23.萌へよただひま
こんにちは、RPGの基本中の基本、囚われの身となった森のアイドルサリアよ!
あら、何か言った?何か言う勇気あるなら前に出てきてもらうけど?(鉄子構え)
ったく、迂闊だったわ…ついつい舞からやってきた特殊メールを受け取ってハッピッピ☆な気分だったのに、後ろからモンスターにやられちゃったわ!
おどれらサリアと舞の遠距離恋愛がいよいよハッピーエンドの最終章を迎えようとしてる時に!!邪魔すんじゃねえよって思ってもう森が半壊しそうな勢いで暴れまくってやったわ。
それでもやっぱり数的にあっちの方が上で、呆気なくサリアは捕まっちゃった。
しかもサリアから無理やり『アレ』を奪い取ると、サリアを絵の中に封印しちゃったの。どんなに抵抗しても出られない…!!
くっ…!もっとサリアに力があれば!!(これ以上だと死人が出る)
舞に助けを求めたけど、本当は来てもらいたくなかった。矛盾してるけど、それは此処に来ると危険だから…
それでも助けに来てくれるとしたらサリア達、運命共同体ってやつね!ま、元からだけどv
嗚呼舞…今貴方は、一体何処で何をしているの?
もし浮気なんかしてたらサリア、その輩をぬっ殺しちゃうよ!!
萌へよただひま
前回に引き続き、幽霊だけではなく他の何かに寒気を感じている女子高生です(ぞぞっ)
あたしの目の前では楽しそうに幽霊――エイミーが揺れている。
あたしの体は前回同様金縛りにあったままで動かず、時間だけが流れた。
「(あ、あと少し…あと少し押せたら!)」
【うふふ…残り40秒ですよ】
カウントダウンは一刻と過ぎていく。彼女の体がさっきより禍々しく光っているのは、あたしの体に憑依する準備を整えているからだろうか。
どうしよう…このままだと、あたしの体はエイミーに支配される!いや、それよりもあたしが死んでしまう!
まだサリアも助けてないのに、リンク達にも会ってないのに…!!
「うっ…」
頭では分かっていても体は動いてくれない。残り時間が残り、少ない…
「(こ、此処までなの…?)」
どうする事も出来ない現実に焦りが生じ、あたしは思わずぎゅっと目を瞑った。
その時、カラカラカラ…と隣で音が聞こえた。
そしてそれに続くように、誰かの呼び声が聞こえてきた。
――舞…
「(!だ、誰?)」
ふと唯一動く首だけを動かすと、あたしの足元に落ちているオカリナが見えた。
さっきの乾いた音はこれだったんだ。
――舞、諦めないで!まだ…まだ勝つ見込みはあるよ!
「(この声…さ、サリア?)」
――そうだよ。何にも出来ないから、こうやって話すことしか出来ないけど…
頭に響いてきたのは、あたしが此処までやってきた理由の根源のサリア。
【あと30秒】というエイミーの声が聞こえる。
――大丈夫、舞なら出来るよ。それに、まだ生きてなくちゃ駄目でしょ?
「(サリア。でも、あたし…)」
――弱気にならないで。サリア、舞に会いたいよ。7年経って成長した舞の姿を見たいの。
【あと25秒】というエイミーの声が聞こえる。
「(でも…体が動いてくれないの!)」
――そんなの吹き飛ばしちゃえばいい!思い出して舞、貴方はまだ萌えを極めてはいないんでしょ!?
何故ここで萌えというのか
「(た、確かにそうだけど…)」
――こういう時、思い出して。まだ生きてリンクの生足を拝みたいんじゃない!?
はい、その通りです。ついでに言うと貴方の美脚だって拝みたい…!!
【あと20秒】というエイミーの声が聞こえる。
――こういう時にこそ舞の『フジョシ』魂を開花させるんだよ!!
何故彼女が『腐女子』という言葉を知ってるのかはあえて聞かないでおこう。
――ね!頑張って舞、これを切り抜けた後にはきっともっと一杯美形いるよ!
「(マジでか!?)」
――大マジよ!それに今ここで死んじゃったりしたら、精神がエイミーで弱くなったのをいい事に、脂ギッシュな筋肉に、ちょっと生え際が気になっているお年頃。世界を支配するとかほざいてるおやっさんに食べられちゃうかも!!
「(Σ嫌だぁぁぁああぁあぁぁ!!!(滝汗))」
いくらあたしが死んでしまった後と言えど、己の体をあの変態魔王に汚されるなんて思うとぞっとする。
【あと10秒】というエイミーの声が聞こえる。
――それにね、生きて戻ったらサリア、舞のお願い何でも聞けるよ!
【9、8、7…】とエイミーが最後のカウントダウンを開始した。
――そう言えばミドリンの18禁本まだ見せてなかったね!あれも全部見せてあげる
「(そ、それは見たい!!)」
【6、5、4…】
――それに舞が望むとならば、サリア、猫耳やミニスカ…更にはメイド服だって着こなしちゃうわ!!
「Σんなああぁぁぁらあぁあああ!!!?」
ガキイィィンッ!!
【Σなぁっ!!】
全身全霊の力を込めて、あたしは最後のブロックをくっ付けて完成させた!!
ハー、ハーと息をしながら、力の入らなくなった体は尻餅をついた。
「や…った…!!」
【そ、そんな!あたしの力は森の魔力も加わってるから、人間なんかには絶対解けっこないのに!!】
どうして!!とよほど混乱しているのかエイミーは部屋中をぐるぐると回っていた。
ふ、腐腐腐…腐った精神がこんな所で役に立つとは!!自分の腐った中身に感謝と共に、ほんの少し情けなさを覚えた。
「さあエイミー!あたしの勝ちよ!」
【うっ…】
エイミーに向かって人差し指をビシッと向ける。エイミーは悔しそうに顔を歪ますと、ぽろぽろと涙を流しながらスゥー…っと消えていった。
彼女が消えた後、その場に残ったのは緑色の炎だけ。
もしかして…これがあの蜀台の炎?
手を伸ばそうとすると、元エイミーだった炎は鉄格子で塞がれたもう1つの扉に姿を消していった。
きっと、元の場所に戻っていったんだわ…そう考えると、あたしはまだ落ち着かない呼吸を一度深呼吸して落ち着かせる。
そしてぐっと力強く両手で握りこぶしをつくるとそれを上に上げた。
「っだーー!!腐女子の勝ち――――!!」
なんつー掛け声、とも思ったけど…
けど、初めてだ。あたしが人の助けを貰わないで、初めて魔物を倒したんだわ!そりゃあ肉弾戦じゃないからかもしれないけど…
浮かれ騒いでいたあたしは手にコツンッと当たった事によりオカリナの存在に気づいた。
「サリア…ありがとう」
オカリナに向かって感謝の言葉を伝えた。
少しだけ、耳に彼女の返事が聞こえたような気がした。
「さあ、後はきっと1つね!あ、とその前に…炎が蜀第に戻ってるか確認しておかないと」
きっとあの扉に炎が向かっていったってことは、あの扉は最初の部屋に近いのかもしれない。
オカリナをもう一度ポケットに入れなおして、炎が透き通っていった扉に向かって走った。
***
ガチャッ―――
扉が開いた先は、一番初めにやってきた部屋そのものだった。
ただ場所が少し高い所に位置していて、そこからだと手摺りを越えた下先に蜀台が見える。
「炎!…よ、良かったー戻ってる…って、あれ?」
エイミーの緑色の炎が戻っていた事に安堵していると、蜀台に囲まれるような形で中央に何かが出ているのに気づいた。
何だろうと思い、身近で見るためにそこからよじ降りた。
「何これ…」
それは長方形の形で出来た、真ん中に人一人乗れるぐらいの物。これはまるでエレベーターだ。
そればかり見ていたものだから、もう1つ違ったものに気がつかなかった。
「あ!む、紫の炎!」
そう、3つの幽霊を倒し、頂点に君臨する霊を倒さないと現れないと記されていた紫色の炎が蜀第に灯っていた。
これは…あたし以外に此処に来ている誰かが倒したんだろうか?
「じゃあ、この箱みたいなのって…まさか『隠された路の導』?」
何の気なしに、まさかと思い中央に立ってみる。
と、一瞬足元が揺れ、それはゆっくりと下に下降していった。
暫く経つとそれは止まり、あたしは神殿の地下らしいところに降りてきた。
「此処が…」
エレベーターらしきものから降りてゆっくりと歩く。
周りを取り囲む岩に、数箇所だけ出張った台。これ…一体何?
辺りを見渡していると、ズゥゥン!と重く大きい音が聞こえた。聞こえたのは、真っ直ぐ先に見える大きな扉から…
「この扉、誰かが通った形跡がある」
扉の前に鎖で繋がれた大きな錠が無造作に放り投げ捨てられている。
この造りからして、きっとこの扉の先に森を支配する頭がいるんだわ。そう分かった途端、喧しいくらいに鼓動を始める心臓を押さえる。
ガチャッ、と音を立てて開くと、さっきの大きい騒音がより一層大きく聞こえた。
すぐ近くに階段が見える。どうやら、敵はこの階段を上った先にいるみたいだ。
そう分かると、あたしは早足で段差の少ない階段を駆け上った。
腰に取り付けてあるコキリの剣に手を添えて、あたしは最後の一段を蹴った。
――ギィィイイン!!
あたしの視界に入ったのは、黒い影と、金色の影がお互いに刃物をぶつけ合っている所だった。
圧倒されるその気迫に思わず足が後ろに後退する。
しかし、その金色の影…後姿に、何だか懐かしさを覚え、足を止める。
金色の髪、体を包む緑の服。そして頭上近くを飛んでいる、淡い色で輝いている妖精。
金色の影は敵から身を離し素早く跳躍すると、あたしと丁度向かい合う向こう側の位置に立った。
途端、呼吸を荒げている金色の影があたしに気づき、視線をこっちに向けると間もなく驚いたように蒼色の目を見開いた。
「なっ…!舞!!?」
発せられる筈がない、相手の口から出たあたしの名前。
それで完全に認識した、彼が誰なのかを…
「え―――リンク…?」
まさかと思い、呼んだ名前に反応したのは彼でなく彼の妖精だった。
信じられない…と思って体を硬直させていると、リンクと対峙していた黒い影があたしに近寄ってきた。
その姿は…あの変態魔王の姿。
「なっ…な―――――!?んであんたが此処に!!?」
体に染み付いた条件反射のせいで、あたしはすぐさま体をズザッとそいつから遠ざけた。
目の前にいる変態魔王(仮)は喉の奥でくつくつと笑った。
「な、何?」
「ソウカ…コノ娘ガ……ナラバソノ身、一度闇ニ染メネバナルマイ」
「?」
や、闇に染める?何を言ってるのこいつ…って言うか何で片言?(汗)
あたしが首を傾げていると、丁度前方にいるナビィであろう妖精が悲鳴をあげた。
『キャアッ!舞危なイ!!』
「え?危ないって…」
何が?と聞こうとした時、突然後ろからニュッと黒い腕が二本伸びた。
それはあたしの口を押さえ、後ろへ引きずり込んでいく。
「むごーーーー!!?
(何ーーーー!!?)」
目線だけ動かすと、直ぐ後ろには絵が見えた。闇の夜に浮かぶ、遠近法を使って描かれた一本の道。
―――ドプンッ
まるで水に入ったような感触。いや、それよりも何故あたしを掴んでいるこいつ…
あの変態魔王(仮)と瓜二つなの!?
「くくく…闇ニ染メた後、オ前モアノ娘ト同ジヨウニ此処デ封印シテヤロウ」
あの娘―――?
「!!」
闇に染めるってそういう事!?せ、折角リンク達に会ったのに!!
意味を理解したあたしは必死にもがき抵抗する。体中を漆黒の闇に包まれながら。
―――
「舞!!」
オレの目の前で壁画の中に連れて行かれたのは、7年前に守りきれなかった舞。
最初は一瞬誰か分からなかったけど、あの優しい雰囲気は彼女しか頭に浮かんでこなかった。
急いで助けに行こうとしたけど、さっきの奴がまた邪魔をしてくる。
オレの故郷を変えた悪の根源――――異次元悪霊ファントムガノンが!!
「くそっ…!そこを退け!!」
「ソレハ出来ナイ。アノ娘ハガノンドロフ様ノ許ヘ戻サナケレバイケナイカラナ」
『何が戻すヨ!舞はナビィ達の仲間よ!!』
反抗したナビィの言葉に、ファントムガノンはフンッと鼻で嘲笑った。
「ホウ…聞イタトコロニヨルト、7年前…ガノンドロフ様ニ呆気ナクヤラレタソウダナ。
ソンナ弱者ニアノ娘ヲ手中ニ収メル価値ナドナイ」
「!!だ、黙れ!!」
怒り任せにマスターソードを振るう。けど、奴は簡単にそれをかわした。
あいつの言葉がオレの中をかき乱す。
「くそっ!!」
『リンク!相手の挑発に乗っちゃ駄目ダヨ!』
「ナビィ…分かってるけど、でも!!」
『舞を助けたいんだネ、ナビィも同じダヨ。デモ…あいつが絵から出てこないト、手を出せないノよ!』
確かに…オレ達は行きたくても絵の中には入れない。
奥歯を噛み締める事しか、今出来ない。そんな自分が腹立たしくて仕方なかった。
――――
「ん、ぐ…!」
どうあがいても、変態魔王(仮)はちっとも力を緩めようとしない。
それどころか、周りを取り巻く闇が体を侵食してあたしの力がなくなっていく。
あたしの力が弱まるのに気づくと、変態魔王(仮)はまた喉の奥でくつくつと笑った。
「モウスグダ…モウスグデ私ガ表ニ君臨スル!!」
言葉の意味は分からないけど、きっと昇進するという事だろう。
でも、だとしたらこいつは…ガノンドロフじゃない?
脳で考える事すら出来なくなってきたあたしは、視界がぼやけているのに気づいた。
まだ…まだなのに……やり遂げていない、あたしの目的――――
「(サリア…)」
抵抗力を無くし、力無く垂れた手がポケットに入ってあるオカリナに一瞬触れた。
意識が離れようとした時、突然空間の一部が歪んだ。それに驚いたのは、驚く力もないあたしではなく、後ろにいる変態魔王(仮)だった。
「ナッ…!コレハ!?」
空間が歪んだ部分から小さな光が零れた。それはどんどん大きくなり、最終的には人ぐらいの大きさになった。
光に弱いのか、変態魔王(仮)は思わずあたしを掴んでいた手を離した。
それでもあたしは立つ気力も逃げる気力もない。地に体が落ちる前に、何かがあたしの体を支えた。
それは、たった今目の前に出来た光。
―――舞。
頭に直接響くような声が聞こえた。辛うじて開く目をめ一杯こじ開けた。
光が、中心に何かを生み出している。それは形を作り、何と子供の姿に変わってしまった。
しかもその姿は見たことがある、否、あたしが一番見たかった姿…
「サリ、ア…」
光の中から形を生み出したサリアは優しい笑みを向けてきた。
今はあたしの方が身長も高くなったのに、体制が崩れているせいかあたしが見上げるようになっていた。
―――舞…此処まで頑張ってきて来てくれてありがとう。
モンスターで一杯だったのに、サリアの為にこんな無茶させちゃって…
「違う…違うわサリア…貴方は、あたしの恩人、でしょ?
助けるのは…当然、だから……」
サリアは一瞬悲しそうに眉を寄せたけど、それはすぐさま微笑へと変わった。
―――そっか、ありがとう…さあ舞、貴方はもう光に帰る時間よ。
「グ…ソウハサセンゾ!!小娘ェェ!!」
変態魔王(仮)はよろめきながら立ち上がる。だけど、近寄ってはこれないようで、サリアをただ”ぎっ!”と睨んだだけだった。
「サリア…」
―――大丈夫、貴方は…舞はサリアがちゃんと守るから。
「サリア……?」
ふと気づいた。あたしの体を支えているサリアの腕が、かたかたと小さく小刻みに震えている事に。
彼女の異変に心配になった。声を掛けようとしたけど、それよりも先にサリアが言葉を発した。
―――舞…あのね、1つ聞きたいことあったんだ…
「…うん、何…?」
―――いつもね、サリア貴方に迷惑かけてたよね。あれは本当にいけなかったよ。
でもね…それほどサリアにとって舞は必要だったんだ。
ギュッとサリアの腕に力がこもった。
―――外の世界への可能性をくれた舞を、消したくなかったのっ
サリアにとって…舞は、大事な存在だったんだよ…っ!
「どうして過去形になるの…?これからも、一緒でしょ?」
力の入らない体でも、少しぐらい笑うことは出来る。
あたしの顔が酷かったのかな、サリアはもっと苦しそうに眉を歪ませた。
―――ね…、舞にとって…サリアは何だった……?
その短い言葉を言う時、彼女の唇が震えていた。
あたし達から離れている所にいる変態魔王(仮)が何とか前に進もうとしていた。
「友達…じゃないの?少なくとも…あたしにとっては……」
―――…っ、うん…!
「サリアが、一番の…――――」
言葉を言い終わる前に彼女の体を包む光が大きくなり、その光はあたしの体も飲み込んだ。
光で視界が覆われる前に、サリアが両腕で力強く抱き締めたような気がする。それと同時に、何かがパンッ!と弾ける音も聞こえた。
目を瞑った時、あたしの顔に冷たい雫が落ちてきた。
*
『リンク!!』
「!!」
ナビィの言葉に気づくより早くオレは気づいた。
さっき舞を飲み込んでいった絵に、亀裂が入った事に…
ピシッ…!ピシシッ!
「ナ…ッ!絵ガ…!?」
――パーーーン!!
音を立てて絵の1つが壊れた。思わず目を瞑ろうとしたけど、崩れ落ちようとした彼女の姿が見えた。
それに駆け寄ろうとするも、オレよりも近い位置にいるファントムガノンが彼女に向かった手を伸ばした。
そうはさせない!!
「(ようやく会えた彼女を、あんな奴に渡して堪るか!!)」
思いっきり地面を蹴って背中を見せたファントムガノンに向かって剣を振りかざす
ザンッ!!
「グガアァ、ァア!!?」
急所をやったのか、ファントムガノンは馬から落ちた。
マスターソードを鞘に戻すと、オレはナビィと一緒に慌てて彼女に駆け寄った。
「舞!舞!!」
ぐったりとしている彼女の体を抱き起こす。数回名前を呼ぶと、舞の瞳が開かれた。
「リンク、ナビィ…?」
「舞!よ、良かった…」
ほっと安堵の溜息をついたけど、オレはすぐに眉間を歪ませた。
ようやく会えて、今度こそ舞を守るって大口叩いておいて…顔色は青く、唇も青紫に変色している彼女の姿を見るとそれは成し遂げたとは言えない。
オレは今にも壊れそうな舞の体を慎重に、力強く両腕に収めた。
「ごめん…!オレ、また守れなかった…っ」
『舞〜〜…あ、会いたかったよォ』
ナビィも涙声になりながら舞に擦り寄った。オレ達の姿を見てか、舞の表情が和らいだ。
早いところ出ようと考えた途端、背後から悲鳴が聞こえた。
ふり返ると、ファントムガノンが地面に浮き上がった謎の黒い魔法陣に飲み込まれている。
「ガ、ガノンドロフ様…!!オタ、御助ケヲ…ヲ…!」
最後にあいつの名前を呼ぶと、更に大きい悲鳴をあげて完全に闇に飲まれた。
酷い光景を目の当たりにして、オレの眉間が歪んだ。
数秒経たない間に、7年前に何度か見たあの青い魔法陣が浮かび上がった。
ようやく外に出られる事に安堵して、動けない舞の体を抱き上げてオレは魔法陣へ向かって歩いた。
光で包まれた時、子供の頃とは違った感覚が体を支配した。意識が飛んでいくのは変わらずに……
***
++in賢者の間++
――リンク、目を覚まして。
「…ぅ、…」
ゆっくりと目を開くと、オレの周りには見知った光景が。
此処は一度きたことがある…オレが7年後の姿に目覚めた、『賢者の間』
目の前に、青い光柱が出来上がっている。それを伝うように降りてきた者の姿を見て、オレは目を見開いた。
「さ、サリア!?」
「ええ…貴方が森の封印を解いてくれたお陰で賢者として目覚める事が出来たの」
ありがとう、そう言ってサリアは頭を軽く下げた。
し、信じられない…オレのかつての友達が、まさか賢者だなんて…
い、いや…それ以前に彼女が賢者で、その…大丈夫、なのかな?
「(だ、大丈夫だって!心配しすぎだオレ!!)」
「………あのねリンク、貴方と舞がいない7年の間サリア読心術を会得したの」
「(びくぅっ!!)」
「でも今は勘弁したげる。鉄槌を下す時は、今じゃないだろうからね」
そう言いながらサリアは何かとちらつかせている。あの凶器、テツ子を!!(汗)
頬にイヤな汗が流れる。でもサリアはそれを気に留めようとも思ってなかった。
「この時が来るのは分かってた。貴方達とサリアが住む世界は違いすぎるから…」
「サリア…」
「気安く呼ぶな。賢者に目覚めた今、確実にサリアは貴方より上よ」
サリア様と呼びなさい!!
Σは、はいぃぃ!!!
「(あれ?立場的に…オレの方が上なんじゃ?)」
その通り。
「でもサリア…様、賢者に目覚めたって事は戻ってこれないって事?」
「それは分からない。ただ1つ言えるのは、今まで通りにはいかないって事…
もうサリア達、あんな風に笑い合えないかもしれないね」
何処か悲しそうに遠くを見つめるサリアにこっちが見ていて悲しくなった。
凄く健気に見えるん、だけ、ど……そ、そのテツ子を握り締めて言うのはやめてほしい。もはやこの時点でこっちだけが悲しくなるような気がする。
サリアは一度目を閉じると今度は真っ直ぐオレを見据えた。
「それでも、サリア達は友達よ。どんなに困難でも、舞に会いたいもの!絶対会いに行く。
だから…リンク、友達の証としてこのメダルを受け取って!!」
何かを吹っ切るようにサリアは両手を上に挙げた。…って、テツ子が消えてる!?(黒魔術なのか!?)
彼女の手に向かって降りてきたのは、森を映す緑の金貨。
それはオレに向かって降りてくる。両手を出すと、それは静かにオレの腕に下りてきた。
「友情の証よ…その『森のメダル』はね」
サリアの悲しそうな笑顔を見ると、オレの意識はまた遠退こうとした。
どうしてサリアはあんなに悲しそうなんだろう…賢者として目覚めた事だけじゃなさそうだ。
考える暇もなく、オレは意識を手放した。
―――さようなら、リンク。ずっと、友達だよ…それと同時に下部だからね
勘弁してもらっていいですかね
****
―――フッ…とん
足が地面に降りた感触がした。目を開けると、そこは…森の神殿の前だった。
ナビィ達の姿を探そうとする前に、相棒の声が聞こえた。
『リンク!』
「ナビィ…あ、舞!」
ナビィのすぐ隣にはさっきまでふらふらだった舞の姿が見えた。
彼女はオレの言葉に反応して、体をこっちに向けてきた。
「リンク!あ、お帰り…」
「ああ!舞、体は?」
「平気よ。まだ感覚が可笑しいんだけど、大丈夫!」
そう言って精一杯笑う舞に心の底からほっとした。
彼女の笑顔を反映させるように、両手に抱えたメダルが森に戻った太陽の光を反射して輝いた。
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