51.豚と腐女子と決戦と




最後の戦いなんて、本当は全然そんな感じしないんだけどな

だっていつも通り過ぎて特別なんて感覚何処にも存在しないもの

この戦いが終われば
また違う場所へ行かなければならない。
そんな感覚さえも覚える

この後に待つのは別れか喜びか…

出来ればいい方向へ進んでくれればこれ以上のものはないのに






豚と腐女子と決戦と






「――此処だ」


最後の段を蹴ると息を荒くしたあたし達は大きな扉を目の前に立ち竦んだ。
こんにちは皆様、女子高生です。とうとう最後の戦いを目の前に緊張しています。

こんな緊張、面接前よりも合格発表よりも何よりも大きい


「気味の悪さが漂ってるな…」

「とうとうあいつと戦うんだ。7年前、ぶっ飛ばされたあいつに」


隣に立つリンクがグッと握り拳を作る。
密かに震えているのは武者震いか緊張かは分からない。緊迫した空気のままだと上手くはいかない


「さあ、最後の戦いね皆!一発気合入れていきましょうっ」

「舞…」


パンッと手を叩いて大きな声を上げる。
そう、此処で自分の解く前の明るさ(喧しさ)を生かしてムードを盛り上げなくてはっ


「簡単よ、餌を目の前にちらつかせた所を一気に殴り倒せばいいだけ!」

「裏の浦島太郎みたいな展開だな」

『因みにその餌って舞?

Σ冗談じゃねえ!!最後の最後であ奴に食われるなんて――――ん?」


ナビィの言葉に対応していると、突然パイプオルガンの音色が変わった。
突然重苦しいものから変わったそれは明るく、ある祝会で歌われる曲で…


〜♪♪〜〜♪〜


そして耳を澄ますと中から奴の歌っている声が聞こえてきた。
それは……


「俺と舞〜の〜結婚式〜いつ挙げる〜〜♪」

――バターーーン!!

おいコララスボスもといそこの豚ーーーー!!!

ブンッ―――ゴィンッ!!

「Σぐぼっは!!」


あたしの投げた瓦礫の塊が変態魔王の後頭部にヒット。
無様にパイプオルガンに顔をぶつけた奴を見ながら無遠慮に中に押し入った。


「最終決戦前に控えたラスボスが何呑気にウェディングマーチ弾いてるのよ!?
しかも結婚する気もなければお前を生かす気もない!黄泉の国へ帰れ!!」

「(まさかこれが最終決戦…?)」


指差す先にいる変態魔王はよろよろと立ち上がる。
血の伝う口元を拭うとニタリと笑った(おぞましい)


「舞か…俺に会いたいが為に此処まで来たのだな!」

「相変わらず被害妄想の激しい事で」

「ふっ、お前のツンデレには慣れた!俺から迎えに行くつもりだったが、それさえ我慢できない程のお前の受け止めてやるぞ!!
さあドーンと俺の胸にその愛をぶつけて来いぃぃ!!

お黙りなさい禿げ豚

ドゴーン!!


ぶほぁっ!!

『Σドーンどころかドゴーンが来タ!!』


結界壁に入れられて尚黒さを発揮するかゼルダ姫。
ピクピクとしている魔王を無視して、結界壁の欠片をぶっ飛ばしてきたゼルダは手を払っていた。

…って言うか


「ゼルダ、結界壁壊せるならその勢いで自分で逃げ出せば…?

【それがそうもいかないのですよ舞。このクリスタル、特殊な魔法により超速再生するみたいで…
先程も百烈拳を試みたのですが駄目でしたわ(はぁ)】

Σ北斗の拳!!?

「何でゼルダがそんな技知ってるんだ!?」

「それを言うリンクも何故知っているのかが分からないんだけど」

『もういいカラ、お願いだからシリアスムードに戻ろうヨ…


ナビィそんな切実な声で言わないで、胸が痛い。

ナビィの言葉に痛む胸を押さえていると…、突然、あたしの右手の甲が光った。
驚いて目を見張ると、それは手に描かれた二分の一トライフォース


「な、何これ…」

「舞?何で、手が光って…?」

【これは…】

「…――トライフォースの共鳴」

「「!?」」


ガラガラ、と瓦礫を崩しながら変態魔王…もといガノンドロフが声を低くした。
さっきのふざけた雰囲気が無くなり、ガノンドロフは口端を上げた。


「トライフォースが再び1つに戻ろうとしている。同じ力が再び巡り会い、共鳴し会っているのだ」

『リンク!見て、リンクの手も…!』


パァッ、と淡い光を漏らし、リンクの左手の甲が光った。
よく見るとゼルダの右手も光を帯びている。恐らく同じ光が…


「トライフォースが…!」

「7年前のあの日…どんなに探そうと残りのトライフォースは見つからなかった。
それをまさか、貴様たちに宿っていようとはな…。
そして……」


くつくつと喉の奥で笑い、ガノンドロフは今度はあたしに視線を這わせた。
――今まで見た事の無い、人が変わったような冷酷な目で


「…!!」

「抵抗した光の賢者が聖三角を分断させ、俺の『力』の半身を彼の地へ飛ばした。
それが…舞。貴様に宿っていようとは、逃げ延びた7年前のあの日には思いもしなかったわ」


ガノンドロフの視界から逃げるようにリンクが前に立ちはだかる。
その光景に目を見開いた。これは、7年前の『あの日』と同じ光景…


「リンク…」

「大丈夫、舞は下がってて」

「舞…貴様は何故抵抗する?大人しく俺に着いて来い!そうすれば貴様とて楽になれる筈だろう?」


ガノンドロフは大きな手を差し伸べてきた。
以前までならまだ優しさを保っていたものも、今では微塵も感じられないほど冷たい。
あたしはマントの裾を掴んだ。


「あたしは…娯楽も何もない世界で生きるのは嫌よ!貴方に従って楽になれるなんて事絶対無いわ!」


あたしがそう言い放つとガノンドロフは大きく目を開いた。
それは拒否されたからではなく、別の事に驚いているようで


「何…?舞、貴様まさか…何も知らされていないのか?」

「…?何の、事…知らされていないって?」

「やはり…クククッ、所詮神も奇麗事を抜かして貴様を利用しているのだ!
その訳も直ぐに分かる」


可笑しそうに笑う彼の言葉にあたしは首を傾げた。どう言う事?何も知らされていないって…
ガノンドロフは冷たい視線をそのままあたしの後ろへ向けた。


「貴様…ユダ。お前は俺の恩を仇で返すつもりか?今更涙ごいしようと許さんぞ」

「するつもりはないし、あんたに恩を貰った覚えはないね。
――その為につけた『ユダ』なんだろ?」

「貴様っ」

「ガノンドロフ!!お前の野望は叶いはしないっ、今でも遅くない。降参するんだ!」


声を張り上げるリンクの言葉に目を一瞬見開く。
だがそれも間もなく可笑しそうに大声で笑い声を上げて打ち消した。


「くっ、ふははは!!馬鹿な、俺が降参だと?そんな事を言う程貴様に力がついたと言うのか!」

「お前なんかに負けない…守るものが出来た今なら!」

「面白い!!その減らず口を叩いた貴様がどれだけ強くなったか見てやる!!」


マントを翻し、ガノンドロフは握り拳を作る右手の甲を見せた。
あたしとは反対が描かれた、二分の一トライフォース…


「勇気、知恵、そして力!全てを手に入れ、今こそ俺は完全なる世界の支配者になる!!
貴様らには過ぎた玩具だ。

――返してもらうぞ!!


途端、ガノンドロフの手の甲がカッ!と一層強く輝いた。
黒く光る聖三角の印から目に見えるほどの邪悪な波動が放たれる!

光を纏うナビィは体をブルブルと震わせていた。


「ナビィ、大丈夫!?」

『だ、ダメだヨ…!ナビィ、闇の波動で近づけなイ…ッ』

「ああ、大丈夫だよナビィ!!オレが直ぐに――カタをつける!」


ダッと駆け出し、リンクは左手に持ったマスターソードを強く握り締めた。
あたしはナビィを抱えて後ろへ下がり、ダークはリンクの後に続く。


「ガノンドロフ!大人しくやられろ!!」


マスターソードを大きく振りかぶり、標的をガノンドロフに定めた。
その先にいるガノンドロフは抵抗を…、するかと思いきやニヤリと笑い、両腕を広げた。


「ならば大人しくやられてやろうか?」

「――え?」


――ザンッ!!

思わずリンクは急所を逸らし、ガノンドロフの腹部を斬りつけた。
本当に無抵抗に受けた事に驚き目を見開く。

―――途端の事だった


「っあぁあぁあぁぁ!!」

「!?」


後方から響いた悲鳴にビクッと肩を跳ね上げる。
聞き覚えのある声に慌てて振り返ると、視界に納めたものにリンクは動向を開いた。


「舞!!」

『舞!?ど、どうしたノ!?』


ドッと体を地面に倒すと舞は苦しそうに短い呼吸を繰り返した。
自分でも驚くように目を開いている舞は、自分自身何が起きたのか分からない様子

驚いて無防備なリンクにガノンドロフが腹を押さえ、拳を振るわせた。


ギィンッ!!

「勇者!ボサッとすんな馬鹿っ」

「だ、ダーク…!!」

「くそ…こっちは俺が何とかしてるっ。お前は舞の所へ行って来い!!」

「あ、ああ!」


何が起こったんだ…。そう思いながら全力でリンクは慌てふためるナビィの許へ走った。
駆け寄ると俯いて倒れている舞の体を抱き上げた。


「舞!舞、大丈夫か!?」

「リンク…?あ、あたし…っ」

「どうしたんだ?一体、何が―――」


――ぬるっ

…?リンクは手に感じた不快感に掌を見つめた。
そこには赤黒いものがこびり付いていた。鼻をつくこの異臭……間違いなく

まさか、と思い舞の体を全身見渡すと…

腹部から血が出ていた。しかも、鋭利な何かで斬られた様にバッサリと


「なっ、何で…!舞は攻撃を受けてないのに…」

【リンク!無闇に大きな傷をつけてはいけませんっ、あの者には!!】


不思議がるリンクにクリスタルに閉じ込められたゼルダが声を張り上げた。
彼女の口ぶりだと、ゼルダは何かを知っているらしい。


「どう言う事だゼルダ!?どうして…それに、何で舞が…!?」

【…リンクっ、これが舞の使命なのです…忌々しい呪縛が】

「呪縛?どう言う事だよ!!」


ゼルダは視線を逸らすと、噛んでいた唇をゆっくりと開く。


【舞は、『力』のトライフォースに選ばれた為に魔王の力を押し留める役割を果たすのです】

「え…?」

【魔王の力を、動きを押さえ込む為…トライフォースを境に繋がる理が生まれるのです。
だから――『悪の制御者』】

「…!!」
『そ、ソレってまさか……』

「ふん、小僧がっ。今まで何も知らずに呑気に旅をしてきたと言うのか」


ゼルダの言葉が変わり、ダークの剣を受け止めたガノンドロフが可笑しそうに笑った。


「(嘘だろ…まさかっ、まさかそんな…!)」


リンクの不安を他所に楽しそうな笑みを作る唇を動かす。


「俺と舞は繋がっているのだ!!互いの力をコントロールは出来るも、それは全てを同伴して共に感じると言う事!
それが例え、痛みであろうと苦しみであろうと――万死であろうがな!!

「――!!」

『そ、そんな!じゃあまさか、ガノンドロフを殺す事は…舞を…!?』

「それを舞自身が知らぬと言う事は、神は何も教えていないのだろう?
ふん、やはり人間を弄び利用していたと言う事だ!」

「…っ、勇者!!惑わされんな!お前は良いように言われているだけだ!自我を保て!!」


ダークの言葉が耳に入らない。今は自分の煩い鼓動の音だけが世界になっている。

…証拠は挙げられた。さっき自分がガノンドロフに攻撃したダメージはそのまま舞にも負担をかけた。
只でさえ『殺し』が怖いリンクだ、ましてや相手が舞となれば…


「―…なぃ…」

『エ?』


「出来、ない…っ!」

『! り、リンク!!』

「おい、馬鹿勇者!!」

「出来ないよ…!出来るわけないっ、出来ない!!出来ない出来ない出来ない!!」


舞を強く抱えて、体を震わせながらリンクは首を左右に振る。
視界に入らないガノンドロフの口がニヤリと笑った。


【リンク!貴方がやらなくてはこの世界は滅びるのですよ!?】

「い、嫌だ!それでも…っ、それでもオレは舞を殺す事なんて出来ない!!」

【リンク…!】


悲痛な仲間達の声に、リンクの目からパタリと涙が零れた。
零れる涙は舞の頬に落ち、まるで舞が泣いているかのように見える。


「イや、だ…っ!怖いよ、出来ないよ…!!」


仲間を裏切るような言葉にリンクは自分で自分を苦しめる。
視界の隅に、ガノンドロフの攻撃で地面に倒れるダークが映る。見たくないと言う様にリンクは両目を強く閉じた。


「逃げ、たい…!!こんなっ、所から…逃げっ」

「――っ、リンク…!!」


耳に届く鈍痛な声に、リンクはハッと目を開いた。
自分の腕の中で痛そうに眉間を歪める舞が、自分を見上げている。


「舞!」

「何をしてるの…っ?ダークがっ、仲間が死ぬわよ…!?このままだとっ」

「で、でもっ。オレが戦えば舞が死ぬ!それがオレは怖いんだ!!」

「リンク…っ」


ポタリと落ちたリンクの涙がまた舞の顔に落ちた。
リンクの声に大きく目を見開くと、舞は悔しそうに目を細めた。


「あたし……っ――あたし、今のリンク…大嫌い…!!

「!!なっ」

「今の貴方は、『リンク』じゃないわっ。普段のリンクなら…仲間を守る、って言って…何があっても戦うのに…っ!
あたし…、リンクに思われて生きるぐらいなら、自分で舌噛み切って死ぬ!」

「…っ!」


思わない言葉にリンクが目を見開いた。痛む傷を押さえて唇を噛む舞に


「何で…何でだよ!死ぬんだぞ!?そんなの嫌だろ!?」

「…リンク…あたし、今までの旅で自分が嫌だったの。それこそ、消えたいぐらいに…!」

「!?どうして…!」

「だって…戦えないのよ…?サポートも出来ない…、あたし、何時リンク達に見放されるかと思って…毎日を、ビクビクしながら縋り付いてたっ」


細められた黒い瞳から涙が零れた。
リンクの落ちた涙と混ざり合い、2つの悲しみが地面に落ちていく。


「役に立たないって…本当に辛いのっ、死ぬほど辛い事よ!
だからあたしっ、今此処で役に立つなら…頑張れば、何でもできると思う…!」

「でもっ、でもオレが嫌なんだ!舞に消えて欲しくないんだよ…!」

「消さない、って言ったのはリンクじゃない…」


舞の言葉に、リンクは昨晩の事を思い返した。
流星群の降る夜に誓った約束を


「死なないわ…あたし、まあ萌え道極めてないもの…」

「…でも…」

「リンク…あたしね、まだ注射が苦手な程、痛い事は苦手なのよ…。
そのあたしが、これでまだ生きてられるなら……心配はないから」

「―…っ、舞…!」

「行ってリンク。ダークを…あたし達を助けて…!!


乱暴に右手で涙を拭い、リンクはカシャリと盾を揺らした。
涙が零れそうになるのを唇を噛み締めて堪えると、瞑っていた瞳を開いた。











―キィン!
ガギッ、ギンッ!!

激しい攻防が繰り広げられる中、ダークは肩で息をしていた。
何とかダメージを与えない様に攻撃するのはコントロールが難しい


「チ…っくしょ」

「貴様に戦いを教えたのは俺だ。お前の攻撃パターン等読み取れる」


ガノンドロフの剣がダークの剣を弾き飛ばす。
同時に投げ出された体を壁にぶつけ、ダークは口から少量の血を吐いた。


「っくは!!…っの野郎!」

「フハハハ!ユダもそろそろ潮時か?存分に苦しめてやろうと思ったが…仕方がない。
このまま楽にしてやろうか」


ガシャリと大きな剣を鳴らし切っ先をダークへ向ける。
振りかぶられる剣に身構えて、ダークも自分の剣を力の入らない腕で構えた。


――ギィィンッ!!


「!?」


ガノンドロフの振り下ろした剣が受け止められた。
しかしそれはダークのものではなく、間に入った金色の影――リンクのものによって


「ガノンドロフ!お前の相手はこのオレだ!!」

「なっ…お前」


キンッと甲高い音を立てて剣を弾くとリンクは視線をダークへ向ける。


「ダーク!こいつの相手はオレがやるから、ダークは舞の傍にいてあげてくれ!」

「…ったく、いいとこ取ってく奴だな!」


吐き捨てるとダークは己の足を走らせて舞の許へ走る。
その様子を見届けると改めてリンクはマスターソードをガノンドロフへと向けた。


「小僧、貴様…ヤケを起こしたか?」

「起こしてなんかいない。
――信じてもらう気持ちをそのまま受け継ぐだけだ!」

「小賢しい!!」


リンクの剣が振り下ろされ、ガノンドロフは一歩身を引いた。
そこを更に追い込み横切りに剣を振るう。今度は自分の剣でリンクの攻撃を受けとめた。


ガキィィン!!

ギシギシと音を立て、2人の剣が歯軋りを鳴らす。


「7年前のようにはいかないぞ…っ」

「ふんっ」


ガノンドロフは身を引くと宙に跳躍しながら手の内を黒く光らせる。
気付いたリンクが振り返る時には、ガノンドロフの手からそれが放たれた!


ゴオォッ…
――バシィッ!!


「うわっ!!」

『リンク!』

【卑怯な…っ、リンク!魔法を叩き斬るのです!!】


ゼルダの声に従い、向かってくる闇の弾を切り裂く。
それは軌道を変えてガノンドロフへ向かっていった。ガノンドロフは片手でかき消してしまう。


「たぁっ!!」

「!」


一瞬の隙を見つけ、リンクの剣が縦斬りに振るわれた!
斬撃がガノンドロフを襲い、肩を深く切りつける。


ドンッ!!

「ぐあぁあぁぁぁっ!」


「――うぁ``…っ!!」



痛みが伴われ、舞の肩からも血が噴出す。目を一瞬見開き、声も出ないほどの激痛が体を走る。
ダークはその様子を見て強く体を抱くと苦しそうに息を吐き出しながら舞は服を強く握った。


『舞!ち、血が…』

「ぅ…っ」

『大変!い、今っ、ナビィが回復を…』

「駄目だ!!そんな事をすればガノンドロフも回復するっ」

『そんな…!じゃあ舞が苦しむのを黙って見てるノ!?』

「…っ、仕方ねえ事だ」


どうしようも出来ずダークは只舞を強く抱えた。
その間にもリンクは攻撃を続け、傷が増えていく一方だ。


「ダーク…、リンク…は……」

「戦ってる…もう少しの辛抱だ、頑張れ舞。絶対死んなよ!!」

「し…死な、ない……死な…な、ぃ……」


体力も削り取られ、何時もの元気さも見せないほど弱りきっている。
目にも光が無くなっていき舞は必死に呼吸を繰り返していた。


――ザシュッ!!


「――…!!!」


ガノンドロフの体をリンクが剣を貫通させる。
舞は目を一瞬見開き目から涙を零した。声も出ないほどの激痛に意識を飛ばした。


『舞!!イヤッ、イヤだよ…!!舞死なないでヨぉぉ…!』

「…っ!!」


唇を噛んだダークの口から血が流れる。
痙攣を起こす体を痛いぐらいに抱きかかえながら舞の額に頬を当てた。

どうも出来ないもどかしい自分


「勇者…!こいつを殺すなっ、絶対殺すんじゃねえ…!!」


いつもとは違い自身のない紅い瞳はリンクとガノンドロフに向けられる。




―ザッ


「ハァ、はァ…っ」


肩で呼吸をしながらリンクは前を見据えた。
そろそろ体力も尽きてきたが…此処で倒れるわけにはいかない。


「小僧…いいのか?お前の攻撃でっ…舞が苦しんでいるぞ…!?」

「…っ!」


その言葉に横目で後ろを見ると、ダークに抱きかかえられた舞が見えた。
痙攣を起こしながら血を流す姿を見て心臓がズキッと痛む。


「…(舞…頼む、頑張ってくれっ)」

「どうする?降参するか!?」

「っ、オレは絶対にしない!!お前を倒すまで何度でも戦ってやる!」


お互いに息を荒くしながらも攻撃の手は止めない。
剣を握り締めてガノンドロフを睨むリンクにゼルダが声をかけた。


【リンク!急所を狙うのです、小さな攻撃をしていては舞が危険ですわ!!】

「ああ、分かってるっ。次の一撃で…」

「次の一撃でどうするつもりだ?やられるつもりか!?」


両腕を掲げガノンドロフは大きな闇の弾を作り出す。
さっきとは桁違いの大きさにリンクは唾を飲み込んだ。アレにやられれば一溜まりも無いだろう


「(かと言ってミラーシールドではとても返せない。

……だったらっ)」

「消し炭になってしまえ小僧!!」


バチバチッと音を立て、巨大な闇の弾がリンクに向かって撃ち出される。
『リンク!!』と遠くでナビィの悲痛な叫び声が耳に響いた。


「っ、そうはさせるか!!」


だがリンクは闇の弾に臆する事無く向かっていくと身を低く構えた。
目の前まで迫ると剣を握り締める腕に込めて体を回転させる。リンクの回転斬りで散された闇の弾は当たりに散らばる。


――ドゴォンッ!!


散らばった闇の弾が辺りの壁を壊し瓦礫を生んだ。
その所為で視界を悪くする煙が辺りを立ち込め、ガノンドロフは邪魔そうに腕で払った。


ブワッ!!

――その時、煙に紛れてリンクがガノンドロフの前に姿を現す。


「なっ!?小僧貴様っ!!」

「でりゃああぁぁぁぁ!!!」


――ザンッ!!


跳躍と共に振り出されたリンクのジャンプ斬りがガノンドロフを切り裂いた!
胴体を斬られ、大量の血をあふれ出すガノンドロフは大きな悲鳴を上げて苦しそうに悶える。

ドッと膝を地面に倒すと胸を苦しそうに押さえてリンクを睨み上げた。


「ば…馬鹿な…!この俺が…負けると、言うのかっ!?
こんな小僧に…!!魔王、ガノンドロフが!!」

「お前の負けだガノンドロフ…」


リンクの言葉にギンッと睨み上げるも、ガノンドロフは血を吐き出した。
顔からも血の気が無くなり、振るえる太い椀を懸命に伸ばす。


「り、リン、く…!!ぐっ―――


ドッ…――ズゥゥゥン!!


大きな音を立ててガノンドロフの体が崩れ落ちた。
静けさが戻る空間の中で、リンクの呼吸の音だけが響く。


「……」


哀れみを含むような目でガノンドロフを見ていると、光が部屋を立ち込めた。
それに振り返ると、クリスタルに閉じ込められていたゼルダが解放され、地に足をついたのが見えた。


「ゼルダ…」

「リンク、やりましたね。」

「ああ。…!そ、そうだ…舞!!」


慌ててその存在を思い出し、リンクは壁際で倒れる少女に駆け寄った。
リンクが駆け寄るとダークが振り返り、ナビィはリンクの肩へ飛び上がる。


『リンク…さっきは一緒に戦えなくてゴメンね』

「いいんだよナビィ…それより、舞は?」

『舞は…』


羽を垂らすナビィの反応に顔を青ざめ、リンクはしゃがみ込む。
血で染まる少女の体に思わず目を細めるが…密かに上下しているのを見て目を見開いた。


「い、生きてる!まだ呼吸があるぞ!!」

「ああ、お前が上手く急所を外したようだな」

「そ、そっか…良かったァ……」


安堵の息をついて胸を抑えるリンク。だがその隣でゼルダは瞳を細め、眉間を歪めた。


「ですが、舞が生きているという事はまだガノンドロフも――」


ゴゴゴゴゴ

ゼルダの言葉を遮り、ガノン城が突然揺れだした。
少しずつ大きくなっていく揺れに戸惑い、リンク達は辺りを見回す。


「な、何だ!?」

「これは…!大変です、ガノンドロフは最後の力を振り絞り、私達を道連れにしようとしているのです!」

「嘘だろ!?じゃあまさかこのまま…」

「いいえ、急いで脱出すれば間に合います。直ぐに此処から逃げましょう!」


確かに、このぐらいの揺れならまだ暫くは大丈夫そうだ。
城を把握しているゼルダに道案内を任せてリンク達が走り出そうとする。


「――…待て。
どうやら簡単には逃げ出せそうにないぞ」

「え?」


ダークの言葉に振り返り、リンクは首を傾げた。
だが彼の言い分が分かった。振り返った先…倒れているガノンドロフの体を大きな闇が包んでいた。

闇がガノンドロフの体を包み、徐々に体に入り込んでいった。


「あれは…!?」

『まさか…闇があいつを回復させてルの!?』

「ああそうだ。このまま逃げても追いかけて足止めされるかもしれねえ訳だ」

『デモ急いで逃げないと!崩落に巻き込まれちゃうヨ!!』

「何とかしないと…何か、何かないかっ?」


ガノンドロフを足止めする方法を悩むが、何も出てこない。
こうしている間にも崩落は徐々に勢いを増しているだろう。急がなければいけない

必死に頭を回転させるリンクの隣で、静かに佇んでいたダークがゆっくりとリンクに振り返る。


「おい、勇者」

「ん?」


ダークの声に気付き横に振り返る。リンクの視線の先では、少し表情に影を差したダークが俯いていた顔を上げ、真っ直ぐと紅い瞳を向けてきた。


「お前に……頼みがある」









**







ズズズ……
―ガラガラ


闇がガノンドロフの体を取り巻き、全てが吸収された。
ガノンドロフの指先がピクリと動くと、上に乗った瓦礫の礫を落としながらゆっくりと立ち上がる。


「ぐっ…あの小僧が……許さんぞ、このままではっ」


傍に落ちた剣を拾いまだ回復しきれていない体を持ち上げた。
邪魔そうにマントを払うと、近くで砂利を踏む音が聞こえてきた。


―ジャリッ


「…!?」


その音に気がつき、ガノンドロフは後ろを振り返った。
振り返った先には自分に向かって一歩近づく影が…。その姿を見て大きく目を見開くと、喉の奥でくつくつと笑う。


「くっ、何を血迷ったか知らんが…貴様、逃げずに残ったのか?」

「……」


影は何も言わずに戦闘態勢に構える。
ずっと下の溶岩が発する光を反射して右手に持ったミラーシールドが光った。


「逃げなかった事は褒めてやろう。だが、此処がお前の墓場となる!

それでもいいと言うのなら向かって来い!



小僧!!


野太い声に臆す事無く、影――リンクは、持っていたマスターソードをガノンドロフへ突きつけた。


「逃げたりしない。オレは確実にお前を倒す!!それから皆の後を追えばいいだけだ!」

「面白い…先ほどのように上手く行くと思うなよ!!」


抜かれた剣を構え、2人の戦いが再び繰り広げられようとした。
崩落まで残った時間はあと僅か……







**






「さあこちらです!急いでください!!」


リンクが頂上で決戦を繰り広げる中、王女は知り尽くした城を先に行き誘導する。
それを追いかける影は気を失った少女を抱えて走り抜ける。


「…っ、くそ!」


邪魔な瓦礫を蹴飛ばし、道の開けた通路を走り抜ける。


「頼む、持ち堪えてくれ…!!」


自分ではどうしようも出来ずに、王女を追いかける影は奥歯を噛み締めた。
ガラガラと崩れていく居城の中を走り抜ける3つの影…

果たして上手く脱出する事が出切るのか―――




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