34.リアルホラー初体験
こんにちは、ナビィです!こちらカカリコ村です!
初めて舞ノ本性を見た様な気がします(真剣)
普段物静かナ人ほど怖いッテ言うケド…舞は普段静かじゃないけど怖かっタ!!
ところデ、あの闇の魔物が封印を解いチャって墓地にアル闇の神殿に向かっちゃったんだケド…
ナビィ達の力じゃ足りないらしいノ!シークにそう言われチャって…
確かに姿の見えなイ敵と戦うには、今のままでハ勝てないかもしれなイ。だけど、このまま放っておくと、ガノンドロフのいいようになっちゃうの!
ナビィ、もうデクの樹サマみたいに悲しむ人は、作りたくないヨ。だから頑張りたいんダ!
リンクもきっと同じ気持ちだと思う…
舞も……。
きっと、きっと、きっと同じ気持ち!…だとイイな(汗)
そう言えば…分からなイ時は風に耳を傾けなさい、ッテデクの樹サマが言ってタ。
まだ妖精珠の時に聞かされた事だから、全然信じてなかったよ。風にも聞いても分からないって…
でもネ、でも…
やっぱり、デクの樹サマは正しいんダって事が、改めて分かったんダ
リアルホラー初体験
こんばんは、前回にリンク達が傷物になった!と怒りを奮闘させる女子高生です。
だってッ、こんな稀に美形共を傷つけるなんて許せないもの!ねえ、貴方なら分かるわよね!?(カメラ目線/どこ向いてんだ)
だから、少し弱気になっているリンク達に絶対闇の魔物と戦わなければいけないと言っているの!
前向き思考にとったら凄く背中を押されるいい言葉になるが、後ろ向きにとったら違う惨事になりかねない事件が起きそうな台詞だけども。
「と!言うわけで絶対勝つわよ!!」
「何が『と!言うわけ』だ。お前が誰と交信してたかは知らねえが、俺らに伝わらないもんをするな」
あらやだわダーク、交信なんて。それじゃあたしが宇宙人だとでも言いたいみたいじゃない。
アッハッハ。何だ、違うのか
………。
「でも…確かにそうだよな、舞の言うとおり、絶対に勝たなくちゃ」
まだ傷だらけで痛む足を、マスターソードを支えにリンクは立ち上がった。じっと前を見据える瞳は、勝負への執念を見せてくれる。
何故だろう…『立て!立つんだジョー!!』って叫びたくなるのは
「あんな奴に勝てなきゃ…ガノンドロフから舞を守るなんて言えないからな」
笑いかけながら心配ないよというようにリンクは強いところを見せてくれた。
どうしましょう皆さん!シークに続き、この世界の方たちは皆天然タラシのようです!!
でも、リンクの言葉は皆に伝わった様で、ダークもシークも笑っていた。
勝つ見込みはあるというように。
「もし闇の魔物と対峙するというのなら…姿の見えない敵に立ち向かう術を1つだけ知っている」
「!?そんな方法があるのか!?」
「ああ…。闇の神殿の何処かに、何かを保管しているらしい。
それは世の真の姿を見極める『真実の目』」
「真実の目、だと?…聞いた事がないな」
城にいた時、数え切れない程の本を読み尽くしたダークでさえ知らない。
彼が言う『真実の目』が本当にあるのなら、姿が見えずとも戦う事が出来るが…
『闇の神殿…でモ、墓地にはそんなモノ何処にも見当たらなかったヨ?』
「闇の神殿への入り口は君たちの頭上…肉眼では捉える事が出来ない高さに造られてある。
だからこそ、僕が教える時の調べを利用するんだ」
「時の、調べ?それが何か分からないけど…
要はシークはそこに向かう術を知っているって事よね?」
「ああ、勿論だ。
…もし今すぐにでも迎えるのなら、今ここから送ってあげてもいいが…どうする?」
どうする、と聞かれても…そんなのはきっとリンクの心の中では決められているだろう。
リンクの表情を伺うと、彼は何も言わないものの未来を見据える瞳でシークを見つめていた。その視線からは、いつでもいけると聞こえてくるぐらい…
「…どうやら、良さそうだな」
そう呟くと、シークはまた後ろに持っていった手で何処からかハープを取り出した。
「人の侵入拒みし闇へ入(い)る時、魂を奪われる事なく自分を見つめよ。
時をも飲み込む無限の闇に
奏でし者を誘う調べ…
聞け、闇のノクターンを!!」
白く細い彼の指が弦の上で踊り、澄んだ音が静か過ぎる程の小さな村に広がる。
鼓膜に、そして脳内に響きわたると、眠気が襲うような感覚が…まるで何処かに運んでくれたような気がした。
直、カカリコ村は冷たい雨だけがしとしとと降り注ぐ。
***
冷たく暗く、一寸先も闇という言葉がこれほど似合うものがあるのだろうか。
誰もが臆する混沌の闇…その中で、真紅の髪の女性が両手を重ね、まるで何かに祈っているように瞳を瞑っていた。
頭の中で幾つかの映像が流れたが、限界の来た体が進行を止め、くらりと体が揺れる。
「…うっ、やっぱり…半身だと駄目か……」
目元を手で隠しながら、真紅の髪の女性は苦しそうに息を吐き出した。
暫しの休憩をとろうと肩の力を抜くと、自分以外の気配が近寄ってきた。この、何もない筈の空間内に
「ねえディンー、まだやってたの〜?」
ディン…――。三大神の1人でもある、力の巫女の名。実際、文献に描かれてある姿と同じ真紅の髪の女性は、突然響いた声に驚くことなく、そっと横目で見た。
空間の一部分だけが歪み、潜ってきたものは不快な形を構成していた。
…だが、それも徐々に緑色の光に包まれると、完全に人の形を作った。
森色の髪をお団子に2つ結びに上げ、同じような色合いのスカートに身を包んだ少女は腰に手を当てていた。
「そんな事ばかりやってたら、いつか体持たないよ〜?」
「フロル…仕方ないでしょ、世界の存続が危うい事になっているんだから」
ディンはまるで知っているように話す少女を『フロル』と呼んだ。
座っていた体を持ち上げ、まだ少し苦しい呼吸を整える。
「あ〜あ、もう。言ってる傍からコレじゃん」
呆れたように溜息をつき、フロルは右手を持ち上げる。すると、掌の中に淡い緑色の風が集り、真珠のように綺麗な丸い形を帯びた。
光を翳すと、それは溶け込むようにディンの体に入っていく。するとさっきまで苦しそうだったディンの顔色が良くなった。
「…ありがとう、助かるよ」
「まあ、フロルちゃんの力は凄いからね!」
えっへん、とまだ幼さを見せるその仕草に、思わずディンも口元を緩めた。
「フロルは…時の勇者がいるから、完全に力が戻せている。いいわね…」
「ディンだって、半身は向こうでも、片方はこっちにあるんだからまだいいわよ。
ネールなんて完全に闇に姿を消してるから…何処にいるか分かんない!」
「どの世代でも、勇気と力、そして知恵が共存する時代は存在しないのね…」
ネールと新しく呼ばれた名前、それこそ間違いなく三大神の1人の名前だ。
ディンの悲しそうな表情を見ていたフロルは、思いついたように手をポンッと叩いた。
「あ、そうそう。近々フロル、下界に下りるからね!やりたい事あるんだー」
「…?下界へ?何をしに行くの」
「それは秘密〜!」
ニシシッ、と悪戯小僧のような笑みを浮かべ、何もない空中に向けて手をかざす。すると、ぶんっと奇妙な音を立てて別の黒い穴が出来上がった。
満足そうに微笑み、顔だけをもう一度ディンに向ける。
「人間の実力テスト、しかも神様企画の超特大番組をこうご期待!」
楽しそうに笑うと、黒の地を蹴ってフロルはその歪の中に飛び込んでいった。
フロルが姿を消すと、歪も徐々に小さくなり、ぷつりと消えてしまう。それを見届けたディンは暫くじっと見つめていたものの、またもや神経を集中させた。
***
++in闇の神殿++
―――その昔、ハイラル国に誇る太古の大戦争が起きた。
事の始まりは負の心……
小さな村に住む者達は、いつしか大国を統べる王家を憎み、反乱の声が上がった。
反乱を起こした者達が集い、多くの勢力が王家を襲った。
…しかし、日々戦のため訓練を積んだ兵士達の力により、王家は無事命を取り留めた。
敗北と化した反乱軍の魂…苦しみの宿った者達がどうして成仏できよう。
憎しみ、怨み、悲しみ…負の思いは年月が経つに連れ、いつしか怨念は霊へと具現化されていった。
具現化された霊は更に形を成し魔物へ、具現化しきれなかった怨念は、故郷の村にある墓地――その奥地に眠る古の神殿に封印された。
怨み晴らせず封印された霊は悪霊と化し、今も神殿の中で具現化した後、呪いの唄を唄っている。
唄声は冷たき雨となり、日々墓を濡らす。
それは怨念の象徴であり、この地に踏み入る事への警告だと語られている――――。
「…―――。これがこの神殿に伝えられている伝説。インパの文献に、同じく記されてあったものだ」
『じゃア、墓地やココにいるポゥ達は、昔の戦で敗れた人達なんだネ』
墓地で漂うポゥを始め、神殿の中に入ると倍以上の数の浮幽霊やモンスターが存在していた。
その中に、カツンカツン…と高い靴音が響きわたる。
生者の命(みこと)ここにありし事告げる、理の鐘音なるもの―――
「ああ、しかもその敗れた者達は皆カカリコ村の住民だ。
戦争の根源は研究者達が埋められたことへの怒り…この伝説は、その改築工事が行われた時を元に起こされたものらしい」
『可哀想…村に住む仲間の事を想っての反逆がこんな事にナルなんて…元々悪いのは王家なのにネ』
靴音と共に、密かにカンテラの明かりが漏れている。その中心にいるのは、先ほどシークによって運ばれたリンク達勇者一行だ。
明かりから漏れた光に映されるのはダークと、彼の肩にとまっているナビィだけ
「まあ、昔話をした所でどうにかなるわけでもないが……
…おい、1ついいか?」
『うん、どーゾー』
「テメェらいつまで人の背中に隠れてるつもりだ!特に勇者、お前男だろ!!」
ふり返りもせず、歩きながら呟く彼の背中には、緑色と白色の影が纏わりついていた。
それは幽霊ではなく、れっきとした生者であり、入る前に一番張り切っていた2人だった。
「だだ、だって此処リアルに怖いんだもの!お化け屋敷とは訳が違うじゃない!!」
「本物だ本物。
闇の神殿って名前聞いたときから分かってろよそれくらい」
『リンク〜、ホラ頑張っテ!勇者が見っとも無いヨ〜!』
「おおお、オレ怖いぃぃぃ!!(涙目)」
ナビィに引き摺られながらリンクは目に涙が浮かんでいた。まさかこいつが此処までホラーが苦手だとは…
思いも寄らぬ事実に、ダークは眉間を歪ませた。
「たくっ、いいか?ここにはお前らには見えない仕掛けが仕掛けられている。なるべく俺がサポートしていくが、あのシーカー族が言う『真実の目』を早く手に入れろ。分かったな?」
『エ?ダーク…見えるの?』
「幾らかはな。妖精も大丈夫だな?」
『うん、一応。姿形ははっきリ見えなくテ、ボヤーっとだケド…』
「上出来だ。さて…ほら勇者、お前も先頭に来い。いつまでも隠れてんじゃねえ」
リンクの返答も待たず、ダークは猫を扱うように襟元を引っつかんで隣りに来させた。
まだビクビクしているリンクは、ダークの手が離れれば直ぐにでも後ろに戻りそうな勢いだ。
「(怖い話だけでも怖いのに…!)」
『ネぇリンク〜』
そんな彼の肩にナビィがとまる。涙目のままナビィに「何?」と聞き返す。
『ほら、舞が怖がってるんだヨ?ココで一発カッコいい所見せて、守ってあげたらポイント稼げるよ!!』(小声)
「!!」
ハッ、と何かに気づき、リンクは後ろを振り返った。いきなりの事に一瞬驚いたものの、どうしたのという感じに舞が首を傾げた。
そうか…そうだ、ココでオレが守れば…
「わ、分かった。オレ頑張るよ!見てて舞!!」
『その意気だよリンク〜!』
「わ、分かったわ…」
よく分からないけど、とりあえず頷いておけばいいのか…
突然スイッチの入ったリンクに疑問が浮かぶが、突っ込む間もなく彼は握りこぶし作って勇気を見せていた。
「いいか、浮幽霊や自縛霊が漂っているんだからな、とり憑かれないように気をつけろよ」
ダークはそう言いながら目の前の扉を明けた。
入った部屋を見渡すと、壁の所々に赤黒い血が飛び散っていたり、不穏な冷たい空気が漂っていたり、時折悲鳴のような声も聞こえてくる。
「(ビタッ!!)」
『あ、リンクが起動停止しタ』
「早速かよ」
部屋の空気に本能が止め、リンクは顔面真っ青の冷や汗ダラダラ状態だ。
絶対、1人だったら直ぐにでも引き返してしまいそうな程、リンクは怖がっている。
「り、リンク…大丈夫?」
「(ハッ!)だ、大丈夫大丈夫!余裕だよ、これぐらい!!」
「おーい、強がるな生まれたてのバンビ」
ごめんねリンク、ダークの言うとおり足がガクガク震えてるの。
リンクも気づいていたのか、首を左右に振り怖さを振りはらおうとしている。その証拠に、止めていた足をまた動かした。
「(うう、頑張れオレッ)
よ、よし!それじゃあ行こ―――」
「!?ま、待て馬鹿!!」
「え?」
ドンッ!
「ううわっ!?」
ダークが何故か、進もうとするリンクを突き飛ばした。己も一緒に転がり込んで、ある地点を通り過ぎる。
思わず舞も驚いて駆け寄ろうとしたが、それをナビィが制する。
『だ、ダメだよ舞!動かないデ!!』
「え?な、何で…」
と不思議そうに疑問を投げかけた時…
ガシャァァンッ!!
何かが落ちたような、尚且つ錆びた音が大きく鼓膜に響いた。
リンクと舞はその音に驚き、正体が分からずに辺りを見渡している。
今、間違いでなければ…リンク・ダーク側と舞・ナビィ側の間から音が……
『危なかったネ、今のハ見えないギロチンが落ちた音だヨ』
「ギロチン!?」
「え?でも、そんなのオレには見えないんだけど…」
「だから前もって言ってだろ!此処には今のお前らには見えない仕掛けがあるって!!
餓鬼の作る落とし穴とは訳が違うんだ、下手すりゃ死ぬぞ!!」
忠告なのだろうダークの言葉に、リンク達は背中に汗が伝ったのを感じた。
もし、今ダークがつかなかったら、ナビィが止めてくれなかったら…間違いなく今頃首が飛んでいただろう。
ナビィにギロチンが上がっていくのを見計らってもらい、急いで舞はリンク達の許に駆け寄った。
「いいか、なるべく俺と妖精が言ってやるから、お前らはあんまり離れず行動しろ。1つにまとまってないと不安だからな」
「リンク…手、繋いでおきましょ」
「う、うん」
言われたとおりにする為、舞はリンクと手を繋いだ。それを見届け、ダークも2人の前を庇い出てくれた。
ちらり、とリンクが横目に舞の表情を伺うと、彼女は縋るようにダークの背中を見つめていた。
「(また、守れない…)」
遣る瀬無い、自分の弱さ。ダークの強さが、改めて分かる。
痛恨に感じたその感覚に、リンクは眉を垂れさせて俯いた。
すると、突然ダークが片手に持っていたカンテラが手元から離れ、宙に浮いた。
「!」
それに気づいたダークは瞬時に剣を構える。異変に気づいたリンクも俯かせていた顔を上げた。
カンテラは自分達より数歩先で、カタカタ…と揺れながら浮いている。
何か、いる…直感でそう感じたダークが目を細めていると、カンテラの取っ手の部分に、青白の手が浮かんだ。
それに続いて浮かび上がるのは、見覚えのあるだぼだぼの服。
「!…もしかして、あの時の、男の子?」
舞がぽつりと呟くと、まるで答えを見せるように全体の形が浮かび上がった。
深く被ったフード、合わぬ丈の短い短パン…
確かに、闇の魔物が出てくる直前まで会っていた双子の幽霊だ。
【…ありがとう、来てくれて…】
唯一見える口元が嬉しそうに弧を描く。男の子の幽霊は身を翻し、カンテラを持ったまま何処かへ向かう。
少し進んだ先で立ち止まり、こっちを振り返った。
「…着いて来い、っていうのか?」
『リンク、どうする?』
「うーん…行ったほうがいい、と思う。オレ達、この神殿の内部はまだ良く分からないし…」
『決まり!ダーク、追いかけよウ!』
「ま、しゃあねぇか」
剣は持ったまま、カンテラがなくなった手で頭を掻き、ダークはまた歩みを進めた。勿論、目先には男の子の幽霊。
そしてリンクは、一度舞の手を強く握り、己も左手に剣を持って彼女を誘導した。
***
「で、あの餓鬼は何処まで連れまわす気だ」
少し苛つきが含まれた声で、静かな空間にダークは呟いた。もうかれこれ1時間は歩かされているが…男の子の幽霊は止まろうとしない。
死んでいる分、モンスターを心配しなくていいのだろうが、こっちは生身だからそうもいかない。
ダークは見えない仕掛けを、リンクはモンスターを気にしながら進んでいるから、精神的にもそろそろきつい。
限界か、と思われた頃、ようやく男の子が進むのを止めた。リンク達へふり返り、やせ細った指で自分の横を指差した。
【ここの先…魔物の呪いで…僕達進めない……】
男の子が指差した壁には、不気味なドクロのマークが描かれていて、怪しく目を光らせていた。
一見何もなさそうだが…どうやら、見えない仕掛けが施されてるんだ。
【大切な物…『まことのメガネ』がここにあるって、父さんが…】
「え…まことのメガネ!?それって、もしかして―――」
【またね…】
「え!あ、待って!!」
リンクの声を遮り、男の子の幽霊はまたもや制止の声も聞かずその身を消した。
只でさえ静かな空間が静寂の空気に包まれ、リンク達は只顔を見合う事しか出来ない。
『不思議な子だネ』
「今あの子、『まことのメガネ』って言ったわよね。それって、シークがいっていた『真実の目』の事かしら?」
「分からないけど…行ってみようよ!
あの子の言う通りならこの壁の先に何かあるみたいだしΣいでっ!!」
壁に向かって歩いたリンクはおもっくそゴンッ!と痛快な音を立てて頭を強打した。
呆れた目で見ているダークはリンクが突っ込んだ壁の隣りの壁の前に立っている。
「おい、そっちじゃなくてこっちの壁だ」
「は、早く止めてくれよ…(涙)」
赤くなった額を手で覆いながら、リンクもダークのいる壁の前に向かう。やれやれ…と首を振りながら、ダークは何もない筈の壁をすり抜けた。
始めての感覚に、舞すらも「お〜」と言葉を漏らした。
―――が、部屋に入った途端全員の体が止まった。
「……な、何だ、これ…?」
「こっちが聞きてえよ!!何でッ………
何で部屋一帯宝箱で敷き詰められているんだ!?」
「ありがた味が皆無ね」
彼らが止まったわけ…それは、部屋中に宝箱という宝箱が置かれているからだ。
普通、宝箱というのは一個だけ置かれていてありがた味が大きいものだ。だが、夢に出てきそうな程山積みに置かれていれば逆にたじろいでしまう。
それが今正にその状況だ。
『さ、さっきの男の子…もしかしテこの事知らなかったのカナ?』
「呪いで入れないって言ってたから、多分そうだろうな…」
「これじゃあもうミニゲーム感覚ね」
「ゲーム!?凄い、楽しそう!それじゃあお宝探しに開けてみようぜ!!」
「あ!ちょっとリンク!?」
パーティー気分に陥った勇者は「イェーイ☆」と片腕を掲げながら警戒心皆無に宝箱の群れに突っ込んで行った。
己はあれか、クリスマスにプレゼント貰った子どもの心境に浸っているのか?
まだ少し躊躇するものの『真実の目』を探すべく、全員で箱を開けていく。
間抜けな光景に見えてしまうのは気のせいじゃないな
「(ガチャッ)あ、10ルピー!」
「(ガチャッ)ちっ、矢かよ」
「(ガチャッ)何これ、ハート?」
『(ガチャッ)折れたデクの棒が出てきタ…』
使えないなそれ
地道に1つずつ開けていくと、最初はアイテムが出てきたものの、次々と意味の分からないものが続出する。
これを用意した人は、入れるもののレパートリーに困っただろう
「(ガチャッ)あら、これメガネ?
縁に…『1−A まこと』って書いてあるんだけど…」
「戻せそんなの。さもなくば1−Aのまことって馬鹿にぶん投げてアゲインしとけ」
「どうやってよ!」
「(ガチャッ)あれ?オルゴールが流れてる!何だこの歌?」
〜♪まっことまっこと〜〜〜♪
「Σ土佐弁だ!!ハイラルなのに何故か『須●音頭』が流れてる!!(汗)」
『ア〜、管理人が住んでる所の…(汗)』
「地方でしか分かんねえネタ使うなよ管理人!!」
すまん(by 管理人)
『(ガチャッ)あ、またメガネだ〜。
Σアレ!?これってまさか、大●まことのメガネ…!?』
「だから何でそんなのが入ってるんだよ!!訳分からねぇえぇえぇぇええええ!!」
「ダークがツッコミで壊れそうね…(汗)」
「ハァ…ハァ…いい加減、本物は出てこねえのか…」
「(ガチャッ)ん?あ、本だ!舞、本が入ってるよ!」
「あぁ!?本!?」
「リンク、ちょっと見せて。
えー…タイトル『マコとメガネ』」
ブチィッ!(ダーク切れる)
ガッ(本掴む)
ブンッッ(投げる)
ボワッ!!(松明の炎で着火)
「Σあーーーーー!!だ、ダーク何するんだよ!見たかったのに!!」
「ざけんな」
「ここのお化けよりも今のダークの方が怖いわね」
ホント色々と出てくるある意味ビックリ箱の嵐に、段々ダークも壊れだした。
宝箱という強者と格闘を続ける事数時間、とうとう最後の一個となった。
『こ、コレで最後…だネ…(汗)』
「全然いいものないじゃんかー!」
「ったく、誰だここ構成しやがったのは…」
「それ手配させたのは元あんたが仕えてた奴(変態魔王)だと思うわよ」
多種多様な反応を見せ合う中、代表にリンクが最後の1つに手を掛けた。とうとう、ご対面が出来るか…
ゴクッ、と喉を鳴らし、ゆっくりと蓋を開けた。
びよよよ〜〜ん!!
「うわッ!?」
中から突然飛び出したものに驚いたリンクは、宝箱から手を離して尻餅をついた。
普段なら駆け寄る舞だが、中から出てきた物に目がいってしまい、リンクに駆け寄るのも忘れてしまった。
「…何か、子どもに作ってあげる紙おもちゃみたいね…」
『頭にハズレって書いた紙貼ってるヨ』
「…って事は?」
『コレは?』
「『ハズレだね』」
何かが切れる音が、舞の隣りから聞こえた。それと同時に、不穏な黒いオーラが漂ってくる。
…段々量も大きさも増えてきてるんだけど!?
こらリンク!ビックリ箱の中身に目を輝かせてないでこっちをどうにかしてよ!
「だ、ダーク…落ち着いて、ね?」
「………」
「(マジ切れモードだ!!)」
「ん?あれ、この扉なんだ?壁と似ているけど…これって扉だよねナビィ!」
空気を読み取っていないリンクが、指した方向。そこには、確かに他の壁と酷似しているが、ドアにつきものの取っ手なんかもついている。
間違いなく扉だ。
『ホントだ〜、しかもこの扉の先ニ、特殊な魔力が感じル。』
「……それって、『真実の目』の魔力じゃないの?」
『ア〜、そんな感じカモ』
「「『……』」」
沈黙
えーと、つまりはこうだろうか。この部屋に置かれていた宝箱の山はダミーで?ほんでもって実はこの部屋の隣りの部屋に『真実の目』があって?
はたまたそんでもって…あたし達は騙されたって事で?つまりは無駄骨折ったって事で……
「………………」
ダークの『…』字が多くなった!!
それに連なって不穏なオーラ増殖したああぁあぁあぁぁぁ!!!(汗)
ドキドキしていると、またもや空気を読み取っていないリンクがのんきに「じゃあ入ってみよう」とか言い出すから、金縛りで動けない体に鞭入れなきゃならない事に……
ああ、ダークが…ダークが黙ったまま部屋に入ってく…!大丈夫なのかちょっと!?
「お、お邪魔しま〜す…」
この部屋に何があるのか分からないっていう緊張感より、今は断然に静かなダークの方が怖い。
入った部屋は、部屋の隅々にドクロが積み重ねてあって、血だって赤黒く多く飛び散っている。
恐る恐る、警戒しながら入るあたしを最後に全員が部屋に納まると…
―――ガシャンッ!!
「わっ!な、何だ!?」
いつかに見たような鉄格子が、扉に塞がれた。
「この鉄格子…確か、炎の神殿でも…」
『って事ハ…!り、リンク!前、前!!』
ナビィの言葉に弾かれ、リンクが前をふり返った。すると、あわせるように地面が唸り狂い、爆発するように土が飛び交った。
飛んでくる土をリンクが盾で庇ってくれたお陰で逃れたけど…ここからだと視界に入った…多分、モンスターだろうその姿に目が開いた。
【ギャッギャッギャ…】
目がなく、口は大きく裂け、見えている鋭い牙には腐った肉がこびり付いている。守るように四方に分かれて地面から生えている、手。
不気味なその姿に、思わず口を手で覆った。
「こ、こいつ…まさか、幽霊!?」
『違うよ、あいつはデドハンドっていうモンスター!結構強いケド…こんな奴がいるって事は、ここに『真実の目』が保管されている可能性も高いヨ!』
ナビィの説明が終わると、あたし達を獲物と見たデドハンドが長い舌で口の周りを舐めた。
久々の獲物に、興奮してるのかもしれない。そんな事を思っていると、奴は体を伸ばしてこっちに向かってきた!
「くっ、舞!下がって!!」
半ば突かれる形でリンクに下げられたが、その隙を狙ったデドハンドが狙いを彼に定めた。
勿論、気配に気づいたリンクも攻撃を受けないよう盾を構えるけど…敵のスピードには追いつけそうにない。
「リンク!!危な」
ドスッ
「い?」
咄嗟に手を伸ばそうとすると、あたしの言葉を遮った斬殺音が聞こえた。
そろり…と首を向けると…
「だ、ダーク?」
という名の修羅がいた。
「おい、デドハンド…地位なら俺の方が上だったんだが…その事忘れたわけじゃねえだろうな……」
リンクの声も無視した彼は、俯かせていた顔をゆっくりと刺さったままのデドハンドに向けた。
明らかに目が据わっている…さっきの宝箱のストレスから来てるんだろう。
その怖さに、あたしとリンクとナビィだけならず、目の前で直視したデドハンドも固まった。
「雑魚の分際でこの俺様を甚振った訳か……ざけんじゃねえぞボケ。
その命で償え、そして消えうせろ」
「「『(おおお、恐ろしいぃぃぃぃぃ!!!(滝汗))』」」
「死ね下衆」
最後の言葉を合図に、ダークが暴走を始めた。
こ、この光景、まるで子ども時代のサリアのようだ!!
さっき以上にめった刺しに敵を殺していく!その速さはもはや敵も悲鳴をあげれないほど。
ああ、血が!部屋に飛び散った血が増えてる!!敵が違う血が…!!(がたがた)
「フハハハハハハ!!死ね死ね死ね!!」
【ギャッ、ギャグオ!…グハッ】
「舞〜〜!こ、怖い!お化けよりもダークが!!」
「さながら魔王の笑い声ね。ラスボスなれるんじゃない?(遠い目)」
『トラウマになっちゃいそうナ光景…』
まさかのサリア二代目の暴行に心の底から震え上がるあたし達は、まるで極寒の地で身を暖めあうように縋り寄りながら終わるのを待つしかなかった。
Next Story.