08.旅立ち前の萌え補給


僕は……何してるんだろう?


初めて見たデクナッツやデクババよりも大きくて凶暴な魔物、ゴーマを見て腰を抜かして


攻撃されそうになった時はもう駄目だと思った。


でも、彼女が助けてくれたから何とかなって、僕達のために囮になってくれもした。


何とか立ち上がれた僕は急いで彼女の元へ駆けつけて……ゴーマを倒した。


その後は彼女を責めて、彼女の胸の中で泣いた。


格好悪いよね僕………女の子に守られてばっかりで。



だから僕は強くなるって決めたんだ!

強くなって、舞を守りたい…只それだけ





旅立ち前の萌え補給





ふっ……すとん


「うわ…ホントに外に出た。」


周りを見渡せばクモの巣の張られた木々はなく、代わりに緑に輝く自然ばかり。
呪いも解けたし、これでデクの木サマも森も安泰するよね…


「あれ?草花が…」


デクの木サマを助けたばかりなのに、何故か足元の草花が枯れてる…
ま、まさかまた治ったのをいいことに同人を!?

また一発活をいれてやろうと顔を上げた。が…そこにはニヤついているデクの木サマもいなく、体内に入っていく前に見た弱弱しい顔。


『で、デクの木サマ!?呪い解きましたヨ!!』

[おお…ナビィか……それにリンク、舞、サリアもおるか…]

「デクの木サマ…?もう…元気になれるんでしょ?僕呪いの源倒したんだよ!!」

[リンク…落ち着いて聞いておくれ。
ワシはもうすぐ息を引き取るだろう……]

「な、何でですか!?」


リンクに続いてサリアも身を乗り出すようにデクの木サマに詰め寄った。


[呪いの侵食が大きかった所為か、ワシにはもう生きる力は残っておらん…]

『そ、そんな…だってデクの木サマ!!』

[妖精ナビィよ…お前に新たな任務を託す。
…リンクと……舞と共にの…]


弱弱しく告げるデクの木サマ。今の言葉の中にあたしの名前も入ってたんだけど…
まさかまたあんな危険な事をしろって言うの!?
か、勘弁してよ……


[ワシに呪いをかけていたゴーマも…またある男によって呪いを植え付けられておった。

ゴーマに呪いをかけていたのは【黒き砂漠の民の王】…

奴はハイラルを支配し【トライフォース】を我が物にしようと企んでおった…]


「トライフォース…?」

[3大神の女神様達が宿った聖三角と言われておる…

力の女神『ディン』知恵の女神『ネール』そして勇気の女神『フロル』……

トライフォースを手に入れた者には増大な力が我が物となる。
…しかし今トライフォースは封印され、誰の手にも渡らぬようある場所に隠されておる…]

「ある場所…何処なんですか?」

[それはワシにも良く分からん…じゃが、其処へ行く手立てはワシが握っておる。

リンクよ…お主の勇気を見込んでの頼みじゃ……


このコキリの森から足を踏み出し、平原の遥か向こうにあるハイラルの城におられる姫に会って来て欲しい…]


平原の遥か向こう。ハイラル城…
リンクの勇気が試されるのものなら、結構遠いところにあるってことかしら。


「僕が…」

[うむ…そして舞よ…お主もリンクと共に行きなさい。]

「え?デクの木サマ!何で舞も行かないといけないんですか!?」

[先ほど話した【黒き砂漠の民の王】がお主を狙っておった……
此処にいては、ワシが力尽きた隙をついてあやつがまた襲ってくるかもしれん…
危険な賭けじゃが、リンクと共にいたほうが安全じゃろう。

…逃げなさい舞、そして疲れたときは何時でも戻っておいで…

ワシがいなくなっても…コキリ族の者たちがお主を迎え入れてくれる……」

「デクの木サマ…ありがとう…」


急に瞼の奥が熱くなる。
それに続いて鼻が少しじんとなるのは気のせいじゃないだろう。

優しい言葉によって零れそうになる涙をぐっと堪え、あたしと入れ違うようにリンクが顔を上げた。


「デクの木サマ!僕…行ってみるよ!舞を守りきれるか不安だけど、僕やってみる!!」

[リンクよ…お主ならそう言ってくれると思っておったぞ……
では…奴が呪いを植えつけながらも欲していたこの秘宝を受け取りなさい。これをハイラル城におられる姫君に渡しておくれ…]


言うや否や、デクの木サマの頭上が緑色に輝き、一枚の葉が姿を変えた。
それを確認する間もなく、それはリンクの前に降りてきた。リンクが両手を差し出すとそれは光を失い、彼の手の上に優しく落ちた。


『【コキリのヒスイ】…』

[頼んだぞリンク…そして舞……ワシの役目は終わった…

これからも…ワシは……お前たちを…見守って……おる…ぞ……―――]

「デクの木サマ!!」

「デクの木サマ!」


リンクとサリアがデクの木サマの名前を呼ぶと、デクの木サマの色が変色し、頭上に生っていた緑の草が茶色となり地面に落ちていく。

さっきまで聞こえた優しい声は聞こえなくなり、それが死と化した合図だった。


『で…デクの木サマぁ……』


ナビィは悲しそうにひらひらとデクの木サマの許に飛んでいく。
隣にいたサリアが涙を流しながらあたしに抱きついてきた。あたしはサリアの肩を撫でながら、斜め前にいるリンクに視線を移す。


「リンク…」

「…っ」


何もないかと思ったけど、よく見れば彼の肩が小刻みに震えていた。
投げかける言葉も見つからず、あたしは首を項垂らせ視線を地面に移した。






まだ昼下がりにも至らない自然の中

緑に包まれた少年の嘆き声が、森中に大きく響き渡った。











***






「舞、行こう!外の世界に行かなくちゃ!!」


泣きはらした所為か、意気込んだリンクの目はまだ赤かった。
出来るならリンクの手を取って今すぐにでも此処から旅立たなくちゃいけない。

でも、今の彼は何も装備を整えてないし…


「リンク、先ず家に帰ってきなよ。
装備を整えておかないと、この先何があるのか分からないんだから」

『そうダヨ、舞の言う通り!!ダカラ一旦家に戻ロ?』

「う、うん…」


ちょっとがっくりした様にリンクは肩を落とした。
そのままナビィに誘導されるままリンクは家へと足を歩めた。

さて…その間あたしはサリアの家に行こうか。あたしも何かしら準備しといた方が……


「あ、舞!」

「ん?…サリア?」


いつの間にかあたし達の傍にいなくなっていたサリアが、迷いの森の入り口辺りから身を乗り出していた。
密かに彼女の目辺りが赤いのは気のせいじゃないだろう。


「どうしたのサリア?そんな所から〜!」

「サリアに頼むなんていい度胸してるじゃない…とか思ったけど、今回は見逃してやるわ。うん!あのね、ミドが貴方を探してたよ。」

「そう……」


例え泣いた後でも、貴方の腹黒加減は減少してないと。
それにしてもあのミド少年があたしを…何、この世界でも呼び出しと言うものがあるの?

ハッ!それとも新しい下着を御購入!?わざわざそれを知らせるために…!!
なんていい奴だコキリ族のリーダー!今すぐ貴方の許へ舞が参ります。


「待ってろミド少年と下着――――!!!」


マッハ3で駆けた腐った女の子。





「あ!舞!!」


サリアの言葉を聞いた途端、舞は何やら1人百面相をしてた。
数秒後、いきなり(ニヤけた)顔を上げたと思ったら奇声発しながらミドの家に向かってダッシュ。

止める声も聞かず、あっという間に舞は姿を消した。っていうか下着って…?


「う〜ん…行っちゃった…」


そりゃあ呼んでるのを伝えたのはサリアだけど、でもミドに気をつけてって言うの忘れてた。
ま、いっか。何かあればサリアの舞専用萌えレーダーで察知できるんだしv


「あ、そうだ。今はそんな事言ってる場合じゃないや!」


森の聖域にある、ある物を取りに行かないと。旅に着いていけない分、今サリアに出来る事をやらなくちゃ!

何か小さく震えているサリアの妖精を連れて迷いの森へと入る。








**



「ミド少年の家〜、ミド少年の下着を求めて〜〜!」


あたしが道を駆け抜けていく度にコキリ族の子供たちが高速で振り返るのは何故(当たり前だ)
今さらですが皆さんこんにちは、静かでのどかな森の中を現在進行形で爆走してる、元女子高生です。

勿論、目指すはコキリ族のリーダーであり、下着の色が青!のミド少年宅。
と、こんな事考えている間にも、目的地はもう約100m先!あと少しだ…っ、


ダダッ……!

バターーーーン!!!


「下着報告ご苦労ーーーー!!」

「何入ってきた直後勘違いしてんだテメェ!?ってかココドアないのに、何で今あんな音がした!?」

「あ、マズイ!ミド少年の妖精潰しちゃった」

「Σオレの妖精いいいぃぃぃいぃぃ!!!(汗汗)」


何だかピクピクしている(汗)多分丁度外に出ようとしていた妖精と見事にごっつんこ☆をかました音だったのか!(ごっつんこ?)

ちょい涙目で大事そうに妖精を抱えるミドが可愛いな〜vそうさせた元凶はあたしだけど。


「お、お前…もうちょっと加減っていうのを考えろよな」

「ごめんね、わざとだったの」

「そうか…じゃあ仕方ないな…ってちょっと待て!!自然な流れだったから流すところだったけど、今の故意的にやったのか!?」

「そりゃあミド少年に対する恋は深いけどっ」

「そっちの『こい』じゃねえよ!!」


う〜ん、以前に比べて突っ込みが深くなってるわね!
ノリ突っ込みがなんて出来るようになったなんて…!姉さん感激!!(姉さん違う)


「悪かったわよ!で、どうしたのいきなり呼び出して。
言っとくけどリンチなら止めてね?対抗するくらいの力持ってないの」

「そんな事するかって。いいからこっち来いよ」

(ガチャッ)「あ、5ルピー発見」

「って何勝手に日人ん家の宝箱開けてんだよ!!」


結構入ってたのは思ってたよりもショボかった…残念っ(黙れ)
呼ばれるままにあたしはミド少年が座っている高い木の台に近づいた。階段は上がんなくてはいいの?


「どうしたの?」

「さっき森の異変を感じたから、子分達にデクの木サマの様子を見に行かせた。
…デクの木サマが死んでたな」

「それは…まあ……」

「別に責めてる訳じゃねえよ。ただ、子分達がお前らの会話を聞いたんだ」

「へぇ……え?」


「お前…リンクと一緒に旅に出るって?」


ウッソ…まさかあの会話を聞いてたとか…考えてもなかった。
でもミド少年の目は真っ直ぐだし、何より旅に出るという事いう発言をしたんだから。


「ああ…まあね。と言ってもあたしはオマケみたいなもんだけど」

「やっぱりな。……危険だろ」

「まあ、そりゃあ。あたしは良く分かんないけど」


でも、デクの木サマの体内にいたモンスター達を見た限り、まだ世界にはあんなのがうようよいるんでしょう?う〜〜ん…今考えたら、リンクならまだしも、あたしは危険だなあ(汗)




「―――ホラ」

ポイッ
「うわっ!?」


何の前触れもなくミド少年があたしに向かって何か投げてきた。
吃驚して目を瞑っちゃったから良く分からなかったけど、目を開けて見てみたらこれまた吃驚。


「盾…?」

「フンッ!どうせデクの木サマの体内にいた時、なんらかの理由で無くなったんだろ!?
…一応、店運営してる子分に一個貰っておいた。」

「貰っていいの?コレ」

「オレなんかが持ってて、何の役に立つんだよ!」


そう言うとミド少年はプイッと向こう向いてしまった。顔を逸らしても少し見えている耳が赤くなっていた。
…ゴメン、不外だけどコレだけは言わせて。何こいつ!可愛すぎるんですけど!!

脳内で暴れる腐った精神と激しく悶えつつ、あたしは冷静なフリをした。遠まわしだけど、今のが彼なりの優しさだってこと、あたしには分かる。


「ありがとねミド少年!大切にするわ、墓まで持っていくから!!」

「どんだけ大事なんだよ…いいから、もう行けよ。あの半人前も待ってんだろ。
……ちゃんと2人揃って帰ってこいよな!」

「ミド少年――」

「だってそうでもしねえと、サリアの餌食がオレ一人になって苦労するしな(ガタブル)」

「あー……」


確かにね…(汗)
まあこれからは頑張ってリンクがいない分、彼女の苛めに耐え抜いてくれ。
森のリーダーだから大丈夫でしょう!!(無理あるぞ)


「それじゃああたし、そろそろ行くね。」

「ん。……無事帰って来いよ」


ミド少年の家を出て行く際、小さく聞こえた声があたしの背中を後押ししてくれた。

ミド少年の家を出て行くと、直先にリンクが見えた。あたしに気づくと手を振りながら駆け寄ってきた。


「舞!ずっと待ってたんだ…あれ?その盾、どうしたの?」

「ん?コレ、ミド少年がくれたの。持ってってくれってね」


突き出すように渡すと、リンクの胸にポスッと盾が置かれる。
それをしげしげと眺めると「へ〜」と言ってそれを背中に吊るした。


「よしっ!準備は整った」

『じゃあ早速、ハイラル城に向かいまショ!』

「了解っ」


あたし達はお互いに顔を見合わせて1つ頷くと、コキリの森の入り口に向かって走った。
後ろから何人かのコキリ族の子供たちが声を掛けてくれたから、振り返って手を振った。


数秒と経たないうちにあたし達は森から出てしまい、森と外を繋ぐ架け橋を上まで来た。

そのまま走り抜けようとした時…


「待って!」


後ろから声が聞こえた。それは凄く聞き覚えのある…


「サリア?」


そう、腹黒いと名高いコキリ族の1人、サリア。
走って追いかけてきたのか、彼女の呼吸は密かに荒れている。肩で呼吸しながらサリアはあたし達に近づいてきた。


「2人共…もう行っちゃうんだね」

「うん…でもサリア、僕たちまた直に帰ってくるよ!」

「そうそ、だからサリアは此処で待っててね?」

「うん、大丈夫……リンク、貴方にコレを渡しておくね」


サリアは一度それを大事そうに抱えると、両手で優しく包みながらそれをリンクの手に乗せた。
それは少し色素の薄い木で造られた、小さな『オカリナ』


「時々、コレを吹いてサリア達のこと思い出して…舞も何かあった時はこれ吹いて助けを求めて!」

「何だかサリアが言うと本当に来そうで怖いな〜…(汗)」

「サリア…ありがとう!」


リンクは笑顔でお礼を言うと、それを大事そうに懐にしまった。
それを見届けると、サリアは寂しそうに眉間を寄せた。


「外の世界は、此処よりも遥かに危険だってデクの木サマが言ってたの。
だから絶対、2人とも無事に帰ってきてね!」

「うん、大丈夫よサリア。心配しないで」

「舞は僕が守るから、サリアはミドたちとこの森を守ってて!」

「!…うん」


サリアは返事を返すと顔を両手で覆って俯いた。
小さく震える肩はいつもと違い弱弱しく見えた。


「大丈夫だからサリア…行ってくるね?」

『頑張ってネ!』

「また帰ってきたら、外の世界のお話してあげる!!」

「う、うん!気をつけて!!」


涙で濡らした顔を持ち上げて、サリアは精一杯の笑顔を見せた。
揺るぎそうになる決意に鞭を入れて、あたし達はまた振り切るように橋を駆け走っていった。


橋を渡りきると、あたし達の目の前には大きな緑で包まれた平原が姿を現した。
暫しの間、あたしもリンクもナビィも綺麗な緑に目を奪われた。



「舞、これから危険なことばっかりになるね」

「ん?うん、まあ旅に出るんだものね。きっとハプニングたくさん」

『リンク、怖いノ?』

「怖いよ…でも、舞とナビィがいるから平気。」


リンクはそう言うと、小さくあたしの手を握った。


「行こう!いろんな人が待ってくれてる、一秒でも早く行かなきゃ!」


意気込んで、楽しそうに笑顔で駆け出したリンクに一瞬驚いた。
足が縺れて扱けそうになるのを堪えて、あたしもスピードを合わせるため速度を速めた。隣ではナビィも着いて飛んできた。


大きな平原を小さな影が3つ、草原を駆け抜けていく。






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