11.帰ってきた腐女子




「――――次のニュースです。○○市に住まう、――舞さんが、先日から行方不明となっています。
まだ行方は分からず、今も警察が全力で調査に」


ピッ


箱型機械に舞の顔が映し出されたのを最後に、誰かが電源を落とした。落とした元のリモコンをテーブルに置き、目的がなくなった腕は膝を抱える。
赤く腫れた目をした、赤茶色の髪の少年は、テレビから目を外し、顔を己の膝に埋め込んだ。


「…行方不明なんかじゃ、ない……」


俯いた顔から、くぐもった声が漏れた。



「姉ちゃん……」






帰ってきた腐女子






「ナビィ〜そっちの袋とってくれる?」

『はいハ〜イ!』


おはようございます、昨日のクッパjr.のママ発言より立ち直った女子中学生です。
吃驚したわ、帰ってから韓国さん(クッパ)に聞いたところ、以前ピーチ姫をママだという嘘を教えてたから、お母さんに恋焦がれていたみたいなんだけど…

だからって母さんに昇格するとは思わなかったよ、自分。


「こんなものね。多かったー!」

『ホントだねェ、服だけじゃないもノ』


何せ、服だけでいいと言ったのに、生活必需品まで買えと半ば強制的だったもので買ってしまったから。
服だけでも店一個買い取ったぐらいの量の服。
流石に此処まであると、あたしも困る…(汗)


『ジャアこっちのものクローゼットに入れとくネ!』

「お願いねナビィ。あたし行く所あるから、ちょっと行ってきていい?」

『いいヨォ、分かった〜…アレ?舞、その小さい袋、何?お土産?』


ナビィが疑問を投げかけてきたのは、ピンク色の花柄の小さな袋。よくお土産とかを入れてもらうのに見かけるぐらいの大きさ。
入り口の扉から外へ出て、顔だけ振り向かせる。


「お土産、って言うか…お見舞いの品ってところかしら」












「………」


窓から見える子供達。それを見つめる小さな影。白いベッドの上で上半身だけ起こしているが、その表情は些か暗かった。

外の景色に小さな溜息をつくと、その直後部屋の扉をノックする音が部屋に響き渡った。


「!はぁい…」


控えめな返事を返すと、扉の音が少し大きく響く。入ってきたのは、茶色の髪の毛を靡かせた、舞。


「大丈夫?ナナ」

「あ、舞さん!」


ナナ、と呼ばれた少女は嬉しそうに微笑むと、足をベッドサイドに投げ出す。痛々しく分厚く巻かれた左足、そこをあまり動かさないように気を使いながら。


「まだもう少しかかりそう?」

「はい。ドクターが言うには、あと一週間…」

「へぇ、結構早いのね!」

「一応、日々大乱闘で鍛えてますから…ドクターも、それが幸いしてだと、言ってました…!」


少し照れ臭そうにナナはにっこりと笑った。

なにやら彼女の笑顔を見た途端、壁際に走っていきバンバン!!と力強く叩きだした舞に首を傾げた。まるで何かに耐えているようだ。
理由は貴方なら分かるでしょう。


「(た、耐えろ自分!)そうだナナ!昨日買い物に行ってたんだけど…その途中で買ったの。
コレ、もし良かったら」


がさがさ、とさっき持ってきた小さな袋の中から取り出した物を、ナナに手渡す。
貰ってから改めて見直すと、ナナの身長分はある大きさの兎のぬいぐるみ。


「可愛い…!これ……」

「ナナの好みがよく分からなかったから、そういうものになっちゃったけど。
骨折してるから外では遊べないでしょ?暇つぶしにもならないけど…ないよりかはいいかと思って」


頭を掻きながら、舞は苦く笑った。ナナは舞の様子に笑うと、もう一度ぬいぐるみを見て大事そうに抱き締めた。


「嬉しいです…私、プレゼントとかあまりもらった事ないから!」

「そう?そんな物でよかったら、何時でも買ってあげるわよ」

「ううん、時々だから、凄く喜べると思うんです。だから…このままで……」


宝物を扱うように大事に持つと、ナナはそう呟いた。「そっか」と呟きながら腕を組むと、デパートなどでよく聞く【ピンポンパンポーン♪】という音が響いた。


「?何?」

【あ、あ〜〜〜。え〜、新人の舞君、新人の舞君。ミッキーマウスが呼んでいます】

誰が!!ミッキーマウスなどとまとめるなこの馬鹿者!!】

ゴンッ!!

【あでっ!!う``ぅ…痛いなァ(涙)
とりあえず舞君〜、用があるから今すぐに管理室に来てね〜〜〜!】


ブチンッ―――


「………あたしゃ迷子かい


流石というべきか、例え放送と言えど突っ込みを忘れていない。ぶつぶつとなにやら呟きながらも入り口へと向かっていく。
扉を開け、体を外に出すと少しだけ体を覗かせた。


「じゃあナナ、あたし行くわ。早く治るといいわね」

「あ、あの!舞さん…っ、あり、…ありがとう、ございました!!」


頭を大袈裟なほど下げる彼女に一瞬驚き、すぐに笑うと「いいのよ!」といいながら手を振って扉を閉めて出て行った。
扉の閉まる音を聞くと、ナナはさっきもらったぬいぐるみに視線を移し、もう一度ぎゅっと抱きしめた。



















****



++in管理室++









「―――え?どういう事?」

「だからね、一度君を元の世界に帰そうって事になったんだ。」


城内放送を使われて呼び出され、何事かと思って来てみれば…予想外の事を告白された!!
ミッキーが突然、あたしを元の世界に帰すと言う。


「で、でも…あたしが帰れるのは一週間に1回、しかも日曜日でしょ?今はまだ火曜日よ?」

「それもそう言ってられん」

「君が突然いなくなった事で、向こうの世界での舞君の関係者が大パニックになってるんだよ。
だから、とりあえず今日は私とマウスの力で送り帰そうと決めたんだ。
一日だけなら、何とかなるだろうからね!」

いい加減にしないと指の骨全部折るぞ

それは遠まわしに体の骨全部を折ると


なるほど…死の宣告をされているミッキーは置いといて(冷たいな〜 byマスター)
確かにあたしは言わばあっちから消えたんだから、そりゃ皆何処に行ったか分からないわよね。特に渉なんて…渉、そう言えば大丈夫かな?

まあミッキー達が1日頑張ってくれるみたいだから、此処はお言葉に甘えておいた方が利口でしょう。


「そうね、一応あっちに言っておかないとね。じゃあお願いするわ、2人とも」

「分かった」

「じゃあ舞君、また異界転送をするからその魔法陣に入って!」


う、また殺人現場に…(汗)
これで見るのは3回目だけど、それでも慣れない(慣れたくない)から少し引く。それでもあそこに行かないと何も進まないから、大人しく上に乗るけど…

魔法陣という名の血痕の上に乗ると、擬人化したミッキーとマウスが前に立つ。


「それじゃあ行くよ舞君。勿論呪文は昨日君が言ったあの言葉ねv」

「え、あれホントに決定されたの!?

「だって他に何もなかったんだもん!」

「その形で”だもん”は駄目よ!!」


幾らカッコいい姿でも”だもん”は可愛い子限定なんだからっ(切実)
言葉を覚えているあたしは言わないを得ざるで…ついつい頭を抱えて溜息をついた。意を決して、息を大きく吸うと同時に顔を上げた。
その時丁度、誰かが部屋の扉を開ける音も聞こえ。


「大人しくしやがれ愚民共!!」


―――シュンッ


おっかない言葉を上げるを最後に、部屋には寂しい静寂が訪れる。


「よーし、成功だ!」

「いつ聞いても、後味が悪い…」


溜息をつきながら、やれやれ、と言う風に首を左右に振りながらふり返る。顔を上げると、部屋に入ってきていた人物に目を見開いた。
入ってきていた人物も若干驚いていた。
















****











++in地球++




シュンッ!


以前見かけた事のある家の中。そうだ、此処は……

………ん?


んん!?


よく見れば、足元…地面がない。


「わあぁぁぁぁああああぁぁあぁぁ!!!??」


ドドドドッ!――――ガターーン!!


「〜〜〜ぁいったああぁ!!」


見事に足を踏み外した…ていうかなかった、ものの正体は階段。そう言えば、あたしがこの世界を消えた時も階段…


「そんな所、別に忠実に再現しなくていいのに…」


体中が痛い。原因は今の転倒だろうけど、周りの状況を確認しなといけないから、仕方なく痛む体に鞭打って立ち上がる。
階段を下りた所から真っ直ぐいくとリビングに続く扉があって…ここから右方向に行ったらキッチン。

下りて折り返す位置には少し広い部屋がある。よく、暑い夏にはそこでクーラーをつけて渉と涼んでいた……あ!


「そうだ、渉!」


先ずは渉の部屋に行くのが妥当だろうけど、それじゃあまた2階に上がらないといけなくなる。
此処は先に目の前にある部屋から行こう、そう決めて前にあるリビングに続く扉を開ける。

全然変わっていない食卓。何故かつけっぱなしのテレビ…こんな時だというのに、ちゃんとテレビを消せよ、と主婦的な考えが頭を駆ける。


「ん?」


渉を探すために奥へ行くと、此処から繋がっているキッチンを覗く。キッチンの床には、砕け散った白い物体がたくさん。
一目見てこの上を歩いてはいけないと思った、この考えから、これは割れた食器類だと分かった。


「どうしてこんなに…?地震でもあったの?」


でも、そうだとすれば周りだって散らかってる筈。あたしが見た範囲では、此処以外は散らかってなかった。
という事は、意図的に誰かがやったもの。その誰かとはつまり……


「―――誰だ、あんた!?」


背後から誰かに怒鳴りつけられた。驚いて肩を跳ね上がらせるものの、その声をあたしはよく知っている。最近聞いていなかった懐かしい声に、ふり返った。

ふり返った先にいる人物は、あたしの顔を見ると、持っていたバットを下ろした。その顔はまるで、お化けでも見た時のような程…


「渉?」

「…ぇ……姉ちゃん…?」


カランッ、あたしの返事の代わりのように、バットが床に落ちた。
懐かしくて、笑顔のまま立ち上がる。…が、ちっとも動かない渉に首を傾げる。


「渉?どうしたの、あたしよ?」

「姉ちゃん…?だって……姉ちゃん…?」

「そうよ?貴方の姉の舞よ!」


意味の分からない事を言ってくる…一発ビンタ入れて活気盛り上げてやろうかと思ったけど、それよりも先に渉が…頬に一筋の水を流した。
勿論あたしもそれに驚くわけで、渉の傍に駆け寄る。


「どうした…」


最後の「の?」と聞く前に、あたしの言葉は遮られる。凄い勢いで飛びついてきた渉によって。
その勢いに後ろに倒れそうになるものの、後ろには散乱した食器類が!!危ないから何とか踏みとどまる…危ない!!大怪我するところだったわ(汗)


「姉ちゃん!!ホントに…ホントのホントに姉ちゃんだ!!」


顔をコートに押し付けて、渉は大泣きした。どうしたものかとも考えたけど、それもすぐに分かった。
ミッキーが言ってたこっちの世界の人たちの大パニック…渉もその、1人だ。

さっき言った言葉を最後に、何も言わずに渉は大きな声を上げて泣いた。

泣いて、泣いて、泣き喚いた。


キィ…ッ

「え?」


「(オロオロ…)」


部屋の扉を開けて入ってきた黒い小さな影…言わずと知れた彼は、


「って、ウォー――――――!!?













―――−−---











「そ、そうなの。じゃああたしが消えたのを見て追いかけてきたのね」


出されたお茶を飲みながら、喋れない分一生懸命コクコクッ、と頷く。
あたしの隣では、ウォーを見た事のない渉が少しびくびくしながら顔を覗かせていた。


「だ、誰?姉ちゃん、この人…」

「……あぁ。
え〜っと…渉、スマッシュブラザーズDX知ってるわよね?」

「うん」

「その中のキャラクターで、ミスターG&Wってキャラいたの、覚えてるわね?」

「うん」

「彼がそうよ」

「うん。
……Σのえぇぇぇええぇぇ!!?


体仰け反らせるほど渉仰天。その仰け反りが過ぎて、頭を床に打ちつけた。
痛む渉を向こう側にいたウォーも心配して、オロオロとしていた。…な、何この可愛い子っ!!


「全然違うじゃん!!って言うか、な、何でゲームのキャラクターが此処にいるの!?」

「それなんだけど…渉、一から話すわ。長くなるけど、頑張って聞いて頂戴!」

「う、うん」


兎に角、渉にだけは話しておかないといけない。
あたしが、スマデラの世界に飛んでしまったこと。


どうしてあたしが呼ばれたのか、その理由が暇つぶしだと教えると渉は凄い突っ込みを入れてくれた。
流石我が弟だと感激(何故)

それから、向こうでのまだほんの少しの生活。今目の前にいるウォーを始め、他キャラ達の紹介。

全部を話すと、渉は本当に吃驚していて、そのあたしの弟は思えないほどの整った顔を歪ませた。


「それって…可笑しいじゃん。そのマスターハンドの自分勝手に、何で姉ちゃんが振り回されなきゃいけないんだよ!」

「渉…」

「…でも!もう大丈夫なんだよな!戻ってきたんだから、もう姉ちゃんがいなくなる心配ないんだよな!!」


渉は、少しの不安を秘めた喜びの表情を一杯に浮かべた。その表情を見たら、とても続きを言えなかった。
思わず顔を逸らしたけど、それがイヤな答えに取れた渉は、表情を歪ませていた。


「姉ちゃん?な、そうだよな…?」

「…渉、あのね」


トントンッ

言いにくい続きを言おうとしたら、前にいたウォーが小さく机を叩いた。
視線を向けると、ウォーはにこっと笑っていた。どうしたらいいのか、そう考えていると、ウォーが突然板のような物に何かを書き出した。

暫くすると、その書いた物をあたし達に見えるぐらいの高さにまで上げた。
書かれていた言葉は、


〔舞は明日になると、またあっちに戻る〕



言いにくかった言葉が書かれていた。それを見た途端、渉の表情は絶望に堕ちたようになった。


「な、何それ…どういう事だよ!!」


渉が食いかかるように言う言葉にも怯えず、ウォーはまた違う板にマジックで書き出した。


〔ある呪いのせいで帰れないんだ。一週間に一度、日曜日だけに帰れるんだけど…〕

「う、嘘だろ?だって、そんなの…勝手すぎるじゃんか!!」

「渉…」


見た事のないぐらい、渉は怒ってる。テーブルを乱暴に叩いて、身を乗り出して、ウォーに怒鳴りかかった。
テーブルに置いている、振るえる手を握り締めて、渉はテーブルに顔を伏せた。


「何で…母さんも、父さんもいないのに…っ、オイラ、今度こそ本当の1人ぼっちになんの…!?」

「……渉」


何も出来ないから、上下に揺れている肩に手だけ掛けた。家族がいなくなって、あたしと渉だけになって、お互いがお互いを支えながら生きてきたから。
自分勝手なあたしに、怒りたくなった。そうこう考えていると、ウォーがまたテーブルをトントンッ、と叩いた。さっきよりも優しく。


「…?」


キュッ、キュッ

〔大丈夫〕


笑顔を作りながら見せたウォーの言葉。あたしも渉も、首を傾げる。



キュッキュキュッ

〔君の大切なお姉ちゃんを取ってゴメンね。でも、【奪う】事はしないから〕

キュッキュッ

〔マスターもクレイジーも、本当に謝ってる。許せとは言わないから…傷つくほど責めないで〕

キュキュキュッ…キュキュッ

〔渉君が舞に会いたくなったら、スマデラメンバー全員になっても力を貸してでも、1日こっちに帰す。
声がいつも聞けるように、専用の機械だって作る〕


キュキュッキュッ

〔だから、ゴメンね。
幾ら謝っても許してもらえないだろうけど…それで君が泣かないなら、何でもするよ〕

キュキュッ

〔こんなの、都合が良すぎるかもしれないけど〕


キュッ――――

〔奪わないって信じてほしいな〕


優しい笑顔を浮かべて、ウォーは最後にその言葉で終わった。


「渉…」


ずっと静かに見ていた渉は、視線をテーブルに向けた。


「……そんな知らない誰かの言葉、信じれるわけないじゃん」

「っ渉!」

「…だからさ」


渉は顔を上げて、真っ直ぐとウォーを見た。


「友達…友達になってくれよ!友達の言う事なら、信じれる」


真っ直ぐみと見つめて、はっきりと言った渉の言葉にウォーは目を見開いていた。
それでも直ぐににっこりと笑うと、白くて細い、小さな手を差し出した。読み取った渉は、ゆっくりとそれに絡ませた。


「ちょっとずつだろうけど…頑張って信じてみるね」


前髪で隠れてその表情は見えないけど、密かに見えた耳は赤かった。渉の反応にウォーも、ほんのり頬をピンクに染めて笑った。

良かった…でも、渉が無理して頑張ってるのは分かる。窓から入ってきた夕陽が、渉の頬を流れるソレを反射させたからね。


―――ありがとう渉。


















****










―――プルルルッ……カチャッ


「はい、もしもし」

【あ、ミッキー?あたし、舞だけど】

「ああ、舞君!どう、そっちの様子は?弟君にも会えた?」

「ええ、渉にも説明したわ。明日そっちに帰る事も全部。ウォーもフォローしてくれたお陰で理解してくれたの」


こっちの電話からでも連絡できるように、連絡先を教えてくれたミッキーに電話をかけた。
晩御飯も済ませて、お風呂も済ませ、渉達も今は眠っている。


【良かった!二人共、仲良くなれたかな?】

「まあね。最初はギクシャクしてたけど、さっきまでは一緒にゲームだってやってたのよ」


そう、友達になった2人は最初気まずそうにしてたけど、何とか後押ししてやったからか、一緒にお風呂も入ってスマデラもやってた。
余談ではあるけど、ウォーがゲームの中での自分の姿を見てひきつり笑いをしていた。
ある意味貴重な絵だったわ!


「はしゃいでたから、今は疲れて眠ってるわ。あたしもこれから寝ようと思って、今日の報告でもしとこうかと思って電話したの」

【そうなんだ。私達はまだ仕事があるから、代わりに先にいい夢見てね!】

「うん。……ねえミッキー」

【ん?】

「その…今度、1日だけでも、渉を……、…ううん、いいわ。
今日はもう寝るから、また明日ね!」

【……うん、おやすみ舞君】

「おやすみなさい」


カチャッ…

――― 一日だけでも、渉をそっちの世界に連れて行けないかしら?


「勝手な事かな」


そうよ、もしかしたら渉まで帰れなくなっちゃうから。そんな事になったら、
…そんな事になったら…


「……、2人とも、ほら、部屋に行って寝ましょう?此処じゃ風邪引くわ」

「…むぅ……」


リビングで寝ていた二人を起こして、吃驚させないぐらいの力で手を引っ張る。ふらふらしている2人の手を引いて、階段まで行く。

階段が心配だったけど、まだ少し意識がある2人は、少したどたどしい足取りで上がった。
部屋を用意してないから、ウォーには渉と一緒に寝てもらおう。そこまで狭くないし、大丈夫よね。

寝惚けている2人を一人ずつ抱き上げてベッドに横たわらせる。布団をかけてやろうとしたら、渉が服を掴んできた。


「渉?」

「姉ちゃんも…一緒、に……」


最後までいう事なく、渉は力尽きた。それでも、服を掴んでいる手は緩まっていない。
どうしようかと考えたけど…

渉の部屋に置いてある、1人サイズのベッドを引き摺ってくる。それを隣にくっつけて、その上にあたしは乗った。
これなら一緒に寝れるし、2人の邪魔にもならないでしょ。

部屋の電気を消すためにリモコンのスイッチを押す。渉とウォーに布団をかけて、自分もタオルケットを被る。


「おやすみ、2人とも」


返事が返ってこないことを承知で、あたしは2人を片手で包んだ。渉とウォーの寝息が優しく耳に入り、それが子守唄のようになってすぐに意識は落ちた。




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