45.熱地獄は萌えで乗り越せ!?



―迷える砂漠の幻影にようこそ

旅人は口車に乗せられ惑わしの地へ足を踏み入れる。

そこは視界を塞ぐ砂嵐が吹き荒れ、旅人の足を止め、いつしか息の根さえも……

その地に踏み入る事は死を意味する事
そこに入れる者は『真実の目』を持つ者だけ也

さあ無謀に進むか命を持って引き返すか…


応えよ







―――ザッ…


「此処が…砂漠の女神」






熱地獄は萌えで乗り越せ!






ハローハロー皆様、脱水症状なっても可笑しくね?女子高生です。
変なキャッチフレーズごめんなさい。壊れてしまうほどの暑さに中てられている為仕方がないと思って下さいね。

さて、あたし達は難なくと魂の神殿まで赴く事が出来ました。
普通なら有り得ない事らしい…、それがどうしてなのか、そしてどうやって此処まで来たのかをひっくるめてご説明しましょう。


――詳しくは時を遡り昨晩の事




+++






――パンッ

「よくやったね!大手柄だ、これで大本が掴めるかもしれない」


手を叩き合わせた掌を見つめ、舞はとんでもない、と一言呟き首を横に振った。
彼女の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫で、ゲルド族は真剣な顔に戻して振り返った。その先には、傍らにリンクとダークに囲まれている、縛り上げられたスタルフォスがいる。


「さーてと、そろそろ締め上げるかな」

「ええ!?し、締め上げるって…スーちゃんまだ何もしてないんですよ!?」

「攻め上げただけでも十分さ。それに、この場合締め上げるってのは洗い浚い吐かせるってわけ」

「んー、スーちゃんが可哀想な気もするんですけどね〜」

「………舞、ずっと気になってたんだけどさ…。何でモンスターと親しげなのさ

「スーちゃん!」

「いやだからそれが気になんだよ」


回答にもならない答えに、ゲルド族だけでなくダークまで白い目で見つめた。
それでも負けないように胸を張って言う舞の様子に首を左右に振り、またもやスタルフォスに向き直った。


「さっ、話してもらおうか。あんたらの狙いが何なのか」

「そうだ!いきなり舞に襲い掛かってっ、スーちゃんと言えど許さないぞ!!」

Σいやいやいや!いきなり襲い掛かったのは寧ろリンクでしょ!!

「しかも何気にスーちゃん採用してんじゃねえよ」

「あんたら話逸れるから黙っててくれるかい?」

「「すんません」」


ダークに至っては無視だ


「言っとくけど、何もなしに終われるとは思うんじゃないよ」

【………】

「あたいは舞みたく優しくないよ。吐くこと全部吐くまで容赦はしないから」

「(あたしの優しいんだ)」

「さあ教えてもらおうか、何であんたらはあたいらの砦に攻め立てた?最初はモンスターの習性かと思ったが、意図が見えてとれたからな」

【……】

「答えな!何が狙いだ!!」


カンッ!と澄んだ高い金属音が石造りの壁を跳ね返させた。地面に突き立てた剣の刃に、スタルフォスの青白く光る目玉が映った。
部屋に沈黙の空気が漂い、誰かの吐くか細い息の音も聞こえる。


【…我々ハ只、ガノンドロフ様ニ命令サレタダケダ】


沈黙を破ったのは、音をあげたスタルフォスの声だった。


「命令…?それはどういったもんだい」

【『ゲルド族ヲ始メ、時ノ勇者一行ヲ砂漠ノ女神ニ近ヅケルナ』…ソウ言ウ命令ダ】

「意図が見えないね、何の為に足止めをさせられたんだ」

【ソコマデハ知ラン。我々ハ足止メヲシロト言ワレタダケデ、ソレ以外ハ何モ言ワレテイナイ】

「本当かい?嘘だと知れば容赦なく斬り捨てるよ」

【誠ダ、嘘デハナイ】


脅しをかけられても躊躇なく答える様子だと、本当にこれ以上は知らないらしい。
肝心な事を聞けず、苛立ちからくる舌打ちを漏らしてゲルド族は髪を邪魔そうに払う。


「やっぱり糸口はガノンドロフか…」

「オレ達を足止め?何の為だろう」

「賢者様じゃない?『砂漠の女神』だもの、間違いないと」

「あ、成る程!」


ポンッ、と右手を左手に乗せてリンクは納得した様子を見せる。
ガノンドロフが足止めをする理由と言えば最後の賢者様の事だけ。多分間違いないだろう


「じゃあ賢者様はそこにいるのか?」

「そうでなくても行く価値はあるだろ。足止めを食らわすほどだ、何かしらある事には間違いねえよ」

「それじゃあ早速行こうよ!砂漠の女神って何処にあるんだ?」


わくわくという効果音が似合いそうなほど、リンクは陽気にしながら立ち上がった。
…だが、彼の期待を破るようにゲルド族の溜め息が聞こえた。


「ん?」

「あのねリンク、砂漠の女神に行くのは簡単な事じゃないのよ?」

「神聖な女神像に近づくには、それ相応の試練がある。道中にあるその試練を乗り切らないと、到底辿りつけないよ」

「試練?何だ、それ?」

「命をかけるほどの大迷宮…そんな砂漠の地があるの」

幻影の砂漠…。あたいらはそう呼んでるよ」


揺らめく蝋燭の炎が、真剣な顔で話すゲルド族の顔を照らし出した。


「幻影の砂漠?」

「ああ。その名の通り、幻を見せる悪夢の地さ」

「視界を覆うほどの砂嵐、行き先の見えない無限の砂地。旅人の体力を奪って、更には嘘の道を教えるの」

「道を教えるって、砂漠が生きてるのか!?」

「そうじゃないわ。目印がないから分からなくなるのよ…、同じ光景ばかりで何処に行ってるのかも分からずに結局お陀仏」

「体力を奪われ、いつしか旅人は砂漠の呪いで過去の悪夢が『影』となり目の前に映し出される。そしてまた体力を奪われちまう」


「嘘の道を教える『幻』の地、悪夢に蘇る『影』の呪い。
だからあたし達はそこを『幻影の砂漠』って呼んでいるの」

「こ、こわー…」


静かに聞いていたリンクの頬に冷や汗がツー、と流れた。辿りつかせない、と言う様に邪魔する砂漠の魔法。
そんなものがあると、死にに行くようなものではないか


「じゃあどうやって渡るんだ?砂漠の女神には行けないのか!?」

「……幻影の砂漠を渡れるのは、砂漠の地に慣れたゲルド族だけさ。
その他の一般人が渡るには…、そうだね、ないとも言えないな」

「!あ、あるのか!?」


ガバッ、と身を乗り出してリンクはゲルド族に問い詰めた。ゲルド族は悩んでいるようで、口元に手を置いて視線を下に向けている。
一瞬リンクをちらりと見上げ、口元から手を離した。


「…幻影の砂漠を渡るには、真実の目が必要だと伝説で謳われている」

「!」

「真を見極める目を持つ者だけに、砂漠は道を譲ると言われているが…。そんなものはないし」

「ちょ、ちょっと待った!真実の目…!?それって、もしかしてっ」


何かに気付き、さっき以上に身を乗り出した。口を開こうとすると、戸のついていない窓から外に出ていたナビィが入ってきた。


『リンクッ吉報だヨ!【まことのメガネ】を使えバ、幻影の砂漠を渡れッテ!』

「ナビィ!やっぱりそっかっ、まことのメガネだったんだ!」

「…?何だいボウヤ、その何とかメガネってのがどうしたんだ」

「オレ達、真実の目を持ってるんだ!ある人に貰ってさっ、ね、舞!」

「ええ、確かに持っていたけど…。そっか、それを使えばよかったのね!
あれ?あれって…ダークが管理してたっけ?」

「い〜や、勇者だ。俺には必要のないもんだからな」

「そっか、じゃあリンク。まことのメガネは?」

「ちょっと待って、今出すから……。………――あれ?」


ゴソゴソ、とポケットの中や懐を手で探り出す。だけど、リンクは目をきょとんとさせて服を裏返したりした。
彼の行動を見守り待つこと数分後…


「リンク?」

「…ぃ……」

「え?」



「……ない。」



ピシッ

顔を蒼白にさせたリンクの一言に、空間が一瞬で凍った。白けた空気の中、真っ先に我に返った舞が慌ててリンクに駆け寄った。


「な、何で!?探し損ねただけじゃないのっ?」

「全部探したよ!で、でもないんだって!!」

「嘘よそんなっ!貴方の懐は某ネコ型ロボットも凌ぐ四次元ポケットでしょ!?
探せ!全生命をかけて探せ!!

Σうおあっ!?ちょっ、舞!何人の胸元に手ぇ突っ込んでるの!?」

「只単に探してるのよ!まあちょっぴり下心がないわけではないけど

「おーい隠せてないぞ〜


リンクの胸倉を掴み、もう片方の手で彼の服の中を弄り探している舞は、少し表情が嬉々としていた。
ダークのツッコミの言葉で、リンクは自分が情けない事をされているのを見られている事に気がつき、さっきよりも慌てた。


「く、くすぐったいって!舞っ、早く退けてよ!!」

「えー、仕方ないわね〜…。じゃあこっちでいっかー」(ぴらっ)

Σうわあぁっ!!す、スカート捲り!?それこそ何やってんの!!」

「いや、意外な所にあったりしてと思って…、っておお!リンクって以外にもっこり――」

きやぁぁああぁぁぁあぁあ!!!た、助けてナビィーーーー!!(号泣)」

『ちょっと舞!リンク苛めてどうすんのヨ!!(汗)


とうとう舞からの仕打ちに耐えられなくなった様で、リンクはナビィに泣き縋ってしまった。
結局まことのメガネも見つからなかったが、舞は舞で自分なりに満足したようだ。


「…変わってないねあんた。イヤだけどホッとするよ」

「普通は男が女のスカート捲りすんじゃねえのか?何で女が男のスカート捲ってんだよ」

そこにスカートがあるから(爽笑)ついでに言うと美青年の生足が見れるかと思って」

「意味わかんねえよ」

「……ダークもスカートよね

Σターゲット変えてんじゃねえ!!ち、近よるな気色の悪い!!」


新たな獲物を見つけ、再びになろうとしている少女が1人。ダークに飛びつかん、とした所で…リンクが「ああ!!」と大きな声を出した。
流石にその声に気がつき、我に返った舞は振り返った。


「…?どうしたの、リンク?」

「お、思い出した!!まことのメガネなんだけど…っ」

「うん?」

「じ、実は……、その〜…」

「あんだよ、言いたい事あんならさっさと言えよ!」


上手く舞から距離を置いたダークが眉間に皺を寄せて言葉を放った。彼の様子をちら見すると、リンクは指を弄りながら俯いた。
そして、決心をしたようにそのまま口を開き――


「そ、その……まことのメガネなんだけど〜…



じ、実は…。カカリコ村に、置いてきちゃって……

「「『Σはぁああぁぁぁぁぁあぁあ!!?』」」


リンクの爆弾発言に、今度は硬直も忘れて大声を上げてしまう。これには流石にダークも驚いたようで愕然としていた。


『ななっ、何デ〜〜!?忘れてきちゃったノ!?』

「い、いや…オレが故意に置いてきたんだっ」

「それこそ何で!?あんなレアアイテム早々にないのに!」

「だ、だってさ!アナンタさんも村の発展の為って言ってたしっ、それに村長さんからも納めてほしいって頼まれたから、つい…っ!」

「…阿呆」

【…アナンタ…?】

「ええ、まことのメガネをくれた人なのよ。カカリコ村で会ったの」

【カカリコ、村…】

「ああ、リンクに任せたのは失敗だったのかしら…。すっかり彼の性格忘れてたわっ」


思わず、舞とナビィとダークは重い溜め息を長くついた。そうだった、この勇者はお人よしだったのだと思いながら。
やってしまった、と今更ながら自分の失態に気づきリンクは慌てた。


「ご、ごめんっ。まさか、まだ要るとは思ってなくてっ」

「うん、もういいのよリンク…大丈夫だから」

「ご、ごめん…ホント…」

「あっはっは!!中々面白いボウヤだねーっ、あの舞に手を焼かせるとは大したもんだ!」


すると、ずっと静かにしていたゲルド族が舞の頭に手を置きながら笑いかけた。
その言葉に若干舞も反応し、ムッと顔を顰めた。


「ちょっと!『あの』ってどう言う事ですか!?」

「そのまんまの意味さ。ボウヤ、気にするこたぁないよ。男がメソメソしちゃいけない」

「あ、うん」

「それにね、方法なんて探しゃ幾らでも見つかるんだよ。今もそれは変わりないんだから」

「え?」


くいっ、と親指を後ろに向けるゲルド族。リンクは、その指が指す先に顔を覗かせた。
そこにいるのは、縛り上げられたまま大人しくしているスタルフォスがいる。指されたスタルフォスもリンクも、何が言いたいのか分からず首を傾げた。


「スタルフォス、だよな?あいつが何なんだ?」


素直な質問にゲルド族は悪戯小僧のような笑みを浮かべる。
盗賊だから悪戯では済まなさそうだけど…


「捕虜なんだからね、使えるだけ使ってやるのさ!」






+++





――そして、捕虜として捕まえたスーちゃんを道案内とし、あたし達は太陽が真上に昇る頃には、砂漠の女神像の立つ神殿に辿りついたのだ。
その証拠に、目前には砂嵐に紛れて立派な建物が聳え立っている。


「此処に間違いないな…」

「でっっかいな〜。神殿も女神像も」


流石に砂漠に馬を入れるのは危険と判断し、今日は皆徒歩。直射日光を避ける為、今はマントを全員纏っている。
そこら辺の対策は万全だ。


「それにしても、スーちゃんが此処を知ってるとは思わなかったわ」

【一応、配備サレテイル区間ナノデ。ソレナリノ知識ハ得テイナイト…。
神殿ハアノ門ヲ潜ッタ先デスヨ】









「なあナビィ、砂漠の女神様とゲルド族って同じ格好じゃないか?」

『勿論だヨ!ゲルド族は忠誠心が強いカラ、服も砂漠の女神様に合わせテ「日々精進しよう」って思ってるんだヨ』

「へぇー」


豆知識を披露しながら、ナビィは先を先導する。その先にある、入り口にも思えるアーケート状のゲートを目指して


「舞はゲルド族と同じ格好しないのか?同じ種族なんだろ、一応?」

「あたしは義賊中の義賊だし、第一あんなナイスバディなお姉様方の中に紛れてブ肌を露出する勇気もってないわ」

「ふーん…そうなんだ。似合ってると思うけどなァ」

「誰だ!!誰だリンクをこんな天然タラシに仕立て込んだのは!?
お前かダーク!お前が近くにいるからか!!」

何でだよ。ってか近くにいるだけでタラシ込むってどんだけパワー溢れてんだっつうの


先ずタラシパワーというものなんてない。…舞はどうやら気にしていないようだがな


【(…奥方様ッテハイパーナオ方ナンダナ…)】

「なァスーちゃん、1個聞いてもいいか?」

【!?】


思わず、スタルフォスはバッ!と勢いよく振り返ってしまった。そこには、驚きもせず頭の後ろで腕を組んでこっちを見ているリンクが
正直、信じられなくて混乱していた。


【(コイツ…時ノ勇者ダロウ?)】


普通、勇者でなくてもモンスターに気軽に話しかけるなんて有り得ない。
縄で縛られている為手は出せないし、舞とは親しげ(?)に話していた。だが、そうとは言え…


【(何故コンナニモ無防備ニナレルト言ウンダ)
…何ダ】

「スタルフォスってさ、元は人間や兵士の魂が具現化した魔物って聞いたんだけど。スーちゃんも生前はそうだったのか?」


相変わらず舞とダークはコントのような会話を前で繰り広げていた。
ナビィもその輪の中に入ってるようで


【……覚エテイナイ】

「じゃあ、家族とかは?いつ頃からモンスターになったとか…」

【全テ覚エテイナイ。生前ノ記憶ハ全テ『消サレテ』イル】

「へ?どういう事?」

【ソノママダ。生前ノ記憶ハ、ガノンドロフ様ニ全テ持ッテイカレル】


思いがけぬ言葉に、リンクは呆然と呆けた。そんな彼に構わず、スタルフォスは先に進む。
…と、言うより舞がロープの先を持っている為に止まれないだけだが


「生前の記憶を?それって――」

『着いたヨー!!』


リンクの声が届くよりも先に、前を飛んでいたナビィの声が響き渡った。
渋々伸ばした手を下ろすと、見上げた彼の視界にさっきよりも大きく女神像が映った。それは紛れもなく、自分たちが近づいたと言う証拠。


「此処が…砂漠の女神」


そして冒頭の言葉へと至ると言う事だ。


「ようやく着いたわね、女神像!改め『魂の神殿』!」

『最後の賢者様救出、ガンバローね!』


女性人はやる気を満々にさせている。どうやら、よほど嬉しいらしい。
ナビィに呼ばれ、リンクも慌てて前線を行く相棒の元に駆け寄った。その背中をじっ、とスタルフォスは見つめる。


【…変ナ奴ダ…モンスターニ、アンナニ接スルナンテ】


ぽつり、と誰にも聞こえないような声で呟きを漏らす。すると、前を歩いていた舞が振り返り、少し距離を開けて歩くスタルフォスに近づいた。


「スーちゃん、ありがとう!」

【ア、イエ…何モ特別ナコトハシテイナイノデ】

「そんな事ないわ、賢者様救出にはとても役立つ名誉よ!感謝してるわ、本当に」


嬉しそうに笑う舞。…ふと、スタルフォスは気になった疑問を口にした。


【アノ…ドウシテ奥方様ハソンナニ賢者ヲ助ケダソウトスルンデス?何カ、目的ガアルンデスカ?】

「え?うーん…、何でしょうね?今回の賢者様は親元の人に会いたいと思ってだし。
ハイラルの為とか、旅を終わらせる為とか色々あるけど…」

【ハァ】

「でも、あたしはゼルダに会いたい気持ちがあるからかしら?
王家の姫君を助ける為、ってありきたりだけど」

【王家ノ…?………。】

「ええ!…って、スーちゃん?」


ロープを引く手が止まった。それは、歩いていたスタルフォスが足を止めたから、と言う理由もある。


「どうしたの?」

【ア、イエ…時々アルンデスヨ。突然、何カノ言葉ニ体ガ反応スルンデス。多分、生前ノ記憶ガ関連シテイルト思ウノデスガ…】

「生前の記憶がないの?モンスターって…大変な仕事なのね」

【エエ、ソウカモシレマセンネ】


何てったって勇者と戦わないといけないのだから。そりゃ大変だろう
ロープを引いても微弱の力で、舞はスタルフォスの様子に笑った。


「まあ、大丈夫!人生なんていつも山あり山ありそして山ありなの!!」

過酷デスネ】

「ええ勿論!だから気にしないで、楽しく生きるコツは兎に角突き進んで萌えればいいの!


多分最後のは奥方様だけだと思う。そう、スタルフォスが心の中で思ったのは言うまでもないだろう。


「舞〜、スーちゃん〜!遅いよ2人ともー!!」

「だからスーちゃん採用してんじゃねえよ」

Σあいた!!ちょっ、チョップは痛いってダーク!」


既に岩作りのゲートを潜り抜けたリンクとダーク。直ぐに行く、と手を振って舞はスタルフォスに振り返った。


「さ、遅れないよう急ぎましょ!」

【ア、ハイ】


一応返事を返すと、舞は嬉しそうに笑って強すぎない程度にロープを引っ張った。少し後ろを着いて行く様に足を走らせる。


【(変ワッタ人間達ダ…。ガノンドロフ様トサエ、アマリ話シタ事ガナイト言ウノニ)】


ゲートを過ぎた先にいるリンクとダークはこれからの作戦を立てているようで、何か地図のようなものを広げて見ていた。


【(例エ捕虜ノ身ト言エド、コノ待遇ハアマリニモ…―――ン?)】


前を走る舞の背中から視線を逸らした途端、スタルフォスの視界に何かが飛び入った。
岩作りのゲート…、その支柱の影に何か黒い影が境見えたのだ。一瞬、見間違いかとも思ったが…そうではない。


【…!!】


ガシャリ、と音が鳴った。それは自分の鎧ではなく、支柱に隠れた黒い影のもの。間違いなくモンスターだ!!
前を走る舞も、ゲートを過ぎた先にいるリンクとダークも気付いていない。
あと数十メートルでゲートに辿り着くという距離で、黒い影が重苦しい鉄の塊を持ち上げた。


「やっと着いたー!」


その声に向くと、嬉しそうに笑う舞がゲートを潜ろうとした。黒い影はそれを見計らい、大きく振り上げた鉄の塊を一気に落とす!



【――奥方様!!】

「Σはいぃ!?」


――ズドォォォン!!


「うわぁ!?な、何だ!?」


大きな音を轟かせ、砂の噴水を作り上げるほどの威力で地面を何かが突き立てた。


「敵か…!」

「一体、何が…―――!」


流石にその大きな音にも気付いたリンクが驚いた声を上げる。そして、直ぐに舞達の姿が見えない事に気がつき、背中に嫌な汗を流した。


「##NAME2##、舞!!舞ーー!?」

「――リぃンクー!こ、こっちは無事だからー!!」


すると、砂埃の舞う見えない向こうから聞きなれた声が聞こえた。
その声にホッ、と安堵の溜め息をつく。…それも束の間の事


ガシャンッ


重苦しい音を立てて、リンクとダークの目の前に黒い影が立ち塞がった。
重い威圧感を纏ったその影は、驚き目を開く彼らに戸惑う事無く、重たそうな大斧を横振りに払う!


「! 避けろ!!」

「うわぁっ!?」


バックステップで上手く避け、寸前の所を斧が通り過ぎた。それに嫌な汗を流すも、リンクもダークも瞬時に抜刀して剣を構える。


「こいつ、魔物か!?」

「ナビィ分かるっ?」

『あいつ、アイアンナックだ!ボスに劣らない力を持った強敵だヨ!!』


アイアンナック―そう呼ばれた敵は、重たい体を歩かせた。
一歩歩く度に近づき、近づくほどその威圧に押されそうになる。


「くそっ、中級クラスの最上級モンスターだ。挟み撃ちで討つぞ!」

「ああ、分かった!」

「敵が斧を振り下ろした隙をつけ!力が強い分小回りは苦手だ、素早く倒すぞ!!」

「分かったっ、行くぞダーク!!」


リンクの言葉を合図に、緑と黒の影が瞬時に動いた。アイアンナックが、駆けて来る小さな影に向けて斧を振り下ろす。





「スーちゃん!スーちゃん!!
実はスタルキッドから名前とったスーちゃん!!」

Σエエ!?マジデスカ!?】

「ううん、嘘。まさかこれで起きるとは


リンクとダークが攻防戦を繰り広げる片方で、あたしとスーちゃんは分かれてしまった。
スーちゃんは起きて直ぐには状況が読めないようで辺りを見渡した。


「大丈夫?ごめんなさい、世話かけちゃって」

【エ?世話…?】

「さっき、あたしを引っ張って止めたから、その反動で倒れちゃったのよ?スーちゃん」

【ワ、私ガデスカ!?】

「ええ!ありがとう、お陰で助かったわ!」


何故か自分で自分の行動に驚いているスーちゃん。まだ混乱している彼を立たせて、向こう側のリンク達を見やる。
ダークと手を組んで必死に戦っている姿が見えた。


「あいつ、何?見た事ないけど、モンスターなの?」

【アレハ…アイアンナックデス。我々中級クラスモンスターノ帝王ト呼バレテイマス】

「帝王!?中級クラスの…って事は中ボスね!!」

【チュ、中ボス…?】


何か言ってる言葉はスルーで…
兎に角、苦戦している彼らを見過ごす訳にはいかない。相手が中ボスなら尚更の事


「うーん、パパッと楽に倒す方法はないのかしら。何かないスーちゃん?」

【………】

「あれ、スーちゃん無視?」


それは辛いよ。捨てられた子犬のような目で見ると、スーちゃんは慌ててこっちに気付いた。


【チ、違イマス!私ハ只ッ、敵ノ様子ガ可笑シイト思ッテ…!】

「敵が…?」

【ハイ…、イツモヨリ過敏ニ動クト言ウカ。何処カ意識ヲ持ッタヨウナ動キヲスルノデ、違和感ヲ感ジルンデス】


それは、いつもはもっと自我を持たない動きをするという事?
相手を見ると、後ろに回りこんだダークに気がついて振り返り攻撃をしようとしていた。確かに敏感だけど…


「うーん、あたしにはよく分からないけどね〜。
まあ、鎧だから中に入ってる人が只他の人より敏感なんじゃない?」


けらけらと笑いながら、自分でも的確だと思う答えを返す。単に冗談のつもりだったんだけど…スーちゃんはあたしの言葉を聞いて顔を上げた。


【中ニ…!!奥方様流石デスッ、ソウカモシレマセン!!】

「ええ!?な、中の人が本当にいつもの人とは違うって事?」

【イイエ、先ズアイアンナックノ中ニハ誰モ入ッテマセン。恐ラク、今中ニ誰カガ…】


元々…入っていない?いや、それよりも今言った「中に誰かが」と言う言葉に焦る。


「って事はもしかして、あの中に人が入ってる可能性もあるの!?」

【エエ、十分ニアリマス】


出来れば否定して欲しかった…
スーちゃんの応答に、背中に冷たい汗が流れた。

その時、


「いけ勇者!!」

『リンク!Look on!』

「おーし!!」

「――!」


ナビィとリンクの声に気がつき、そっちに向き直る。斧を受け止めたダークに気をとられ、後ろをがら空きにしたモンスターにリンクが飛び掛った!


「り、リンク待って!もしかしたらその中に――」


――バキィィンッ!!


言うが遅く…あたしの言葉が届くよりも先に、リンクのマスターソードがアイアンナックをぶった斬った。
大きくて重い鉄の鎧が無残に倒れ、ガシャァンッ!と大きな音を立てた。

その時、倒れた衝撃でアイアンナックのメットが外れた。
必然的に見える、メットの外れた顔―――


「え…!ひ、人!?」

『リンク!コノ人…ゲルド族と同ジッ』


中に入っていたのは、本当に人間だった。慌ててリンクは鞘に剣を収めて中から現れた人に駆け寄った。
中に入っていたのは、褐色肌に燃える様な赤い髪を生やした――

あたしが今一番会いたかった人


「な…――ナボールさん!!


スーちゃんを繋ぐロープも捨て、あたしはリンク達より遠く離れていたのに彼らより先に駆け寄った。
邪魔な鎧を全て外すと、ぐったりとしたナボールさんが全身を現せた。


『え、エェ!?』

「ナボール…?それって確か、舞が言ってた…!?」

「ゲルド族の女首領の名じゃねえか!何で、アイアンナックの中にっ」


「ナボールさん!ナボールさん!!」


あまり揺さぶり過ぎない程度に肩を揺らす。生気の感じられないほど、砂漠にいる以上有り得ないほどの血色の悪さに、あたしまで血の気が何処か遠くへいくような気がした。


「ナボールさん!!」

「――…ぅ……っ…」


暫く名前を呼ぶと、呼応するように弱弱しく目が開かれた。
以前見た時よりも頼りのない弱弱しい瞳が開かれた。


「ナボールさん!あたしの事、分かりますか!?」

「…舞…?もしかして、あんた…舞、かい……?」


薄く開かれた黒の瞳があたしの顔を映した。ナボールさんとは7年前に離れ離れになってしまったから…7年ぶりの再会だ。


「そうですよ!あたし、舞です!!」

「そうかい…大きく、なったんだねぇ…。あたしゃ鼻が高いよ……」

確かに鼻高いですね。そらもう人刺せそうなほど

「お前は言葉のあやってもんを知らんのか」


相変わらずの鋭いツッコミ
それでも、苦しそうに息を吐き出して、ナボールさんは痛む腕を押さえた。


「ど、どうしてモンスターの中に入ってたんですか!?」

「さあね…。…7年前、砂漠の女神像に来て、お祈りを捧げてたんだ……」

「お祈り?」

「あんたの仲間が…早く、見つかるように、ちょいとね……」

「!」


それはまだ、リンク達と再会していない頃。あたしが来てからナボールさんは頻繁砂漠の女神像に行くようになった、って他のゲルド族が言ってたけど…
まさか、あたしの為なんて


「それから、突然…襲われて…最後に見たのは、2人の老婆だけさ…」

「襲われた!?」

「…!(老婆だと?…まさか…)」

「それからの記憶は残ってないんだよ…、悪いね舞…余計な心配、かけただろうに」


震える右腕を伸ばし、ナボールさんはあたしの頬に触れてきた。それからゆっくりと撫でる手は、死人のように冷たい。


「…仲間、見つかったんだね……」


頬を撫でながら視線だけをあたしの後ろにいるリンク達に向ける。本当に安心したようで、息を荒くしながらも口元を綻ばせた。


「ナボールさんが帰ってくるまでに、エポナに乗って…平原に出たんですっ」

「1人で出るな、って…あれほど言っただろう?
……泣かないどくれよ」


言葉が震えた所為か、それとも頬を触れられているからか。ナボールさんはあたしの目元を指で拭った。


「どうして、ナボールさんがこんなになるまで、何があったの?」

「…ツインローバか」

「…?ツインローバ?」


ずっと見守っていたダークが、後ろから言葉を漏らす。その言葉の中にあった『ツインローバ』と言うのは、恐らく人物の名前。


「ガノンドロフの育ての親みたいなもんだ。趣味が洗脳の実験だったからな…間違いないと見ていいだろう」

「洗脳!?じゃ、じゃあナボールさん…ずっと?」

「…後遺症もはっきり出てるし、完璧に操られていたんだ。此処まで完璧だとすると、恐らく攫われた7年間、ずっと洗脳の実験の対象にされてたんだろうな」


重苦しく言うダークの言葉に、あたしは愕然となった。あたしが悠長に過ごしている間、ナボールさんは気の遠くなるような長い年月を、ずっと苦しんで暮らしたと言う事になる。


「ご、ごめんなさいナボールさん…!あたし、もっと早くに気づいてればっ」

「あんたが、悪いんじゃないんだ…。気にするこたねえよ……」


以前、ダークがゼロに持った罪悪感の気持ちが、今更ながらもよく分かった。
洗脳がどんなものかは分からない…。でも、こんなに酷いものが残るという事は、それ相応に過酷なものだと言うことは分かる。


「…っ、直ぐ、ゲルド族の仲間を呼びますから!」

「心配、すんな、って…大丈夫だから…。あたしゃ……まだ、へいき…――」

「!―な、ナボールさん!!」


頬に触れていた手が落ちた。慌てて覗き込むと、ナボールさんはほんの少しの呼吸で眠っていた。
まだ顔色も悪く、唇も青い。体は痙攣を起こしかけている…、このままだと危ないのは分かった。


「た、大変…っ!!何処か…早く、ゲルドの集落に!」

「おい、落ち着けよ馬鹿女!心配しなくとも少し眠っただけだ」

「落ち着けないわよ!!見るからに危険な状態じゃない!」


肩に置いてきたダークの手を、思いっきりパンッ!と弾いてしまう。酷い事をしたにも関わらず、ダークは嫌な顔をせずに只じっ、と見つめてきた。


「早く休めるところを探さないと!取り返しのつかない事になるわっ」

「舞…」

「リンクなら分かるでしょう!?親と言ってもいい人が、危険な目にあってるのよ!落ち着くなんて絶対に――」

「舞!!」


頭の中が混乱するあたしの肩を、リンクがガッ!と掴んだ。今になってようやくまともにリンクの顔が見れて…、彼が、ナボールさんを心配するあたしを心配そうに見ていた事に気付いた。


「大丈夫だから…、この人なら絶対に大丈夫だからっ。舞が慌てたら、それこそこの人心配するよ」

「で、でも…、早く」

「急かす気持ちなら分かるよ。でも今は…落ち着こう?オレも、キミがいなくなった時は混乱したけど、落ち着かせて楽になったんだ」


だから大丈夫、と優しく言いながらリンクは大きくなった掌を頭に乗せた。あたしの気持ちとは反対に落ち着いた手つきで撫でられ、目元に滲む涙がスカートに染みを作って落ちた。


「怖くて、凄く不安なんだよな」


気付かない内に手が恐怖のあまりカタカタと震えていた。ナボールさんが死ぬ…、そう考えるだけで流れ落ちる涙が量を増やしていく。


「リンク…!どうしようっ…ナボールさんが、死んじゃうわ…!!」

「大丈夫、大丈夫だよ。絶対に助かるから、だから大丈夫」


リンクは何度も「大丈夫」と言いながらあたしの背中と頭を撫でて落ち着かせてくれた。彼の肩にとまっていたナビィも、いつの間にかあたしの肩に移動して羽で頬を撫でてくれていた。


【……奥方様…】


止め処なく流れていく舞の涙を、遠くからスタルフォスがじっと見つめていた。
すると、それに気付いたダークがスタルフォスに歩み寄った。そして…あろう事か、スタルフォスの体に巻きつけられたロープを解いてしまう。


【!!ナッ】

「お前は…もう、何処かへ行け。自由にするといい」

【シ、シカシ…】

「あいつだって、最後はどうせこうするつもりだったんだろ。それが少し早まっただけだ、気にする事じゃねえよ」


全てロープを解き、ダークは無造作にそれを投げ捨てた。自由の身となり、スタルフォスは自分の体を見直した。


【モシ、イキナリ攻撃スレバドウスルツモリデスカ?】

「……返り討ちにする、と言ってもいいが…、どうせあの馬鹿女がそれも許さねえし、適当に流す」

【ハァ…ソウデスカ】


肝を抜かれてしまったように、スタルフォスは呆然とダークを見つめた。仁王立ちをして、ダークは視線だけを舞とリンクに向けている。


「…俺は成りそこないの影だ」

【?】

「影になりきれず裏切り、人間のなる事も出来ない中途半端な生き物。
もう俺の居場所は…、此処しかないんだ」

【!…ソウナンデスカ】

「…。もう行け。後ろからバッサリやるつもりはない、とっとと消えろ」


言いたい事は言ったと言うように、ダークはふいっと向こうを向いてしまった。スタルフォスは剣に手を掛けることもせず、ダークに言われるがままに此処から消え去ろうとした。

…だが、何かを思い出したように足を止め、リンク達のいる方へ行こうとするダークに駆け寄った。


【オ、オ待チ下サイ!】

「…?あんだよ」

【スミマセンッ、1ツダケオ願イシタイ事ガアルンデス】


骨だけの手で握りこぶしを作り、スタルフォスは青白く光る目を真っ直ぐとダークに向けた。
以前よりも少し、光が淡くなった瞳を向けて話し出した。











「ヒヒヒッ、何じゃ呆気ないの〜」


すると、この場には今迄聞こえなかった第三者の声が耳に入った。
その声に驚き、涙も止まってあたしとリンク、そしてナビィが声の聞こえた方向に振り向いた。


「可笑しいですの〜コタケさん?洗脳は完璧の筈じゃのに」

「ケケケッ、勿論ですよコウメさん。只この小娘が腑抜けなだけですじゃ」

「そうかい、それなら安心したよ」


箒に跨り、宙に浮く2人の老婆。初めて見る老婆に、誰だと言う疑問が浮かぶよりも先に…
その2人の会話の中に聞こえた『洗脳』と言う言葉にあたしは過剰に反応した。


「洗脳…!?まさか、ナボールさんの洗脳は貴方達が!?」

「何じゃ小娘、こんな所に逃げ出しておったのかい?ガノンドロフ様がお怒りだよ、さっさと帰るぞえ」

「な、何言ってるのよ!?二度と帰らないわ、あんなとこ!!」


闇しか広がらない息苦しい空間…。思い出しただけでも身震いするのに、自分から帰るなんて絶対にしない。
そう思っていると、あたしを狙っていると勘付いたリンクが、遮るように庇い立った。


「お前ら、何の為に舞を狙う!!」

「んー?時の勇者じゃないか、こりゃ驚いたね〜。まだその小娘のナイトでいる気かい?」

「何だと!?」

「ヒッヒッヒ、その小娘はガノンドロフ様の半身。ハイラル統一には、小娘の持つもう片方の『力』のトライフォースが必要なんじゃよ」

「…っ!」


ツインローバの言った言葉の意味を理解し、あたしは半ば反射的に右手の甲を左手で隠す。この老婆があたしを狙うのは、あたしが持つ力のトライフォースの半身。
リンクも気づいたようで、マスターソードを引き抜いて刀身を敵に向けた。


「お前らなんかに、トライフォースも舞も渡すもんか!!」

「ケケケ!ならば勇者共々消してやるよっ!!」


宙に浮いたまま、老婆の片方が腕を大きく掲げた。すると、その手を中心に禍々しい気が大気から集まり、大きな魔法玉のようなものを作り出した。
間違いなく、攻撃魔法だ!


『リンク!危険だヨ!!』

「くそっ、舞下がって!」


攻撃を受け止めようとリンクが盾を構えた途端―――



ドシュッ!
――パァァンッ!!


「ぎゃああぁ!!」

「え?」

「くぉっ!お、おのれ貴様…!!」


思わず瞑ってしまった目を開くと、ツインローバが作った魔法玉が消えていた。ツインローバの睨む先に、それを消し壊した人物が弓を構えていた。


「ダーク!」

「おのれ…裏切り者の癖に、よくも!!」

「あんた達に最初、こいつらと一緒に会った時にはビビりまくったがね…」


弓を下ろすと、ダークはリンクと同じように鞘から剣を引き抜いて構えた。


「俺はもう、完全な裏切り者の影になる事を誓った。もう迷わない…あんたらに仕える『勇者の影』は存在しないぜ」

「ヒヒッ…成る程、ガノンドロフ様がお前につけた『ユダ』と言う名…確かにピッタリのようじゃな」

「……」


不気味に怪しく笑い、ツインローバは空高く浮き上がる。そのまま身を翻すと、魂の神殿内部に向かって飛んでいった。


「あ、待て!!」

「ケケケ!遊んでほしけりゃ神殿の奥へ来なっ」

「あたしらが骨を燃やし、魂を凍てつかせてやるよ!」


そう台詞を捨てると、完全にツインローバは神殿内へ姿を消してしまった。
敵が誰一人いなくなり、その場には暫く沈黙の空気が漂う。


「リンク…」

「ああ、分かってるよ舞」


どうするんだろう…相手はガノンドロフの親のような者。戦うか、それとも臆して逃げるのか


思いが伝わったのか、何も言わなくてもリンクは首を縦に頷かせる。
間もなく顔を上げると、真っ直ぐに向いた彼の視線の先には……

紛れもなく、砂漠の女神像が映っていた。






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