30.旅に道連れ



7年の歳月、たったそれだけで、人というのは変わってしまうものだの。


以前、わらわの大切な宝物を取り返すのに協力してくれたよき仲間達。


リンクは以前に比べ逞しく、凛々しくなっておるゾラ。何だか、ちゃんとした男になったの。わらわは嬉しいゾラ。


舞も前よりもっと美しく育ったな。そして、以前よりも強くなった真っ直ぐな想い。わらわには少しだが分かるゾラ。


まさかまたもや彼らに力を借りる事になるとは思わんかったゾラ。
もう迷惑はかけとうなかったからな。


じゃが…この危うい危機に陥り、今2人とも危なくなっておる。わらわの所為じゃ。
わらわが頼んだばかりに、彼らがこのような事になってしもうた!!


いかんゾラ…強い光をもつこの2人を死なせてはっ
わらわのよき友を救い出さねばなるまい、必ずに!!














旅に道連れ















密室された冷たい空間。その中で今、命を失うか失わないかの瀬戸際にいる。
水の神殿のボス、モーファ。こいつは今までの奴らに比べ、断然に強い!ルト姫は閉じ込められ、俺と舞は捕まり、手も足も出ない状態だ。


「くそっ…!」


何とかしてこの状況を打破しないと、オレたち全滅だ!


「り、リンク!舞の様子が可笑しいゾラ!!」


こんな状況でも、やっぱり仲間の事を気に掛けなくちゃいけない。ルト姫の声に反応して、首を動かす事が出来ないから、横目で舞の方を向いた。

ほんの少ししか見えないけど…彼女の目が、伏せられている。
よく見れば、全身の力が脱力している?


…!息をあまりしていない!?


「舞!し、しっかりして!!」


イヤな思いが体を駆け巡り、苦しいにも関わらず大声を出した。顔色が悪いし、気を失ってる。今ならまだ大丈夫かもしれないけど…早くしないと、このままじゃ彼女が!!


【クク、ドウスル時ノ勇者ヨ。
心配スルナ、コノ少女、死ナセハセンゾ。マァ、イッソ殺シテクレタ方ガ楽ダロウガナ】

「ふ、ふざけるな!!これ以上舞を苦しめるような事するんじゃない!!」

【ソレハドウカ…ソレヨリ、人ノ心配ヲシテイル場合デハナイノデハナイカ?】


分かったように、モーファは尚更力を強めた。一瞬グラリ、と視界が歪んだ。嘔吐感が集い、それは全身に痛いほど思い知らされてるようだ。


「リンク!!」

「かはっ、くっ…くそぉっ…!!」


地面に降りれれば、こんな奴、直ぐにでもやっつけてやるのに!!頭で思うのは簡単だ、でも行動に移すにはそれ相応の運か力がないと敵わない。
徐々にオレの意識も朦朧としてきた。視界が歪む、顔が真っ青になるのも分かる。


【終ワリダナ…ソロソロ最期ニシテヤロウ】


ぐん、と浮遊感が増した。それに比例して、自分のいる高さも上がる。天井すれすれまで上げられている事から、自分が叩きつけられるという予感が浮かんだ。
勢いをつけて、オレの体はモーファから放られようと掲げられた。


「(くそっ!負けて…負けて溜まるか!!)」




―――ザンッ!!



【グアアアァァアアァァァァアァアァ!!?】


ドサッ!


「ッ!ゲホッゲホッ!!うぇっ…な、何だ!?」


体が地面に叩きつけられた。でもそれは、思っていたほどのものではなく、どちらかと言うと、自然に落ちた殴打感。
そして、


「ったく、やっぱり弱ぇな、時の勇者様ってのは」


降り注がれた、軽い溜息が混じった、聞き覚えのある嫌味ったらしい口調。流れを止められた血が顔まで達し、一気に意識が覚醒し始めた脳で、今の状況を確認しなおした。

一緒に落とされた舞とオレを庇うように、前には黒い壁が立ち塞がっていた。


「なっ!ダーク!?」


紛れも無く、立ち塞がった黒い壁は、オレの影でありガノンドロフの手下のダーク。
さっきの消えかけた空間。もしかしたら飲み込まれたか、逃げたかのどちらかを予想していたオレは、それが無くとも正直言ってその光景に信じられなかった。


「お、お前…助けに来てくれたのか?」

「勘違いすんな。光が鬱陶しく俺を引っ張ってきたから、連れて来られただけだ」

「光?」


光って…何だ?オレの考えを読み取ったように、オレの目の前に光が飛び込んだ。


『Heyリンク!大丈夫だッタ!?』

「ナビィ!お前が連れてきてくれたのか!?」

『ウンッ!リンク達が頑張ってるんだモン、ナビィだって何かしなくチャ!!』


明るく言ってナビィは『回復するネ』と言ってオレ達に淡い光を振りかけてくれた。そのお陰か、オレの調子も良くなったし、少しだけ舞の顔色も良くなって呼吸も安定してきた。

ホッ、と安心していると、邪魔されたモーファが怒りだした。


【オノレ…!勇者ノ影ヨ!!貴様裏切ル気カ!?】

「何だよ。俺は命令に失敗したんだぜ?今から戻った所で、痛〜い仕打ちしか待ってないんだ。だったら逃げた方が賢明だろ?」


ニヤッ、と怪しく笑い、ダークはオレの物と似ている、紅いマスターソードを指でくるくると回した。


「『強く残酷に賢明に生きろ』
…あいつの口癖だったよな」


少しだけモーファが唸るように声を上げた。


「な、何じゃあやつは…?リンクにそっくりゾラ」

『ルト姫、安心して!彼はナビィ達を助けニ来てくれたノ!』



【恩知ラズメガ…態々我ガオ前ノ舞台ヲ用意シテヤッタト言ウノニ…ッ】

「はんっ、俺が世話してやったんだろうが」


【使エヌ失敗作程イラヌ物ハナイ!勇者諸共消エテ塵トナレ!!】


モーファの触手が何十本と分裂して向かってきた!ダークは回していた剣をしっかり握り直し、向かってきた一本を切り裂く。
けど、幾ら攻撃してもそれはまた合体してしまう。これじゃァ、キリがないっ


「おい!こんな雑魚触手俺が相手しててやる、テメェは奴の核でも狙え!!」

「え!?で、でも…お前元々味方だったんだぞ?なのに、殺してもいいのか!?」

「…あぁ、うっせえなっ
俺は主がいなくなった『ダーク』だぞ!?今更誰かに仕える気なんてあるか!!」

「!わ、分かったっ、ありがと!」


返事が返ってこない事を承知で、背中に掛けた鞘からマスターソードを引き抜いた。盾となってもらったダークの背後から飛び出して、一直線に目玉のようなモノを狙う。


【何ッ!?】

『モーファの弱点はアノ目玉みたいな核細胞ダヨ!』


「リンク!引きずり出して一気に叩くのじゃ!!」

「分かった!食らえ、フックショット!!」


大きな音を立て、フックショットの刃の部分が水を突き破り、モーファの核を突き刺した。そのまま引っ張り、見事核が飛び出してくる。


【キ、貴様ッ!?】

「よくもやってくれたな!このまま消えろ!!」


フックショットで身動きが取れなくなったモーファに向かって、マスターソードを一気に横振りに振るった!


――ザシュッ!!


ギャアァァアアァァァアアアア!!バ、バ馬鹿ナ…ッ、コノ私ガガ!馬鹿ナ、アァァァァァ!!】



最期のもがきのように、モーファはその小さな体を飛び跳ねさせた。数秒と経たない内に、体を震わせながら、青い炎に包まれて消えてしまう。
触手たちも大人しくなり、地面に溶け込むように消えていった。


――パンッ!


「おぉ、出られたゾラ!」

「ルト姫!大丈夫か?」

「うむ。…!舞!!」


シャボン玉のような檻から抜け出せた彼女は、すぐさま横たわっている舞の許に駆け寄った。
オレも急いで走って傍に駆け寄る。


「舞!大丈夫か!?」

「…息は正常じゃ、顔色も良いゾラ。少し休めばまた元気に戻るじゃろう」

『よ、ヨカッタよ〜』


安心して気が抜けたナビィは、ひらひらと落ちてオレの頭の上に降りた。舞は大丈夫そうだ、ほんとに心配したから……よかった。


「(あっ)」


オレは舞をルト姫に任せて、マスターソードを仕舞ってから後ろへ向かった。そこには、手をパンパンッと叩いているダークがいる。


「ダーク!さっきは本当にありがとう、助かったよ!」

「…何だその手」

「握手だよ。お礼の握手!当然だろ?」

「あのなァ、だから言っただろ?俺は……」


ダークはオレの差し出した手を見て、途中で止めて一度溜息をついた。


「さっきも言ったように、俺は鬱陶しいあの妖精を払おうとして上手くおびき寄せられたんだ。お前らを助ける気なんて、これっぽっちも持ってネェ」

「それでも、ありがとう!もう少しで死にそうだったんだし、感謝してるよ!」

「…お前…ホンットにお人好しだな」


ふいっ、と向こうを向くことによって、ダークは結局オレの手をとってはくれなかった。行き場の無くなった手をぶらん、と垂れさせて、ダークの反応に頭を掻いた。

モーファがいなくなった場所に、何度も見る青い魔法陣の光が現れた。


「あそこに入ったら外に出られるんだ」

「丁度いい。こんな所、さっさと出させてもらうぜ、俺は」

「皆一緒に行こう。ルト姫!舞はオレが連れて行くよ、君は先に入って」

「うむ、分かったゾラ」


先に彼女を行かせる。これって、レディファーストって奴になんのかな?兎に角、横たわっている舞の体を持ち上げて、ずり落ちないように持ち直す。
オレ達を心配してくれたのか(本人は絶対認めないだろうけど)ダークはこっちを見てから光に入っていった。

頭の上にナビィを、腕の中に舞を抱え、意識が飛ばされる青い魔法陣の中に足を踏み入れた。



















***




++in賢者の間++












以前と違って、意識が既に目覚めた状態。そのままでオレはいつもの中央に立った。
光の柱が立っているのは、予想していた通り、青いメダルの盤。光の柱を伝うように下りてきたのは…


「……む?な、何じゃココは!?」

「ルト姫!?」


さっきまで一緒に戦った仲間の1人、ルト姫だ。今の自分の状況についていけず、慌てふためいている。
賢者って事、知らなかったんだな(汗)


「リンク!わらわは何故ここに?」

「どうやら、ルト姫がオレ達の探していた賢者のようなんだ」

「賢者…?わらわが、か?」


素直に首を縦に振る。まだ違和感があるのだろう、だけどルト姫は目を瞑り、次に開いた時には決心した真っ直ぐな目がそこにあった。


「そうか、ならばこれから、もう二度とゾーラの里に悪さが出来んように見張らなければならんゾラ」

「ああ、ルト姫、君なら出来るよ!」

「そなた等には真に感謝致す。ゾーラ族を代表し、礼を言わせてもらうゾラ」


恭しく頭を下げる。今頃になって、ルト姫がこの7年の間に成長したのが伝わってきた。


「さァ、里が戻った暁として、今こそ夫婦の契りを交わそうぞ」

めおと?ち、ちぎりって?

「…ふふ、やはり中身は成長しておらんようだの。まァ、お主らしいゾラ」


何の事やらさっぱりわかんないけど、とりあえず褒めてもらえた。
ヘヘッ(照れ照れ)


「愛する我が人、そして素晴らしき良き友。そなたらを信頼した証とし、この神殿に伝わりしメダルを授けようぞ!
有難く受け取るが良い!」


頭上に掲げられた手、それに降り立つように、青色のメダルが下りてきた。宙を彷徨い、それはオレの手の中に下りてくる。

きっと、これが第4のメダルだ!残るメダルは、あと2つ!!


「その水のメダルは我らが信頼の証…大事にするゾラ」

「ありがとうルト姫!お互い頑張ろうな!!」

「うむ。さて、そろそろ行くがよい。我が友、舞を必ずや守り通せ」


ルト姫の言葉に1つ頷くと、視界が一瞬ぐらりと揺れた。それに連動して遠退いていく意識に、大人しく身を任せながら…








――リンクよ、ずっと愛しておるぞ…
お主が例え、大切な人を見つけても、この気持ちは変わらんゾラ……
















***











『リンク!目を開けて!』


聞きなれた相棒の声に反応して開かれた目。一番に飛び込んできたのは…晴れ晴れとした青い空と、反映するかのような青い湖。
元に戻ったんだな…!


「へへ、コレで4つ目だ」

『お疲れ様!あと助ける賢者様は2人だヨ』


「リンク…」

「!舞!!大丈夫か!?」

「ええ、平気。リンク達が助けてくれたお陰だもの」


まだ疲れは残って見えるけど、さっきまで意識を失っていた舞も回復していた。木に寄り添っている彼女の近くには、ダークもいてくれた。


「ダークもありがとうな!」

「何回お礼言やあ気が済むんだ?」

「え?いや、その…」


溜息をつかれたけど、それと同時に少しだけ口元に笑みを作っていた。初めてだと思う、ダークのその笑顔に、嬉しくてオレも笑ってしまった。


「ねェダーク、貴方はこれからどうするの?」

「さぁな、気ままに一人旅でもさせてもらうか。何かとお前らといると疲れるからな」


寄り添っていた木から身を離し、ダークは服を簡単に払う。そのままいなくなろうとしてか、橋の方へと振り返った。


「………オイ、何だこの手」


が、行きたくても、行かせないというように舞がダークの服をがっしり掴んでいた。意外と力強く抑えているのか、ダークは全く動けそうにない。


「一人旅だなんてそんな寂しい!!行く当てがないなら、あたし達と一緒に行きましょう!」

はぁ!?ふ、ふざざけんじゃねえ!!何言ってんだテメェは!?」

「舞、そんなにダークと一緒がいいの?」

「え!?や、ホラ…つ、強い仲間が一人でもいると心強いじゃない!?リンクだって旅が楽になるわよ!」


何をあたふたしているのか聞きたいけど、ちょっと今の言葉にムッ、ときた。オレの力だけじゃ、不満だっていう事なのか?
確かに今回はダークがいなかったら危なかった…でも、オレだって、舞を守る力ぐらいあるさ!!
それなのに……(ぶつぶつ)


「(こんな美形を放ったらかすなんて、腐女子として許せない!!なんて言えないわよねェ)」←本音


「あのなァ、馬鹿言うんじゃねェよ。これ以上自分から疲れるような真似俺がすると思うか?」

「無理矢理させる」

「ざけんな」


どれだけ意地張ってるのか、舞は火花を散らしてまでダークを逃がそうとはしなかった。それを見ているリンクも不安と、さっきの文句の2つが入り混じり、変な感情が生まれていた。


『コノ光景も凄いよネ〜、結構貴重カモ』


観戦者、ナビィはウンウン、と1人頷いていた。
…何に


「………何をしているんだ君たちは

『?あ、シーク!リンク、ほらシークだよ!!』


ナビィの言葉に逸早く反応したのは、呼ばれたリンクではなく(腐)
ダークの服を掴んだまま振り向いた事で、ダークもつい一緒になってふり返る。彼にとっては初めて見る、シーカー族の生き残りがそこにいた。


「シーク!見てよ、また1人新しい仲間が増えたの、ダークって言うのよ!」

だから誰が仲間になるっつった!!(汗)勝手に決め付けてんじゃねェ!!」

「…君は、ガノンドロフに作られた、リンクの影か?」

「ああそうだ。あの忌々しい『ガノンドロフ様』から作られた者だ。
…テメェこそ、誰だ?」

「シーカー族。…今は、それだけ言っておこう」

「ところでシーク、何でこんな所にいるんだ?」


今まで遠巻きにしか見ていなかったリンクも、輪の中に入ってきた。
この時、舞は思った。

こ、これは…もしかしなくても、世界三大美人(美形)大集合ですかぁぁぁぁ!?


「ああ、実は……、…。舞、何を悶えているんだ?

只今身体中の血管沸騰中とでも言っておくわ

「「「は?」」」


美形3人が彼女の様子に揃って首を傾げる。理性がぷっつんと途切れるのも時間の問題ね


「で!何があったの!?」

「鼻押さえながら言ったところで迫力落ちてるぞお前」

う``


「まァいい、それより、水の神殿の封印も解けた様だね。凍りついたゾーラの里も元に戻っていたよ」

「(それよりで片付けられたか)本当?良かった、じゃあこれで里も安心ね」


正直に、心の中で安堵の溜息をついた。安心した所為か、力を無くした瞬間をつき、ダークはそろりとその場から抜けようとしていた。

その異変に気づいたリンクが首を傾げた。
…と同時に、目を怪しく光らせた舞が光速でダークの服の裾を勢いよく掴んだ。


Σぐおぇっ!!ぐっ…何しやがる!殺す気か!!(大汗)」

「まさか!あたしが美形を殺すなんて出来るわけないでしょっ…、じゃなくて!何逃げようとしてるのよ!!
もう仲間なんだから、死ぬ時は一緒ってぐらい固い絆で結ばれた仲じゃない、あたし達!」

そんな固い結束結んだ覚えねえよ!!冗談じゃねえっ、何で俺がテメェらの私用に付き合わなきゃなんねえんだ。俺はパスさせてもらうぞ。
っつぅ事でさっさと離せ!!」

「だから嫌って言ってるでしょ!」



未だに手を離さない舞を、ダークも力の限り離そうと引っ張った。その長くなりそうな闘いに溜息をつき、シークは顔をダークに向けた。


「ダーク…と言ったか。君は水の神殿に属する者、己の守るべきボスはどうした?」

「あんな奴、殺ってやった。鬱陶しいし、何より俺よか弱ぇ奴だしな。存在価値がねえよ」

「なら、今は追われる身となったわけか…逃げるつもりだろう?」

「当然だ。これ以上面倒くさい事になると困るしな」

「そうか…」


少し考えるように顎下に手を添え、シークは少しだけリンクを横目で見た。


「従えとは言わない、彼らと共に行けば、ガノンドロフを倒す事ができるぞ?」

「だから何だ?それこそ面倒くせえじゃねぇか」

「ガノンドロフを倒しておけば、毎日コソコソ隠れる必要もなくなる。ましてや君の様な強者が手を貸せば、直ぐにこの旅も終えるだろう」

「…フンッ、分かってんじゃねぇか、俺の実力が」


褒め上手なシークの言葉に満足そうに笑うと、ダークは真っ青な空を見上げた。眩しすぎるその光に、目を細めながら


「生憎俺は自分から動く事なんて気に入った事以外、あまりない。
それでも、まァ…そうだな。どうしてもって土下座するんだったら考えてみても…」

お願いしますダーク様(土下座)

Σマジで土下座しやがった!?(汗)ほ、本当にやる奴があるかこの馬鹿!!」


そこまで真剣にするのか、舞は額が地につきそうな程姿勢を低く、否、土下座をした。予想外の出来事に、ついダークも慌ててしまう。
早く立てと言わんばかりに腕を引っ張り、さり気なく服についた土をパパッと払った。
何気に紳士だな

その光景を見て、リンクの頭上を飛んでいたナビィは体を黄色にして楽しそうに笑った。


『アハハハッ!どうすルのダーク?舞本気で土下座しちゃったヨ』

「…やったら、ってもう言っちまったんだがな……まァ、お前らだけじゃ危なっかしくて見てるとイライラするし、あ``〜〜………

――……仕方ねぇ、手を貸してやるよ。光栄に思えよ」

「ホント!?嘘じゃないわね?」

「ああ」

やったー!美形ゲットぉぉぉぉぉ!!

「…美形?

「……(交渉とり止めてもいいのか)


自分の言った事に早速後悔し始めたダーク。
額に手を翳して俯きながら溜息をつくが、舞はテンションを落とそうとしない。

傍から見ていたシークは一つ冷や汗を流したものも、表情を引き締めなおすとハープを奏で出した。


「…リンク、君に潤いの施し【水のセレナーデ】を囁く。覚えておくといい」

「ん?あ、うん!」


【炎のボレロ】の時と同じように、ハープで奏でた曲をリンクが直ぐに取り込んで軽く練習した。
前々から思ってたんだけど、これって何の効果があるの?そう思いながらも、舞は首を傾げるだけで終わった。


「ねェ、ダークはオカリナ吹くの?」

「あ?あー……ちっちぇ頃にフルートなら何回か吹いた事があるが、オカリナはねぇな」

「フルート吹くの?へェ…今度吹いて見せてね!萌えの為に

後ろの意味不明な言葉がなかったら別に良かったんだけどな


考えとく、と言ってダークはまた前に向き直った。
リンクがフルート吹いてるようなもの、そんな美味しい光景見逃せるわけないでしょ(舞談)

いつか行われる美形による美麗演奏を妄想している間に、リンク達は事が終わったようだ。シークは弾いていたハープを仕舞うと、その手にまた煙玉を持った。


「このハイリア湖の清らかな水を守った者達よ、己の使命を果たすのもあと少し…
頑張ってくれ」


返事をする間もなく、言い終わったと同時に煙玉を放つ。晴れた時には既にそこには藍の影はなく、背後にあった木の全体姿だけが残っていた。

全てが終わったようにリンクは大きく背伸びをすると、脱力したように手をブランッとさせた。


「よし!ダークも仲間になった事だし、早速出発しよう!!」

「フンッ、精々出番を取られないように努力するこったな」

「オレだって頑張るから大丈夫さ!」


最初に会った頃に比べ、幾らか打ち解けた彼らはお互いの拳を軽くぶつけた。後ろから見ていた舞は、傍に飛んできたナビィと見合い、嬉しそうに笑っていた。

予め、エポナから降りた時に持っていた地図を取りだし、両手一杯使って広げた。
丁度その時、浮遊していたナビィが肩にとまり、心配そうな声を漏らした。


『でも、これからモット大変になるカモ。きっとダークの実力だと地位は上の方だと思ウ』

「えぇ、彼が裏切った事は、変態魔王側への反感に十分なるでしょう」


彼女達の不安そうな話し声が聞こえたのか、前を歩いていたリンクは首だけを後ろに振り返らせた。
その顔には満面の笑顔


「でも仲間が増えるって凄く嬉しいよな!
大丈夫、何かあった時にはオレが君を守ってあげるから!!」


リンクの言葉に、舞は瞳を大きく開いた。少し変にムズムズしながらも、ありがとうとお礼を言った。
…途端、


ふらぁっ…
――バタッ!


「ってΣええぇぇぇええぇえぇ!!?
リンクが!リンクが死んだ!!突然死んだ!!(滝汗)

「おいおい…いきなり何だよ馬鹿勇者」

馬鹿勇者て


前触れも無く、笑顔でガッツポーズの体制を保ったままリンクが倒れた。
どうしたと言うのだろう、まさかモーファの攻撃が今頃になって効いてきたのだろうか?おたおたする中、問題を起こした張本人の口が微かに動いた。


「!ま、待って!リンクが何か言おうとしてる!」

『どうシたの、リンク?』


「……か、…ぃた………」

「あ?」

「え?」


「お腹…空いたぁ…」


ぐぅぅぅぅ…


……何とも絶妙なタイミングだろう、彼のお腹から気の抜けた音が響いた。
空気が一瞬静寂になり、沈黙が破られたのは、彼のお腹から再び鳴った腹の虫だった。


リンクが空腹で気絶しタ

「…ちっ、しゃあねえ。何処かで飯とるぞ」


不満そうに呟き、ダークは立ち上がってから背中にリンクを負ぶった。
内心、その光景にめちゃくちゃ叫びたくなった舞だが、ダークの言葉に我に帰った。


「と、兎に角近くの家にお邪魔させてもらいましょ!ナビィ、あたしエポナ連れてくるから、近くの家までダークをナビゲートしてあげてっ」

『ウン!』


辺りを見渡してくるのだろう、すぐさま飛び行くナビィを目で追い、先を歩くダークもぶつぶつと文句を呟きながら歩みを進めた。
エポナを呼ぼうとした時、形が崩れて丁度口を半開きにして眠っているリンクの顔が見えた。
その端から零れている涎に、ダークが悲鳴に近い怒鳴り声を上げている。

しかし、本人は全く目を覚ます気配も無く、ついその光景に舞は苦笑を漏らした。



「(『何かあった時にはオレが君を守ってあげるから』、か…)」


さっきの彼の発した言葉、思い出しただけで、さっきと同じムズムズした感じが胸に広がった。変にムズムズした胸に手を翳し、表現し難いその感情に首を傾げる。

…ただ、悪い感じではない事だけは確かだったという事が、舞の微笑ましい表情から伺えた。







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