05.猫、失踪事件勃発!!
ホー…ホー…
月明かりが当たる箇所だけ明るい、黒く染まった木々。
賑わいのあったトアル村も、今や起きているのは動物達だけ。人々からはもう寝息しか聞こえてこない。
それは無論、リンクの家でも。
「くー…かー…」
新たに居座った住人にベッドを譲った為、ソファで眠るリンクは穏やかな顔で寝息を立てていた。
しかし、家の中にいる二人の住人の内の一人。『彼女』だけは様子が変だった。
「…っ…」
ベッドに顔を埋めた舞の眉間に皺が寄る。苦しそうに歯を食いしばるその顔には脂汗が浮かび上がっていた。
頭から被っていた布団をずり下ろして腕を放りだす。
そして、何故か左手で右手の甲を、爪を立てそうなぐらい強く掴んでいた。
「(痛い…っ。右手が…熱くて、痛い…!!)」
じわじわと痛みを増す右手に我慢ができなくなり、舞は布団から飛び起きた。
しかし、下ではリンクが眠っている。あまり大きな声を出すことはできなかった。
「ぅっ……、いた…っ!」
ぎゅう、と力を込めても右手に広がる痛みには勝らない。
焼けるように痛い手を必死に握り締め、とうとう激痛は最高潮まで達した。
「いっ―――!!」
その瞬間、背中が仰け反り、歯を力いっぱい食いしばった。
間一髪のところで大声をあげそうになった自分を押さえこんだのだ。
激痛が走った時間は実際、たった2、3秒の間だけなのに、彼女にとっては何時間も耐えていたような疲労感が襲いかかる。
徐々に痛みが引いていく手に舞は安堵のため息を長く吐き出した。
息を吐き出しながら背中からベッドに倒れ込むと、目尻に浮かんだ涙が衝撃で枕にしみ込む。
さっきの熱と痛みはなんだったのか…。
それを確認する前に、舞は急激に訪れた睡魔に負けてしまい、すぅ…と寝息を立てた。
猫、失踪事件勃発!!
トアルの村に太陽の光が零れ落ちた。
清々しい朝の空気を吸い込みながら、朝食に使うトアルカボチャをとってきたリンクは家の扉を開けた。
「舞ー、起きてるか〜?」
返ってくる返事はなかった。昨日も目が覚めたのは自分の方が先だったが、そろそろ起きていた時間になる。
リンクはとりあえずカボチャを食卓に置いて、二階に続く梯子を上った。
「舞ー?」
トントン、とリズミカルに梯子を一段登る毎に、金色の髪が揺れ動く。
頂きに着きぐるりと目を這わすと、名前を呼ぶ相手が眠る毛布が規則正しく動いていた。
まだ眠っているのだろうか?失礼だとは分かっていながらも、リンクは眠っている少女を覗きこもうとした。
「…ん?」
ふと視線を巡らせたリンクがはたと止まる。目に留まったのは、布団からはみ出た右手。
その手を見た途端、リンクの表情が一気に変わる。
「なっ…!?ちょっ、舞!舞っ!!」
「〜う``〜ん…。ちゃんこ鍋の材料はヤモリとキャノーラ油…」
「Σそれじゃただの闇鍋だろ!?そ、そうじゃなくて!舞、起きろって!!」
必死な形相のリンクとは対に、舞は意味不明な寝言の羅列を並べるばかり。
肩を揺さぶってみるが起きる気配は毛頭見せない。
「…よしっ」
リンクは何かを決心し、眉を引き締めた。すると何を思ったのか、舞を軽々と担ぎあげた。
そう、抱き抱えたのではなく担ぎあげたのだ。
重そうな様子も見せず、二階から一階へ飛び降りた。
「(ん〜…っ。……んぁ?)」
流石に異常に気付き、舞の意識が覚醒を始める。
しかし目覚めたばかりの頭では思考が回らず、ぼーっと虚ろな視線を彷徨わせた。
「(あれー……なんか、揺れてる気がするけど…夢?)」
体にかかる振動を怪訝に思うが、今では眠気を誘う揺り籠にしかならない。
揺られるまま虚ろな意識の体に、朝の冷たい風が体当たりをしかけた。
「(うっ…寒…!なに、何で寒いの…?布団、ふと……ん?)」
手探りで温かい毛布を探すと、思ったより硬く、薄い布を掴んだ。
あれ…毛布ってこんなに硬かったっけ?確かに温もりはあるけど…って言うかこの温もりって、人肌じゃね?
………は?人肌…?
バシャバシャッ
「(バシャ、バシャ…?)」
今度は耳に届く水を跳ねる音。
感覚だけではなく聴覚もリアルな夢なんだなァ。と呑気に考える舞の右手が、人の手に握られた。
「(………ん?んん?)」
誰に手を握られたんだろう。夢とは言え気になった舞はゆるゆると閉じた瞼を開こうと力をいれた。
しかし握った相手はそれすら待たず、舞が目覚めるよりも先に、握った手をそのまま下ろして…足元の、水に浸けた。
バシャッ!
勿論舞の痛々しく爛れた赤い右手を
「あ、お父さん。おはよう」
「ああ、おはようイリア。今日もいい天気だな。トアルカボチャがよく採れそ―――」
「ほどぅるばあぁあぁあああぁぁっっ!!!!」
「「(Σビクゥッ!?)」」
和やかなトアル村にはそぐわない絶叫が村を占めた。
それが舞の絶叫と気づくのはほんの一部だけである。
この日のトアル村の住民は、新人の村人の断末魔の叫び声が目覚ましだったと言う。
***
えー…皆さまおはようございます。私は今朝、この世の終わりが来たのかと思うほどの激痛を受けました。
その痛みを受けた右手は今、リンク氏の手によって丁寧に白い包帯で巻かれていってます。
「…よし、できた!動かしにくいとかないかい?」
「うーん…ん、ない。ありがとうリンク!」
きつすぎず、かと言え緩すぎず、リンクの手によって右手が綺麗に白く染まった。
「リンク、包帯巻くの上手いんだね」
「村の畑仕事や山羊追いの手伝いをしてたら嫌と言うほど怪我をするんだ。お陰で手当てもお手の物だよ」
「はは、それはいいこと」
「それにしても…朝起きた時は驚いたんだぞ?まるで火傷でもしたような大怪我をしてるから…思わず取り乱したっての」
「そうだねェ。そのお陰で私も朝から二回も激痛にあったもんねェ。一回目は原因不明で、二回目はリンクが原因で」
「あ、あれはだからっ、妖精の泉に浸ると回復が早いからだって!ほら、手の赤みもまだましになっただろ!?」
「あっはっは、まあね。すんごいヒリヒリするんだけどね」
それは沁みてるからで…。とかなんとかぶつぶつ言いながらリンクは救急箱を片づけた。
私は苦笑を零しながら視線を右手の甲に落とす。
リンクに巻かれた包帯の下には、謎の痛みと火傷のような爛れた後。
「(昨晩の激痛は夢かと思ったけど…夢じゃなかったんだ)」
まああれだけの痛み、夢にしてはリアルすぎたからありえないんだろうけど。
けれど原因が分からない私は首を傾けて痛みを刺激しない程度に撫でるしか出来なかった。
ただ今は、早く治ってくれることを祈るだけ
視線を右手に落としていると、救急箱を置いてリンクが戻ってきた。
「まあ、少しの間は手作業はしない方がいいよ。力仕事なんてもっての他だ。何かあったらオレに言ってくれよ?力になるからな!」
「うん、そうするよ。ありがとうリンク」
「お〜い!舞ーー!!」
…あ、タロの声だ。外から聞こえてきた元気のいい声に、昨日出会った男の子の顔が思い浮かんだ。
「起きろよ〜!今日遊ぶ約束してただろ〜〜!?」
「あっ」
「そうよ〜!早く早くっ、リンクも来てよー!」
「…遊べ…」
三人の呼び声に思わず肩をギクリと揺らした。
そうだった…。今日はあの三人と遊ぶって約束をしてたんだ。それもつい昨日に
「何だ?もうタロ達と仲良くなったのか!でも遊ぶって?」
「ああ、昨日別れ際に約束してたんだ。今日になったら、昨日遊べなかった分遊ぼうって」
「遊ぶって…その手で?」
「い、いや、これは予想外って言うかなんちゅーか…」
しかしこの手では遊ぶことはできない。けど、昨日タロ達と約束したからなァ…。
どうしよう、と困っている私を見かね、リンクがポンと頭に手を置いて立ちあがった。
「その手じゃあ遊ぶのは無理だって。オレが代わりにタロ達と遊んでくるよ!」
「え?でもリンクに悪いんじゃ…」
「いいさ。元々オレもあいつらと暫く遊んでなかったから遊ぼうって前から言われてたんだし、丁度いいんだ。舞は傍で見てろよ、な?」
まあ、それぐらいなら…。リンクのお言葉に甘えることにして、私はリンクに続いて家の扉を潜って行った。
地上から数メートル高い位置にあるリンクの家には、取り付けられた梯子を登らなければ上がれない。
その為、今タロ達は私たちの目下で見上げる形となっている。
「あっ。リンク、舞!おっせーよ!」
「悪い悪い!なあタロ、今日遊ぶの舞じゃなくてオレでいいか?」
「へ?リンクが?別にいいけど…何で?」
「怪我してるんだよ、彼女。右手を火傷してて、あまり労働させれないんだ」
ほら、とリンクは証拠を見せるように私の右手を指さした。
純粋な子供達は素直にリンクの指の赴く方向へ視線を向け、視界に収めるとぎょっと目をひん剥いた。
「ど、どうしたのそれ〜!?」
「え!?え、えーと…不注意な事故があって?」
「…寝惚けて自分で手を焼いたんじゃないのか…?」
「なあまろ眉、昨日から私のことが嫌いか?」
「だから誰がまろ眉だ貴様」
マロはツッコミの時だけ口調が速くなるらしい。
私が心の中でツッコミを入れていると、タロが急に閃いたとばかりに顔を上げた。
「あっ、リンク知ってるか?お店で今、パチンコが売ってるんだぜ!パチンコだぜ、パチンコ!」
「パチンコ?」
「うん!」
「どれほどの威力があるのか……た、試したい…」
うずうずと体を震わせている兄弟。パチンコが欲しいとは、なんとも年相応な可愛い願望だ。
「タロもマロも、そんなに欲しいならウチの店で買えばいいじゃない」
「そんなの高くて買えねえよ。なあベス、ちょっとだけ借りてきてよ!」
「無理に決まってるでしょ!欲しかったら兄弟で小遣いを貯めて買うことね」
「え〜〜」
「水車のある家より…パチンコのある家に生まれたかった…」
「なあっ、頼むよ!」
「しつこい!!」
「あ〜、こらこら喧嘩すんなって!俺が買ってきてやるからさ、それならいいだろ?」
「ほ、ホントか!?リンク!」
険悪なムードを漂わせていたタロも、仲裁に入ったリンクの言葉に一瞬にして目を輝かせた。
苦笑しながらタロの頭を撫でているリンクにこっそりと耳打ちを交わした。
「いいの?お金大丈夫?」
「ああ。高いって言ったって子供小遣いを基準にしたら、だから。これぐらい余裕さ!」
それならいいのだけど…。
しかし幾ら安いとは言え、子供たちの為にお金を使うとは、リンクの優しさが沁み出ている証拠だ。
「じゃあ今から買ってくるから。みんなでちゃんと、仲良く待ってるんだぞ?」
「勿論だって!」
「よし!じゃあ舞、行こうか」
「うん」
「ちょっと舞、怪我気をつけてよね〜?」
ベスの助言を耳に、手を振り返しながら私は前を行くリンクを追いかけた。
「パチンコって幾らぐらいするの?」
「えーっと…確か30ルピーじゃなかったかな」
「……は?」
「え?だから、30ルピー。…高いか?」
「え、い、いや。そうでもないんじゃない!?あはははは!」
「…?」
訝しげにリンクは首を捻ってから首の向きを元に戻した。
それを好機に私は脳内で議論を言い合う。ルピーってどこの国の通貨!?
ドルとかペソならまだ知るものの…る、ルピー!?何そのメルヘンチックな通貨!聞いたことぬぇぇぇ!!
…って言いたいところだが、また叫んで村全体に被害が及ばないよう心の中で叫んだだけで置いておいた。
それにしても…や、やっぱり此処は何かおかしい…。そもそも地球上であるかすら疑ってしまう。全てが違い過ぎるし、文化や風習も―――
……地球上で、あるかすら…?どうしてそんなこと、思ってしまったんだろう。
…もしかして、本当、一億分の一の確率でしかないけど…
「(まさか…、そんなことはない筈だけど、もしかしてここは……地球ですら、)」
「舞?」
前方から掛けられた声により、ハッと我に返った。
弾かれるように顔を向けると、そこには長閑なトアル村をバックにリンクが心配そうな顔をしていた。
「大丈夫か?ボーッとしてるけど…まさか傷が痛んで」
「う、ううん!そんなことないよ!」
「けど…」
「そんな心配することないって!ほら、めちゃくちゃ元気だよ!あ、此処が雑貨屋!?ここにパチンコあるの!?じゃあ早く入ろうよ!ね!」
「あ、ちょっ」
「ほらほら早く!こんちはー!いきなりドッキリお邪魔しま…Σすうぅぅぅっ!?」
これ以上リンクに何か聞かれる前に私は半笑いで雑貨屋の扉を開けた。
そして後悔した。開けた先がなんとネガティブワールドだったのだから
「はぁぁぁぁぁぁ…」
ランプで明るく照らされた店内とは逆に、カウンターでは暗い雲が淀んでいた。
普通、カウンターではお客さんが快く買い物できるように店員さんが「いらっしゃいませー☆」と明るくお出迎えするものだ。…いや、『☆』はつかなくてもいいけど。
だが、今カウンターにいるのは余命を告げられた患者のように、重い溜息を吐く店の店長しかいなかった。
「せ、セーラさん?」
「おや、リンクに舞…。はぁ…。いらっしゃい…はぁぁ…」
「(く、くれー…)」
「い、一体どうしたんだよ?何でそんなに元気がないんだ?」
頬杖をついて溜息をついているセーラさんにリンクが優しく声をかけた。
するとセーラさんの瞳が潤い、もの凄い勢いと力で肩を掴んできた。
「それが聞いておくれよリンク〜〜!!」
「ぐえっ!」
「り、リンクっ!?」
「ウチの猫ちゃんがさァ!今朝から姿を見せないんだよ!そりゃあたしが昨晩楽しみにしておいた焼き魚を食べられたから叱りつけて新商品のパチンコを撃ったのは悪かったけど、家出にしちゃ長過ぎやしないかい!?ね、そう思うだろう!?」
「Σ猫相手に武器使うなんて卑怯じゃないっすか!!猫死にますよ!?」
「ああ、それなら大丈夫さ。ウチの猫ちゃんお利口さんだから!」
「自慢したいのか嘆くのかどっち?って言うかそんなこと言ってる場合じゃないですって!リンク死ぬ!セーラさんの握力で死ぬ死ぬ!!」
「おや?」
予想以上に強かったのか、セーラさんが掴んでいる部分からビキビキッ!!って音が聞こえてくる始末。
急いでセーラさんの手を退かせると、リンクはその場に倒れてしまった。
と、トアル村殺人事件!犯人の動機は過度の猫博愛だった!!
「だ、大丈夫リンク?」
「おおオレっ、初めて桃源郷見た…!!」
「うん、だろうね。顔が死期報せてたもん」
どうやらあまり大丈夫じゃなかったらしい。
咳込みながらも、リンクは当初の目的の為にも健気に立ちあがった。
「そうだっ。セーラさん!パチンコってあるかな?」
「はぁぁぁ…猫ちゃん…」
「あ、あの、セーラさん?パチンコ…」
「はぁぁぁ…猫ちゃん…」
「えーっと…セーラさ〜ん?」
「はぁぁぁ…猫ちゃん…」
「…舞…どうしよう」
「……あ。猫ちゃんだ」
「なんだってぇぇぇ!?何処!あたしの猫ちゃんどこどこどこ!!?」
「リンクこの人やべェェェっ!!もう猫しか耳に入ってねえよっ!!」
一種の禁断症状が出ているセーラさんに私もリンクも若干引き気味。
リンクに意見を求めようと振り向くと、彼は溜息を吐きながら肩を窄めた。
「仕方ない。セーラさんの猫を探そう。じゃないと話がまとまりそうにない」
「そ、そうだね。そうしよっか」
リンクの懸命な判断に従い、私たちは話を聞かないセーラさんにお別れして店を出た。
それにしても
「セーラさんの猫ってどんなの?」
「確かメスの三毛猫だった筈だ。大きさは大体、この専用の入り口に入るサイズ」
促されたのは雑貨屋の入り口の左手に供えられた小さな扉。
大きさから察して、仔猫と言うよりもう大人な猫サイズだろう。
これならまだ見つけやすい。
「じゃあ探そうか」
「うん!」
「おーい、リンク!」
「え?…あ、ジャガーさん!どうしたんだ?」
野太い声が頭上から降り注ぎ、リンクと一緒に見上げると、逆行に照らされたジャガーさんが高台の上にいた。
声に気がつくと、ジャガーさんはニカッと笑い、右手の指を前後に揺らした。
「ちょっとそこのツタを登ってこっちにきてくれよ!いいもん見せてやるぜ!」
「いいもん?分かった、直ぐ行く!舞も行くかい?」
「私はいいよ。下で探してみるから」
行ってらっしゃい、と背中を押すとリンクは頷いてジャガーさんのいる高台に向かって行った。
さて、私は下から探すと言ったものの、どこから探そう?
「あんまりこの村に詳しいわけじゃないしな〜。一回リンクの家の方面に……?」
体を旋回しようとした時、視界の隅に入った人影に動きを止めた。
あれ?あの道の脇に座ってるの、ウーリさん?
身籠ってる彼女が外に出ているのは、この短期間ではモイさんが鍛錬中の時でしか見たことがないのに。
なのにウーリさんは外に出たまま、小さな籠を持って何やら考えこんでいた。
気になった私は、猫の情報収集も兼ねて躊躇なくウーリさんに駆け寄った。
「ウーリさん、おはようございます!」
「あら?舞ちゃん。おはよう」
「外に出てていいんですか?中にいたほうが…」
「う〜ん、それがちょっと困ったことがあって…」
「困ったこと?何ですか、それ?」
顎に手を掛けて思案に耽るウーリさんを見ると、結構大変なことなんじゃないかと予測が立った。
首を傾げて質問を投げ抱えると、ウーリさんは困った顔のまま口を開いた。
「あの、舞ちゃんは見なかったかしら?赤子サイズの揺り籠」
「揺り籠、ですか…?見てませんけど」
「そう…。実は昨晩、産まれてくる赤ちゃんの為に作った揺り籠を外に置きっぱなしにしてたの。今朝気がついて取りに出たんだけど、揺り籠が、置いてあった場所からなくなってて…。今、探してるところなの」
「ウーリさんがご自分で探してるんですか!?だ、駄目ですよあんまり無理しちゃ!この村が小さいとは言え、無理するとお子さんに響きますよ!?」
「ふふ、舞ちゃんは昨日からえらく心配性なのね。大丈夫よ?」
「い、いや、私が大丈夫じゃないんですって…」
ウーリさんは今にも再度探し物を探しに行きそうな勢いだった。
話を聞いておいて野晒しにして後から何かあれば、私がモイさんに刺身にされるかもしれない。
どうせ探し物はもうあるんだし、一つぐらい増えてもいいだろう。
「あの、揺り籠は私が探してきます!」
「それは、舞ちゃんに悪いわ…。私平気よ?」
「いいえっ!!もう私、他の探し物をしてるんです!乗りかかった船ですし、私に探させてください!!(私の命の為にも)」
「まあ、もう探し物をしてるの?じゃあ尚更悪いし…」
「いいい、いいえ!私、探すの大好きなんですっ!だからウーリさんは此処にいてください、揺り籠ですね!?私が探しますから!私が!探し!ますから!!」
言葉を区切ってまで強く言うか、私(一人ツッコミ)
しかしウーリさんには効いたようで、彼女は苦笑を零しながら「じゃあ…お願いしようかしら」と謙虚に頭を下げた。
私もそれに安心し、ウーリさんに了承の返事を返した。
一先ず、見つかるまで家の縁側に座って待っててもらうことにして、私は新たな探し物を伝えてに高台にいるリンクの下に戻って行った。
私が戻った頃、丁度リンク達も話が終ったらしく、ジャガーさんに何故か頭を下げていた。
「おーい、リンク〜」
「あ、舞!いいところにっ。悪いんだけどやっぱりちょっと登ってきてくれないか?」
「え、私も?いいけど、何で?」
「見つかったんだよ、セーラさんの猫!」
「ほ、本当に!?今行くから、ちょっと待ってて!」
なんと、探し物の一つが早くも見つかったらしい。
喜々と急かす心に従い、私は太陽を背にこちらに手を振るリンクの笑顔に駆け寄って行った。
まだ一日は、始まったばかり。
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