に震えたんだ。
剣を使えなかったのはこれで二度目…一度目はそう、7年前のガノンドロフに剣を向けた時。
結局何にも出来なくて、あいつに連れて行かれた。
…その後の修羅場は今でも覚えているとも、ええそりゃもう鮮明に(ガタガタ)
――舞!!
「リンク…」
あの時、彼はあたしと大して歳が変わらないというのに剣を振るっていた。
あんな勇気があたしには、ない。
元々はあたしの方が年上だったというのに、あたしは彼に助けられてばかりだったのね。
腐った面では負けないけど、うん…そんなの役に立たないわね(汗)
「こんなんじゃ、サリアを助けられない」
剣をコトリ…と下に置いた。
リンクのあの勇敢な姿を思い出して、羨ましいと思った反面、彼を憎いと思ってしまった。
ぐちゃぐちゃになっていく頭を両手で抱える。
「ナボールさん、あたし…どうしたらいいの?」
問いかけても返ってくる返事はないけれど
ナボールさんみたいに、無茶してでも抜け出したらいいのか。
リンクみたいに、勇気を出して抜け出せばいいのか?
そう考えたけど、どれもあたしには無謀だと分かった。
「これじゃあ何も変わってないじゃない…」
自分の無力さに気づいた時、頬を冷たいものが伝った。
それがスカートに落ちて染みを作る。伝っているものが涙と分かるのに、あまり時間はかからなかった。
「…リンク……!」
拭おうとしないとなると、涙はそれをチャンスとばかりに止めどなく流れた。剣を捨てた手で、涙を拭うのではなく顔を覆った。
「リンク!リンク…お願いっ、助けて…!!」
結局は人に助けてもらわないといけない。けど、今のあたしには人に擦りつく他に手がないんだ。
サリアを助ける事だって満足に出来ないあたしだけど、それでも何かしなくちゃいけない。止め処なく流れる涙は止むことはなかった。
【オ、オイ!誰ダオメエ!!】
ふと、下にいたゴブリンが急に慌てだした。
あたしは涙で濡れた顔を手で覆ったまま、指の隙間から様子を伺った。
何が起きたのかは知らないけど、入り口辺りで見張っていた数名の魔物が倒されていた。
原因はきっと、ゴブリンが騒いでる目先の人物。
夜の所為でもあり、暗いことから相手の顔は見えない。
闇を反射するような金色の髪が俊敏な速さで動いた。
ゴブリンは慌てて応援を呼んだけど、すぐにその人物に倒される。
まだ息をしている所から見て、相手はみねうちで気絶させている事が分かった。
後方にいた白い狼達も出てきた。ゴブリン達よりも些か早いけど、目の前の相手に比べればそれは比べ物にならないぐらい遅い。
あっという間に魔物達は、突然やってきた人物に倒されてしまった。
「凄い…」
あんなにいた魔物達が一瞬と言っても過言ではない速さで全滅。
ポケーッとあたしは目の前の出来事に呆けるしか出来なかった。
魔物達を倒した人物は、木を跳び替えながらあたしのすぐ前まで来た。
月の光が上手く射しかかり、ようやくその人物の顔が見えた。それはあたしがよく見知った顔…
「舞!」
「シーク…!」
そう、シーカー族の生き残り…シーク。
手を伸ばそうとすると、蔓状の柱に見張り役にとりついたデクババが、カカカカッ!と鋭い牙を鳴らす。
「見張りか…舞、こっちへ来てくれ」
シークはそれを見て、あたしを横にずらすと何処からか出した針のようなものを投げた。
ドスッ!
シークの放った針が容赦なくデクババに襲い掛かり、耳を劈くような悲鳴をあげてデクババが消えた。
支えるものがいなくなった所為か、蔓状の檻が力を緩めて、地面に落ちそうになった。
落ちる前にシークがあたしの体を横向きに抱え(お姫様抱っこ!?)、その場から跳躍して地に降りた。
シークが地面についたと同時に、さっきまで捉えられていた檻が大きな音を立てて崩れ落ちた。
「危なかったね…大丈夫か?」
気遣ってか、ゆっくりとあたしの体を地面に立たせる。
うん、今の美味しい体制に心の底から萌えれなかったのがすんごく残念…!!
でもあたしは、今までの緊張の糸が切れて、その場に力なく座り込んだ。
「舞?」
ワンテンポ遅れて目線を合わせるためにしゃがみこんだ。
あたしはどうしても喋る気にもなれず、シークには悪いけど呆然としたままだった。
「…怖かったのか?」
シークはあたしの心情を読み取ったのか、あたしの正面で肩を優しく叩いた。
まるであたしの体はシークのいう事に反応するかのように、手がまたカタカタと震えだした。
「すまない、早く来たつもりだったが…
君には十分怖い思いをさせてしまったようだな」
だんだんと、彼の言葉にあたしの意識が戻ってこようとしていた。
「何も出来なかった…逃げたくても、体が動かなかった…」
「…人は牙を剥く者に恐怖を覚えてしまう。君もまた、その一例と同じように恐怖を感じたんだ」
やっと動かせるようになった体。首だけを動かして、少し目線上にあるシークの顔を覗く。
「その恐怖に打ち勝とうとした君の勇気は十分に偉大だったよ。」
シークの言葉に折角止まっていた涙がまた溢れ出した。
拭っても拭っても落ちてくるそれは、地面に落ちて黒い点を作っていく。
シークはそれを見かねて、壊れ物を取り扱うかのようにあたしの背中に手を回してくれた。
その行為は、母が子どもを慰められるような暖かさで…
涙腺が限りなく緩み、体の重力をシークに傾けてあたしは腕で顔を覆う。
月の光を浴びながら、あたし達を強く冷たい風が叩きつける。
―――――−−−--・
「その…ホントにありがとうねシーク。お陰で助かったわ」
スッキリ泣き腫らし、あたしは鼻を啜りながら苦笑を漏らす。
赤い眼を見られるのが渋ったけど、シークは気にしないようにしてくれているようだ。
「いや、気にしなくていい。怪我がなくてよかったな」
この人は、自分があんなに修羅場を駆け抜けた後だというのに心配して…
シークはきっといい母さんに育てられたのね(感動)
「…大丈夫か?また涙が出ているぞ」
「シークはいいご家庭に育ったのねー(ぐずっ)」
「は?」
何の事か分からず、頭上に?マークを浮かべて首を傾げるシーク。
そんな貴方は今日も光っています
「と、そうだ…サリアの所へ行かなくちゃ!」
大分時間も経過し、体の自由は徐々に回復しつつあった。
それでもまだ心配な部分はあって、立ち上がったあたしは目眩がして体がよろりと揺れた。
扱ける前にシークが体を支えてくれる。
「あれ?」
「此処に連れて来られる際、きっと少量の睡眠薬を盛られたんだろう。
まだ痺れが残っている筈だよ、無理は駄目だ」
まるでその場にいたかのような口ぶりですらすらと述べる。まあそれならわざわざ今助けに来るわけないから、シークを疑っているわけではない。
「それでも危険なのよ、サリアが助けを呼んでたの」
「会ったのかい?」
「そうじゃないけど…シークに教えてもらった『サリアの歌』で話しが出来たの。
酷く焦っていたわ、きっと何かあったのよ」
あえてその後の事は言わなかった。
せめて、せめてシークの中だけでもサリア腹黒説は無かった事にしておいてほしい…!!(切実)
「だけど此処からコキリの森まで大分距離があるよ」
「エポナがいるわ!」
「…もしかして、森の前にいた馬の事か?近くにいなかったらどうする。それに、殺されている可能性だってあるんだよ」
「ナボールさんをてこずらせる位の凶暴馬よ、そう簡単には殺されないわ。
それに、もし近くにいなかったら走っていく」
あたしはシークが入ってきた、森の入り口であろう場所を見据える。
移動手段なんていくらでもある。それが例え、危なくて時間のかかる道だとしても。
「何だかんだ言って、サリアはあたしの恩人だもの。それに…
あたしの【親友】よ。勝手にあたしが思ってるだけだけど、あたしの大事な友達」
人を疑うあっちの世界の人と違い、サリアはあたしと初めて会ったにも関わらず親切にしてくれた。
それはリンクも一緒な訳で、だからあたしは彼らの為に頑張っている。
「………そうか、分かった」
真っ直ぐ向いているあたしには見えなかったシークがぽつりと呟く。
****
パカラッパカラッ!!
「地図によるとここから森へは…真っ直ぐ北!」
結局、あの小さな森から出たすぐの所にエポナはいた。
今はもう午前7時。森を抜け出してから3時間近く経っているけど、不思議とあたしは眠気を覚えなかった。
そして、馬を操るだけで精一杯のあたしが何故地図を見れるのかというと…
「シーク!大丈夫?疲れてない!?」
「平気だ。スピードをあげるから、捕まってて」
あたしを魔物達の軍団から救ってくれた、シークに手を貸してもらっているから。
彼はあの後すぐに消えるかと思いきや、あたしを一人にするとまた狙われる可能性があると言って、こうやって着いてきてくれている訳。
それから、こうやって移動している間に何だか…賢者様?という存在の事も聞いた。封印されたその人達を助けるためにリンクが今動いているという事も。
何だかなぁ、リンク…その説明を聞いて7年間貴方達を待ち続けた自分が無性に哀れに思うんだけど。
「でもシークが馬に乗れるなんて、別に以外じゃないけど吃驚したわ!
普段乗ってるとこ見たことないんだもの」
「小さい頃に何度か教えてもらった事があるんだよ。
普段はあまり乗らないが、感覚は衰えてないようだね」
エポナもシークを嫌がらず、支持に従って全速力で走っている。
それにしても…美形が馬を操ると絵になるというか。朝が早い為、水気を含んだシークの金色の髪が風に靡くたびに光で反射する。
この人はあたしを鼻血出血多量で殺したいようね(たらり)
「(悪寒…?)言い合っているうちに着いたようだよ」
え?早くない?
不思議に思っても、その考えをかき消すように目の前には森の入り口が。
今回も例の如く、エポナが前に進むのを嫌がってしまう。
「エポナ、前にも嫌がったのよ。どうして?」
「多分森から出ている魔力を感じ取っているんだろう。
この森に入ると、何らかの特殊な魔法により人ならスタルキッド、それ以外の生き物達も魔物へと変えられてしまうからね」
「魔力を見極めるとは、優れた馬だ」そう言ってシークはエポナから降りた。
あたしもへ〜、と言いながらエポナから降りて入り口を見据える。
相変わらず不思議な空気が漂っている。只、それが以前と同じように清らかなものではないけれど…
「さあ、早いところサリアを助けに行きましょう!」
意気込みながら、軽く腕を回しながら足を森に踏み入れる。
その後ろからシークも着いてくる所を見ると、どうやらもう少し付き添ってくれるようね。
その気遣いに嬉しく思い、あたしの口元は自然に弧を描いた。
けれど、その笑みもすぐに崩される事になる。
「な、何これ…!?」
森と平原を繋ぐ橋を越え、一応故郷のコキリの森に足を踏み入れた。
けれど、目の前に広がった光景は、以前ののどかな森と反発していた。
道の所々に生えている巨大なデクババや、鋭い目のデクナッツ。
一番気になるのは、コキリ族が誰一人見当たらない事。もしかして…魔物達に…?
イヤな予感が頭を過ぎる。
「舞!」
「!」
後ろにいたシークがあたしの肩を叩く。振り返ると彼は何処か一点を見つめていた。
その視線を追いかけると、そこには魔物に襲われそうになっているコキリ族の男の子が見えた。
「あ、危ない!」
一刻も早く駆けつけようとすると、シークがあたしを助けたときに使った細長い針のようなものを取り出した。
それを3本取り出し、真っ直ぐに巨大デクババにつきさした。
悲鳴をあげて動かなくなったデクババを見て、あたし達は急いで駆け寄る。
「大丈夫!?」
「あ、あぁ…」
男の子は尻餅をついて、何があったのか分からないように体を震わせた。
この子は一度見たことがある。
確か、いつもミド少年と一緒にいた2人組みの1人…
「貴方、ミド少年の部下?」
「!!な、何でミド親分のこと知ってんだ!?」
男の子はからだの震えを押さえ、体ごとこっちに向けてきた。
それを見てあたしは核心した。
「あたし、舞よ。覚えてない?ほら、7年前にリンクと一緒に森を旅立ったの」
「え?…あ!お、お前…あの舞なのか!?
そそ、そっか…舞は、外から来た人間だから大人になったのか」
男の子はあたしを思い出し、それを認識してくれたのかほっと安堵の溜息をついた。
それと同時に勢いよくばっと体を起こした。
「そ、そうだ!舞、助けてくれ!!ミド親分が危ないんだ!!」
「ミド少年が?何かあったの?」
首を傾げるあたし。後ろでは、腕を組んだままシークも黙って話しを聞いていた。
「サリアが森の聖域に行って、ミド親分が様子を見に行ったんだ。
でも、それから全然帰ってこなくて…だからオイラ、見に行こうとしたんだ」
「でも今魔物に襲われかけたのね。
どうしてこんなに魔物が多くなっているの?デクババだって、あんなに大きくないはずよ」
「デクの樹サマが死んでから、森を守る力が弱まったんだ。
それから黒い雲がやってきて、霧が多くなって、晴れたかと思うと魔物達がこんなに…」
「うん、もういいよ、ありがとうね。」
だんだん表情が暗くなってきたから話しを打ち止めた。
7年という月日が経つ内に、ガノンドロフの手がハイラル中に広まっていたんだ。
「分かった、元々あたしもサリアを助けに来たの。
だからミドも見てくるわ、一緒に助けてくる」
「ほ、本当か!?助かるよ…頼む!ミド親分を助けてくれ!!」
「うん!」
「………ところでさ舞、気になってたんだけど。リンクは?」
「え?」
突然止められた制止の言葉に体が止まる。
あ〜…あたしも彼の行方知らないのよね。
「んー、旅の途中で逸れちゃったの。だからあたしも何処にいるのか分からないわ…」
「そうなんだ〜、じゃあその後ろの人は?」
男の子が指差すのはあたしの背後。ああ、シークの事ね。
「もしかしてさ、リンクがいない間に作ったコレ?(親指ピッ)」
そう言って男の子が立てたのは、右手の親指。
「なっ!」(シーク)
「何言ってるの!違うに決まってるでしょ?」
「そうだよ」
「コレよ(小指ピッ)」
「Σ舞!?」
あたしが立てたのは右手の小指。大声を出したシークなんて初めて見たわ。
男の子はつまらなそうにな〜んだ、と言って頭の後ろで手を組んだ。
「(僕は彼女の方なのか?)
そ、それより。こんなにのんびりしてていいのかい?」
「ってああ、そうだった!(汗)」
「みみ、ミド親分〜〜〜!!」
子分として忘れちゃ駄目だろう(by シーク)
兎にも角にも男の子を家に戻してから、あたしはシークと共に迷いの森へ入っていった。
「此処が…迷いの森か。」
「懐かしいなー、7年ぶりになるのね」
あの頃と変わったところは少し暗くなったところだけど、此処は聖域に守られてある範囲だからかあまり森より影響が少ない。
「名称迷いの森。その名前通り人は道に迷い困惑し、その闇につけ込んで森の波動が魔物の姿に変えられる。
…で、君はこの森を迷わずに行く方法を知っているのかい?」
ハッ
「しし、しまったぁぁ!以前はサリアに案内してもらったんだった、攻略知らない!」
大失態に今頃気づき、あたしはその場で慌てふためいた。
あ、シークそんな溜息つかないでよ。
「大丈夫だよ、聖域から漏れている闇の魔力を感じる。
その方向へ進んでいけば辿り着くだろう」
「ほ、ホント?良かったー。じゃあ大丈夫ね、最初はどっちか分かる?」
「こっちだ」
シークが指すのは右側。ゆっくりと歩いていく彼についていく。
ゆっくりと歩く理由を聞くと、あたしの速度に合わせてくれていると言う。
そんな些細な行動がストライク…!
そのままシークのエスコート(違う?)を頼りに迷いの森をどんどん進む。彼がいてくれてほんとに助かったわ(汗)
「次の辺りで半分だろう」
「そうなの!?やった、さっさとサリアを助けに行きましょう!!」
嬉しさが心の中を支配し、あたしはだっと駆け出した。
次の場所は大きく拓けてあり、直ぐ前には小さな湖もある。
「おい!何だよお前!!」
と、湖に視線を寄越していると、後ろの方から声が聞こえた。
なんとなく聞き覚えのある声。
「シーク?」
まさかと思いながらも、今思い当たる人物の名前を呟く。
後ろに振り返ると、周りの緑と同化してしまいそうな色の服を着ている少年が…
「誰だか知らねえけど…此処は絶対通さねえぞ!!」
その少年は、太く作られたデクの棒を握り締めていた。
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