29.真っ黒黒すけ偽リンク
初めて見たのは、
「ようやく完成したか」
身を引き裂く程冷たい、周りを囲む水と
「何をしている馬鹿者が!!」
「どうして…どうしテ僕が、こんな目にあわなキャいけないんだよォ…!?」
真っ黒い肌の男と、闇の中
「ヒッヒッヒ、お前さんも運が悪いノ〜」
「ケケケ、時の勇者かぃ」
その中、待ち受けていたものは…
体を痛みつける数え切れない程の拷問
「僕は、ダレに似せられたの…?」
「心を、持つんじゃないぞ」
押しつぶされる闇の重圧
【コレハ、勇者ノ影サマ!!】
そして……
「やはり、笑顔が似合うな」
「―――…?これ、は?」
真っ黒の絶望の中、一際輝く光の画
真っ黒黒すけ偽リンク
『頑張れリンク〜〜!!』
「右!左!!あ〜、もぅ!
そこは思いっきりフックでしょ!!偽リンク!!」
『Σ敵の応援だッタの!?』
聞こえない心の声で冗談と言っておこう。
皆さんこんな所からこんにちは。只今流砂の中の部屋で双子もどきの美形により、チャンバラ劇が繰り広げられています。
因みにあたしとナビィは木に凭れ掛かりながらその試合観戦。え?助けないのかって?
ヤだなァ、そんなの無理に決まってるでしょ。今あの中に入っていけば首チョンパ、自ら飛び込んで自殺という結果にしか為りかねないわ。
「あ``ぁぁ、ウゼェ!!雑魚なら雑魚らしくさっさとくたばっとけ!!」
「雑魚じゃないって言ってるだろ!?」
キィィン!と言う金属がぶつかる音は何度目だろう。2人とも、所々服を千切りながらもまだその死闘を終えようとしない。
息遣いも荒い、付け足して言うとその姿は何ともエロい。
「ねェナビィ、今のリンクも偽リンクも凄いエロカッコいいよね」
『…舞、涎拭こウね』
おっと。ナビィに注意を受け、慌てて垂れようとしていた涎を拭き取る。あたしの考えに何も言わないという事は、ナビィはあたしという人物が分かってきたのか?
それにしても…
「消えやがれ!!」
「負けて溜まるか!!」
あの2人、いい加減に戦うのを止めないと、体がもたないんじゃ…?
これは本気で心配してる。だって、この後神殿のボスとも戦わなくちゃいけないのよ?それに、あの2人が死ぬと、色んな意味で困ってしまう!!(どんな意味だ)
言葉では絶対に聞いてくれない。なら行動で何とか止めないと!
…と、思うのは山々なんだけど。さっきも言ったように、あの中に自分から入っていくと自殺行為となる筈。
そんな中に飛び込む程、あたしはすごかない
「どうしようナビィ。このままじゃあの2人、体が持たないわ」
『ウ〜ン、そうだナァ…何か投げルとかドウ?』
投げる?と言っても、この空間の中で何を投げろと言うの。
水か?アハハうふふとどこぞのバカップルのように水でも掛け合えと?言葉どおり、勝負に水を差してしまって…偽リンクに何されるか分かんない!!(汗)
他に何か…きょろきょろ、と辺りを見渡そうと、近くには枯れ木が一本。それ以外には……
…んぉ
『ン〜…、ん?どしたノ舞?』
「ナビィ、ゴメン」
『へ?』
ガシッ
『え``』
透明の羽を掴み、舞選手!キャッチャー(ダブルリンク※戦闘中)に向かって大きく振りかぶりぃ、
「妖精ミサイルゴォーーー!!」
『キャァァァァァァァァ!!!』
投げたああぁああぁぁぁああぁぁああああ!!!
ゴオォォォォ
「「ん?」」
ベチイィィン!!
「はがっ!!」
「ぐぁっ!!」
ストライク。何と凄い、自分で自分を褒め称えましょう。
小さなガッツポーズを密かに決め、水の床に突っ伏した2人と1匹に駆け寄った。
「リンク!大丈夫?」
「いひゃい(涙)」
『もゥ!!何するノよ舞〜〜〜〜!!』
「お、怒らないでナビィ!ごめんってば、本当にゴメン!」
顔面を食らった涙目のリンクと、いきなりぶん殴られた怒り狂うナビィを宥めて、落ちた剣を拾おうとしている偽リンクに近づいた。
「ちょ、ちょっと!もう戦おうとしちゃ駄目よ!」
小さい子を叱るみたいに、偽リンクの紅いマスターソードを奪い取った。偽リンクは「あ!!」と驚いたものの、小さく舌打ちして俯いた。
「くそっ、こんな呆気ねぇ終わり方とは思わなかったゼ…」
「どうしてそんなにリンクを殺そうとするの?彼は貴方に何かした?」
「そいつの存在ある限り、俺は一生勇者の【影】として生きてかなきゃならねぇ!!それだけで、俺にとっては屈辱的だ!!」
弱みを見せない強い、鋭い眼光で睨み上げてくる。不思議とあまり怖くなくて、それは後ろから立ち上がって近寄ってくるリンクの気配に敏感になれる程だった。
「オレの影なんて、どうして思うんだよ?只のドッペルゲンガーって思ってたらいいだろ?」
「ふんっ、あの方…ガノンドロフ様が俺を作ったんだ、しかもお前に似せてという証言付きだってのに、何を夢見ろってんだ」
『……アイツ、リンクの影なんて作っテどうすルつもりだッタんだろウ?』
偽リンクの、憎しみしか宿っていませんというような瞳は、忌々しいものを見る目つきから変わらない。
変わることなくそのまま、リンクを見上げて血が垂れる唇を拭った。
「いつまでべらべら喋ってるつもりだ。
情けなんてかけねぇで、さっさと止めをさしやがれ」
「とどめ?」
「息の根を止めろって事よ、リンク」
「!こ、殺せって言うのか!?な、何でオレがそんな事を…!!」
「今の俺は武器も持ってない、格好の的だろぅが。今狙わないでいつ狙うってんだ。」
彼の武器、というのはあたしの手の中にあるこの紅いマスターソードの事だろう。多分、リンクを憎んでいる以上、彼は生きている限り幾らでも憎しむ。
リンクのものより軽い紅いマスターソード。それに視線を向けてきた彼に見えるよう持ち上げる。
「……勘違いしてるんじゃないのか?オレは、人殺しなんてしないよ」
「ハッ、偽善者気取りか」
「!なんだと…」
「何が人殺しはしねぇだ。ならモンスター殺しならいいってのか?
中途半端な気持ちで俺に情けをかけるのも、時の勇者を務める事もすんじゃねえよ!!」
『リンク、挑発に乗っチャ駄目』
「…ナビィ、大丈夫だよ」
少し、さっきよりも顔の向く方向が下になってる。きっと、今の偽リンクの『偽善者』が痛恨のダメージになったんでしょう。
…あたしもねリンク、貴方にその言葉を言われたのよ。
「いいか、俺を生かせばお前らは後悔する事になるぞ。これから毎日、周りに気を掛けながら生きなきゃなんなくなる」
「………」
「そんな…簡単に命を捨てようなんて思わないで」
「闇の世界に住む以上、そんな覚悟とっくの昔から出来てんだよ。寧ろ、消えてくれた方が清清…」
「っ、ふざけるな!!」
――カランッ
「!!」
「!…リンク」
乾いた音が響き渡る。その原因は、リンクが放り捨てた紅いマスターソードの音。思った以上に固体化された水の上で、その音を響き渡らせた剣は、偽リンクの真ん前にある。
手を伸ばせば、それでリンクの首だって獲れる程の距離だ。
「なァ、お前って、どれくらい生きてきたんだ?」
「!!…何言ってんだ、俺はすぐさま作られた兵器だ」
「それ、嘘だろ?お前の喋り方って、他のモンスター達に比べて、発音がはっきりしてるんだ。
それって、小さい頃に言葉を教えてもらってじゃないと出来ないんだよ」
「……」
話し方と言うのは、赤ん坊の頃から周りの人たちの話を聞いて、それで徐々に喋りだしてくる。
確かに彼の言うとおり、即席で作られたのなら片言になっている筈。
「生きてきた数を、何で隠す必要があるんだ?
ちゃんと生きてきた毎日があるのに、それがどうして”人間”じゃないんだよ!」
「っ!だまれ!!光に住むテメェに何が分かる!?」
ガッ!と勢いよく自分の武器を掴み、偽リンクはリンクの首元に剣を突き出した。『リンク!!』と叫んで駆け(飛び)寄ろうとするナビィを片手でストップ。
「オレにお前の気持ちは分かんないよ。だから…殺しても、別にいいよ」
「んだと…っ」
「抵抗しないから、オレは」
リンクは、怯える事なく、真っ直ぐと前を見据えた。偽リンクの剣が、リンクの喉に食い込む。
…直ぐに、手をカタカタと震えさせながら。
「くっ…」
「……」
『も、もう止めなさいヨ!』
「ふっ、ふざけんな!!くそっ、動けよ!動けよ!!
今動かねぇと、俺が今、此処にいる意味が…っ」
自分のこれ以上動かない腕を左手も加担させて、無理矢理動かそうとした。強く握り締め、長く尖った爪が食い込み、自分の腕から血が流れようとも、動かそうとしている。
「やっぱり…。お前にオレは殺せないんだ」
「んだと…っ、俺はお前と違って、冷酷で、人だって簡単に殺せる闇の魔物だぞ!!」
「でも…それでも貴方は、リンクの影でしょ?
口を挟むようで悪いけど…良心の強い彼の影なら、貴方にも良心が残っていると思うの。
だから…」
「!!」
何かに気づき、目を見開いた偽リンクはその体制のまま固まった。その隙をつき、リンクは偽リンクの突き出した紅いマスターソードをゆっくり首から離した。
そのまま剣が偽リンクの手から離れ、水の地面に乾いた音と共に落ちた。
『リンク!大丈夫!?』
「ああ、平気だよ」
『よ、良かっタ〜〜…心配したんだヨ!!』
「リンクは、大丈夫だけど……」
ちらりと横目で見ると、視線の先にいる偽リンクは、俯いたまま動かなかった。虚ろな瞳は、冷たさが残る水を写し、その唇が重々しく動かされる。
「……すっかり忘れちまってたぜ、テメェが甘ったるい程お人好しの時の勇者だって事。
そんなオリジナルを憎たらしいと思ってた程なのに…」
「オレは、お人好しだから…いつも皆に迷惑かけてフォローしてもらってるんだ。
だから1人で生きる事なんて出来ないオレの影なら、君にも仲間が必要だと思うよ」
「…いらねえよ、仲間なんて。影は、主に着いていく孤独の存在だ」
ポツリ、と呟かれた偽リンクの言葉は、この冷たく静かな部屋に似合うものだった。
覇気をなくして暫く俯いていたものの、偽リンクはどこか先を指差した。彼が指差した方向で水が下からせり上がり、彼が正体を見せるときのようなものが現れた。
黒を含んだ水が地面に戻っていった時、そこには空間に浮かんだ黒い扉があった。
「やるよ。この神殿のボスがいる部屋のカギだ」
ピンッ、と指で弾いて渡してきたのは、炎の神殿で見たものと非常に似ている、金色の大きなカギ。
それが手中に落ちるのを確認すると、リンクは鞘に剣を納めて扉を見た。
「いいの?ボス部屋のカギなんて渡すと、後から貴方が…」
「別に。どうせ待ってんのは拷問か、存在の消去だけだろ」
『そ、それッテ…!十分酷い仕打ちジャないノ!?』
「いいんだよ…
出来損ないの部下は、やる事無くなったら何もかも消されるんだからな。その為に最初から何も持たされねぇし」
「そう言えば、貴方の名前は?偽リンクだと可笑しいし」
「言っただろ、いつか役目が終わる奴は、最初から何も持たされてないって」
「ってことは…名前さえつけられてないのか!?」
当たり前だろ、と呟き、偽リンクは傷だらけの体を剣の力を支えに持ち上げた。幾ら自分の手下だからと言っても、名前ぐらいつけてあげればいいじゃない。
そう文句を言っても届く事もなく、どうせ変態になった時から頭が可哀想になったんだろうと、ほとんど決定的に決め付けて終了させた。
「ねェ、今更だけど貴方って、リンクの影なのよね?」
「ああ」
「じゃあ、そうね…
『ダーク』。
ダークっていうのはどう?」
「…は?」
「ほら、名前よ。ダークって闇って意味でしょ?見た目ダークリンクだから、そこからとってダーク」
『スゴ〜イ!いいネそれ、流石舞!!』
「これから消されるかもしれないから、って言っても名前をつけるぐらいタダでしょ?
だからね、いいわよねリンク?」
「うん、オレもいいと思う。ダークってのいいと思うよ!」
勝手に決めていくあたし達の会話に、偽リンク、もといダークは半ば放心状態でこっちを見ていた。
その視線の中に、哀れむような感情が込められているのは、あたしの気のせいであってほしい。
「…お前ら、馬鹿だろ」
「よく分かったわね」
「Σせめてそこは否定しようよ!?」
「兎に角、これから貴方はダークよ。それを忘れないでね」
「…気が向いたら、覚えておいてやるよ」
「なら良かった。絶対に忘れないでね、それと変態魔王に消されないように」
「変態?…あァ、ガノンドロフ様の事か」
『(分かルんだ)』
すぐそこにある扉に向かって足を進め、普通の扉と全然違う所があるようには思えない、その特別な扉の取っ手を握った。
少し手前に引くと、そこは最初にやってきた、神殿の中央部だ。あたし達より先に到着したルト姫の後姿が、ここからだと見えた。
「オレ達行くよ。ダークはココから逃げて、ガノンドロフの目が届かない所に行けよ」
「ふん…テメェに指図される筋合いねぇよ」
『リンクの影なノニ、随分と捻くれてル性格だネ(汗)』
「きっと、生きてたらまた会えると思うわ。だから、それまでちゃんと生きててね!」
少しずつ、この空間が向こうから消えかかっている。
急いでこの部屋を出た方が良さそうだと判断して、あたし達はお互いの顔を見合わせた。
「じゃァ行くわ。またねダーク」
「またな!!」
「……」
―――バタンッ
扉が閉められた事により、タダでさえ静かな空間が更に静寂に包まれた。ダークは、静かに俯いたまま、横目で消えかけた空間の方へ視線を移した。
――やる事全部、終わった――
もうすぐで、自分の所にも達しそうなその無機質な空間に怯えること無く、彼は瞳を閉じた。
「ダーク……」
自分にさえ、聞こえるか聞こえないか、それぐらいの小さな声で、ダークは自分の名前を呟いた。
自分より離れた所にあった枯れ木は、既に無機質な空間に飲み込まれた。
それを見たとき、ダークの瞳は悲しそうだった。
無機質な空間…おそらく、あと数メートルで、自分も取り込まれるだろう。
「主を失った……俺の、名前…」
ダーク……――――。
**
「遅いぞお主ら!!わらわを一人で待たせるとは何事ゾラ!一人で心細かったのだぞ!!」
「その割には豪く息絶えたものがたくさんいますね」
あたし達を待っていたのは、額に青筋を立てたご立腹のゾーラの姫君だった。
彼女の周りには既に息絶えたモンスター達の山が。因みにルト姫、その死骸の山の上に堂々と座っています。
「ふん、わらわの邪魔をしたのじゃ、これぐらい当然の仕打ちゾラ!!」
『つまりハナビィ達が遅いコトで溜まっタストレスを、モンスターで解消シテたんだネ』
「大変よリンク!
これってやっぱり子どもの頃にサリアと会わせたのが間違いだったのかしら!?」
「Σこの戦闘能力ってサリアから伝わったのか!?」
この恐ろしさ、黒さは無くとも怖さが酷似しているもの。しまった、あのまま上手く育っていれば只のツンデレ娘になっていたのに…!!
1人姫の教育失敗に握りこぶしを震わせているが、ルト姫は真剣な顔であたし達をそれぞれ見た。
「じゃがしかし、少し急いだ方が良いゾラ。最初に比べ、モンスターの数が多くなっておる」
『きっト、今まで静かダッタ分、ナビィ達が侵入したのニ気づいて排除しヨウとしてるんだヨ!』
「なら急いでボスを倒そう!もうボス部屋のカギなら手に入れたから」
そう言ってリンクが取り出したのは、さっきダークに貰った金色のカギ。ルト姫も収穫なかった分、そのカギを見て喜びの声を上げた。
さて…これで向かう先はもう決まった。
「いよいよじゃな。ようやく…父上達を助ける事が出来るゾラ」
「頑張りましょう、ルト姫」
「うむっ、協力してたもれ!」
**
++inボスの部屋++
「ココが…ボスの部屋か。」
「随分と静かなのね?」
中に入ると、今までとは違う形の部屋。中央に切り取られた穴の中には、数個の小さな足場と、薄い色の水。
周りの壁にはびっしりとトゲがつけられているが、それ以外、危険と思われる所はない。
『静カな分、何がイルか分かんナイよ!気をつけテ!』
「ああ、大丈夫だ!」
意気込んだリンク。直ぐにでも戦闘が出来るように、背中に掛けてあるマスターソードの柄を掴んだ。
引き抜こう…とした時、中央に溜められた水が変に揺れた。
「?何だ?」
興味本位で覗き込もうとするリンク。
「待てリンク!迂闊に近寄ってはならんゾラ!!」
ルト姫は何かに勘付いたのか、慌てて水場に近寄ったリンクを制止した。その言葉に弾かれ、近寄ったリンクは慌てて右足を後ろに引く。
…が、時既に遅し。
―――ぐんっ!!
「うおぁっ!?」
バシャアァァアン!!
「リンク!!」
何かに躓いた、或いは…引き摺られたリンクは、見事水の中に滑ってしまった。盛大にたてられた水飛沫に驚きながらも、あたし達も慌てて近寄る。
「待て舞!
…何かおる!!」
「え?」
肩を抑えられ、またルト姫に止められる。踏みとどまった瞬間、水の中から何かが飛び出してきた。
否、正しく言えば…固体化した水自体が、襲い掛かってきたんだ!
『リンク!!』
「あ、あれ何!?」
「あの固体水状モンスター、海の王者モーファか!!」
ルト姫がモーファと呼んだものは、水なんだけど普通のものより固体化してる。ダークと会ったあの部屋の床の性質と似ているんだ。
ぐるぐる巻きになった一部の所で、リンクが縛られていた。
「く…くそっ」
「リンク!」
【我ガ主、ガノンドロフ様ノ為ニ!時ノ勇者ヨ、死ンデモラウゾ!!】
モーファ喋れんだ
どうして強い彼がこんなに苦戦してるのか、理由は簡単だ。縛り上げられている事で、マスターソードが抜けない!
こんな事していると、彼がいつ圧迫死させられるか分かったものじゃない。
「待っておれリンク!今すぐ助けるゾラ!!」
隣に立っていたルト姫は駆け出し、刃物のように鋭くした己の鰭を使い、モーファの体を切り刻んだ。
だけど、水である相手はすぐに融合し、全く効いていない。
ぐいっ!
「うぅわぁ!?」
『舞!!』
何かしようとした矢先に、今度はあたしがモーファに捕まった。同じ位置に立てた事で、リンクとの距離は近くなったけど…
「舞!!だ、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫よっ、只…ちょっと苦しいというか…」
思ったよりも強い力で締め付けてくるモーファの力。固体化した水とはいえ甘く見ていた。
「くそっ、やらせんぞ!」
【邪魔立テヲスルナ、小娘!!】
同じ事を繰り返そうとしたルト姫。だけど、彼女もまた動きを止められた。モーファが吐き出した硬いシャボン玉のようなものに閉じ込められて、動きを制限されたからだ。
「や、破れん!」
「っ!くそっ、邪魔するな!!」
必死に暴れ狂い、リンクはその触手から逃れようとしている。あたしも何とか逃げようとするものの、リンクよりも非力なあたしにはどうする事も出来ない。
【愚カナ】
モーファの力は緩む事無く、それどころか、抵抗しだした事に怒り、今度はあたし達を掴んだままぐるぐる回し始めた。
「わああああああ!!?よ、酔う〜〜!!(汗)」
『ど、どうしよう!どうしヨウ!!』
「ちょ、舞!!今になって思ったんだけど!!」
何!?振り回されながらも聞こえてくるリンクの声に耳を傾ける。何か、抜け出す手でも思いついたの?
「この、この感触…!!」
「かか、感触!?」
「炎の神殿にいたライクライクの記憶が蘇るーーーー!!!(涙)」
「悪いけどあたしにゃ分からん」
頑張れとしか言えないよ
一向に攻撃の手を休めようとしないモーファ。いい加減、本当に苦しい!圧迫感に加え、この浮遊感。
中のものが出てきそうで、自分でも顔が青くなっている事が分かる。
『ルト姫!出れソウ!?』
「い、いかん!硬くて破れんゾラっ」
『どど、どうしヨウ。モーファのアノ目、アレを攻撃すれバあいつも死ヌんだけど…!!』
此処からだと視界に少し入るナビィが慌ててオロオロしているのが分かる。正直、顔に血が通っている感覚なんてない気がする。
いっその事死にたい気持ちが一杯で、本当に今の自分が苦しいことが痛いほど分かる。
『どうしたラ……
…!そ、そうダ!!もしかしたラ!!』
ナビィの声が聞こえて、何事かと思って見れば…彼女は何処かに行こうとしていた。慌ただしい様子で、何かをしようとしているのか?
【ホゥ、中々賢イ妖精ダナ。仲間ヨリモ自分ノ命ヲ選ブトハナ】
モーファの忌々しい言葉は、ほんの少し、あたしの中の希望を打ち砕いた。そうじゃないとは思ってる。
でも、そんな追い打ちをかけるような言葉を言われると、やっぱりそう揺らいでしまう。
「(死にたく…ないのにっ)」
最後の力を振り絞って出てきたのは、強く行きたいと思う気持ちと、その思いを砕くような絶望の涙だけだった。
それを最後に、視界が真っ暗に変わる。
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