07.トアルの(ガキ)大将




ハイラル、トアル、フィローネ、ルピー…。

何を聞いても、それらは全て初めて耳にするものばかりで、私が持っている記憶の中を探っても、該当するような答えはなかった。

私はそれほど頭が賢いわけでもないから、本当は存在しているのかもしれない。
又は、もしかしたら全然知らない他国に、いつの間にか夢遊病患者よろしく彷徨いこんでしまったのかもしれないかだ。


…外国に来たかもしれない?

ここの人達、皆日本語を喋っているのに?

流石にルピーなんて通貨の外国、聞いたことがないのに?

第一、耳がこんなに長い人……外国だからっているの?


嗚呼、分からない。分からない。

考えれば考えるほど謎が生まれる。

謎が生まれれば生まれるほど不安が募る。


元いた日本の手がかりがないのなら、

せめて、兄さんの行方だけは、誰か教えてくれないだろうか。





トアルの(ガキ)大将





「で、この玉をセットしてから弦を引いて離すだけ。簡単だろ?」

「へえ、なるほど。確かに簡単なのね!」


リンクの家に向かう道中、私は先ほど買ったばかりのパチンコの使い方をリンクにレクチャーしてもらった。
リンクも小さい頃に遊んだことがあるらしく、それは全然難しくないらしい。

ただ、玉に使われているデクの種という種はとても頑丈で、本気で当てたら人骨にもヒビが入るほどの強固さを誇るらしい。
…そんな危険なものを子ども達に持たせて大丈夫なのかしら…。


「(私は使わないほうがいいな。どこに飛ぶか分かりゃしないもの。)」

「あ、良かったら舞も試しに打ってみるかい?意外にこれ、結構ストレス発散にもなるよ」

「え。それはたった今私が心の中で撲殺宣言したのを見越しての発言なのか?


だとしたらリンクは相当の自殺願望者だということになるぞ。
何の事だか分かっていないようで、リンクは不思議そうに歪んだ顔を傾けた。
それに苦笑して「何でもない」という意味合いもこめて手をひらひらと横に振る。

左右に揺れていた手が力なく横に垂れるとほぼ同時に、リンクの家(イケメンの祠、腐女子の巣窟)が見えた。
なんちゅー嫌な二つ名がついた家なんだ。(勝手に命名したのはお前だろう)


「リンク!」

「? あ、モイ!」


さあいざゆかん、愛の巣へ!!
…と、飛び出そうとした私の邪な思念を察したかのように、家の方から何故かモイさんが歩いてきた。

はて、何故にモイさんがリンクの家のほうにいたんだろ?
…Σハッ!も、もしや、「この村のアイドル的存在なリンクをテメェなんかに汚させてたまるか」という、私への警告!?

な、なんてこった。モイさん、とても優しい人だと信じていたのに!
貴方のような強敵が初っ端から立ちはだかるとは思わなかった…。
でも、でも…私は…っ。私は、それでも…!


負けませんからね!!リンクの童貞奪うまではッ!!

「Σど、どうしたんだ舞!?何故俺に敵意を剥き出しにしている!?」


モイさんは急にバックに炎を立ち上らせ始めた私に驚いてツッコミを入れた。
…あれ、違うかったっぽい? (当たり前だ)
変な空気が一瞬立ち込めても、我らが鈍感勇者リンクさんは何食わぬ顔で首を傾げた。
あんた兵だよ。


「で、どうしてモイが此処に?」

「ああ。丁度、頼まれていた木刀の手入れが済んだから持ってきたんだ」

「本当!?悪いな、助かるよ!」

「いや、何。最近物騒だから、身を守るものがないとそりゃあ不安にもなるだろうと思ってな。
勝手に上がって悪いが、部屋に置いておいたから。後で確認してくれ」

「分かった。ありがとう」


どうやらモイさんは、リンクの為に木刀を持ってきたらしいのだが…
また、「物騒」って言ったなァ。さっきジャガーさんも似たようなことを言ってたけど…こんなに長閑な村の何処が物騒だと言うんだろう?
まだこの村に来て間もない私には理解ができず、首を傾げることしかできなかった。


「…お?リンク、釣竿もらってくれたんだな。コリンが知ったら喜ぶよ。意外とよく釣れるだろ?」

「ああ。さっき早速使わせてもらったよ。なあ、舞!」

「え?え、ええ。一発で魚が釣れましたよ!お陰でとある店主の病が治りました

「や、病?どういうことだ」

「えーっと…い、色々あってさ!セーラさんが、ちょっとな…」

「セーラが…?一体どうした」

「そ、それは…その、」

詳しくはwebで!

舞、頼むから話をややこしくしないで!


り、リンクに言われちゃあ止めるしかないじゃないか。
このイケメンっ、武器を分かっておるからって卑怯な!(待)

渋々口を閉ざした私にモイさんは苦笑を見せ、「じゃあまたな」と言って、頭をポンと一度叩いてから帰って行った。
正に理想のお父さん像だなァ…。なんてことを思って後姿を見送っていると、突然「あ!」と高い声が家の周りに響いた。


「リンク、舞!パチンコ買ってきたのか!?」

「や〜んっ。リンク、舞、ありがとう!」

「リンク…よく買ってきた…」

待てマロ眉。私の名前が入ってないぞ

「…何だ、舞…生きていたのか

Σもはや死んでる前提ッ!?それって買い物の道中に一体何があったの!
ってか何故にそこまで私を邪険扱いする、テメェーっ!!

「お、落ち着いて舞!子ども相手に、そんな熱くならないで!」


つい燃え上って拳を振り上げようとすると、リンクに羽交い絞めされてそれも止められた。
りり、リンクからの抱擁だと…!?(違)
おおおお美味しすぎるありがとうおじゃるマロ様ぁぁぁ!!


「…何か、今物凄い失礼な言葉が聞こえたぞ…」

「ま、まあまあ。マロも突っかかるなって。
舞、俺ちょっと先にモイが持ってきてくれた木刀を確認してくるから。悪いけど、俺の代わりにパチンコやっててあげてくれないか?」

「え?」


リンクは申し訳なさそうに一度謝ってから、家へと続く梯子を上って行った。
それを見送って後ろからタロに「早く早く!」と急かされ、私はハッと気付いた。

ちょ、ちょっと待て…。この流れだと、私がパチンコやるの?
ってことは、何か。さっき危険だから絶対しないと胸に誓って早数分でその誓いが断たれた、と?
………。


「(村に来て早二日目にして犯罪者になるのか、私ぃぃぃ!?)」

「ほら、舞!パチンコ打ってみせてよ!」

「うえ!?ううう、うん。分かった、けど…。」

「? けど…?何?」


リンクから手渡されたパチンコをぎゅっと握り、不思議そうに見つめてくるベスの目を真っすぐと見つめ、口を開いた。


死人出る覚悟で見学ヨロシクね

舞は一体これから何をしようとしてるの?え、パチンコじゃないのっ!?」


そうです。パチンコです。パチンコという名のデス・ゲームです。
ベスとマロの不安げな眼差しと、期待に輝くタロの眼差しを受けつつ、私はさっきリンクから教わったやり方でパチンコに玉をセット。
でも、何を狙えばいいのかな…。打ってもいいものがどれかも分からないし…。


「(とりあえず、適当にあの木でも打てばいいか。)」


庭にある数本の木の内から適当に一本選び、その幹に標準を合わせる。
右手で弦を引き、じっと静かに狙いを定め、私は思い切って―――打つ!


ヒュッ―――
   ドゴァッ!!


Σふぎゃぁぁあ!?ななな、何すんだよ舞!」

「え?何が……って、何してるのタロ?なして伏してる

舞が急にパチンコの玉をオレに向かって打ったから避けたんだよ!!


………へ?
わ、私の打った玉が、タロに…?


「ま、またまた〜。だって、タロは私の真後ろにいたのよ?そんな180度反転して玉がいくわけ…」

「…舞…じゃあタロの後ろの地面にめり込んでいるのは…何だと思う…?」

「…………あれ、パチンコの玉が見える……。

え、幻覚?

んなわけねーだろッ!!どんだけ自分の失敗認めたくねえんだよ!!
も〜っ、パチンコできないなら言えよ〜っ。強がっても仕方ねえだろー?」

「(ムッ)…よしマロ眉、兄ちゃんの体抑えつけときな。この的なら外す気はしないから」(構え)

よし任せろ」(グヮシッ)

「Σうわわわっ!?ば、馬鹿!殺す気か!マロも何こんな時だけ意気投合してるんだよ!お前ら二人さっきまでいがみ合ってただろうがーッ!!

「も〜、タロ耳元でうるさい!」

「…何、やってるんだ?」


マロにより羽交い絞めされたタロに向けてパチンコの標準を合わせていると、丁度家の中から外に出てきたリンクからそんな呟きを頂いた。
質問に返そうとすると、私がしていることに驚いて飛んできたリンクに遮られた。


「ちょっ、本当に何してるの!?人に、しかも子どもに向けるなんて…駄目だよ!」

だってセンセー!タロ君が先にやってきたんだもん!

「何、その小学生みたいな言い訳。」

「もう…。舞、次からは本当に人に向けちゃ駄目だよ。タロも、舞に意地悪するのは止せよ?な」

「ええ、ごめんなさい。もうしないわ」

「むぅ、オレ何もしてないのに…」

「タロ、いいな?」

「…はーい」


リンクには逆らえないのか、タロは渋々そう返した。
しかし、さっきまでなかった、リンクの背に吊るされている物を見た途端、表情が一瞬で明るくなった。


「あ!り、リンク…それっ」

「あら!木刀じゃない。どうしたの、それ?」

「ん?ああ、モイに手入れを頼んでおいたんだけど、さっき届けてくれたんだ。」

「な、なぁ、ちょっと見せてくれよ!」


子どもたちにせがまれて背中から下ろされた木刀は、私が想像していたものよりずっと長くて丈夫なものだった。
手渡された木刀を嬉しそうに見入る子どもたちを視界に入れつつ、気になっていたことをリンクに問いかけた。


「ねえ、リンク。リンクって、剣士か何か…?モイさんもだけど、剣扱うのよね?」

「ああ、そうだよ!ただ、モイは列記とした剣士だけど、オレはそのモイから剣技を教わっただけでしかない、紛い物に過ぎないけど…」

「リンクが紛い物の腕なんて思えないけど…。でも、どうしてこんな平和な村にいるのに剣なんて扱うの?単に護身術として?」

「それもあるけど、最近この近くにある森の方から不穏な輩が出没しているんだ。それに、いつモンスターに襲われても対応できるようにな」

「も、モンスター…?」


何、そのおとぎ話にでも出てきそうな言葉は。
唐突にリンクの口から零れた単語を反芻すると、私が聞くよりも先にタロがリンクに飛びかかった。


「なあ、リンク。剣の使い方教えてくれよ!最近、イタズラザルが出るからさ、オイラやっつけてやるんだ!」

「ん?ああ、いいよ。でも、剣をサルに向かって振るうのは駄目だぞ。動物達も、トアルの家族なんだからな!」

「ちぇー、分かったよ〜。んじゃあ、剣の使い方だけ教えて!」

「じゃああたし、的の準備をするわ!マロ、あんたはカカシの準備お願いねっ」

「…何でおれが…」


「いいから早く!」と急かすベスに押され、マロも何かの準備に取り掛かる。
その過程を見ていると、タロと話し終えたリンクが振り返ってきた。


「舞、これから剣の指導するから、少し離れたところで見ててくれるかい?巻き込まれたりしたら危ないから…」

「あ、うん。分かったわ。頑張ってね、リンク」

「ああ!ありがとう」


リンクの願いを受け、私は素直に家の前辺りへと向かっていく。
しかし、リンクもいいお兄さんねェ。子どもたちの願いを何でも聞いてあげるなんて…
…ん?

家の近くに繋がれた茶色の馬…。その傍に昨日見た小さな影がいた。


「あれ、コリン?コリンじゃない?」

「あ…!舞…お、おはよう…」

「ええ、おはよう!こんなところで何してるの?」


小さな影、基コリンは私に気付くとにこっと笑った。
その天使の微笑みに食らいつかず踏みとどまった自分、偉い。よくやったよお前(誰)。


「エポナにあいさつしてたんだ…。本当は、リンクと舞にもしに行こうかと思ったんだけど…あいつらが先に来ちゃったから…」

「あいつら、って…タロ達のこと?」

「うん…。あいつら、いつも僕のこと目の敵にするから…嫌いなんだ」


まあ、確か昨日タロ達から彼らの関係について聞いたから…無理もないと言えば無理もない。
どうしたものか、と言葉に迷っていると、何かに気付いたコリンがおずおずと顔をあげた。


「あ、あの、舞…。此処に来るまでに、その…うちに寄った?」

「ん?ええ、ウーリさんに探し物を頼まれたから、その時にリンクと寄ったけど…どうしたの?」

「そ、その時…お母さんから、貰わなかった…?あの、僕の作った…つりざお」


もじもじと言い難そうに視線を泳がせるコリンの言葉に、私は大事なことを忘れていたことに気付く。
そうだ、天使からの贈り物!!(違)
私宛じゃないけど、猫捜索時に大いに役立ってくれたし…。


「そう、お礼を言おうと思ってたのよ!ありがとうコリン。あの釣り竿、早速リンクが使ってみたの。凄くよく釣れるって、リンクも喜んでたわ!本当にありがとうね」

「う、うん。えへへ…喜んで、貰えたなら、僕も嬉しいな…」


褒められたことが嬉しいようで、コリンは頬を染めて笑顔を見せた。
思わず私も頬を緩めてコリンの頭をポンと撫でていた。

嗚呼、これだよ子どもの真の姿は…。さっきから失礼な発言をするわ、人を死んだ扱いするわで全く子どもらしくない人たちばかり相手にしてたから…!
…あれ、何だろ。心が荒んできた気がするのは…。


「ど、どうしたの舞…?何で、泣いてるの…?どこか、痛いの?」

「ううん…違う、違うのコリン。現代の荒んだ子どもたちに涙が零れてるだけだよ…

「…?よ、よく分からないけど…元気、出して」


泣いた所為で前かがみになった私の頭に、コリンの小さな手がポンポンと乗せられた。
優しすぎる彼に思わず感極まってがばちょっと抱きついたのは、決して私が悪いんじゃないと思う。

――そう、コリンと戯れていた時。事件が起こった。


「あーっ!!サルだ!」

「お、おい!タロ、待て!」


リンクと一緒にいたタロの声が聞こえ、思わず私はコリンから離れて振り向いた。
そこには、村の方とは別にある、妖精の泉がある方の小道へと入っていく子どもたちの姿が…。
って、ええ?な、何事?


「舞!」

「り、リンク。どうしたの?何で子ども達があっちの道に…」

「それが…最近村に出ている悪戯サルが、さっきその道に入って行ったんだ。」

「じゃあ、子ども達はそれを追っていったの?でも、あっちは危険だって…」

「ああ、奥の森にはモンスターの巣窟があるんだ。だから、森に続く柵に鍵がかかっていれば問題ないけど…もしかかってなかったら、大変なことになる!」

「じゃ、じゃあ直ぐに子ども達を連れ戻さないと!」

「オレが行ってくる。舞はコリンと…」

「え?私一緒に行けないの!?」

「え、行く気なの!?」

「え、行く気だけど」

Σええ!?

Σええ!?



…って、何やってんだ私たち。早く子ども達連れ戻しに行かなくちゃならないってのに、何悠長なやり取りをしてるんだか。
尚もリンクは「危険だから」と私に言い聞かせようとしてるけど、どっこい相手は話を聞かないこの私だ。
頑なにリンクの意見を却下して「行く!」と言い続けると、リンクの方が先に折れた。


「わ、分かったよ…。本当は危ないから連れていきたくないけど、舞がそこまで言うなら…」

「ありがとう、リンク!」

「ただし、絶対にオレから離れちゃ駄目だよ?危険だから、なるべく近くにいて」

「分かったわ。絶対に離れない!」

「リンク、舞…気をつけてね?僕、一度家に戻って、お父さんにこの事を伝えてくるから…」

「ありがとう、コリン。お願いしていい?」

「うん…!」


私たちの安否を気遣ってから、コリンは小さな足を懸命に走らせ、村の方へと駆けて行った。
その姿が見えなくなる頃、エポナの背に跨ったリンクが馬上から手を差し伸べてきた。


「さあ舞、乗って!」

「ええ!」


リンクのがっしりとした手に捕まると、一気に力を込めて引き上げられた。
途端に高くなる視界に驚く暇もなく、リンクが掴まってるように指示を出す。

…掴まるって、どこに?
恐る恐るリンクの服の端を握ると、「それじゃあ駄目だ」とでも言うようにリンクの腕が私の腕を掴み、自身のお腹へと回した。
こ、こんなに密着して…私(の鼻血)は大丈夫かしら?無性に不安が…特に、カッコ内。


「行くぞ!」

「え?お、おう!」


掛け声と共に手綱が振るわれる。合図を汲み取ったエポナは逞しい足を以て地面を蹴った。


「(お、思ったより衝撃強…!!)」


エポナが駆ける度に、そのリズムに合わせて凄い衝撃が身にかかる。
リンクは平然と前を見据えているけど、乗馬の経験がない私は予想以上の衝撃に少し酔いかけた。

でも、リンクの背中にゲ…、嘔吐だけは絶対にしないぞ。

そう思いながら、私は流れていく景色に目を奪われる余裕もなく、慣れない乗馬に耐えることしかできなかった。





***





ガクンガクン揺れる衝撃に吐かないよう耐えること数分…
密かに希望を抱いていた柵は見事に鍵が外されていて、更に大きくなった不安を胸に私達は突き進んでいた。

更に暫く走り続けると、とうとう私たちはとある洞窟の前でうろうろしている子ども達と、その子ども達の近くに佇む謎のアフロを見つけた。

…何故にアフロが?


「マロ!ベス!」

「! あっ、リンク!舞!」


リンクの声に弾かれ、涙目のベスが駆け寄ってきた。
リンクの手を借りてエポナから降り、私は駆け寄ってきたベスを受け止めた。


「大丈夫?どこも怪我してない?」

「う、うん…!私とマロは大丈夫っ、で、でも…ッ。タロが…タロが…っ!」

「タロがどうかしたのか?」


ベスの涙声で気付いたが、そう言えばタロだけ姿が見えない。

どうしたのものか、とリンクと顔を見合わせていると、あの謎のアフロが声をかけてきた。


「お兄さん達、この子たちのご兄弟ッスか?」

「いや、同じ村に住んでる子ども達なんだ。心配で様子を見に来たんだが…あんたは?」

「ああ、すんません。自分、この辺りで油売りをしているキコルって言います。さっき、この洞窟に男の子が入っていくのを見て慌てて止めに来たんスよ。
でも、この二人しか止められなくて、どうしようか困ってたんス。ほら、この先ってモンスターがたくさんいるっしょ?自分、戦いの心得がないからどうしようかと思って…。

………あの、すんません。さっきからそっちのお姉さんの視線が気になって仕方ないんスけど、どうしたんスか?」

「ああ、すみません。その頭の形状が気になって気になって

この状況で観察点そこッスか!?ず、随分マイペースな人なんスねェ。」


いやだって、鳥が集まるアフロってどゆこと?
もはや巣になってますけど。髪じゃなくて木の枝状態なんですけど…!?


「キコルさん、男の子が此処に入って行ったって言いましたよね?」

「んあ?ええ。」

「じゃあ、直ぐに助けに行かないと…。
あの、すみません。この馬を見ててもらってもいいですか?流石に入れそうにないので」

「いいッスけど…。お兄さん、この洞窟に入るんスか?真っ暗だし、危ないッスよ?」

「確かに暗いけど、村の子どもが入って行ったのに、見過ごす訳にもいかないから。舞、此処からはオレ一人で…」

「ううん、私も行く。私も心配だから。なるべく、リンクのお荷物にならないよう頑張るから!」


引き下がる気のない私を見て、リンクは苦笑して再び頷いた。
ベスの頭を撫でて「二人で先に村に戻ってててくれる?」と言うと、ベスは頷き、マロは「死ぬなよ…」と呟いた。

「ま、マロ眉のデレ期キタコレ!?」と叫んだ途端、「死ね。」とハッキリ言われた。
キミ、矛盾って言葉を知ってるのかね。


「ハ〜、お兄さんら勇敢ッスね。じゃあ、自分何もできないスけど…せめてこれだけでも持ってって下さいよ。」

「カンテラ…?」


リンクの手に渡されたのは、立方体のガラスの中に蝋が入っている、所謂灯りをともすカンテラだ。


「ほら、この洞窟暗いっしょ?そんな中闇雲に突き進むのも危ないッスよ。これで照らして進めば幾分か安全ですから。」

「そんな大事なもの、貰って大丈夫なんですか?」

「ええ、まだ予備がいくつかありますんで。あ、因みにカンテラの油が切れたら是非ともウチでお買い求めを!」


この人商売目当てで渡しやがった!!
あ、有難いことに変わりはないけど…。何だか複雑な気分だ。

けれど純粋なリンクは「ありがとう」と何の疑いもなくお礼を言ってカンテラを貰っている。
…うん、彼はきっと詐欺とかに引っ掛かるんだろうな。気をつけねば。


「じゃあ、舞。行こうか」

「あ、うん。」

「気をつけてね、リンク、舞!」


ベスに手を振って返事を返し、私たちはゆっくりと洞窟の中に足を踏み入れた。
直ぐにカンテラの灯りをともすと、少しばかり周りが照らされた。


「本当に暗いな。カンテラを貰って正解だったよ」

「リンク。敵が出てきた時に戦わなくちゃいけないのよね?じゃあ、カンテラは私が持っておこうか?」

「本当?助かるよ、舞!じゃあお願いしようかな」


リンクからカンテラを受け取り、なるべく前方を照らすように持ち上げる。
洞窟の内部は天井がそれほど高くもなく、幅もそれほどの広さではない。
前後で挟み撃ちにあったりすれば危険なことになるだろう。気をつけておかないと…。

…あれ?
私、いつの間にモンスターとやらいう架空の存在をこんなに信じ、危険視してるの?


「舞?」

「うん?」

「足元、気をつけてね」

「あ、うん!」


パッと意識を前方とリンクに戻すと、私はたった今考えていた思考を中断させた。
木刀を右手に、空いた左手でカンテラを持っていない私の右手を握り、リンクは慎重に歩みを進めた。

そして私も、彼の後へゆっくりと続いていく。
二人の姿が見えなくなると、洞窟の入り口付近は再び漆黒の姿に塗り替えられた。





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