16.バトれ!オールスター!! 四





スマデラメンバーって皆凄いのね。実力があるのは最初から分かってたけど…それは予想外に大きすぎて、逆に怖くなってしまいそうなほどに。

バーチャルリアリティの中で動いていた人たちが自分の目の前で闘っていると、何だか不思議で、それでいてプレイ側では感じられなかったキャラクター達の『生きている姿』が見えた。

…あたし達の世界だけが、宇宙の中に存在しているんじゃないんだ。

出来る事なら渉の許へ戻って、元の生活を過ごしたい。でも、この世界を逃すといけない気もしてくるの。

よく分からない、不安定な位置に立っているのね、あたしって。

いいわ、今は楽しめる事は楽しんでおく。そうすればいいのよ。
うん、きっとそう


あたしは、地球から逃げているんじゃないって…そう思っていたいの。


――さて、そろそろ行かなくちゃ。皆待ってる







バトれ!オールスター!! 四









ぺたぺたぺた…
キョロキョロ


「だ、誰もいない…」


スマデラメンバーが住まうこの館内。その片隅で、男の子が覗くような体制をとっていた。
体中が白いソレは、肌の色ではなく服の色そのもの。


「(ど、ど、どこにいけば、いいのかな…)」


そろり、と出てきた少年の体はビクビクと挙動不審に震えていた。
何処か遠い所から、大きな歓声が聞こえてくる。それを頼りに進んでいるものだから、何処にどう行けばいいのかなんて分かっていない。


「うぅ、先輩がいるって言うから、来てみたけど…知ってる人いないと、不安、だよなぁ」


少年は大きな瞳を潤ませる。
外で木から鳥が飛ぶ音に身を跳ねさせると、とうとう壁の隅っこに小さな体を縮こませてしまった。


「もも、もうやっぱり、か、帰るゥ…!!」


ひ〜〜〜ん!と情けない声を出しながら、少年は体を震わせながら泣いた。


カツカツカツ…


「(Σビクッ!?)」


突然、廊下に靴音の響きわたる音が。自分は歩いても、ましてや立ってさえない。となれば…原因は第三者という事になる。
つまりは自分の知らない人が、近くにいる。それだけでも考えると、少年は益々壁際に寄り体を縮ませた。


徐々に大きくなっていく足音。ついには自分の至近距離から聞こえてくる。ぎゅっ、と目を固く瞑り、見つからない事を祈った。
そして相手はそのまま通り過ぎて………
くれたらとどんなにこの少年は願った事だろう。

足音はピタリ、と前で止んだ。


「あら?」


知らない誰かが…きづいた。ショックな気持ち、と言うよりも、怖い恐怖心の方が強い。体がガタガタ震え、心の中で強く怖い人ではないようにと願った。


「ど、どうしたの?そんなに怯えて…ねェ、大丈夫?」

「(ここ、怖いぃぃぃぃ!!)」


声からして少女だろう、しかし今の少年にはその事さえ分からず、しかも心配してくれている事にすら気づかずに、俯いたままで顔を上げなかった。
このままにしていたらきっと通り過ぎてくれる、と信じていたのに…少女は少年と背丈を合わせるためにしゃがみ込んだ。


「迷子、かもしれないわね…でも、見た目の年齢的にはそんな感じしないんだけど。
あ、もしかして誰かに用事?」

「う…あ、うぅっ」

「?ねェ、あたし何もしないから、顔上げてくれない?」


大丈夫よ、と言いながら肩に重みが加わった。それが相手の手が置かれたのだとは分からず、過剰反応に驚いた少年は肩を跳ね上げると共に、反射的に顔を上げた。

自分の前にいたのは、自分とさほど変わらない年齢の、同じ茶色の髪の女の子だった。女の子は初めて見た自分に「わぁ」と声を漏らして顔を綻ばせた。


「へぇ…可愛い顔してるのね!あたし、舞って言うの。貴方の名前は?」

「え、あっ…ぴ、ぴ」

「?」

「うわわっ、ピット…っです」


消え入りそうな声で自分の名前を呟いた少年、もといピットはまた顔を俯かせてしまう。
まだ会って間もないその少年の性格がもう分かってしまった少女は、少し苦笑気味だった。


「ピット、いい名前ね!初めて会うんだけど、何処から来たの?」

ピット「い、居候してる…裏の世界、から…」

「裏の、世界?それって…もしかして、ダークがいた世界の事かしら」

ピット「ぅえ!?だ、ダーク先輩知ってる…!?」


少年、もといピットは、少女が呟いた人物の名前に吃驚した。裏の世界、それは影の住人が住んでいる世界の名称。
ピットもそこからやってきたと言うのだから、聞いたほうも多少ビックリだ。


「ええ、知ってるわよ。彼なら今、スマデラメンバーと一緒に乱闘してるわ」

ピット「せせ、先輩が…凄い」

「うん!――あ、そうだピット、貴方ってもしかして乱闘できたりしない?」


首を傾げながら、きっと緊張感を和らげるためであろう、柔らかい笑顔を向けられ、ピットは少しずつ自分の体が解れていくのに気づいた。


ピット「らっ乱闘、は…いちお、出来る…っ」

「ホントに!?じゃあもしかしたら―――」

ピット「…?」


ピットは、目の前で何かを呟いている舞に首を傾げた。一体どうしたんだろう…、そう思っていると、突然彼女が顔を上げ、それとほぼ同時に自分の手を握った。
驚く暇もなく、体が立たされた後、突発に走り出した。急な事に、ピットも足が縺れそうになる。


ピット「うぅああぁあの!?どど、何処に…!?」

「あっ、いきなりでごめん!でもお願いっ、今困っていた所なの!貴方の力を貸して頂戴!!」


握っていない方の手を立てて、ごめんのポーズを作る舞に、ピットは何が何やら分からなかった。
自分に何を求められているのかは分からない…

だけどそれを考える余裕がないのは、無理矢理の全力疾走と、あっち(裏)の世界では感じる事のなかった温もりを、彼女の手を通して伝わる体一杯に感じているからだろうか。














***











―――バタンッ



「ミッキー!マウス!!」


大きな音を立てて開かれた扉の先には、さっきまで一時期離れていたマスターとクレイジーがいた。
2人とも舞の帰りを待っていたようで、入った途端マスターは椅子を立ち上がった。


マスター「ああ、お帰り舞君!さっきランダム操作で対戦メンバーを決めていたんだけど、欠けた所はマリオに代役を―――」

「その心配がなくなったの!代わりの助っ人を連れて来たからっ」

マスター「え?」


きょとん、と言われた事に呆けているのは、奥で椅子に座っているクレイジーも同じだった。
そんな2人にもお構い無しに、舞はさっきからずっと手を繋いでいるピットをずいっ、と目の前に突き出した。


「ほら!さっきそこで会ったの、ピットって言うのよ!」

ピット「え…え、っと……」


急に差し出されたピット自身どうしたらいいか分からず顔を引きつかせている。
突然な彼女の行動にきょとん、と流石のマスターの呆けていたが、ピットの顔を見た途端2人の表情も変わった。


クレイジー「ん?ピット?」

マスター「ピット…って確か、シークレットカプセルに入っている、試験体の1人じゃなかったっけ?」

「?試験、体?」


ピットを前に出したまま後ろで舞が首を傾げた。とりあえず、開けたままの扉を後ろ手で閉めて、椅子に座っているクレイジーの許にまたもや集った。


クレイジー「裏の世界に、シークレットカプセルという特殊なカプセルが作られているんだ」

マスター「私達はそれをS.Cと呼んでいるんだよ!」

「そのS.Cに、どうしてピットのような人が入れられているの?それに、試験体って…」

クレイジー「一見響きは悪いかもしれんが、試験体とは次の参戦者として認められた者の事だ。お前の世界で言えば、合格した受験生という所か?」

マスター「やっぱり、彼らの世界とこの世界とを比べると、空気も環境も全然違うだろう?
だからこっちの世界に一番最初に来るのは裏の世界なんだ。そこで暫くはS.Cの中に入り、この世界に馴染むための体を作るんだよ」


へぇ〜、と舞は納得の声を漏らした。簡単に決められるものかと思えば、そんな決まりがあったとは。
自分の事について左右から話されている事に照れたピットは少し俯いた。


「ねェ、ピットはまだ闘える体は出来上がってないの?」

マスター「うーん…クレイジー、裏の世界の管理者としてはどう見る?」


席を譲ったマスターに促され、椅子から立ち上がったクレイジーがピットの前に立った。今まで俯かせていた顔を上げて、ピットはビクッ!と体を跳ね上がらせた。無理もない、クレイジーの地位は、ピットからして見ればこの世界での神のようなもの。
緊張と恐怖にカチコチに固まる彼は、気づかないうちに隣りにいる舞の服を掴んでいた。


クレイジー「…構わないのではないか?絶対に完全とは言えないが、それに限りなく近い状態にはなっている。
それに、この段階での試験体がどれ程出来るか見てもみたいしな……

ピット、一度乱闘に参加してみるか?」

ピット「!?おお、俺が、ですかっっ!?」


本当に予想外の事だったのか、ピットは大きな目を更に開いて眉間を垂れ下げている。さながらその姿は捨てられた子犬の目だ。
さっきから服も掴まれている事もあり、舞はその姿に必死に自分の理性と奮闘していた。


ピット「で、でも…でも、でもォっ」

マスター「大丈夫だよ、彼らは皆優しいから、新人の君でも快く迎えてくれるさ!」


その中に数名徹底的に恐ろしい奴らがいるんだけどね。心の中で付け足す舞だが、その数名にマスターが気づいていないなんて事分かりきっているから口には出さなかった。
何たって、彼は馬鹿であり極度の天然なのだからな。


ピット「お、俺…まま、まだ闘いの心得をっ、完全には…覚え切れて、なっい、くて…」

マスター「ああ、基本ルールの事かい?今回は1人ストックが1つずつだし、制限時間はないよ!
出てきたアイテムを自由に使ってもいい、という条件つきだけで、他は自分の力で戦えばいいだけだ」

ピット「うぉっ……で、も…」


それほど怖いのか、ピットは体を震わせながら俯いている。よく見れば、うっすらと目尻に涙が浮かんでいる。
本当は飛びつきたいんだが、舞は何とか肩を叩くだけで抑え込んだ。


「大丈夫よピット、あたしも全力で応援するから!」

ピット「ぇ……ぅ、その…」

「最初は誰だって怖いものよ。でも貴方は参戦者として選ばれた実力があるんだから。それを放棄しちゃ勿体無いわっ」

ピット「!……で、でも俺、できる…かな…」

「出来るわよ、きっと!それに、男が『でも』を何度も言っちゃ駄目よ。腹括って当たって砕けろ根性でドーンと行くのよ!!」

クレイジー「それは逆効果じゃないのか」


クレイジーの小さなツッコミに、舞は「あれ?」と思い、冷や汗を背中に流していた。
でも、ピットは気にしていないようで、何より本心で応援してくれている彼女の言葉に、さっきよりは表情に曇りがなくなっていた。


ピット「(俺の事…こんなに応援してくれる人、初めて、だ…)
………っあ、あの…マスターさん、クレイジーさん…」

クレイジー「ん?どうした?」

ピット「えっと…その……―――
お、俺を、欠けた所に、埋めて下さいっ」


ぐっ、と握りこぶしを作ったピットが顔を上げた。明らかにさっきと違い、少しまだ不安の色が見えるが、その顔はやる気がでていた。


マスター「お、いいのかい?出てくれたらこっちとしては凄く助かるんだけど」

ピット「が…頑張って、ぜぜ、全力っ出します…!」


決して弱みを見せないように強がるピットに、舞も隣で嬉しそうに笑った。マスターとクレイジーにアイコンタクトで言葉を交わし、ニッ、と笑ったマスターがピットの背中を叩いた。


マスター「よし!それじゃあ、一足先に君がこれから出て行く世界に慣れていこう!!
舞君、皆に結果報告するからマイクつけて!クレイジー、モニター画面のスイッチをONに切り替えてくれ!」

クレイジー「ああ」

「分かったわ!」


流石は統治者、普段見せないぐらいの的確な命令でスムーズに事を流そうとしている。
舞は言われたとおりマイクを取り付け、準備が整った頃を見計らい、クレイジーがモニター画面のスイッチを入れた。

その途端、ぶんっと音がしてからモニター画面に選手控え室が移しだされた。
向こう側のメンバーも、画面が映った事に気がついてこっちへ視線を集中させた。


ピット「…っ!」


一度、S.Cに入る前に今のレギュラー陣の顔を見せてもらっていたが、実際に見るとやはり威圧感がある。
ピットは手に汗を握りながら、心臓をバクバク鳴らせていた。


マスター【皆、お待たせ!大乱闘オールスター第6組のメンバーが決まったぞ!!】

ネス「えー、誰になったのォ!?」

ミュウツー「…この中から、誰かが選発されるのか…?」

【ううん、残ったメンバーに、急遽助っ人を加えることにしたのよ】


舞が告げた言葉に、スマデラメンバーにざわめきが生まれた。どうやら皆、助っ人が誰だか知らないようだ。
無理もない、ピットは今、画面には映らない視角に立たされているんだ。その為、あちら側に彼の姿は見えていない。


リンク「舞、助っ人って誰だ?オレたちが知ってる人?」

【うーん、知ってる人もいると思うんだけど。一応紹介するわね!
次なる参戦者として来る予定だったんだけど、一足先に来た子なの。ピットよ!】


そう言うと、彼女は隠れていたピットの腕を掴んで自分の傍に引っ張った。初めて見られる事にピットは顔が真っ青だ。
心の中で色々な感情が混ざり合い、混乱しているピットを他所に、スマデラメンバーはじっとピットを見ていた。


ダーク「ピット!?な、何でテメェが来てんだよ!!」

ピット【え?…っ!だ、ダーク先輩!あぁ、えっと…これは、その……】

マルス「初めて見る子だね、少なくとも僕にとっては」

子リン「ボクあの人見たことあるよ〜!」

ピーチ「私もないわね〜」

G&W「?」


マスター【皆そんなに見たらピットが上がるぞ〜!】

クレイジー【もう既に上がりまくってるようだがな】

【ぴ、ピット、先ずは落ち着きましょう、ね?今の貴方なら体温でヤカン沸騰できるわよ】


総勢20人以上の人から好奇心の目で見られているピットは、さっきとは逆に顔が真っ赤になっていた。
湯気が立ちそうな程恥ずかしがっているピットは、目に涙を溜めながら恥ずかしそうに舞に寄り添った。
どうやら、あまり知り合って時間は経っていないのに、ピットは舞のことをとても信頼したらしい。


【あーもう今すぐにでも襲い掛かりたいけど!でも仕方ないわっ、待ってる人たちもいる事だしさっさと始めちゃいましょう!!】

マスター【ん?じゃあそうしようか!それでは、待たせたね諸君!いよいよ最終組のメンバー発表だ!!
え〜、レッドチームはピット&G&W!ブルーチームはロイ&マルスだ!!】


どっ!!…と、メンバー発表を聞いた瞬間、ロイは体中から冷や汗を噴出した。
そりゃそうだろう、何たって天敵とも言える超苦手な腹黒様と同じチームなのだ。自分のミスは絶対に許されない。
しようものなら、ガノンドロフの時のように瞬殺されるのが目に見えている。


ロイ「(いや、でも待てよ?これはチーム戦だし、同じ組という事はマルスからの攻撃は受けないんだ!
そう考えれば多分大丈夫、多分っ多分…!!)」

【(ロイが何か自己暗示かけてる)
それじゃあ、今呼ばれたメンバーはワープホールに入って!ピットはこっち側から送るから、3人はそっちから向かってね】


舞からの言葉に快く笑顔で頷くマルス(腹黒)とG&W(純粋)。同じ笑顔でも、全く属性は違うものだ。
まだ何かぶつぶつと呟いているロイとの3人がワープホールを通って消えるのを見送り、マスターはピットの転送も開始した。

特殊な転送ポッドに入れられ、まだ少し不安そうにしているピットを見兼ねて、舞は力強く手を握った。


「大丈夫、自分らしく戦えばいいのよ!」

ピット「う、うん…!」


ぎゅっ、と舞の手を握り返し、手を離した瞬間にピットの姿もそこから消えてしまった。
さあ――ファイナルバトルだ!!











***





++inハイラル神殿++









マスター【おっ!最後の場所は広大なハイラル神殿だ!!】

【確かここって、バトルステージの中でも最も面積規模が広いのよね?
逃げる所もあるし、あたし達もよくここを使ったものだわ〜…(しみじみ)】


そしていつまで渉と追いかけごっこやってたんだろ。CPばっかり闘ってて、あたし達逃げて楽してばかりだったな〜…
隣であたしへの疑問だろう首を傾げていたけども、ミッキーがモニターに向き直った。


マスター【トリを飾る最後の乱闘メンバーの諸君も含め、応援席の皆も精一杯応援してあげてくれよ!】

カービィ「まっかせて〜♪」

マリオ「頑張れよー!!」

【それじゃあ、最終メンバー発表にいきます!
先ずはレッドチーム!巧みな数多の技術と実力、ポーカーフェイス(だとゲーム中では思ってた)なG&W!そして彼の相棒は何と次なる参戦者!!白い翼で空に舞い上がり、お助けピットが参上です!!】

ピット「あ、あの…よよ、よろしく…お願い、しますっ」

G&W「(にこにこ)」


優しいウォーはピットが上がらないように握手をした後自ら頭を下げた。ピットは彼の行動にあたふたと慌てふためき慌てて自分も頭を下げる。
何だ、この取引先のサラリーマンの挨拶風景。


【それではブルーチーム!「父ちゃん!オレは今猛烈に感動している…!!」がキャッチコピーになったらいいのにな、天然お馬鹿なフェレ候ロイ!
そして遂に君臨!!果たして、真の絆を結んだ相棒は一体どっちになるのでしょうか!?腹黒貴公子マルス!!】

ロイ「ええ!?希望!?ってかそれって某野球漫画の台詞だし、第一あんまりいいフレーズつけられてない…!!(ショック)」

マルス「相棒ね、さてどっちでいこうかな〜」

【ファルシオンでいって下さい】


王子何を悩んでるんだよ、と内心不安げに突っ込む舞を他所に、マスターはそれぞれの低位置の指示を出した。
全員が位置につくと、あとはもうスタンバイオッケー。


マスター【よし!さっきも言ったが、君らで最後だ、悔いの無い戦いを頼んだぞ!!】

G&W「(コクッ)」

ピット「ぅあ…はぃ……っ」

ロイ「よぉし、やってやるぜ!」

マルス「任せてよ」


マスター【それでは―――大乱闘オールスター第6組!レッドチーム対ブルーチーム最終戦!!

Ready…Go!!】


いよいよ、闘いの火種が撒き落とされた!
それぞれが動き出し、マルスは様子見を、ロイはくるんっと一度剣を回した。


ロイ「はぁ…いぃやっ!!」

マスター【あれはロイのアピールだね!ロイはいつも乱闘前になると必ずアピールをして気合を盛り上げるんだ】

【前からあの掛け声の意味に悩ませられるんだけど、あれって―――ん?】


あらァ?今のって…
ロイは低くしていた体制を立て直し、腕を回すと剣を握り直した。


ロイ「うっしゃっ、準備万端!!とっつげ―――」

【はいストォォォォップ!!】

ロイ「Σおぶぅぅっ!!」


突撃!と叫ぼうとした瞬間、ナレーターからの思わぬストップでロイは顔面スライディング!
顔に広がる痛みをそのままに、ロイは勢いよく顔を上げた。見事に顔が真っ赤だ。


クレイジー【(痛々しい…)】

ロイ「〜〜〜!!ちょっ、舞ーー!何で止めんだよォ!!何のアクシデントも起きてないのにさ〜〜!!」

【いや、思わぬプレジデントなら発生したわ!!】

ダーク「思わぬ大統領発生ってどういう意味だよ」


寄生虫扱いか大統領、そう突っ込むも舞はどうやら興奮しているようで聞く耳も持たない。
何かあったのかとメンバーが口を開こうとすると、何やら彼女はパソコン操作しているクレイジーに耳打ちしていた。
話し終えると、呆れたようにクレイジーは溜息をつき、舞はにこにこと笑っていた。
…?一体、何だろう。


クレイジー【モニター画面A‐03に転換。全く…今回だけだぞ】

【ありがとねマウス!さあて、先ほど突如止めた原因となったアクシデント!】

クッパ「(さっきのプレジデントはなんだったんだ!?)」

【我々の目の前で起きた一瞬の現実を!さあモニターを通してご覧下さい!!】


全「「「!!?」」」


一瞬の出来事、それを捕らえたカメラと言うだけに何かあるのだろうか?全員が身を乗り出すような勢いでモニター画面に食い入るように見入った。
そして…パッ、と映し出されたのは!…アピール中のロイと、その前線に立つマルス。


C.ファルコン「…?Why!これが、一体何なんだというんだ?」

ピチュー「何かおかしいトコある〜?」

プリン「ロイちゃまカッコいいでしゅ〜v」

サムス「あらあら、可愛いわねプリン」


様々な反応を見せる中、当の本人達も訳が分からない。というように首を傾げていた。何もないじゃないか…と全員が思う反面、モニター越しの舞の目が怪しく光った。


【いいえっ、そんな事ないわ!見て、このロイの伸ばした手の行方を!!】

ロイ「…?んん?」


言われるままに見てみるが、全然変わったところはない。ロイの手の行方は只単に前に……折り重なって見えるだけのマルスの…マルス、の…………


【何と!マルス王子にセクハラ行為かましてる!!流石は馬鹿っ何とも勇気ある行動ぉおぉぉぉぉぉお!!】

ロイ「Σ誤解っだーーーー!!!(滝汗)
ちょっ、これは重なって見えるだけだから別に変な意味で捉えてるんじゃ…!」

マルス「ロイ〜」

ロイ「え?」


ヒュッ―――ドゴォッ!!


ロイ「Σうぎゃああぁぁあぁあ!!?」

マルス「変な気起こさないでよね、次に何かしたら遠慮なく殺すよ」

ロイ「す、すみませんっ!以後気をつけますっっ!!(ってかオレが悪いのかこれ!?)」


何とマルス王子、手元も見ず後ろもふり返らず、相棒ファルシオンならず血糊木刀で彼を狙った。上手くロイは身を交わしたが…いや、当たってもダメージはないかもしれないが、これ避けない人はいないって。

涙目にビクビクと震えるロイは、さながら先ほどのピットと同じだ。
一方、初めて腹黒マルスの本性を見たピットは…―――


ピット「(きゃあぁあぁぁあああぁああぁ!!!)」


顔面真っ青内心絶叫。
さっきモニターから見た時はあんなにニコニコ笑ってた人だった為に、少なからずマルスには信頼を持てるかとも思っていたが…期待を裏切られすぎたピットはショックどころではなかった。

ガタガタ…と震えていると、くいっと自分の羽衣が引っ張られた。そっちに目をやれば、ウォーがじっと見つめている。
何だろう、と思い「はい…?」と声を掛けると、ウォーは板のようなものを取り出した。それは、彼が話すときに必須な伝言板


〔相手が怯んでる隙に攻撃に出よう〕

ピット「(うえぇえぇぇ!?)でで、でも…!」


続きを言おうとした時、ピットはハッと何かを思い出した。さっき、舞に『男ならでもを言わない』と言われた事を思い出し、慌てて口を押さえた。
その様子にかくん、とウォーは首を傾げるが、闘おうとする意思は瞳から消えていない。

…先輩とは言え、自分より幼い子どもは大きな勇気を見せている。少し渋ったが、ウォーの姿にピットも自分を無理矢理奮い立たせた。


ピット「っ、はは、はい…!」

G&W「(こくっ)」


一致団結し、ウォーは右手でピットを指差した。そのままもう片方の左手で、向こう側で震えてるロイを指している。
もしかして…自分はロイと闘えと言うのだろうか?どうやらその考えはあっていたようで、ウォーはこちらを見上げていた。

個人プレイを任せられたと言う事は、自分の力を信頼してくれたんだろう…、しかし。


ピット「お、俺…!…マルス、先輩と闘い、ますっ…G&W先輩、は…ロイ先輩を……!」

G&W「!…?」

ピット「き、危険な事、もありますし……それに、その…俺っ自分の力を、試して、みたいですっ!」


お願いします、と頼むとウォーは難しい顔を―――すると思っていたが、驚いたように目を開いた後、優しく笑ってくれた。
こくん、と頷き相手側へ方向転換をした。任せてくれたんだ…、それに気づき、失敗は許されないと真剣な顔つきで自分も相手に向き直った。


ピット「それじゃ…」

〔行こう!〕


横目で確認し合い、1つ頷くとお互いがその場から駆け出した。狙う先、ピットはマルスを、ウォーはロイを!
2人からは影になっていた為に見えなかった相手が至近距離に入るとようやく気づき、ロイとマルスも急いで先頭体制に入った。


マスター【おっ!痺れを切らしたピット&ウォーが先制攻撃を仕掛けた!!】

【どうやら、お互いが個々で闘いに挑もうとしてるのね!さあ、2人の騎士は太刀打ちできるのでしょうか!】


マルス「――!」


マルスは一瞬でピットが自分を狙っている事に気がつき剣を抜いた。気づかれた事にも慌てず、ピットは手の内を光らせると、そこから金色の弓矢を出現させた。
冷静に狙いを定めると、矢もセットしていないのに指を引く―――


マルス「!何っ」


ピットが指を引くと、肉眼でも捉えられる光の矢が自動的にセットされた。踏み出そうとした足を止めた瞬間、放たれた矢が飛んできた。
さっと身を横に流す事で避けようとした…が、放たれた矢は何と軌道を曲げ、横に避けたマルスを狙って曲がった!

マルスは目を見開いて驚くが、何とか体を無理矢理捻じ曲げて攻撃を凌いだ。地面に着地すると、避けきれたと思っていたはずの攻撃で傷ついた頬から数滴血が流れた。


マルス「へぇ…やるね」

ピット「っ…全力で、いきます!」




ロイ「おわっ、ちょ待って!」


ロイが慌てて止めようとするも、ウォーは足を止めずに攻撃を仕掛けた。ぐっと足に力を込めると、跳躍してロイに向かって飛び蹴りを繰り出した。
あたふたと慌てていたロイ、だが顔を真剣な表情に戻すと、剣を構えた。
丁度ぶつかる瞬間、


ロイ「っ、うし!」


刀身にウォーの足を流してバランスを崩したウォーの背中に峰打ちをかました。


G&W「っ!」

ドクター「見切りだ!!」

【何と、普段子供じみているロイと言えどやはりしっかりする所はしっかりしているわね!】

マスター【ウォーの攻撃を見事に受け流し、攻撃に転換させた!!】


だが、それでやられるほどウォーも弱くはない。飛ばされた反動を地面に両手をついて半減させ、勢いを利用して体を反転させると、瞬時に体制を戻してロイに攻撃を繰り出そうとした。
見切りは術者の身は守るが、その後の隙が大きく体制を素早く元に戻せないのが難点だ。


ロイ「!うわ、やっべぇッ!」


ロイもウォーのやる事が分かり、無理矢理にでも体を向けようとした。だけどそれよりも早く、ウォーの構えた掌波が捉えようとする。
ぶつかる、と判断したロイは剣を地面に突き刺し、反動を使って自分の体を若干横にずらした。

ほんの少しだが、それも避けるには十分で、狙いの外れたウォーの掌波は後ろの壁に当たった。


ドガンッ!!


【す、すごっ!ウォーって肉弾戦が得意なの!?】

マスター【詳しく言うと、体術が得意なんだ。本当はもっと違う特殊な闘い方なんだけど、それじゃ彼の威力が半減して勿体無いから、この世界に来てから私が教えたんだよ!】

【へぇ〜…】


マスターの言葉に感心していると、ウォーの攻撃により欠けたコンクリートの欠片が凄い勢いで何処かへ飛んで行った。
そのまま飛んで…飛んで……行き着いた先は、


ガンッ!!


G&W「!」

ロイ「あ?――Σげぇっ!?」


何と、ピットと乱闘中のマルスの後頭部だった。丁度背中を向けていた彼の表情は見えず、向かい側のピットが驚いている表情だけしか見えない。
ど……


ロイ「(どないしょーーー!!殺されるぅぅぅぅぅ!!)」


奥歯ガタガタ言うほどの顔面蒼白面、今度はまるで先ほどのファルコのように怯えている。
あわわ…と冷や汗だらだらなロイの視線の先のあの人は、何も言わずに無言で、す…と立ち上がった。


マルス「ロイ……」

ロイ「!うぁはい!!」

マルス「僕言ったよね?次に何かしたら…殺すって」

ロイ「いい、いや今のはオレじゃなくて!!」

マルス「問答無用だよ」


ぎろり、と振り向いた瞬間、瞬間移動でもしたようにマルスは瞬時にロイの前に降り立った。
そのか細い腕の先にはあの凶器血糊木刀が握られていて、咄嗟に顔を青白く変色させたロイは腕を交差させて我が身を守ろうとした。

…が、自分が同じチームだという事を思い出し、それなら自分は当たらないんじゃ!?という安堵感を覚えた。


ロイ「(そ、そうだよ!!これはチーム戦、オレ達は同じチームだからダメージは受けないんだ!
マルスも忘れてるみたいだし、ここはやられるふりでもしとこうか)」


ニヤリ、とほくそ笑むロイ。だが、顔に影の差したマルスの口元にも笑みが浮かんでいるのに気づいていない。


マルス「食らえ馬鹿者」



ガゴォッ!!


ロイ「ぐほばっ!!」


ロイの顔に血糊木刀がめり込んだ。あの細腕の何処からこんな力を出すんだと言いたくなるほどの凄まじい威力により、ロイの体は吹っ飛んでいく。
後方に聳えていたウォーも驚いているが、その場から避けようとするも遅く、吹っ飛んでいくロイがぶつかり、一緒にその小さな体を飛ばされてしまった!


G&W「――!!」

ロイ「うっそぉぉ!?」


パァァァンッ!!


【Σ何ぃぃぃぃぃ!!?何故か!チーム戦で闘っている筈なのに、マルス王子は設定を物ともせず悠々とロイをぶっ飛ばしたーーーー!!
ってか普通自分の味方ぶっ飛ばす奴があるかあぁああぁぁぁぁあああ!!!】

マルス「けへっ」

【Σハム太郎!?ハム太郎なのか王子!!ってだからあんたがやってもちっとも違和感ないんだってばああチクショーーー!!】

マスター【舞君ご乱心】


止めてやってくれマスター。
ワープホールから半強制送還されてきたロイとウォーに、慌ててドクターが駆け寄った。どちらとも涙目に体を捨てられた子犬のように震わせていた。
可哀想に…怖かったろう、王子が。


マルス「ふぅ…さて、あとは僕達だけか。」

ピット「Σぅお!?あ…っ」


突然言葉を振りかけられたピットは体をびくつかせた。


マルス「失礼な質問、降参してくれる気は…ないかい?」


正直、この目の前の鬼人から逃げたい気持ちで一杯だろう。
だが、自分を信頼してくれた舞やウォーの為に…と心を落ち着かせると、顔を引き締めてマルスを真っ直ぐ見据えた。


ピット「俺は…ま、負けません!」


何とピットは持っていた弓矢を真ん中から分け、2つになったそれを両手に持った。その姿はまるで、二刀流使いの剣士!


マルス「!それ、剣にもなるんだねっ」


血糊木刀を仕舞い(何処へ!?)マルスは細長いファルシオンを構えると、その場から駆け出して自分から突っ込んで行った。
ピットも剣を構えなおし駆け出した。お互いがすれ違う瞬間―――


ギィィンッ!!

ピット「!!っ」


振り下ろした2つの刀身が擦れ合い、一瞬の火花を散らした。ぎりぎり、とお互いが力で押し合う中、ピットが左手に持っていた剣を下から振り上げた。
視界の隅で動きを捉え、マルスは体を右にずらした。その隙をつき、右手に一気に力を込めてピットがマルスを押しだす。


マルス「!」


その所為で体制が崩れ片膝をつく。跳躍してピットが上から両手に持った剣を着き立てようとした!
…だが、それマルスはさっきのロイのように見切りで受け流すと、ピットは簡単にバランスを崩した。


マルス「見切った!」

ピット「わっ!!」


そのまま地面に足をつけるのに遅れるピットに向けて、マルスのコンボが決まる!斬り、突き、はらい…最後に大斬りの4段コンボ!


マスター【これは!マルスとロイが使う、特有のコンボ技マーベラスコンビネーション!!巧みな剣術が凄まじい速さで相手に斬りかかる技だ!!】

マルス「はぁっ!!」

――キィィンッ!!

ピット「ぅわっ!?」


最後の一撃で、ピットの手から剣が抜けた。しまった!と思っても後の祭り、武器は両方ともそれぞれが違う柱に突き刺さり主人から離れてしまった。
慌ててとりに行こうとするピットだが、その前に上から跳躍してきたマルスが先回りし、ピットにファルシオンを突きつけた。


ピット「っ!わ」

マルス「悪いけど、これが戦場なんだ。まだ君には少し…早かったかもしれない」

【何と!ピットは武器を失い攻撃の手立てを阻まれ、隙をついたマルスが形成逆転!!もうこれで勝負はついてしまうのでしょうか!?】

ダーク「まずいな…このままだと、勝不足でレッドチームが負けるぞ?」

ヨッシー「頑張ってください、マルスさん!」

ピカチュウ「ピットお兄ちゃ〜ン!頑張っテ〜〜!!」


仲間達からの声援、できれば無駄にしたくはないが…だけど武器も持っていない、辺りには手ごろなアイテム落ちていない。このままでは、確実にマルスが勝つ。
悔しいけど、自分の負けか…諦めの精神が大きくなり、ピットはぎゅっと瞳を瞑った。


ピット「(か…勝ちたい、よ!!)」

マルス「諦めかい?なら、止めを―――」


さすよ、と言おうとした瞬間突然マルスとピットの間に丸い球体が現れた。2人がきょとんとそれを見つめるが、その球体は謎の虹色の輝きを放ち、悠々と宙を泳いでいる。
何だ、とマルスもピットも思う中、マルスが見たこともないそれに手を伸ばした。

だが、

バチィッ!

マルス「!?な…っ」


指先が触れた瞬間、静電気が流れたようにマルスを拒んだ。思わずそれにマルスも身を引いてしまい、警戒してその謎の球体から身を離した。
尻餅をついて見上げるピットだが、彼もその球体が気になって仕方がない。ふと伸ばそうとした手をさっきのマルスを思い出して慌てて引っ込めるが、頭の中に聞いたことのある声が聞こえてきた。


―――ピット…

ピット「!ぱ…パルテナ、様…?
――パルテナ様!?」


誰かの名前らしきものを呼びながら、ピットはもう一度手を伸ばした。彼がその謎の球体に触れた途端、溶け込むようにその球体はピットの体に入っていった。
彼自身も驚いているが、だけどそれよりも自分の体がどんどん熱くなっていくのを感じた。ぎゅ、と服を掴むと、さっきと同じ声がまた聞こえてきた。


―――ピット…立ち向かうのです。前の敵を…己の敵を見据えなさい…

ピット「ぱ、パルテナ様…でも、俺……」

――武器が無いなら願いなさい…祈りは、必ず神に通じます…!

ピット「――!ぱ、パルテナ様!!俺に、俺に力を貸してください!!」


祈願するように強く祈り、ピットが天を仰いだ。
――瞬間、天空が一瞬黄金に光り、大空に神々しい後光を背負った女性が浮かび上がった。


【なえぇぇ!?だだ、誰でしょう一体!!謎の美女が天空に突如姿を現しました!!】

マスター【寧ろあの姿神様だよ!!】


――ピット、貴方の願い…聞き入れました……


す、と女性が大きな杖を振るった。すると、美女の姿は大空から消え、その場にはまたピットとマルスだけが残った。
一体、何が起きた?思わず口をポカン、と開いているマルスだが、何か…無数の羽根音のようなものが聞こえてきた事に気がついた。

それが徐々に音を大きくしている事に気づき、また自分に近づいてきているんだとも気づいた。
まさかと思い後ろを振り返る。すると…何と、こっちへ無数の羽根を生やした鎧を着た天使達が弓を持って飛んできているではないか!


「ピット様!ご無事ですか!?」

「ピット様をお助けしろーーー!!」

ピット「みみっ、皆!?」


【Σ何じゃこりゃあぁあぁぁぁぁあああ!!?見渡す限りおっさんおっさおっさんおっさんおっさん…
ハイラル神殿がおっさんパレードで埋め尽くされましたぁぁぁ!!天使ってもっと若々しい人がやるべきじゃないの!?】

クッパ「こ、こいつらは一体…!?」




メンバー、そして当の本人も呆然と立ちすくむ中、イカロスと呼ばれた天使たちは弓を持ったまま敬礼をした。


「ピット様!ご命令を!!」

「我らも共に戦います!!」

「皆…」


思いもよらない展開。だけど、ピットはぐっと拳を強く握ると、今日見た中で一番しっかりとした目でマルスを見据えた。
ぴっ、と人差し指を天空に向けてあげる。


「全軍!突撃―――!!」


ピットの指が振り下ろされた瞬間、


「「「おおおおおおおおお!!!」」」


イカロスたちは、ぐぐ、と全員が弓を引き絞り矢を発射してきた。


マルス「こ、これは…!!」


マルスは何事かと思ったが慌てて跳躍し、自分目掛けて飛んできた矢を回避した。


マスター【これはピット率いるパルテナ親衛隊だ!!そうか、先ほどの女性はピットの主君、女神パルテナだったのか!
ピットは元々パルテナ親衛隊長だから、声を聞き届けてイカロス達が飛んできたんだ!】

【Σこれ全部イカロス!?イカロスって蝋で固めた翼で飛んで落ちた翼の英雄でしょ!?
こんなにいられちゃちっともイカロスが学習能力持たずに何度も落っこちてるみたいじゃない!!】


幾つもの攻撃の手からマルスは必死に逃げるが、とうとう彼の体力も限界に近づいた。ざざっ、と地面に降り立った瞬間、彼の後ろからピットが現れ、至近距離から弓矢を放とうとした!


マルス「!?く…っ」

ピット「ごめん、なさいっ!」


謝罪の言葉を漏らし躊躇する姿を見せるも、ピットはとうとう矢を放った!体力が削り取られていたマルスは避けきれず、ピットのの攻撃にぶつかる!


マルス「―――うわっ!!」


パァァァンッ!!


【しゅ、終了―――――!!!イカロス軍団、まさかのピットとの合同戦線によりマルス王子を撃退ぃぃぃぃ!!】

マスター【生き残りはピット!よって、最終戦はレッドチームの勝利だ!!】

マリオ「ちょ、ちょっと待ってくれよマスター!あのピットの技…っていうか、あの球体みたいなのは何だったんだ!?
あれを取った途端ピットもこの技を出したんだ、普通のアイテムじゃないだろ!?」


マリオからの最もな質問に、他のメンバーも首を縦に振っていた。一瞬何の事かと分からなかったが、理解したマスターは右手を左手に乗せた。


マスター【ああ、あれかい?あれは今後の大乱闘で使おうと思ってクレイジーと開発した究極バトルボール!
名称―スマッシュボールだ!!】

ゼルダ「スマッシュ、ボール…?」

マスター【ああ!あれには特殊な魔力をかけていてな、スマッシュボールを取った者は内に秘められた奥底の力を引き出され、自分の最大値の攻撃が出来るようになる!
いわば、スマッシュよりも更に強い攻撃が使えるようになるんだよ!!】

ドクター「それがどうして今出てきたんですか?」

クレイジー【ふむ…今後使用すると思い別に避けていたんだがな…入れ違いがあり、ランダムボックスの中に紛れ込んでいたようだ。
だが運も実力の内と言うからな。武器を失くしても尚、闘いに挑むピットの心が引き付けたのだろう】


もう乱闘も終了し、役目を果たしたクレイジーも椅子から立ち上がりモニターに近寄ってきた。ピットもワープホールを通って戻ってきたようで、今はダークの近くにいる。
舞もその様子に笑顔を見せ、最後の一仕事、クレイジーから貰った紙に目を通した。


【さて、謎の球体の正体も分かったところで、結果発表をします!!
第1回戦ブルーチーム!第2回戦ブルーチーム!第3回戦レッドチーム!】

マスター【えー、第4回戦ブルーチーム!第5回戦レッドチーム!第6回戦レッドチームだ!!
合計すると、レッドチームは3勝、ブルーチームも3勝!!…と、いう事は、大乱闘オールスターレッドチーム対ブルーチーム。
勝者は両チーム勝量同じにより、勝敗は引き分けだ!!】

カービィ「うぇ〜〜〜〜!!?」

ナナ「わぁっ!す…凄い、です!」

リンク「引き分け!?ほ、本当に?」

【大マジよ、皆が全力で頑張った成果ね。凄く楽しかったわ!生の大乱闘、初めて見たけどとっても良かった!】

マスター【ほら、舞君も気にいってくれたことだし、当初の目的も達せられたよ!皆お疲れ様っ、今回はこれで終了だ!!】


まだ子ども達を中心とした不満の声などが聞こえてくるが、それも悪いけど聞かずしてマイクを取り外した。
最後に、早くシャワーを浴びて今日はゆっくり休むように、とマスターが終止符を打って、モニターの電源が落とされた。


「はァ、終わった…」


本当に終わった…そう実感すると、今までの疲れが出てきたように肩の荷が下りた。


クレイジー「頑張ったな、お前も今日は早く休め」

「マウス…ええ、ありがとう。でもマウス達も休んでね」

クレイジー「ああ、そうさせてもらおう」


クレイジーが小さく笑うと、今度は後ろからマスターが肩を叩いてきた。見上げると、眩しいほどの彼の笑顔がそこにあり、思わずあたしも笑みが零れた。


マスター「さあ、今日は皆で飲みまくろうか!遠慮は無い、無礼講でな!!」


その言葉に一瞬驚いて目を見張ったが、それもいいかと思い頷いた。マスターも満足したように微笑み、あたしに右腕で、クレイジーに左腕で肩を組むと3人で部屋を出て行った。

まだまだ今日は終わらないようだ…――





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