27.それいけ!異邦人!!





ほっとした。彼女が戻ってきて、自分の過去を知ったのが怖かったけど、でも受け止められて……


このままいけば、本当に良かったのに。幸せだった、例え、命をかける旅の途中でも、それでもいい。


それだけで良かったのに……




デスマウンテン火口に聳える炎の神殿、そこに眠る穴居竜…


現れたのは、溶岩の中から。見た事のないモンスターだけど、今回もいつものように斬り倒そうと【した】


でも、睨みつけてきたあの眼光を見て気づいた。


あいつは、あの竜は…――――










それいけ!異邦人!!












題名パクってるじゃない。こんにちは、知る人ぞ知るタイトルに突っ込みをいれる女子高生です。
今そんな事言ってる場合じゃないんだけどね。
だって、目の前に穴居竜がいるのよ!?

今にも飛びかかってきそうな雰囲気醸し出してるのに、何を呑気に挨拶してるのあたし!

穴居竜は大きく鳴き声をあげ、神殿内部全体を震わせるそれを天井に向けて放った。


穴居竜のヴァルバジア!あいつヲ倒せば、きっと火山の活発も治まるヨ!』

「そう、じゃあやっぱりこの神殿のボスはあいつね!」

『ウ〜ン、でも一個気になるノは…ヴァルバジアから魔物の臭いがあまりしない事なんだケド…
今までのボスは、嫌ってぐらい臭ってたノニ』

「魔物のにおい?」


ナビィの言葉の意味がどういう事なのか、それを考える暇も与えてくれずに、ヴァルバジアは巨体を突っ込ませてきた。
咄嗟に全員しゃがんで避けたんだけど、この狭い足場で動きを止められると、確実に殺される!


『ココじゃ駄目ダ!あっちの大きい足場に乗り移らなキャ!!』

「飛び移らないと、リンク!あっちの足場に移りましょう(ダッ!)」

「!ちょ、舞駄目だ!!」


ガシッ!
ビターーーン!!!


「ぃぃいたぁぁぁあああぁぁあぁぁ!!!しかも熱であつーーーーーー!!!(涙目)」

「あ、ご、ゴメ…!」


突然服を後ろから掴まれ、その反動により見事顔面から熱い地面にスライディング。

リンクの思いがけない制止の言葉と、手厚い(強調)行動に吃驚とほんの少しの憎しみが!!でも謝ってくれたし、その時の顔が可愛かったからすんなり怒りも納まった(単純)

兎に角気分を元に戻して…隣にいるリンクへと視線を戻す。彼はどこか困惑した瞳のまま、服の裾を掴んできた。


「ど、どうしたのリンク?どうして止めたの?」

「駄目だよ、舞…あいつは倒しちゃ駄目なんだ!」

『な、何言ってルのリンク!?あいつをやっつけなキャ、苦しんデるゴロン族の皆も、ダルニアさんも守れないんダヨ!?』

「でも、あいつも苦しんでるんだよナビィ!!」

『ェ?』


いつも、モンスターを前にしたら前を見据えるリンクの瞳が、今は怯える小動物のように弱弱しかった。
このまま押し倒してやろうかと
でもそんな事してる場合じゃないから、敵を気にかけつつリンクの話しに耳を傾けた。


「どういう事リンク?」

「あいつ『タスケテ』って一生懸命に伝えてる気がして…

あいつ本当は、きっと神殿の奥底で眠ってただけで優しい奴だったんだと思うんだ!でも、ガノンドロフに植え付けられた呪いで凶暴化したんだよ。

…7年前、デクの樹サマに植え付けたみたいに」

「!」


デクの樹サマの痛々しい姿…あれは今でも覚えてる。悲痛によって苦しそうにしていたデクの樹サマ。
このヴァルバジアは分からないけど、もしリンクの言っている事が本当なら……


『リンク、どうして分かったノ?』

「さっき、睨みつけてきた時。アレはきっと、弱さを見せ付けないためにした強がりだ、って思って…」

「リンク…」

「だからオレ、今回は戦えないよっ」


リンクは目を逸らすように、目を強く瞑り顔を下に俯かせた。確かに、苦しそうにしている相手を余計苦しませる真似できない。人一倍正義感と優しさが強いリンクなら尚更の事。

…でも、それならリンク、


「ねえリンク、あのね。ヴァルバジアは殺すんじゃなくて…」

『!!危なイ!2人とも避けテ!!』


ナビィの言葉に振り替えった時、あたし達の視界に広がったのは赤くて大きい影…それが、ヴァルバジアの尾だと気づいた時には、既に攻撃を食らっていた。


「わぁああぁぁあぁぁぁ!!?」


ギリギリ避けたものの、足場を叩きつけた衝撃によりあたし達の体は宙を舞った。
ドンッ!!と力強い音が聞こえてきたのと、強い激痛が体中に広がったのは同時だった。


「―――!!ぃた…っ」


ドスッ!!


何かが隣に落ちた。音からして、何かが突き刺さった?確認する事も忘れるほどの背中に広がる痛み。


「…、っ!舞!!」

『キャァッ!舞、気をつけテ!!』

「へ?」


何が、と聞こうと彼らの方をふり返った時、その言葉の理由が分かった。





リンクたちが、小さい……




彼らの小さく見えるのは2つの理由がある。一つは何か特別な童話に出てくるような秘薬等により小さくなった時、もう一つは遠近法により、相手が遠くにいる時。


残念ながら、今の状態では後の方。

彼らがさっきの足場にいるという事は、あたしが移動したわけで……

あそこ以外の足場と言ったら………



―――ガァァアアアァァァァァァァ!!!

Σッギャァ―――――――!!!?? ヴァルバジアさん近ぁぁぁぁぁぁっ!!


ボスが降臨してるもう一つの足場。
逃げようかとも思ったけど、嫌味と言うのか何と言うのか…2つの足場を繋ぐ小さな足場が溶岩の中に崩れ落ちた。
……逃げ場ないんだけどぉぉぉぉ!!


「ににに逃げれない!助けて誰か!!」

「ま、ちょっと待ってて舞!!」


だから待ってたらあたし死んじゃうのよリンク!!(汗)
逃げようとした時、視界に銀色に光るものが入った。
視線を泳がせば、視界に入ったのは藍色の柄と銀の刃…間違いなくリンクのマスターソード。きっとさっきの衝撃で剣だけが飛んでしまったんだ。

伝説の聖剣…時の勇者でしか扱えない物。

後ろを見れば、物凄い勢いでヴァルバジアが迫って来てる。向こうの足場からナビィ達の叫び声も聞こえてきた。

悩んでる暇でもなく、仕方なく、藍の柄の部分を持って、力いっぱい引っこ抜いた。


「Σ重っ…!」


案外簡単に引っこ抜けたそれを持って、突っ込んでくるヴァルバジアを避けるべく横へ転がった。
重いものを担いでよく出来たと自分でも褒めたくなるわ…(汗)


「これ、どうしよう…」

「舞!!」


リンクの叫び声にふり返ると、彼は辛そうな顔でこっちを見ていた。それはあたしにか、ヴァルバジアにか…



――オレ、今回は戦えないよ


リンク……う〜ん…
あたしは一度、自分の手に持っているマスターソードに視線を向ける。汗ばんだ手で強く握り締め直すと、またヴァルバジアの鳴き声が響いた。

7年前の精霊石を集めきった日、サリアを助けに森に行く途中にモンスターに捕まった時、
あたしはどっちも助けてもらってた。


「舞…?」


リンクの不安そうな声は、きっとヴァルバジアに向けて切っ先を向けたあたしに向かって。あたしから見えなかったリンクは、何をしようとしたのかが分かったのか、顔を一気に青ざめた。


「駄目だって舞!!危険だから、オレが行くまで待ってて!!」

「ご、ごめんリンク」


突っ込んでくる速度を落とさないヴァルバジアから目を逸らさないまま、


「でもあたしだって、一回は助ける側に回りたいの…!」


重い鉄の塊を力を込めて持ち上げた。











+++








マスターソードだけ向こう岸へ飛んでいた。一人、戦うことも出来ない舞が吹き飛ばされていて…何をするのかと思えば、地面に突き刺さったマスターソードでヴァルバジアと対応しようとしていた。

初めて見た勇敢な彼女の姿。だけど、駄目なんだ。
それは彼女の身がか、ヴァルバジアの身がかは分からない…


「舞!戦っちゃ駄目だって!!」


おもいきり叫んでも、ヴァルバジアの雄たけびにかき消され、真っ直ぐ敵を見据えている彼女には届いてなかった。


「舞!!舞、お願いだ!!止めてくれっ、殺さないで…!」


嗚呼、ヴァルバジアの身だったんだ。
仲間を捨てるなんて最低な事だ。仲間より、敵となった相手を心配するなんて…

でも、もうデクの樹サマみたいに、呪いに苦しんでいる奴をこれ以上苦しめたくないんだ。
舞にならこの気持ち、分かってもらえると思ったのに…!!


「もう、苦しんでる奴が死ぬのは嫌なんだっ!!」

『…ねェリンク、舞が、本当にヴァルバジアを殺しタイと思ってルなンて思ってるノ?』

「!そうだよナビィ、そうでなきゃ、苦しんでる奴に剣なんて向けない」


何が言いたいんだ。そう言いたくなるナビィの質問に、浮かんだ涙を拭って顔を上に向ける。
ナビィは今尚戦おうとしている舞を一度見て、またこっちへ振り向いた。


『あんなにナビィにも、リンクにも優しくしてくれル舞が、そんな極悪非道な事考えるワケないでショ!
寧ろ今は、リンクの代わリを頑張ってしてるのよ?』

「それでも…ボスだからって言っても、ああやって殺せばいいってもんじゃないだろ!?
ナビィはヴァルバジアがかわいそうに思わないのかよ!?」

『思ってるヨ!!舞だって、思ってるカラこそああやってヴァルバジアを助けようとしてるんデショ!?』

「……?ヴァルバジアを”助ける”?」


ナビィの言いたいことは本当に分からない。今もう一度見れば、彼女はさっきと代わらず刃を向けている。
その様は、どうも”救おうとしている様”には見えない。


『あんな呪いにかけられてイルのに、黙って”可哀想”って思いナがら見られて、リンクはどう?タダそんな慈悲思われてモ、何だよ、って思わなイ?』

「!」

『ヴァルバジアもきっとそう。舞は”ヴァルバジアを殺す”んジャなくて、”呪い自体を殺そう”と思って戦ってるんだヨ!助けてあげようとしてるんダヨ!!』

「…!!」


呪い自体を殺す。だがそれは結局相手を殺さなくてはいけなくて…それでも舞は、偽善者を気取ったオレに代わって、”本当の優しさ”をヴァルバジアの為に向けてるんだ。

オレたちと違う足場にいる舞は、9つの穴の1つに潜っていたヴァルバジアが首を出した途端、重いマスターソードを力いっぱい両手で振って斬りつけた。
悲痛な表情を浮かべながら


「…っ」


怖い、嫌だ。まだ心の中では、彼女に制止をかけたいと思う自分がいた。
でも…本当は…!









++







腕が痛い、足も、さっきぶつけた背中も…
荒い呼吸を繰り返して、大きく呼吸する為に肩を上下に揺らした。その手先に、マスターソードを握り締めるのは忘れずに。

いつも片手でコレを振り回しているリンクが、本当に凄いと思う。
だって、あたしは両手で持っても振っただけで凄く疲れる。本当、これって重いのねっ


ブゥンッ!!

「わっ!?」


ヴァルバジアの長い尾が、さっきあたしが居た所を思いっきり強く叩きつけた。このままじゃ、あたしが先に倒れそう…

もう一度さっきと同じように、穴の中へともぐりこむ。まだ出てきたところを叩くしかない…
今度は何処から出てくる?


―――気をつけて舞…

「え?」

頭の中に、突然誰かの声が入ってきた。頭の中に直接響く、所謂、テレパシーのような感じ。
それに気をとられた時だった。後ろからゴポッ、と溶岩の音が聞こえたのは


―――後ろ!!

「っ!」


咄嗟に声に反応して後ろを振り返る。すると、声の通りに後ろの穴からヴァルバジアが飛び出してきた!
剣を振ろう、とすると、今までの疲労が出てきて、体がズシリと重たくなった。


「(こ…こんな時に!!)」


大きな雄たけびに顔を上げれば、ヴァルバジアの牙がすぐそこまで迫ってきている。

避けられない―――

少しでも衝撃を和らげるため、後方に飛び退く。
その時、目を瞑る前の一瞬、ヴァルバジアの顔に光が飛んできた。


ヒュッ――――ドスッ!!


ギャアアァァァァァアァァァア!!


「!!」


と、何もしていなというのに、ヴァルバジアは悲鳴をあげた。見れば、右目に弓矢の矢が突き刺さっている。
何で…そう思うが、その理由もすぐに明白になった。さっきヴァルバジアに向かった光、ナビィによって


『Nice!!』

「ナビィ!まさか…」


今の……
首を後ろに向かせれば、予想通り、そこには弓を構えたリンクがいた。あんなにヴァルバジアを殺す事を躊躇していた彼が出した、1つの勇気によって。


「舞!!オレはそっちに行けないから…代わりに、ヴァルバジアを!!」

「え、ええ!」


リンクの言葉にすぐさま体は反応して、まだ立ち上がろうとしているヴァルバジアに、自由を授けるためマスターソードの切っ先を向けた。
気迫の言葉と共に、切っ先をヴァルバジアの額に突き刺す!


ドンッ!!



―――最後の一瞬、ヴァルバジアが泣いてた気がした。

……笑ってた気もした。





神殿内に、穴居竜の最後の雄たけびが広がりきった。
そして……
自分の体が傾く感覚


「舞!!」


リンクが、あたしの名前を呼ぶ声も一緒に












***









「……」


黒い、空間。

もう此処に来ても然程驚かない。寧ろ、次は誰が此処に現れるのかという、期待と不安が入り混じった感情さえ芽生えていた。

前の時と全く同じく、前に赤い光が現れた。徐々に人の形の姿を作っていくソレを見て、誰なのか核心を持てた。


「ディン…」

「ふふ、覚えてくれた?」


ニィ、と笑みを作る綺麗な女性。以前に会った、聖三角の守護者の1人ディン…
上手く笑い返せなかった。ただ、今は確認しておきたい事もあるからね


「さっきの声…あれは、貴方のものね?」

「分かった?そう、貴方を助けるためにアドバイスをね」


ごく当然のように彼女は言うけど、前々から引っ掛かる事があった。


「どうしてそんなにしてくれるの?あたしは只の一般ピーポーの人間なのに…三大神の貴方に助けてもらう義務なんて、あたし…」

「……そう、そうよね。まだ真実を教えてないから…

もうそろそろ、教えるべき時でしょう」

「?真実?」


ディンはさっきまで作っていた笑顔を一変させて、表情を引き締めなおした。緊迫した空気が立ち込める。


「以前、ゼルダが貴方に言った『悪の力の制御者』というのを覚えてる?」

「ええ、勿論。ただその意味が分からなくて、何の事だかサッパリだけど…それがどうしたの?」

「…『悪の力』とは、紛れも無く暗黒魔王ガノンドロフの事。『制御者』は貴方。
舞、あんたはその制御者の意味をどう捉えてる?」

「どう…って言われても、ガノンドロフを倒す事じゃないの?」

「いいえ違う。自分の世界で武器を扱ったことのないあんたに、魔王を倒せだなんて無茶難題押し付けたりしないわ。

制御とはつまり、勇者が魔王と剣を交じわす時、魔王の力を止める力の事」

「力を止める?でも、それこそあたしにはそんな力ないわ」

「ええ、普通ならね。だから貴方にあたし達は力を授けた。特別な、選ばれた者だけが持てる力を」


力…そんなの貰った覚えはないんだけど。
言葉の意味が分からなくて首を傾げるあたしの許にゆっくりとディンは歩み寄ってきた。


「『選ばれた者、汝に問う。全ての善を歩むか、全ての魔を進むか。
己が途(みち)に歩みし者にのみその力解放されり……』

さあ舞、貴方は全てを包み込む正義をとる?それとも…世界を支配する悪の力を選ぶ?」

「悪、と言われても…この世界を乗っ取る理由も権利も、あたしには無いから」

「それじゃあ、正義をとるのね?」

「…そっちの道に、リンクがいるなら。」


(この世界の未来をどう歩んだらいいか分からないあたしは、彼に着いていくだけだ)

ディンはあたしの答えに笑顔を見せて頷いた。以前に比べ、身長差があまりなくなった彼女は、両手であたしの右手を包んだ。


「今、貴方の口から正しい答えを聞きました。授けた力、解放します」

「授けた力って…」


ディンが包んだ右手は、あの時と同じように赤い光を発した。以前と違うのは、鋭い痛みを感じない事と、丁寧に巻かれた包帯が光に包まれて解かれていく様子…

今まで解く事を許されなかった包帯が取られ、暫く見なかった右手の甲が目前に現れた。


「あたしの力を、聖三角を!」


聖三角!?

………………………。


ディーーーン!!これ何!?何この聖三角の印!!」

「何、って…見ての通りよ。トライフォースの模様」

「そうじゃなくて!あたしが聞いてるのはこの形!!何よこの二分の一トライフォース!?
右半分しか描かれてないじゃない!!」

「あ、ヤバッ。アート失敗!?

Σアート(芸術)!?聖なる三角でアート!!?ちょっと、これ治らないのよ―――――!?」


そう、あたしの右手甲に描かれているのは聖三角に似て非なるもの。何故か右半分、丁度真ん中で切り取られた中途半端なソレが、あたしの甲に描かれてあった。
一生残るであろう、ソレをこのお方はあっさりと失敗と言う。しかもアート

三大神でなければ、こんな美女でなければ、即エルボーが炸裂していたであろう。


「嘘嘘、冗談よ。失敗でも、アートでもないって!ちゃんと成功してるのよ」

これで!?二分の一トラフォースが!?」

「上の三角が半分に分かれて、右半分の三角が正しく描かれてるでしょ?
上の三角は『力』、右半分の三角は『勇気』、そして反対にある筈の左半分の三角は『知恵』の意味を持つの」

「力、勇気、知恵?」


それって確か、前にデクの樹サマが言ってた言葉…この聖三角の三角に3つに、それが意味されていると言うのか。


「『勇気』は時の勇者リンクのもの。『知恵』は同じ三角を持つゼルダのもの。
そして『力』…それの半分は魔王のもので、もう半分はあんたのもの。この意味が何を指すのか、分かる?」

「半分を……、…!
まさかさっきの『制御者』を合わせて、トライフォースで繋がれたあたしは、それを通して魔王の力を封じ込める、って事?」

「正解!そういう事。これで制御者の意味と、その半分聖三角の意味が分かった?」


成る程、と言いたい所だけど…すんごく不満な点が1つ。


「って事は、あたしはあの変態魔王と繋がってるって事ね…」

「まあ結果だけいえばそういう事ね。」


最悪だ(落胆)


「そう落ち込まないで。大丈夫、あんたの明るさがあればそんなものも忘れちまうさ!」

「ディン……。ならさり気なく後退するのやめてくれる?傷つくから


言ってる事とやってる事が正反対ですが
アハハ、と空笑いを漏らしながらもその差を縮める事なかれ。くそっ


「兎に角、あんたに全部教えられて良かったよ。これでもう時の勇者の許に戻って大丈夫だね」

「そう言えば…リンクは自分の手の甲に聖三角の印がある事を知ってるの?」

「知ってるよ。只、詳しい事は知らないと思うけど…だからあんたから説明してやって」

「ええ、分かった」


あたしが返事を返すと同時に、あたしの周りを淡い光が包み込む。なんとなく、コレが現実世界に戻る合図だと気づき、ディンにもう一度顔を上げた。


「舞、これだけは忘れないで。
こんな運命に変えてしまった事は深く詫びている。でも、あんたはこの世界にとって必要な存在なのよ。
だから、自分が無力だなんて思わないでね」

「ディン…大丈夫、リンクと、ナビィが一緒だから」

「…そう。それを聞いて、安心したわ」


その時だった、初めてと言っても過言ではない程、ディンが優しい満面の笑みを見せた事。
三大神でも、こんな笑顔作るのね。そんな、当たり前の事を思いながら、視界が真っ白に変わっていくのを見送った。














***










「――…!舞っ」

「…?リンク…、それに、ナビィも」


黒い空間から一転して、少しづつ開いていく視界には眩しいくらいの青い空が映った。それに、森の色に縁取られた、金色の髪。
その正体が自ずと知れたリンクだと確認して、ゆっくりと横たえていた体を起き上がらせる。


「良かったー、外に出たのに、舞が倒れてたから…何かあったのかと思ったよ」

「大丈夫よ。少し、夢を見てただけ」

『舞、お疲れ様!もう大丈夫?』


リンクの肩にとまり、ナビィも体の心配をしてくれる。お疲れ、というのはさっきのヴァルバジアの事だろう。
その証拠にリンクの顔に影が落ちた。


「ヴァルバジア、ほんとにあれでよかったのかな…」

「リンク…大丈夫よ。最後の一瞬、ヴァルバジアが笑ってたの、間違いないと思う」

「ほ、ホントか!?そっか…そうなんだ」


悲しみに暮れながら息を引き取ってしまった、そう思っていたのか、リンクは安堵の溜息をついた。
同時に下がった肩を1つポン。


「うん、だからもうヴァルバジアみたいなのを生まない為にも、早く全ての賢者様の封印を解きましょう」

「そ、そうだよな。頑張ろう!」

『それジャア、次は3人目の賢者様だネ!途中、カカリコ村に寄って情報を集めまショ』

「ええ。それじゃ、行きましょう」


土埃が多少ついたスカートを払って、リンクの手を借りながらもその場から立つ。体一杯に、デスマウンテンを囲んでいた黒い雲から脱出した太陽の光を浴びる為、少し進みながら両腕を一杯に伸ばす。

ほんの少し、リンク達から距離が空いた時、


「舞、きっと辛かっただろうな…オレの代わりに戦ってくれたとはいえ、あんな事して平気だなんて思えないし」

『…大丈夫だヨリンク。これカラその分、リンクが舞を守ってあげればイイじゃない!ネ?』

「ナビィ…うん、そうだよな。

オレが…舞を守るんだ」


こんな話しをしていただなんて、知る筈がない。

















―――バキィッ!!


暗がりを灯す唯一の蜀台、それを真っ二つに拳1つで折った。
その拳は怒りから震えており、その持ち主は額に青筋を浮かべていた。


「うぬぬ…おのれ!!今回、またしても賢者の封印を解かせてしまった!!」

「ガノンドロフ様、お怒りのようだね」

ツインローバ!!今回は上手くいく筈ではなかったのか!?」

「ヒヒヒッ
可笑しいですの〜、ヴァルバジアの洗脳は万全じゃったのに。只時の勇者が強すぎたのですじゃ」

「まあ、今回に至ってはあの小娘がやったようですがの」


闇の帝王ガノンドロフ、玉座に座り怒りを露わにしている彼の周りを、杖に乗った魔法使いの老婆2人が飛び交っていた。
今まで見ていた水晶球を掴むと、怒り任せにそれを壁にぶん投げる。見事水晶球はバラバラに砕け散った。


「おのれ…許さんぞ奴ら!!
誰でもいい!早く時の勇者を殺し、舞を直ぐに我が許につれて来い!!」


「―――ガノンドロフ様。ならば次は、私が行きましょうか」


凛とした声が暗い空間に響きわたった。その声の持ち主は、ガノンドロフの側近として傍に立っていた男。
ガノンドロフは横目でその男を見ると、1つ鼻で笑う。


「お前か…そうだな、そろそろお前を出してもいい時期だろう。
長年鍛えに鍛えぬいてきたその剣技で、時の勇者を倒し、舞をここに連れて来るんだ!!」

「…はっ」


男は頭を下げると、すぐに部屋の入り口へと向かっていった。
全身を黒に染めたその男は、顔を蝋燭の灯に灯された事で、怪しい笑みを浮かべていたのが分かった。








Next story.


<オマケ>

「っていうか、結局ゴロン族から貰ったメガトンハンマー、使わないまま終わったわね(汗)」

「あ!」

『ア』



ごめんね伝説のハンマー。