28.温もりをください切実に
++inゾーラの里++
「なっ、何があったんだここ…!?」
滑ってしまいそうな足場、滑らないよう踏ん張りながら、リンクは白い息を吐いた。
後ろからついてくる舞も、寒そうに腕を抱える。
『ぞぞ、ゾーラの里が凍ってルよ〜〜〜〜!?』
あの幻想的な水場は一転し、今では凍える風しか吹かない極寒の地と化していたのだから。
温もりをください切実に
皆さんこんにちは、女子高生です。突然ですが風邪引きそうです!!(汗)
2人目の賢者はダルニアさんだったらしく、無事3人目の封印を解きに、ゾーラの里へ再びやってきたの。ここに賢者様が眠っているって言う情報を、カカリコ村の人から聞いたから。
7年経って、ルト姫がまだあたしの事を覚えてくれているか?その事を楽しみに少し浮かれながらやってきた……と、言うのに!
「まさか待っていたのは雪国だとは…」
『キングゾーラまで凍ってル。ココにもガノンドロフの手が及んでルんだ』
そう、ゾーラの里をまとめるべきキングゾーラさえ氷の塊となってるわけで…
行く当ても何もないあたし達は、氷付けとなったゾーラの里で唸っている。
「…?リンク、何をそんなに見てるの?」
リンクはさっきから静かにじっ、と真剣にキングゾーラを見つめている。
そして真剣な眼差しのまま
「これって食べられるかなァ…」
「お腹壊す覚悟あるなら別にいいけど、止めといた方がいいと思うわよ」
この里を見て開口一番かそれか。中々図太い神経してるのね、リンク(汗)
『兎も角!どうしよう、これじゃあ何があったのか聞けないよネ』
「ナビィ、ゾーラの里に深く関連している場所って、ココの他にあったっけ?」
『ウ〜ん、何処かあったカナァ…』
「ゾーラの里と深く結びついておる場所なら1つあろう」
「!?だ、誰だ!?」
まだ美味しそうに見ていたものの、突然飛び入りした第三者の声に逸早く反応したリンクは、辺りを見渡しながら警戒した。
キングゾーラが座っている玉座の後ろ、そこから水色の影がひょっこり顔を覗かせた。
「ふっ、高貴なフィアンセに随分と横暴な口の聞き方をしてくれるの」
「フィアンセ…?…!もしかして、ルト姫!?」
「おお、舞。久しゅうにおうたな、わらわは嬉しいゾラ」
凛とした声は、氷の壁に反射され辺りに美しく響きわたる。その声の持ち主、ゾーラの里の姫君であるルト姫によって、その場の空気が一気に他のものに変わった。
7年前に比べ、随分と身長も伸び、体の成長も育まれていた。…なんであんなに胸が大きくなったのかな、7年前はあたしの方がちょびっと大きかったのに…!!
「ルト姫!君は無事だったのか!?」
「ふむ、里が襲われた時、シークという男がわらわだけを逃がしてくれたお陰じゃ」
「!シークが?あいつ…一体何者なんだ?」
『それは気になるケド…今はシークよリも、里の状態を何とかしなくチャ!』
確かに。どうしてシークが、という疑問も浮かぶけど、今はこの里をどうにかする事が問題だ。
それに、ここまでするという事は、ゾーラの里に賢者様が関連している可能性が高い。
「ねェルト姫、この辺りに賢者様が封印されている神殿とかない?」
「賢者?…それは知らぬが、神殿なら近場にあるゾラ」
「!ほ、本当!?それって何処にあるの!?」
「行くのは簡単じゃが…
もしやおぬしら神殿に行くつもりかえ!?」
酷く驚いているルト姫、その理由も明確になる。あの神殿は神聖な場所で、侵入者を倒す防衛機能の罠が張り巡らされているから危険らしい。
でも、罠が仕掛けられているという事は、益々賢者様が封印されているようで怪しい。
『大丈夫ダヨね!リンク達は、今まで2つの神殿をクリアしてきたんダカラ!』
「しかし……。分かった、わらわが案内しよう」
「ルト姫!」
「じゃが、わらわもついていくぞ。この里を滅茶苦茶にした原因がその神殿にあるらしいからの。
元々向かうつもりじゃった、止めても聞かんゾラ」
「そうだったの?それなら、一緒に行った方がいいわね。一人だと危ないし」
「よし、じゃあゾーラの里を救いに、それと賢者様が封印されていたら助けに行こう!!」
「うむ。して早速だが、行く前にそちらに渡すものがある」
***
「ここゾラ。ここが我らゾーラ族が古くから守っている、水の神殿じゃ」
水の神殿、そこは名前に値するぐらい、水という水が溢れかえっていた。所々、青に映える金色の装飾物がある以外、全てが青に近い色で統一されている。
そして、あたし達の装備品の色も
「凄いなこの服!水の中でも息が出来るんだ〜。
ゴロン族もそうだったけど、よくこんな服作れたよな〜〜!!」
『リンク!そんなにはしゃいジャモンスターの格好の的だヨ!?』
楽しそうに水の中に潜ったり浮いたりしている。慌てて注意するナビィだが、楽しさゆえにあまり止めようとはしない。
大変です子ども立ち入り禁止区域に子どもが入っています
「っていうか、あたしのマントは兎も角、何で服がリンクの普段着と同じモデルなのかな」
一番の疑問点はそこでした。
だって、あっちの炎の服でもそうだったけど、この水の服も服のデザインがリンクの物と同じなんだもの!!
まさか…リンクってばいろんな所で少しづつ人気者になってってる?
「楽しそうにしておるが、話を戻してもよいか?」
「あ(汗)ご、ごめん」
「…リンク、お主本当に成長したのか?」
じぃ、と怪しげに頭を掻いているリンクを見るルト姫。残念ながら成長していません、特に中身が。
ルト姫は「まァよいか」と呟くと体制を元に戻し、大きな扉を指差した。
「アレがボス部屋へと通じる扉じゃ。アレを開くには特別なカギがいる」
「ボス部屋のカギだな!他の神殿にもあった」
「うむ、一刻も早くここを攻略したいゾラ。という事でどうじゃ?ココからは分かれて行動するというのは」
『エ?で、でも…ルト姫とか戦えないんジャ?』
「わらわは平気じゃぞ。7年前、おぬしらと別れてから少しづつ戦えるように鍛錬したからの」
ルト姫の意見、悪くないかもしれない。確かにこの神殿は、いろいろと神聖な部分が多く見える分、中が複雑そうな感じがする。
ルト姫も戦えるのならオッケー…と、言いたい所なんだけど。
「あの…あたしが戦えないの」
「む?そ、そうなのか!?この7年、もう幾らか戦いを覚えていったかと思ったぞ(汗)」
「ごめんなさい。でもルト姫の案もいいと思うの、だからあたしは反対しないわ」
まあ正直、まだモンスターが怖いという気持ちもないわけではないんだけど…一番にあたしが否定するところなのに、何故か心配性のリンクが身を乗り出してきた。
「駄目だよ舞!!危ないから、一人で行っちゃ駄目だ!!行くならオレと!」
「ど、どうしたのリンク。そんなに身を乗り出して(汗)」
『ハイハイ、リンクは過保護すぎるのヨ。あんた達が2人で行動しチャ意味ないでしょ!
だから、舞はナビィと行動しまショ。何かあったら直ぐに助け呼べるし、ソレでいいでしょ?』
「ええ、よろしくお願いするわ。それでいい?リンク」
「う、うん…」
まァ、まだ機会はあるんだし…とか何とかまだ呟いているけど、聞こえなかったからしょうがない。
気合を入れる為、手を一発パンッ!と叩く。
「さ、じゃあ早速行動に移りましょう!あたしとナビィは向こう側を調べてくるわ」
「ではわらわは西側へ行こう」
「じゃあオレは…下の方を調べてくるよ!見えないから、何があるかも分からないしなっ」
『コレで行動範囲は決定したネ!ジャアしばらく調べて、何もなくてもあっても、もう一度ココで落ち合いましょう』
本当は少し不安の点もある、だけど意気込んで行くリンクとルト姫に迷惑をかけたくない。
頑張るからね、と聞こえないぐらい小さくだけど、水に華麗に飛び込みを決めるリンクと、向こう岸に渡るために泳いでいこうとするルト姫に向かって呟いた。
大丈夫だ。あたしにはナビィもいる。心の中を読み取ったかのように、ナビィはあたしの頭にとまった。
『さ!ナビィ達も行きまショウ!』
「ええ!」
真っ直ぐに向かった所、特殊な扉となっている部屋に向かう。水の神殿の中央部が、今まで賑やかだった分、静かに水が落ちる音だけが木霊した。
***
『舞!スイッチ押したヨ!水場に乗って!!』
「分かったわ!」
下が網目となっている床の上に乗る。間もなく、噴水のように勢いよく水が噴出してきて、それは人間1人を乗せて上に向かって放出される。
水によってせり上げられた小さな部屋。そこは小さい分モンスターも見当たらず、難なく足を床に着かせる事が出来る。
「ここの部屋も大丈夫ね。でも何もなさそう」
『ウ〜ん…』
「?どうしたの、ナビィ?」
また下に戻ろうとする水から慌てて地面に足をつけながら、何か唸っている妖精に耳を傾ける。
『ホラ、ナビィ達結構部屋回って来たジャない?それなノに、まだ一匹もモンスターが出てきてないカラ…怪しイなァって思っタノ』
「そうね…そう言えば確かに。もしかして、ルト姫が言ってた神殿の防衛装置の罠にやられたのかもよ?」
『そう、カナ〜?でも、神殿中央部の所にはモンスターいたヨ?』
それもそうか。ココまで来たに関わらず、まだ一匹もモンスターと出くわしてない。これは奇跡という言葉で終わらせていいような、簡単な問題ではない筈。
既に入り口付近には青いアメンボのようなモンスターがうろついていた。入り口に入って平気なら、こんな小部屋で待機していても可笑しくはない。
「あたしはモンスターじゃないからそこん所全然分からないわ。只言えるのは、どっちにしろ気を引き締めて行かなくちゃいけないって事よね」
『ウン、そうだネ!えっと、次の部屋へは〜…あそこダネ』
シュッ、と先を飛んでいくナビィが体で指したのは、部屋の片隅。周りの床は全て鉄に似ている物で敷き詰められているんだけど、そこだけはまるで砂のようにさらさらと流れている。
…アリ地獄のように、下に。
「見るからに怪しいわナビィ」
『流砂だネ。でも、この下カラ特別な魔力を感じるヨ!結構強力ダネ』
「聞くからに怪しい!!見ても聞いても怪しい所に自分から特攻隊長の如く突っ込んで行けと!?」
『頑張って舞!ココで頑張れバ、リンクからの熱ゥい抱擁が待ってルかもヨ!!』
足が思わず一歩前進(腐)
きっと嘘に決まっているのだろうが、腐って育ったあたしには刺激的過ぎる。つまりは乗せられ易いという事。
ナビィ、長年(?)一緒に旅をしてきたから、あたしの扱いが分かってきたわね。
「い、いいわ、女は度胸が勝負!腹括って行ってみましょう」
『オッケー!ダイブだよダイブ!!』
楽しそうだね。エポナの時といい、絶叫系の事が好きなのかしら。
兎にも角にも、ココでとやかく言っていても何にもならないから、(いかにも怪しい)流砂に足を踏み入れた。
「ファイトいっぱぁぁぁぁぁぁつ!!!」
―――ズザザザァァァァァ!!
…ピチョンッ…
「ゴホ、ケフッ……っ、ん、着いた?」
『ウン、もう大丈夫!怪我はなかッタ?』
ナビィの心配の質問に応答して、少し床の性質の所為で濡れたスカートを持ち上げて…
…?床の性質、って……
「み、水…?どうして、床が?」
突然落ちた行動により、落ち着いて見えなかったけど…よく見ればこの部屋は白い霧に覆われて、足場は冷たさが体に染み込む水と化していた。
「どうして水の上を歩けるの?」
『ウンとねェ、さっきの流砂、さらさらの砂みたいに固体化してルの!きっとソレがこの部屋一帯に敷き詰めらレテ、足場が出来上がっタんだと思うヨ』
「へぇ〜…」
ほんの数メートル先に、一本の枯れ木が立っていた。ナビィが言った、感じた魔力のようなものも見当たらず、先に進む扉も見当たらない。
仕方なく、辺りを警戒しながら早足にその枯れた木の許へ駆け寄った。
「この木、結構年季が入ってるわね。表面の皮も、ボロボロになってる…」
『魔力は感じナイなァ。でも、この部屋カラ魔力を感じるノは、今も変わらなイノ』
魔力を感じると言っても、それらしき物は何処にも見当たらない。この部屋にあるとすれば、この枯れ木だけ。
あたしの身長大ある枯れ木に、撫でるように優しく手を掛けた。
「―――舞」
「!?」
後ろから、ナビィではない別の声が掛けられた。吃驚しながら、モンスターかとも思いながら振り返る。
金色の髪、緑色の衣、空を映す蒼い瞳。
そこにいたのは、さっき分かれた筈のリンクが。
「リンク!?貴方も此処に来たの?」
「…うん、そうだよ。舞が心配で追いかけてきたんだ」
『……?(リンクから、魔力が漏れテル?)』
「心配で、って。ナビィがいてくれてるのよ?リンク、本当に過保護なのねー」
「オレには、舞がいないと駄目なんだよ」
「………。
あぉ?」
み、耳が可笑しくなったのかな。今、リンクがさらっと甘い言葉を吐いたような。
あのリンクから出た言葉に驚いて目をぱちくりさせていると、人2人分あったスペースを歩いて近づいて来る事によって、リンクはその距離を無くした。
お、おいおいおい!?リンクが迫ってきてる!!何か分からないけど、今この状況はやばいような気がしてままならな…!!
「り、リンク?どうしたのよ」
「舞…」
リンクが一歩進めばあたしが一歩下がる。
リンクが二歩進めばあたしが二歩下がる。
リンクが二歩下がればあたしが二歩進む(何でやねん)
それを繰り返せども、後ろにある枯れ木によりそれ以上の進行も止められた。
動けなくなった事をチャンスに、リンクはその逞しい腕であたしの体を…包み込んだ。
「りりりりリィィィィィィンク!!?」
『うわ〜〜〜!リンクもとうとうそンな積極的になれタんダネ!?』
何やら体の色をピンクに染めてこの甘い雰囲気に喜ぶナビィ…ってそうじゃなくて。
「リンク、どうしたのよ!?あの純情且天然でお馬鹿で田舎者でお人よしのヘタレ勇者は一体何処にいったの!!
こんな某芸人の『あま〜い!!』を使ってまで表したくなるほどの雰囲気を作るほど、貴方は中身が発展してなかった筈っ」
「オレだって一人の男だぜ?これぐらい、当然さ」
「嫌、だからってホラ…あたし、心臓が持ちそうになひ……」
耳元に吐息だってかかる程の距離、この位置をいつまでも保つと危ない事になる(リンクが)
けれどリンクは顔を肩から持ち上げてあたしと向き合うぐらいの位置に持ってきた。
「なァ舞、もうこんな馬鹿馬鹿しい旅、止めないか?オレ達も、闇に身を任せたらいいと思うんだ」
「は…はァ?な、何言ってるのリンク!貴方あの変態魔王の言いなりになろうって言うの!?」
「オレ思ったんだ、オレ達がこの世界を救うためにこんな事する必要ないんだって。
ここで終われば、これからは2人で一緒にのんびり暮らせるんだよ?こんな旅、意味なんて成さないさ」
「!」
『なっ…!?チョッと!いくらリンクでも、そんな事!!』
「ま、待ってナビィ!
……リンク、今の貴方変よ?どうしちゃったの、まさかあたしと別れた間に、モンスターに何かされたの?」
個人的にはちょっとアッチ方向の展開を望むんだけど(望むな)
「オレは、コレが『オレ』だよ。大丈夫、怖くなんてない。慣れれば闇だって心地よくなるしさ。
それに例え近くにいようと、オレならあの方からだって、守ってやれる……」
「【あの方】?」
あの方、って誰の事だか分からないんだけど。それもあわせて、どうしてこんな突然の心境の変化に陥ったのかを問い詰めてやる。
そう決心して、言葉を吐き出すために口を開けた。
…時。
―――ズザザザアァァァ!!
「っぷわ!?な、何だコレ!?」
聞こえてきたまた違う声に、あたしもナビィも、そして可笑しくなったリンクもふり返った。
声が聞こえてきたのは、あたし達も落ちてきた流砂から。今の聞き覚えのある声と音からして、誰かがまた落ちてきたんだろう。
…ん?【聞き覚えのある声】?
「うわっ、何だココ?下が水になってるや」
流砂と共に流れてきた声は、尻餅をついて扱けた体勢を立て直し、下の水と化している地面を見入っていた。
けれどすぐにあたし達の気配に気づいたのか、視線だけ先ず上げ、それに続き嬉しそうに顔を綻ばせ顔を上げた。
「舞!……って、え?」
…え〜っと、もしかして、あたし水に映った影でも見てるのかしら?
「リンク…?」
『ウッソ〜〜〜!?り、リンクが2人ィィィィ!!?』
どうやらあたしの目は正常だったらしい。違う事でホッと安堵。
今あたしをハグしている彼も、流砂から落ちてきた彼も、両方とも同じ顔の作りで、同じ格好だ。
「な…っ、お前誰だよ!?」
「お前こそ誰だよ?オレはリンクだ」
「ば、馬鹿言うな!!リンクはオレだ!今すぐ彼女から離れろ!!」
あっちのリンクは何時もの動作で背中に背負っている鞘からマスターソードを引き抜いた。
ど、どういう事!?まだ整理が追いつかない頭で目の前の状況に視線だけ向ける。ハグしている方のリンクは、まだ抱きついたまま優しい笑みを向けてきた。
「大丈夫だよ舞。あいつはモンスター、偽者だ。
絶対オレが守ったげるからね」
「リンク……、…?」
ふ、と何故か見辛くなったその笑顔から逃れるために視線を足元に移した。その時、何か違和感を感じた。
あたしにはあって、向こうのリンクにもあって、このハグしているリンクには【ない】
「リンク?貴方どうして……
どうして影がないの?」
「!?」
ハグしている方のリンクはバッ、とすぐさま足元を見た。
そして、自分にない影を見て目を驚愕に開く。
しん、とリンクが動かなくなった。自分の影がない事で困惑しているのか、と心配になって覗き込もうとすると同時に、俯いたままリンクはくつくつと笑い出した。
「やられたなァ、まさか影がない事に勘付かれるとは…」
「リンク?」
「この期に及んで、まだその名前で呼んでくれんだな、舞」
顔を上げたリンクは、怪しく口端を持ち上げて笑みを作っていた。見かねたナビィが、向こうのリンクの許に飛んでいく。
『リンク!!こいつ、モンスター!!』
「…!!」
ナビィの言葉でようやく気づいた。そうだ、こいつがモンスターなら、今あたしは…!!
逃げようとその腕から離れようとすると、偽リンクは尚更力を強めた。
ちょ、ちょっ…!逃げない事もあるけどっ、首!!首が絞まる!!(汗)
「つまんねぇの。折角このままあの方の所まで連れて帰ろうとしたってのに、この状況じゃ失敗のようだな」
「っ!お前何者だ!?ただのモンスターじゃないなっ、正体を見せろ!!」
「別にいいぜ、見せてやるよ。にっくき勇者サマに、【俺】の姿をよお」
偽リンクがそう言うと、彼の周りを床の水が包み込んだ。あたしも一緒に包み込まれたんだけど、その水は普通のものと違って、痛いような重いような感覚がする。
辛うじて動かせる目だけ動かして、何やら呟いている偽リンクに視線を移した。同じ水の中だからこそ、今彼がしている事が見える。
瞳を瞑った偽リンクの服が、下から徐々に緑から黒に染められていく。肌の色は焼け、髪はリンクとは対照的な銀へと染められた。
あたしを掴んでいない方の手に盾が現れ、背中には紅いマスターソードが背負われ、周りを取り巻く水が地面へと戻っていく。
「なっ!お、お前…!?」
リンクの戸惑いの言葉が、この静かな冷たい空間に響きわたる。木霊が響き終わると、確認してのように偽リンクは伏せていた大きな蒼い瞳を開く。
向こうにいるリンクを映す瞳は、獲物を狙うように細く鋭く、血の様に紅く染められていた。
「驚いたか?コレが俺の姿であり、お前の姿だ」
『あいつ、リンクの影だヨ!!ガノンドロフの手先で間違いナイもん!!』
「っ、オレの、影…!」
リンクの、ゴクッと唾を飲み込む音が聞こえた。それでも、困惑を見せないようにきっ、と偽リンクを睨みつけ、マスターソードを構えなおした。
「例え自分自身でも、舞は守ってみせる!!」
…リンク、あたしは今キュン死しそうよ(コラコラ)
今にも襲い掛かってきそうな雰囲気のリンクを見かねて、こっちの偽リンクは1つ溜息を吐いた。
「コレでようやく復讐が叶えられるゼ」
「?(復讐…?)むぐ、ぐぐ……っ」
「おっと、悪かったな。今離してやんよ」
「む?(ハ?)」
何を血迷ったのか、偽リンクはすんなりとあたしの体を解放した。わけの分からない彼の行動にポカンとしていると、子どもをあやす時のように頭を2、3回叩かれた。
「俺はこれから時の勇者と戦う。その間、あっちに戻ってもかまわねえぜ、お前次第だ」
「え?い、いや…人質じゃないの、あたし?」
「あ?そこまでやる気ねぇよ。俺は只あいつと戦いたいだけだ。
只1つ、このバトルに手を出したら、そん時はどうなるか覚悟しておけよ」
ぶっきらぼうの言葉を投げかけながら、偽リンクは己の背に背負った紅いマスターソードを引き抜いた。
構えがリンクと違い、すぐに振り下げれるよう頭上に華麗に構えられた。
うわ、カッコいい!(キュン死寸前パートツー)
「この水をテメェの血で赤く染めてやる。
―――来いよ、時の勇者!!」
「!舐めるなっ!!」
リンクはその場から勢いよく駆け出し、マスターソードを両手で掲げた。偽リンクもそれを瞬時に見切り、頭上に掲げていた紅いマスターソードで振り下ろされた剣を受け止めた。
『舞!大丈夫だっタ!?』
「ナビィ…えぇ、何もされてないから平気」
『ヨカッタ!でも、あいつ何がしたカッタのかナ…?』
「分からないわ。只、リンクと戦いたいって言ってたんだけど」
ギィィィンッ!!金属がぶつかり合う甲高い音が、耳の鼓膜によく響く。それによって、あたしとナビィの視線はお互いから2人のリンクに向けられた。
「くっ…!」
「ふん」
偽リンクは軽く片手で薙ぎ払い、振り落とされた事でバランスを失ったリンクに向かって剣を突き立てようとした。
「リンク!」
「っ、まだまだ!!」
すぐさま体を転がせて持ち上がらせると、低い大勢のままそれを利用して偽リンクの足を薙ぎ払おうと横に振るった。
だけど偽リンクは突き立てを中断させ、その場から跳躍する事により、リンクの攻撃をかわす。そのまま落下し、着地地点はリンクの剣先。
『リンク!!』
「っ!」
剣先に乗った偽リンクは、重みが感じられなかった。まるで、重力がない羽のように。
偽リンクは上から見下すと、しばらくリンクを見ていたものの直ぐに鼻で嘲笑った。
「ふんっ、これが時の勇者の実力か…てんでまだ餓鬼だな」
「なっ!?」
「あの方が人目置かれているから期待していたのに…どうして、只の雑魚い人間の1人に過ぎねえじゃねえか。
そのお前が…」
ヒュンッ―――
「俺じゃなくてお前が表にいる事が憎い」
偽リンクはリンクに当たるか当たらないかという所に剣先を留めた。
「オリジナルが憎い。光が憎い。
“闇の光”を守る権利を持つお前が、憎い!!」
「(闇の光?何だ、それ…)」
「テメェみたいな弱者が、時の勇者に選ばれる素質なんてねぇんだよ!!」
「っ!弱くなんか、ない!!」
剣の柄を持つ彼の手に力が込められ、それは垂直に上に振り上げられた。偽リンクは飛ばされた反動により、冷静に宙で一回転して体制を整えた。
偽リンクが水の地面に足をつけたと同時に、リンクはマスターソードを突き出した。
「守る人がいるんだ!!お前なんかに、この『強さ』は分からない!!」
「ハッ、甘ちゃんだな!
そんな甘い考えで、闇の力に敵うと思うな!!」
2つの金と銀が、同じ刃を交じ合わす。
……ナビィ、あたしあの空気に入れないわ。
だ、ダイジョブだよ!…多分、次回は
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