17. 箱の中からこんにちは
先日の大乱闘はとっても楽しかった。
まあ色んな(萌え)要素が含まれていた事もあるし、そして腹黒トリオの力を改めて思い知った事も。
(腹黒は機械にも勝る)
でも、皆が真剣に戦っているところが見えた事が凄く嬉しくて、少し優越感に浸ったり。
今思えば、マスターには感謝しなければいけないのかもしれない。週一で帰れるんだし、何よりこの楽しい世界に連れてきてもらえた事を…
まあ、あたしの不注意が招いた事故だとしても、これが運命であってほしいと願う自分が
確かに何処かにいる。
箱の中からこんにちは
―――ぱん、ぱんっ
「ふぅ、いいお天気ねー」
天を仰ぐと、目がチカチカしそうな程の太陽が光を放っていた。思わず手で顔に影を作るものの、それは全然嫌なものでないために嫌な気は1つもしない。
普段なら返事を返してくれる相棒の声がないのは、彼女がヨッシーの手伝い(子どもの面倒)に行ってるからである。
そんなあたしの手には、空っぽの編みこまれた籠が1つ。
「やっぱりこういう日に洗濯物を干すと後が気持ちいいわねー」
満足、と呟いてあたしはもう一度庭いっぱいに干された洗濯物の空を見やった。その量の多さは、苦労の大きさと共に一仕事終わった事を教えてくれる。
「よしっ洗濯物終わり。さあ、次は掃除よ」
1つ、大きく体を伸ばしてみると、体に降りかかっていた疲れが一気に空に逃げていく感じ。その感覚を堪能すると、籠を両手で持って駆け足で屋敷の中へと向かっていく。
―――こんにちは皆さん、平凡目指していた女子中学生です。
きっと分かってもらえたと思うけど、今現在、あたしは家事手伝いをしています、いい事でしょ?
でも、何故突然?と思う人も多いことでしょう。突破な事だ、それは仕方ないと思う。でもこれにはちゃんと訳だってあるのよ。
**数時間前の事**
『え!舞が家事手伝いを!?』
バサリ、とコートを羽織った舞に向かってナビィは素っ頓狂な声をあげた。
「ええ、そうよ。ここの家事はいつもマリオとルイージとリンクが当番制でやってるって聞いたわ。只でさえ乱闘で疲れているのに、更に疲労を溜めるなんて体にいけない事よ」
『う〜ん…でも、舞が1人デやる事ないんジャない?こんなに広いシ、メンバーだって多イんだヨ?』
「何も1日で全般やるわけじゃないわ、特に掃除はね。大丈夫よナビィ、いざという時は誰かに手を借りるぐらいはするから!ね?」
『ウー…でも』
「いいから、いいから。
――さっ、貴方はあたしの代わりにヨッシーにお手伝い頼まれてるでしょう?心配してくれてるなら、そう言った事で助けて頂戴、相棒」
『…分かっタよ。でもでもっ、絶対無理だけハしないでネ!?いつでもナビィ呼んでネ、ちゃんと休憩挟んでネ!』
「分かったわよ、大丈夫だから」
舞の声を聞いたか聞いていないのか、最後まで心配しながらナビィは窓から飛んでいってしまった。その速さに目を細めながらも、彼女の気遣いに思わず頬が緩んだ。
***
と、こんな成り行き。
分かってもらえたかしら?
「小さな事からコツコツとっ、みんなの役に立てるように頑張らなくちゃ!
…さて、意気込んだはいいけど…何処から手をつけよう?」
簡単にでもいいかな、最初は目に付いたところから手をつけていこう。
片手にハタキを持って、適当な所からパタパタと振るっていく。上から落ちてくる埃は、また後で箒で掃けばいい事。
整理整頓が好きなあたしは、別に家事手伝いが嫌いなわけでもない。そう思うと、自分の性格に感謝したくなってしまう。
「はァ、平和だー。いつもこんなだったらいいのに」
優しく当たる陽光、窓から聞こえる小鳥達の鳴き声。
これを平和と言わず何と言う?
時折聞こえてくる子供達の笑い声も、時折聞こえてくるどこぞの変態共の悲鳴さえも…ね(失笑)
今日こそは何も起こらぬ、久々の平凡が感じられますように……―――
「―――ん?」
大きな柱が並ぶ巨大な大通路。そこに入って3本目の柱…の陰辺りに、色素の薄い土色の箱がポツンと置かれている。思わず、ハタキを振るう手も止まり、視線は自ずとそれに向かった。
あたしの目が正常であればなんだけど、よく荷物などが詰め込まれているのを誰でも見たことのあるそれは、正しく。
「ダンボール、よねェ?」
そうでなければ、他に言いようがない。少し大きめの、しかも何だか見覚えのあるマークが赤色で描かれたダンボール。一見普通なんだけど…どうしてこんな所に?いやそれよりも、これどうしたらいいんだろう…
こうも場所をとられては誰にとっても邪魔にしかならないだろう。
「んー…とりあえず、移動させといたらいいか」
うんそうしよう、それがいい。それに、確かすぐ近くには以前ロイと行った倉庫がある(※8話参照)
そこに置いておけば後々使えるしいいだろう。
自分の中で解決案を練り出して、持っていたハタキを柱の隅に置く。空いた両手は、ダンボールの両方に空けられた長方形の穴に引っかかった。
これぐらいの大きさだと、何かを入れるときにでも使えるし、色んな時にも使えるし―――
ガシッ!!
そう、こんな感じに中から手だって………え?
一瞬、動きが止まった首をギギギ…と無理矢理動かして違和感の感じる手元に移した。そこには…
「てっ…手ぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
そう!なぜか引っ掛けた穴の中から、にゅっと伸びてきていた!手が!!(汗)
な、何で!?こんな事が出来るのはミスターマ●ックさんぐらいっ、まさかマリッ●さんがこの中にいて、まさかのスマブラ参戦!?あんまファンには嬉しくないけどーーーーー!!(パニック)
頭の中で自分も気づかぬ失礼な事を叫んでいると、何と現在進行形で驚かされているダンボールが吹っ飛んだ!
驚いて目を細めようとするも、その目は体の動きと共にそのまま止まってしまった。
だって、吹き飛んだダンボールから……
「よぉ、待たせたな」
桃太郎伝説。まさかのおっさんが生まれました。
待ってたどころか<先ず知りません貴方の事ぉぉおおぉおぉぉお!!!(心の叫び)
「な…っ、ご、え…!?」
「ふぅ、何とか無事入り込めたな。」
焦っているあたしは無視か、汗を拭いながら怪しさ全開なおっさんはきょろきょろと辺りを見渡した。
いろんな意味でガタガタと震えるあたしを他所に、まだおっさんは腕を掴んだまま。逞しい体を包んだ青の全身タイツからはあの変態2人はとはまた違い、ほどよい筋肉が浮き出ている。その上から黒い防弾チョッキを羽織って、つけられたポケットには無数の爆弾まで取り付けられていた。
……………………どうしよう、とりあえず助けが欲しいっっ
「ふっ、不審―――」
「!待てっ」
不審者!!と叫ぼうとした時、気づいたおっさんは何と瞬時にあたしの後ろに回りこんだ。しかもその際に両手を後ろに持っていかれたようで、おっさんは片手であたしの両手を後ろで縛った。
驚いて振り返ろうとするも、おっさんは空いたもう片方の手で今度はあたしの口を塞いできた!ちょっ、美形ならまだしも相手はおっさんなのに!!何だこの貞操の危険を知らせるような体制は!?
「むごっ、むーーー!?(ちょっ、なーーー!?)」
「しっ!いつ何処から敵が襲ってくるか分からん、落ち着くまで待ってくれ!」
「むごぉっ!?(敵ぃっ!?)」
寧ろ今のあたしにはあんたが敵に見えるんだけど!!頭の中で色んなものがぐるぐるとしだす中、おっさんはあたしを掴んだまま丁度近くにあった倉庫の扉を、乱暴に足で開け放った。
そして―――
「とうっ!!」
「Σむげぇっ!!(うげぇっ!!)」
滑り込むようにジャンプして飛び込むもんだから、あたしの体は見事地面にビタンッ!!と叩きつけられた。
こ、このおっさん!!(殺意)
反論しようとも、おっさんは地面にへばり付いたまま動こうとしない。しかも、さっき開けられた扉は反動で閉まってしまい、暗い室内にはおっさんとあたししかいなくなった。
どど、どうしようナビィっ!早速危機到来だーーーーー!!(滝汗)
「(かか、神様仏様!果ては腹黒トリオ様!!誰かあたしの清い処女をお守りするべく颯爽と此処に―――)」
「…よし、もういいだろう。嬢ちゃん、もう起き上がっても平気だぞ」
………は?
いや、あんたの所為で今まで危機感じてたんだよ。そう心の中で突っ込んでも当たり前だが聞こえていなくて、平然としたままおっさんはあたしの手も口も拘束を解いてくれた。
その意味の分からない行動に唖然とするも、体が自由となった事に気づいた瞬間、あたしはゴキブリのようにカサカサッ!とすばやく這っておっさんと大きく距離をとった。
「ん?どうした、何かから避けてるのか?――Σハッ!まさか敵か!?くっ、俺とした事が大失態を犯してしまったぜ!何処だ嬢ちゃんッ、あんたをそこまで怯えさす悪者は!?」
「あんただあんた!!年頃の女を怪しく拘束した後こんな所に押し込んで2人っきりタイム☆なんてシチュエーション作ってくれたあんたに怯えてるのよ!!」
この人は素で言ってるのか。どうやらあたしのその予想は当たっていたようで、指を指されて吠えられたおっさんはきょとんとこっちを見つめた。
「俺にか?馬鹿を言っちゃいけねえ、俺は現にこうして君を守ってあげるという親切心を示してるだろう」
「示してません。頂いたのはセクハラ行為と気味の悪さです」
あたしの発言に首を傾げているおっさん。まさか自分がセクハラをした事に気がついていない!?…えっ、まさか天然なんだろうか。
それだとえらい見た目とギャップがありまくるんだけど。今度はこっちが呆然としてしまう状況の中、おっさんは表情を些か真剣に戻した。
「まあいい、その話は置いておこう。ところで嬢ちゃん、1つ聞きたいことがあるんだが」
「…何ですか?言っておきますけど、変態紛いな発言は控えてくださいね。それとあたしは嬢ちゃんって言われるほど子どもではないですっ」
「お?そりゃすまねえな、気に障ったのなら謝るぜ。それはそうと、さっきの質問だが…ここはスマブラ屋敷で合ってるか?」
「?スマブラ、屋敷?」
ここの事を言ってるんだろうか…屋敷って所は納得できるけど、スマブラ屋敷という名前は聞き覚えがない。
でもまあ、スマブラのキャラが集まってくる場所だ、きっとそれで合ってるんだろう。
「多分そうだと思いますよ。そうだとしても、此処に何か用があったんですか?……えーっと」
「ん?…ああ、そうか名前か。すまねえな、名乗るのを忘れてたぜ。
俺の名はスネーク、傭兵をしている身だ。よろしくな嬢ちゃん」
「だからっ、あたし嬢ちゃんじゃありません!あたしには舞っていう名前があるんです!」
スネーク「おお、そうか。じゃあ舞と呼ばせてもらうぜ、構わないか?」
「え?あ、はぁ…別に構いませんが」
な…何だか、自然なノリで仲良くなってしまった(汗)
まだ怪しいと思うところはある、でも話してみると彼―スネークさんはどうやらそこまで悪い人ではないらしい。
イヤだと思ったところは謝ってくれるし、不快な思いをする発言をするわけでもない。只少しどこか抜けているだけで、そこを除けばいい人みたいだ。そう気づくと、少しだけ不信感が抜けてくれる。
ほっと安堵をつくと、スネークさんは巡らしていた視線をまたこっちへ戻した。
スネーク「此処がスマブラ屋敷…舞は此処で身を置いているのか?」
「ええ、そうですよ。言ってもたくさんの人がいますけど」
スネーク「それなら聞きたいんだが、この屋敷に―――」
ピチチッ…――バサッ!
スネーク「!伏せろ!!」
「は?何で―Σげふぶっ!!」
外から鳥の鳴き声が聞こえた途端、またもや床に突っ伏されてしまった。しかも今度は頭を押さえつけられたもんだから額を強打。…ゴンッ!といい音を出した額に強烈な痛みが走る。
いってーーーーーー!!
スネーク「くっ、敵の襲撃か!?まさか木に盗撮機を仕掛けていたとは!!」
「Σえぇ!?ちょっ、スネークさん!?」
スネーク「安心しろ舞!このスネーク、女子供に傷をつけるなんて事絶対にせん!!」
「あ、いやそうじゃなくて…盗撮機、って?」
スネーク「ああ、どうやらド派手に装飾された黄金色の、羽ばたく仕組みで出来ている特殊な作りの盗撮機が木に潜んでいたようだ!」
それは只の黄色い鳥です
「あ、あの……」
スネーク「いや、もしかしたら強力な小型爆弾を抱えた戦闘機か!?」
や、だからそれは只の黄色い鳥です
スネーク「いやいや、もしかすると自ら突っ込んできて爆発する特攻式爆弾「只の黄色い鳥だああぁあぁあぁぁああ!!!あれがそんなに危険なブツだったら世界はとっくに絶滅してるっちゅうねん!!
あれか!?あんたらが言う危険な爆弾やら盗撮機やらは卵からピーチクパーチク言いながら生まれてくるのかーーーー!!」
お、おい舞!声がでかいぞっ、敵に気づかれたらどうする!?」
だからいないってそんなの!!スネークさんはあたしの声に驚いて、慌てて口を塞いだ。…ほ、本気なのか…!?
どうやら長いこと戦場にいたために、彼の神経が必要以上に研ぎ澄まされたらしい。あれ、何でこんな哀れみの視線が生まれてるんだあたし?
――ピーチチチッ!
スネーク「むっ、気づかれたか!?くっ…仕方ない!舞、一旦この部屋から出るぞ!!外に出て作戦を立て直すんだ!!」
「Σ何の作戦立てるつもりですか!?ちょっ、スネークさん!」
どっから出したのか、スネークさんは只の鳥の鳴き声に反応して、でっかいロケットランチャーを取り出すとそれを両手に持って入り口に向かって走り出した。
正直なところ、こんな小さい子がやる戦争ごっこのようなマネしたくないんだけど、あの人を放っておくと何をし出すのか分からない!!(汗)
仕方なくもあたしも立ち上がり、部屋を出ようとするスネークさんを追いかける。入ってきた時同様、彼は乱暴に扉を足で蹴破った。
バターーン!!
スネーク「……よし、敵は辺りに見当たらない!行くぜ舞、俺について来い!!」
台詞カッコいいのに、何ででしょう、この気が抜ける感覚は。
「うーあー、もうっ分かりましたよ。もう何処にでも行きますって…」
誰にもこの情けない自分を見られない事を祈って、あたしもスネークさんに続いて扉から顔を覗かせた。
…すると、何処からか何かが地面を擦る音が聞こえた。きゅるきゅるっ、と…まるで、タイヤが滑るような音が―――
ん?
「あ、あのスネークさん?何か―――」
聞こえませんか、と言おうとした瞬間!振り返ろうとしたスネークさんの体が視界から一瞬で消え、そして…――
ズゴォォォ!!
スネーク「ぐはぁっ!!」
横に吹っ飛んだ。
………ってΣええ!?吹っ飛んだぁぁぁぁ!?
「す、スネークさん!?ちょっ、大丈夫ですか!?何か色々と破滅的になってますよあんた!!」
スネーク「ぐっ…や、やられちまったぜっ、黄金色の…戦闘機に…っ!」
「Σ鳥の逆襲!!?え、あれホントに武器的な何か!?」
捨て台詞というより遺言のような言葉を漏らしたスネークさんに慌てて近寄ろうとした。でも、よく考えればさっき…一瞬だったけど、青い色が見えたような?
頭の中でさっきの一瞬の色を思い出していると、またもやさっきのタイヤ音が聞こえてきた!
その音に気づき、顔を左側に向ける。すると、向こうから音速の速さでさっきのタイヤ音がこっちへと向かってきているではないか!
「わっ!」
咄嗟に、足を後ろに引っ込めて体を下がらせると、土煙を上げながらすぐ目の前をまたさっきの青が通り過ぎた。
ちょっ、何であたし狙われてるの!?自分が何かしでかしただろうか…そうやって頭を悩ませていると、今度は右側からさっきのタイヤ音が。
間違いない、戻ってこようとしてるんだ。ど、どうしようっ、このままだとあたしまで大怪我させられるのも時間の問題!
「うっ、やられるくらいなら…自分からっ」
とは言え自分は武器など持っていない。仕方なくさっき掃除用に用意したハタキで応戦しようと、手探りで柱の方を探した。何処にやっただろう…と視線を巡らせると、隅に探していた物が入ってきた。
それを掴もうと手を伸ばし、確実に掴んだと思った距離でガッ!と掴む。手ごたえがある。ハタキを掴めたんだ!よしっ…さて、応戦しないと―――
「うぅわっ!?」
ドテェン!!
……え?
何だか、数メートルもない自分からもの凄い近くから悲鳴のような声が…何処からだ?と首を傾げていると、何と隣辺りからうめき声が聞こえてきた。
「(あれ?そう言えば、掴んでいる感触が、ハタキよりも柔らかいような……)」
「う…いって〜」
「!!」
まさか…。バッ、と勢いよくハタキを掴んだと思っていた自分の右腕の先に視線を張り巡らせた。そこには…トゲトゲの形をしたさっき一瞬だけ見えた青い影、そして赤色の靴。その形容は人間の姿ではないものの、声を出しているし動いている。
つまりはと言うと、ハタキと思って掴んでいたのは…さっきまで暴走していたであろう見知らぬ生き物の腕だったと言うこと。
「(な、何この生き物…?)」
「っくそ、何だ?一体何が―――っ!いってっ!」
あたしが掴んでいる相手は状況が分かっていないようで首を上げようとした。だけど、相手は痛そうに呻くと掴まれていない方の手で頭を掴んだ。
どうやら扱けた時に頭でもぶつけたみたいだ。だとしたら不味い…頭ってぶつけるととんでもない事だってあるんだから!
「だ、大丈夫!?ごめんなさいっ、急だったからつい…」
「ん〜…――ん?つい、って……もしかして、お前がオレっちを止めたのか?」
まだ眉間を歪ませながらも、相手は初めてあたしと目を合わせた。カービィに似た縦に細長い目、だけど全然違った闘志の込められた瞳は猫のようにつりあがっている。
それに頭にも小さな猫耳がついているところから、彼には猫の印象が強く刻まれた。
「え、ええ…(本当はハタキ狙いだったんだけど…)」
「お、お前が!?女なのにっ、お前が!?ホントに!?」
「本当よ、悪いことかしら?」
っていうか、女なのに、という発言は気に食わない。女だからと甘く見られるのは大抵の女性は好きじゃないだろう。少しカチンと来たあたしは言い返してやろうと青い彼に向き直った。
…うん………向き直ったは、いいんだけど…
「な、何かしら?そんなに、瞳をキラキラさせて…」
そう、何故か向き直った青い彼はそのつぶらな小さな瞳をキラキラと輝かせていた。その恍惚な視線は、可愛いとも思うんだけど、少し引きつってしまうほどのもの。
「すっ――げぇぇぇぇ!!凄ぇよあんた!!オレっちの足を止めるなんて、今までの女…イヤ!男でもいなかったんだぜ!?
それを止めるなんて…く〜〜〜!ホントすげぇっ、オレっちめちゃめちゃ感動したぜ!!」
「へ?あ、え〜と…ありがとう?」
ついお礼も疑問系になってしまい、あたしは青い彼のハイなテンションに呆然としてしまった。それでも青い彼はテンションを低くせず、何故かピョンッと跳ねると抑えきれない興奮を露にしたまま口を開いた。
「なあなっ、あんたの名前教えてくれよ!!」
「え?ああ、うんいいわよ。舞って言うの、よろしくね。貴方は?」
「舞か…うしっ覚えた!オレっちはソニック・ザ・ヘッジホッグ!!長いからソニックって呼んでくれよな!」
ヘッジホッグって…ハリネズミ?
…まんまだ。
鋭くもつぶらな瞳を輝かせたまま迫りくってくるソニックの名前を頭に刻みつけた。
「ソニックね、分かったわ。
ところでソニック。貴方さっきえらく爆走してたけど、あれってどうし「伏せろ舞―――――!!!」
…はい?」
ビタァァンッ!!
「Σぐへごあぁぁああぁっ!!」
ソニック「舞!?」
ソニックの声が聞こえる中、何だか覚えのある感覚が背中を襲った。って言うか…この妙な行動と場違いの台詞はあの人しかいない!!
ソニック「お、おい舞!大丈夫か!?」
スネーク「近寄るな貴様!!一歩でも近づくと、センサー爆弾がドカンと行くぜ!」
ソニック「なっ、何だよお前!早くそこから退きがやれ!!」
スネーク「そうはいかん!先ほどの威力、間違いなく偵察中の俺に当てられた刺客だな!?おのれっ、許さん!塵にされたくなければ貴様が居座っている組織名とボスの名を吐け!!」
ソニック「は…ハァ!?被害妄想は止めろよっ!何の話してんだ!」
スネーク「ふっ、惚ける気か。いいだろう!このスネークっ、世界の存続を保つ為、そして目の前の儚き少女を守る為、命を捨てる覚悟で挑んでやるぜ!さあ来いーーーーー!!」
「いい加減にしろおぉぉぉおぉおおおぉ!!!
それあたし指してるなら自分で殺してるぞおっさーーーーーん!!(アッパー!)」
スネーク「Σぐはぁぁぁあっ!!」
バキャッと嫌な音を立ててアッパーが華麗にスネークさんの顎にクリーンヒット。気持ちいいほどに吹き飛んだスネークさんは、頭から地面に落ちて強打した。
…ふぅ、一仕事したっ(キラキラ)
額に浮き出た汗を拭っていると、見守っていたソニックがぱたぱたと駆け寄ってきた。
ソニック「舞!大丈夫か!?怪我は!?変なことされなかったか!?」
「ソニック、ええ大丈夫よ。単に潰されてただけで…」
ソニック「で、でも何かされたんじゃ…本当に、何もなかったのかよ?」
まだ会って間もないのに、ソニックは必要以上にあたしの体の心配をしてきた。「何でそこまで心配するの?」と聞くと、気持ちいいぐらいの笑顔で「オレっち舞の事気に入った」と返してきた。
これはどう反応すれば…喜んでいいのかな、悪いのかな?
某天使少年に続き、早くもあたしは初対面の人(?)に懐かれてしまいました。
スネーク「くっ…舞、何をするんだ」
と、ソニックと話してると、よろよろと口の端から血を流しながらスネークさんご帰還。自分でやったとは言え、何とも酷い(汗)
「ご、ごめんなさいスネークさん。でもあたしの意見も聞いてほしくて。まともに話しても話し合い出来そうになかったから、つい手が」
スネーク「そうか、なら仕方ねえな」
否定してくださいよ
ソニック「こいつ一体何なんだ!人見ていきなり暴れだしやがって」
スネーク「むっ!?貴様、先ほどの!!」
「ま、待って!えっとねスネークさん、こっちはソニック。彼は敵でも何でもないわ、誤解はしないで下さい。
それと、ソニック。こっちはスネークさんって言ってね、傭兵の身なものだから神経が研ぎ澄まされているの。だから少し暴走するところはあるけど、悪い人じゃないから」
ソニック「………。舞がそう言うなら、信じてやるよ…嫌だけどな」
スネーク「ソニックか、悪かったな。俺の勘違いだったぜ。」
無事誤解を解けた2人は挨拶代わりの握手を交わした。(ソニックは渋々だけど)
よかった、色々とゴタゴタはしたけど、こうやって仲直りするのはいい事だから。あー、何でかあたし、初対面の2人にここまで………あ。
「そう言えば、2人はどうして此処にいるの?このお屋敷に何か用事でも?」
スネーク「ん?ああ、俺は大佐から此処に向かうように指示されてな。」
「オレっちには招待状が送られてきたんだ。何か祭り事でもあるのかと思ってやってきた!」
ソニック「招待状?宛先は何て書いてあったの?」
「えーと……確か、マスターハンドとか書いてたような気がするけど」
ミッキーが?彼がこの人たちを呼んだのかしら。そうだとしても、招待状って…?
近々何かを企画してたかな、頭の中で記憶を探っていくけど見当たらず、結局は分からずじまいだ。仕方ない、後でミッキーに聞くとしよう…
バサッバサッ
「…?あれ、今何か音が…―――?」
「舞っ」
「うわ!?」
気になる音に振り返ろうとした瞬間、何かが後ろからあたしにのしかかってきた。そこまで強い訳でもないけど、突然の衝撃に思わず体が倒れようとした。
それに気づいたスネークさんが片手で支えてくれたから感謝の言葉を述べると、唯一動く顔だけを振り返らせた。
視界に入ったのは、茶色と白色の明色。それと、輝かんばかりの柔らかい笑顔。
「え、ピット!?」
ピット「う、うん…!へへ…舞に会いたくて、来ちゃった」
自分から抱きついたと言うのに、恥ずかしいのか、天使少年ピットは頬を真っ赤に染めて照れくさそうに笑った。
ぐうはぁっ!!か、可愛すぎる!!それは食べてくださいと言ってるようなもんだよピットさんっっ
初めての顔にスネークさんはあたしを支えたまま「何者だ?」と隣で呟き、静かに見ていたソニックはどこか慌てた様子でピットを指した。
ソニック「誰だお前!!舞に気安く飛びつくんじゃない!」
ピット「え?あ、俺、ピットって言います」
ソニック「名前じゃねえ!!」
ピット「え?ええ?す、すみません…」
「ピット、貴方喋り方が結構滑らかになったわね!前のおどおどした感じが抜けてきてるわ、いい具合じゃない」
ピット「う、うん!俺っ舞とお話したかったから、頑張って、直してるんだ!」
「そうなの。じゃあまたゆっくり話ししましょうね」
ピット「ほ、ホント!?やったっ」
ソニック「(むっ)なあ舞、マスターハンドって奴は何処にいるんだ?」
何故か少し乱暴に、ソニックはあたしの後ろに飛びついているピットを押しながら飛びついてきた。その衝撃でピットが背中から離れてしまう。
ピット「!(こ、この人…俺から、舞を取ろうとしてる!?)」
「マスター?彼なら管理室にいると思うわよ。向かってみたらどう?」
ソニック「やっぱりそうだよな、んじゃ行ってみるかなっ」
にひー、っと嬉しそうに笑うソニックは何故かあたしの右手を握った。何でそんなに笑っているのか、と首を傾けるとスネークさんが声をかけてきた。
彼の話を聞く為に他所を向いたあたしからは陰になっている為に見えなかったけど、ソニックはピットに向かって勝ち誇った笑みを送っていた。
ソニック「(へっ、こいつ舞を狙ってるようだけどな。絶対にやらないぜ!)」
ソニックの表情を読み取ったピットはむっ、と眉間に皺を寄せる。まだ尻餅をついたままで、見上げる形となって目を鋭く尖らせた。
スネーク「―――それじゃあ、やはり此処にはマスターハンドという者と、クレイジーハンドという者がいるんだな。よし、任務遂行のためにも会ってみるか」
「ええ、そうして下さい。そうすれば原因も分かると思いますからね。
…あら?ピット、大丈夫?手を貸すわ、早く立たないと服が汚れるわよ」
ピット「!う、うんっ」
尻餅をついた彼に手を差し伸べると、途端に笑顔になったピットは嬉しそうに手を握った。立ち上がった後も何故か繋いだままで、こっちはいいんだけど、彼が嬉しそうに笑う理由がよく分からなかった。
首を傾げながら正面に向き直ったあたしからまた見えなくなった2人が、火花を散らせながら睨み合っていた。
ソニック「(舞はやらねえ!!)」
ピット「(絶対…負けない!!)」
スネーク「…おい舞、何処からか闘志が感じてこないか?」
「スネークさん、また勘違いですか?あるわけないでしょうこんな所で」
スネーク「む、そうか」
実はこの時だけはスネークさんの言い分が当たっていたなんて、勿論知る由もない。
さて、それじゃあこれからどうしようか…彼らだけを放っておいても、管理室の場所も分からないだろうし…
案内してあげたらいいのかな?だとしたら、掃除も途中だから先に道具の片づけを―――
「あれ、舞さん…ですか?」
確実に、間違いなく彼女の名前を呼ぶ声。それは右の方向から聞こえてくる。それは何処かで聞いた覚えのある声とこれまたどこかで聞いたことのあるピコピコ…と鳴るスリッパ音。
「?誰――あら、ヨッシー?こんな所にどうしたの?」
聞こえた方にいた人は体全体が緑に染まる。リンクとは違い、真ん中に丸く白い部分があるのはヨッシーだけだ。
舞に気づいたヨッシーは、笑顔を咲かせ少し早歩きで駆け寄ってきた。
ヨッシー「やっぱり舞さんでした〜!私、今までナビィさんと一緒に子どもたちの面倒を見ていたんです!」
「ああ、ナビィもそう言ってたわね。もしかして、今は子どもたちお昼?」
ヨッシー「はい。だからその間、私舞さんとお話でも…―――。
…って…へ?」
「?」
ある程度距離を縮めた所でヨッシーが止まる。点となった目の先には、隣に立っているスネークは勿論、それよりも両手を握っているピットとソニックに向かっていた。
ヨッシー「えと…舞さん、ピットさんは分かりますが…他の方は?」
「あ、彼らの事ね?2人ともミッキーに呼ばれてきたのよ、こっちはスネークさん。こっちはソニックよ!2人とも、こっちはヨッシー、スマブラメンバーの1人なの」
スネーク「そうか、よろしくな。改めてスネークだ」
ソニック「ソニックだぜ」
ヨッシー「あ、はい。よろしくお願いします」
スネークに差し出された手を握手した後、こっちに振り返ったヨッシーはちらちらと視線を泳がせている。
舞は気づいていないが、ヨッシーはピットとソニックが彼女の手を握っている事に内心困っていた。幾ら気の長いヨッシーでもこればかりは黙ってみてられない。
ヨッシー「あ、あのォ…」
「?」
だけど、ヨッシーは優しすぎるが為に、初対面の人(片方は以前の大乱闘で会った)相手だから何も出来ず、嬉しそうに握っている2人を見つめることしか出来ない。
ヨッシー「………ぅ」
自分が何も出来ず、実は大好きな少女を取られている事に見る事しか出来なく、我慢していたヨッシーはとうとうつぶらな瞳からぽろぽろと涙を流した。
それを見て一番に驚いた舞はぎょっ!とし、慌ててピットとソニックの手を解き、駆け寄った。
ソニック「あ!」
ピット「あっ」
「ヨッシー!?ちょ、どうしたのいきなり?」
ヨッシー「うぅ…舞さん…!わ、私はっ…私は無力です〜〜〜!!」
号泣しながら駆け寄ってきた舞に飛びつく。
突然泣かれ、原因も分からないヨッシーの行動に舞は只首を傾げるだけだった。今度は後ろにいるソニックが恨めしそうに、ピットは羨ましそうにヨッシーを見つめた。
「む、無力って…そんな事ないわよヨッシー?自信持って?」
ヨッシー「う…ひぐ…すみま、せんっ」
「(何を謝ってるのかしら)いいのよ、泣かないで!ほら、後輩が見てるのよ!先輩が泣き顔見せちゃ威圧も何もなくなっちゃうわ、ね?」
ヨッシー「!」
何かに気づいたヨッシーは両手でゴシゴシと涙を拭った。どうやら大丈夫そうだ、と舞はヨッシーの様子にほっとため息をついた。
…だが、ヨッシーは違う。彼女に抱きついたまま、まだ少し目を赤くした状態で後ろを覗いている。
その様子に、ピットもソニックもむっ、と眉間を歪ませた。今度は3人の間で火花が散る。
おーっと【舞に甘え隊】にまた1人メンバーが加わったー!!(何だそれ)
「でも、ちょうど良かったわ!ヨッシーが来てくれたから、これで案内してもらえるっ」
ヨッシー「え?」
「あのね、さっきも言ったけど、スネークさんもソニックもミッキーに用事があるの。だから、管理室まで案内してあげなきゃいけないんだけど…
ほら、あたしまだ掃除道具も片付けなきゃいけないでしょ?だから、良かったらヨッシーにお願い出来ないかと思って」
ヨッシー「私にですか?…分かりましたっ、舞さんに頼まれたなら引き受けます!私に任せてください!」
「頼りになるわ。お願いね!それじゃあスネークさんにソニック、それにピットもね。ヨッシーが案内してくれるから、着いていって頂戴?」
ソニック「え!?舞来ないのかよ!?」
「だから、あたしにも用事があるのよ(汗)分かってソニック?」
ソニック「……仕方ないな〜、次会った時はもっと話してくれよ?」
ピット「お、俺も!今より、もっと喋り方…上手になっておくっ」
「分かったわ。それじゃあ、またね!スネークさんもまた」
スネーク「ああ、分かった。ありがとな」
いえいえ、と声をかけると舞は手をひらひらとさせて去っていってしまう。
スネーク「いい子だな。戦場は絶対に似合わない、優しい嬢ちゃんだ。」
スネークは舞の去って行った方向を見つめ、ニッと笑った。暫くは見ていたが、自分の使命もある為にヨッシーの方へ向き直り、案内を頼もうとした。
スネーク「…ん?」
ソニック「何でお前なんだ!オレっち、舞が良かったんだぜ!」
ヨッシー「わ、私だって舞さんとお話しようと来たんですからお相子ですよ!」
ピット「うぉ…俺もっ、舞と話したくて来た!…今度一緒に話そうって…言ってくれたんだ、もんっ」
ソニック「なっ、あれはオレっちに言ったんだぞ!?」
ピット「違、う!俺っ!!」
ヨッシー「違いますっ私とです〜〜!!」
スネーク「………ああ、そう言うことだったのか」
成る程、さっき感じた闘志はこれか。原点が分かり、スネークは呆然とその光景を眺める。
まるで小学生の口喧嘩のような光景に肩を竦めながら、彼もまた舞と会える事を密かに望んでいた。きっと自分自身では気づいていないだろうが…
***
ガッチャガッチャ、と音を立てながら揺れる掃除道具。両手いっぱいに抱えた物を倉庫に押し込んで、用のなくなった部屋から抜け出した。
「ハァ〜、これで一段落ついたかな」
先ほどヨッシーに用を任せて別れてから既に1時間近く経っている。流石に彼らもついている頃だろう。
あの3人の中で不穏な空気が流れていたなんて露知らず、ほのぼのと舞は日向の当たる通路を歩いていく。
「さて、これからどうしようか〜…あ?あれ、ドンキーじゃない」
ドンキー「ウホッ?」
真っ直ぐのところに、茶色の毛を身に纏った大きな体を持ったゴリラ…もといドンキーがいた。ドンキーも気づいたようで振り返ってくれ、少し早足で駆け寄ってきた。
「昨日はいなくて心配してたのよ。乱闘は見れなくて残念だったわ…雪山大丈夫だった?」
ドンキー「ウホホッ、ウホ!ウッホウホホッ!」
………あれ?
Σハッ!!通訳(ナビィ)がいないいぃぃぃぃぃ!!(滝汗)
何て言ってるのか分からず、只冷や汗を流した。目の前にいるドンキーは笑顔でいるが……
えーと…
「え、えと…今度見せてくれる?」
ドンキー「ウッホ!」
首を大きく縦に振るから、きっとOKなんだろう。言葉が通じないからこそか、彼の言いたい事を理解できた舞も嬉しそうに笑った。
またもや和やかな空気が流れる中……
ひょこっ
と、ドンキーの後ろから小さな影が顔を覗かせた。
「あら?」
「ウキー!!」
「初めて見る顔ね…あ、もしかして、ドンキーのお友達?」
ドンキー「ウホッ」
同じような暖かい笑顔を浮かべたお猿が、ドンキーの背中に乗っていた。赤い服と帽子を着こなしている、中々シャレたお猿だ。
「初めまして、あたし舞って言うの。貴方の名前は?…って、聞いても喋れないのよね」
「ウキュ?」
「(か、可愛い!!)」
小首を傾げる仕草に、思わずも胸キュン(死語)してしまった。動物独特の愛らしさに気が緩みそうになるものの、何とか顔の筋肉を引き締めた。
「うーん困ったわねェ、文字も通じないし、どうしようかしら」
そうだ、2人とも言葉が通じるものの、人間の言葉が分からない。これでは自分の名前を教えても相手はわからない。困ったものだ。
ポリポリ、と困ったように頭を掻く舞に、ドンキー達も首を傾げた。
「誰か訳せる人がいると助かるんだけどね」
ミュウツー「…大丈夫か…?」
「うーん、微妙ね。言葉が分からないから」
ミュウツー「そうか…なら私が訳そうか?」
「あ、本当?そりゃ助かるわミュウ…Σツー!!?」
いつの間にか、舞の隣にミュウツーが腕組をして立っていた。普通に流すところだった、何故彼が此処にいる!?
オーバーなリアクションで反応する舞と共に、ミュウツーもきょとんとした。
ミュウツー「何だ?」
「いや何だ?じゃなくて、いつ此処に来てたの!?」
ミュウツー「今…。舞に用事があってな…テレポートで、来たのだが…?」
「て、テレポート?」
後ろにいるドンキーを振り返れば、彼も後ろのお猿も数回首を縦に振った。どうやら敏感性の研ぎ澄まされた彼らは気づいていたようだ。
テレポートとはあれか、瞬間移動の
「そうだったんだ…あ、そうよミュウツー、訳してくれるって本当?」
ミュウツー「ああ…望むのなら、構わない」
「じゃあお願い、あのお猿さんの名前を聞ける?」
ミュウツー「…そこの猿、名前は何と言う?」
そこの猿て。ドンキーの背中に乗っているお猿はきょとん、としていたが、また笑顔を取り戻してにっこり笑った。
【おいらはディディーっス!宜しくお願いしまッス!】
「あ、あれ?言葉が…」
ミュウツー「私と会った時、機械を通してテレパシーを送っただろう…?あれと同じ原理の力を、今周囲に流している…」
「へぇー、凄い!よろしくねディディー、貴方が喋れると言う事は、ドンキーも?」
ドンキー【言葉伝わってる!】
おー!と舞は拍手しながら喜んだ。まさかの展開に、素直に喜んでいるのだ。新たに知り合えたディディー、彼も見たことない。
一体今日は何かあるのだろうか?と舞は心の中で首を傾げた。
「ディディーは何か用があって来たの?」
ディディー【おいら今まで裏の世界にいたッスよ。それからクレイジーさんに呼ばれたんで来たんスけど】
「え?今度はクレイジー?しかも裏の世界、って…」
ミュウツー「…ディディーとやら、もしや貴様…試験体か?」
ディディー【あ、そうッス!あれ、知ってるんスか?ドンキーは知らないみたいなんスけど】
「え、ドンキーは知らない?」
ドンキー【おう、聞いてない!試験体って何?】
ミュウツー「長くなってしまうからな…ディディーに後で聞いてくれ」
ドンキー【うん、分かった!…あれ?そう言えばミュウツー、舞に用事があったんじゃないのか?】
ドンキーは小首を傾げながらミュウツーに問いかけてきた。そうだ、確かここに来た時に彼は舞に用事があって、と言った。うっかり忘れるところだったが
「ミュウツー、あたしに用事って何?」
ミュウツー「…ああ、紹介したい者がいてな…待たせてあるのだが…」
「え、ええ!?それはまずいわよっ、呑気に話してる場合じゃないわ!
ごめんねドンキー、ディディー!折角話せるようになったのに悪いんだけど、ちょっと席を外してもいいかしら?」
ドンキー【俺は全然いい!人を待たせるのはよくない、早く行ってあげなよ!】
ディディー【舞さんッスよね?おいらもドンキーと同じ意見ッス、また今度話しましょ〜!】
「ありがとう、助かるわ!そうと決まればミュウツー、その人は何処にいるの?」
ミュウツー「上だ」
「は?」
上?ミュウツーの言葉の意味が分からず、舞は只単純に首を上に持ち上げた。視界には只の天井しか映らず―――が、それも間もなく揺れた。
ぐらりと揺れて、少しだけ体が勝手に斜め向いた。何故か背中が地面に向いて、足には地面についている感触がしない。
そして…ミュウツーとの距離が0に等しい。
「Σあえあぁああぁぁああああぁぁ!?」
ミュウツー「掴まれ…直ぐ、着く」
「いやあのねっ、この体制で冷静に掴まれ言われても瞬時反応なんて出来ないし何より貴方の何処に掴まれと―――」
がたがたと舞が騒いだ途端…
シュンッ!
と短い音を立てて2人の姿がそこから消えた。最後まで暴れていた為か、ミュウツーの腹に一発決まっていたぞ。
ディディー「キキッ?」
ドンキー「ウホ?」
既に言葉が分からなくなってしまったドンキーとディディーは、仲良く小首を傾げるだけだった。
***
―――テレポート!
シュンッ
「うわっは!?…吃驚したァ…ミュウツーいきなりなんだもの」
ミュウツー「…舞、痛いんだが…」
彼女を下ろしたミュウツーは少し俯きがちに両手でお腹を抱え込んでいた。一瞬トイレかと思ってしまった舞である。
「え?あ、ごめん!さっき暴れた時何かにぶつかったんだけど…まさかヒットしてた?」
「していた…」
ごめんなさいっ、と只舞は両手を合わせて謝るしか出来なかった。だが心優しいミュウツーだからこそか、彼は首を横に振ると体を垂直に戻した。
その様子に舞も苦笑しながらもホッとし、スカートの皺を直した。
「―――ミュウツー」
すると、耳に響くような凛とした声が聞こえてきた。顔を上げようとすると、澄んだ風が体を叩きつけた。どうやら野外のようだが……その所為で髪の毛が顔に張り付き、邪魔そうに舞は顔を顰めた。
隣にいるミュウツーは既にそっちへ顔を向けているらしく、舞も急いで髪を手で払いのけた。
遮るものがなくなった視界には…
暗くも暖かい青の影。その存在はまるで、今自分の隣で静かに立っている彼と酷似していた。
Next Story.