18.挑戦者が壊れました
よっ、オレっちはソニック!覚えてるよな、前回舞に世話になったソニック様だ!!
全くよ、この変な奴らがいなけりゃもっと舞と一緒にいれたってのに…しかもその内の緑と白はオレっちと狙いが同じときた。
今だって舞の事で揉めあってるんだけどよー、こいつら全然諦めようとしないんだよな。くそっ、しつこいぞ!!
ヨッシー「うーー、もういい加減舞さんの事諦めてくださいよ〜!」
ソニック「なっ!?それはこっちの台詞だ!!お前らしつこいんだって!」
ピット「ソニックも、だよっ…や、やっぱり俺、用事ないし…舞のところへ―――」
ソニック「あっ馬鹿!この不純天使!!1人抜け駆けしようとすんな!」
ピット「Σ不純天使!?ぱっぱっ、パルテナ様が聞いたら、失神するぞ…!!」
ソニック「当然だろ!それだったらオレっちが舞の所に――」
スネーク「いい加減にしたらどうだ3人とも、もう直ぐそこだろう」
オレっちと突っかかるピットの首根っこを、スネークとやら言うおっさんが掴んだ。テメッ、人を猫みたいに扱うな!!(猫みたいだけど)
唯一自由な身のヨッシーはスネークの言葉に気づいて、数歩先に見える赤で塗られた大きな扉に駆け寄っていった。
ヨッシー「此処です!此処が管理室です」
スネーク「ほう、なら此処にマスターハンドとクレイジーハンドがいるのだな?」
ヨッシー「はい。だけど、2人とも忙しいからいるかどうか分かりませんが…」
マスター「――お、ヨッシーか?私たちならいるよ、入ってきて!」
丁度いいタイミング、中からオレっちより少し高い声が聞こえてきた。
…ってちょっと!
ソニック「おいスネークっ、いい加減離せよ!オレっちにこの格好で会えって言うのか!?」
スネーク「ん?ああ、すまんな」
ヨッシー「それじゃあ開けますね〜」
スネークの手から離れる事が出来たのと、ヨッシーが扉を開け放ったのはほぼ同時。開かれた室内は、ほぼ紫の電子パネルなんかで敷き詰められてる。
へぇ、結構技術が進んでるんだな〜…
ヨッシー「マスター、クレイジー。招待状を貰ったって方々が来ました〜!」
案外フレンドリーっぽく話しかけるヨッシーに顔を向けると、奴を通した向こうから2本のでかい手がやってきた。…って、手!?何で手!?
もっと違う人物を想像していたオレっちは正直、相手の姿に目を開いていた。隣のピットも目を開いている。あれ…こいつ会った事あんじゃねえのか?
呆然とオレっちとピットが眺めていると、突然2本のでかい手は手全体を光で包みこんだ。
この部屋では眩しい光に目を細めると、静まった光の中から2人の銀髪の男が現れる。さっきよりも驚いて、オレっちとピットは瞳孔を開いた。
それでも相手は気にしていないようで、偉そうにいばったような無愛想な奴の隣にいるやたらと笑っている髪の長い男が2、3歩近づいてくる。
ぴたりと足を止めると、その整った顔に広がっている笑顔をもっと広げた。
マスター「待っていたよ、参戦者」
挑戦者が壊れました
雲ひとつない快晴な空の下、その存在を強調させるかのような大きなお屋敷の屋根の上。普段なら人なんていないその場所に、小さな影が3つあった。
その中で人間と呼べる者は1人だけ。あとの2人は人間ではない容姿と勇敢なオーラを放っていた。
「…え?」
唯一の人間の少女は目の前の人物…とは言い難い者に思わず戸惑う。相手はそんな彼女に首を傾げているし。
どうしよう、会話がない。呼ばれたから来たのに、どうしたものか。心の中で密かに焦った舞は、とりあえず、相手の名前を聞こうと決めた。
「えっと…貴方は、誰――」
ビュウオォォォォォ!!(強風)
「ってΣさみいいぃいぃぃぃいい!!!
ちょ、今思えば何で屋根の上にいるの!?」
この季節(春前)に外に出たら勿論寒い。薄手の制服だけしか羽織っていないなら尚更の事だ。
今更になって舞は野外に出てきた事に気づきしゃがみ込んだ。
ミュウツー「仕方がない…こいつは人前に出ぬからな。…どんなにしようと、屋敷内に入ろうとしないのだ…」
「ど、どうして?幾らなんでも寒いでしょっ、感覚がないわけじゃないでしょう!?」
「私は寒くない。この体だ、これくらい何とも思わん」
ここでようやく相手が口を開いた。2度目に聞いた声に反応して、舞も顔だけを上げる。
「ミュウツー、この者が?」
ミュウツー「うむ…舞という」
「そうか」
2人だけでのやり取り。1人、状況が全く読み込めないのだが?舞は2人の様子を只見つめるだけ。また一風吹き、思わず舞も自分の両腕を抱えた。
「(あー、寒いな〜)」
「舞、と言うのだな?」
ミュウツーと話していた青い影が、突発にしゃがみ込んだままの彼女に振り向いた。
「はァ、そうですけど。貴方は?」
「私の名はルカリオ。波動を極めし者だ」
自分で言っちゃった。嫌、別にナルシストとか言うわけじゃないけども
ルカリオ「突然呼んでしまい申し訳ない」
「ルカリオってミュウツーの知り合い?」
ルカリオ「戦友、と言った方が近いか。以前共に戦った事があるのだ」
「友達なのね、へぇー…。でも、それならもっと会いたいものじゃないの?どうして今までは来なかったの?」
ミュウツー「さっきも言ったが、ルカリオは滅多に人前に出てこぬ…この屋敷は、よく人が出入りするだろう。
…だから極力訪れないようにしているのだ…」
なるほど、と舞は感嘆の声を漏らした。人前に出るのが苦手なんだ、それなら仕方ない。
それでも、ミュウツーの知人―もとい、戦友の彼がもっと頻繁に来れる様になれたらミュウツーも退屈しないのに…
「(ミッキーとマウスに相談してみようかしら?)」
ルカリオ「………舞」
「?何、ルカリオ?」
ルカリオ「…お前は、どうしてこの世界に来た?」
「ええ?…どうして、って言われても。あたしは此処に来たくて来た訳じゃないし、呼ばれて来たわけでもないのよ」
ルカリオ「どういうことだ?」
「うーん、恥ずかしい話なんだけど、あたしはミッキーの暇つぶしが理由で連れてこられたの。
こっちに来た時に、妙な呪いのようなものがかけられたみたいで帰れないらしいのよ。それからは此処にお世話になってるのよね〜!」
ルカリオ「!…呪い…なるほど、だからか」
照れくさそうに頭を掻く舞に、ルカリオは何かを考えるように俯いた。彼は今、呪いだから何かがあると言った。何か知っているのか?
「どうしたの?」
ルカリオ「…お前からはミュウツーや此処の者達とは違う波動が感じられる。それはいいものか悪いものか分からないが…只確実なのは、他の者とは違うという事だけだ」
「違う波動?違ってたら何かあるの?」
ルカリオ「悪しきものであればな。だがお前はどちらか分からない、どうする事もできないんだ」
「そうなの…じゃあ大丈夫よきっと、今までだって異常がなかったんだから!」
お気楽に考えることにして今まで下ろしていた腰をようやく上げた。スカートについた土を払っていると、さっきと同じぐらいの風がまた吹く。
「さ、寒い…!やっぱ寒いのは嫌いだわ、本当ルカリオが羨ましい」
ルカリオ「?何故だ?」
「だって毛皮あるじゃない!その毛毟り取って頬擦り出来たらどんなに嬉しい事かっ(期待の眼差し)」
ミュウツー「…そんな事になれば、私は戦友の縁を切る……」
そりゃそうだ。呆れ顔のミュウツーに舞もあはは、と苦笑いを零した。確かに自分だってそんなルカリオ見たくない、正直な気持ちはちゃんとある。
ルカリオ「すまない」
「いいのよルカリオ、此処は謝らなくていい所だから!
でももしそれでも心の底から謝ってくれると言うならっ、あたしの腕の中に両手広げて飛び込んできて下さい!ヘイカモン!!」
ミュウツー「舞…」
ミュウツーの呆れた声が再び耳に届いた。今度こそ空笑いした舞は少し頬が引きつっている。
ルカリオ「両手広げて、ヘイカモン…」
「ん?」
だが舞が両手を下ろそうとすると、広げた先の張本人も何故か両手を横に広げた。
そして一言
ルカリオ「分かった」
「ぶふぅっっ!!(噴出)」
素でボケていた。突然の不意打ちに舞は内心悶えながらも、慌てて両手を振った。
「ちっ、違うルカリオ!
抱きついてくれたらそりゃ嬉しいけど此処はさらっと流すところなのよ!!」
ルカリオ「ん?そうなのか?」
こてんと、首を傾ける辺り、本気だったのだろう。理解してくれたのか、両手を下げるルカリオを見ながら、舞は少しだけ冷や汗を流しながら勿体無いと感じた。
そうか、この人も天然か。天然クールなのか
「類は友を呼ぶとは言うけど…」
ちらりと横目でミュウツーを見れば、彼も「何だ…」と言いながら首を傾げている。うん、同類だ。
今更ながらの再確認をすると、舞は頬を引きつらせる。
「(害はないからいいけどね)え、えっと…それじゃあとりあえず、ルカリオの用事はさっきのだったの?」
ルカリオ「ああ。少し、間近でお前の波動がどんなものだったのかを見たかった」
「そうなの。じゃあ折角だし、食堂にでも来ない?きっと今なら人も少ないと思うから、お茶でも―――」
「ピッカ!」
シュルッ!
………ん?
ルカリオと向かい合っていた舞は何か違和感に気づいた。1つは今まで聞こえなかった甲高い声。もう1つは…
「(あ、あれ?制服のリボンが…)」
「ピーッカチュウ」
「!」
胸元につけていた紺色のリボンがない事に気づくと、さっきの声がまた耳元に届いた。聞き覚えのある声に、まさかと思った舞も振り返る。
黄色いボディーにギザギザ形の尻尾。頬には日の丸印の丸模様、ときたらあの子しかいない。
「ぴ、ピカチュウ!?」
「ピ」
「ど、どうしたの突然?いい子だから、そのリボン返して?」
「ピ?…ピッカ!」
「!あ、ちょっと!!」
伸ばす手を無視して、ピカチュウは口にリボンを銜えたまま向こうへと逃げていく。
そこまで大事なものというわけではないが、いつもある物がないとどうも落ち着かない。舞も慌ててピカチュウを追いかける。
「ご、ごめん2人とも、特にルカリオ!急ぐからまた今度にしてね!」
ルカリオ「構わないが」
ミュウツー「…大丈夫か…?」
「平気よ、何とか捕まえてくるから!――こらピカチュウっ、そのリボン返しなさい!!」
ぶんぶんと手を振り回し、威嚇しながら舞は過ぎ去っていく。今日は何だか色々と振り回されてばかりだ。
いつもそうだけど
黄色い影を追いかける彼女がいなくなり、ミュウツーとルカリオの間に少しの沈黙が流れた。
短な沈黙を破ったのは、ミュウツーへ振り返ったルカリオだった。
ルカリオ「ミュウツー…舞に用心していてくれ」
ミュウツー「…さっきの、波動か…?」
ルカリオ「ああそうだ。何があるか分からない、彼女に何があるか分からないからな」
ミュウツー「…承知した」
ルカリオ「私もまた、何かある日までに己の力を高めておく。今日は悪かったな、また会おう」
ルカリオはそう言うと、少しミュウツーから離れて瞳を瞑った。
体から蒼いオーラが吹き出ると、呼応するかのように瞳を開けたルカリオの瞳が黄金色に輝いた。
――シュンッ!
間もなく彼の体はその場から消えてしまい、屋根の上にはミュウツーのみ残る。
ミュウツーは暫くじっとしたまま、雲1つない快晴な空を見上げた。何かをするわけでもなく、ただただ見上げるだけ…
***
++in城内++
コツコツコツ…
何でこんなに広いんだろう、そう言ってしまいたくなる程の広い通路には、オレの足音しか響かなかった。
頭についた寝癖はどんなに頑張ってもまだ少し立っている。
フォックス「ふあ〜ぁ…っ、んーもう昼時か…昼食食べた後、ファルコと乱闘でもするか」
覚めたばかりとは言わないが、まだ時間もあまり経っていない為に意識が完全ではない。仕方ないか、自分でも吃驚するほど寝てたもんな。
ファルコも特に今日は何かあったわけではない、折角ならもう少し誰かを呼ぼうかな
フォックス「三剣士は誰がいたかなー」
一番腕を上げるのに効率がいい相手はやっぱりあの3人だ。それぞれに色々な特徴がある為に、レベルアップしたいものがよく上がる。
オレは耐久性が弱いから、出来ればロイが相手しくれたら嬉しいんだけど
フォックス「贅沢は言えないしな。あの3人の誰かがいたら声でも―――」
「―――…!!」
フォックス「ん?」
耳に入った声に足が止まる。きょろきょろと一通り見渡しても、その相手は見つからない。
誰だ?何だか慌ててるような声だったが…
此処じゃないとすれば、もう少し先かもしれない。オレの予想が当たっているかは分からないが、とりあえず少し早足でそこの曲がり角を折れる。
曲がった先には…どうやら、オレの予想が当たっていたらしい。誰かがいた。
フォックス「あの服装と声……舞か!」
相手が舞だと分かると、自分でも気づかない内に頬に熱が集まってきた。そう言えば、オレってまだ舞とゆっくり話してないよなァ…折角だし、少し話そうかな。
折角なら一緒にお昼でも食べに……… ん?
フォックス「さっきから何してるんだろう?豪く必死だなァ」
此処からだとまだ少し距離がある彼女は、上に向かって何か吠えていた。何かが天井付近に引っかかったのか?
支柱の陰で見えない相手を見る為に、少しオレは右に体を寄せた。丁度彼女が見ているであろうものが視界に入る。
フォックス「…あ」
「こーらー!ピカチュウ、早く返しなさいよーー!!」
「チャハハハッ」
皆さんこんにちは、只今子ねずみと奮闘してます女子中学生です。ピカチュウの笑い方ってこんなのなのね、初めて知った。
何故かピカチュウはあたしのリボンを突然奪い取り、まるで遊ぶかのようにあたしから逃げ回る。
「どうしたのよ突然、遊びたいならハッキリ言えばいいじゃない!」
「ピカ?」
支柱の天辺辺りにいるピカチュウは首を傾げる。
…そう言えば今日のピカチュウは何か可笑しい。態度もそうだけど、今日は会ってから全く喋っていない。さっきから「ピカ」「チュウ」の言葉しか使わないんだけど。
まあそれが本来の喋り方なんだろうが…
「ってそんな事はどうでもいいとして!ねえピカチュウ、お願いだから返してくれない?」
「ピ〜……、…ピカッ」
一瞬だけ、流石に悪いと思ったようにピカチュウは項垂れたけど、またそれも直ぐに首を横に振り否定された。
ダメか…。どうしたらいいのかな、言う事を聞いてくれないような子じゃなかったと思うんだけど。意外な相手に悩まされる頭に、手を置いた。
「ハァ、もうピカチュウさーん」
「イリュージョン!」
ドンッ!!
「!?」
「ピッ!?」
半ば諦め気味に見上げていたピカチュウが、突然横からの衝撃によってバランスを崩した。口元に挟まれていたリボンも姿を消していて、訳も分からず目を驚愕に開いていると、バランスを崩したピカチュウが落ちてきた!
「わっ、ピカチュウ!?」
不味いっ落ちる!!慌てて着地地点に向かおうとする。…が、ピカチュウは宙で一回転すると体制を整えて、10点満点付けたくなる様な動きで着地に成功した。
おお、凄い。ピカチュウの身軽な動きに呆然としていると、あたしの前に上から白い陰が落ちてきた。
「あ、…あれ?フォックス!」
フォックス「ふぅ、よう舞。」
呑気に挨拶をする彼に駆け寄ると、なんと、突然目の前に現れたフォックスの手にあたしのリボンが。
「あ、リボンっ」
フォックス「困っていたようだったからな、ほら」
「あ、ありがとうフォックス!お陰で助かったわ」
どうやら彼は今、お得意の瞬間移動技フォックスイリュージョンを発動したようだ。
あたしはお礼を言いながら直ぐにリボンを取り付ける。
「ピーッカチュウ」
すると、対峙しているピカチュウがこっちに…正しくは攻撃をしかけたフォックスに威嚇をしていた。
フォックス「ん?」
「ピカカ!ピカッ」
フォックス「何だ…ピカチュウかと思ったら、ピカチュウじゃないみたいだな」
「へ?ピカチュウじゃ、ない」
怒りを露にする『ピカチュウ』に対して、彼はさらっと『ピカチュウ』ではないと言った。
どういうことだろう、新種のポケモンと言うことか?悩むあたしを見かねて、少し苦笑気味に笑う。
フォックス「時々この屋敷に野生のポケモンたちが来るんだ。でもピカチュウは希少価値の高いポケモンだから今まで見たことないな」
「じゃあこの子、野生のピカチュウ?」
フォックス「多分な」
「ピー…」
話し合うあたし達に尚も警戒するピカチュウ。野生の本能が残っているのだろう、仕方がない事だ。
なるだけ警戒心が解れるように、あたしは無理矢理笑顔を広げてしゃがむ。
「さっきはごめんね、悪気があってやったんじゃないの。只あたしのリボンを返して欲しかっただけなのよ」
「……」
「そう怒らないで。あ、食堂行って一緒にお菓子食べる?」
「ピ?」
お菓子、という単語に反応し、ピカチュウは耳をピクッと揺らした。
お、こうかはばつぐんだ!?
「クッキーとかケーキとか色々あるわよ。ね、仲直りの印にどう?」
「ピー…」
「あたしはさっきの事、全然気にしてないから」
「!………ピッカ」
最後の言葉を引き金に、ピカチュウはまだ少し遠慮しながら近づいてきた。足元で座る彼に両手を伸ばすと、途端に笑顔になったピカチュウはするするっと体を上って肩に乗った。
「ピカ!」
その至近距離の笑顔は悩殺もんだ!!
嬉しそうに笑いながら頬擦りをしてくるから思わず鼻血が吹き出そうに。必死に鼻を押さえるあたしを他所に、フォックスまで笑顔を向けてきた。
フォックス「良かったな、懐いたみたいだ!」
「動物って最初は警戒心が強いものね。さあ、約束どおり食堂にでも行きましょうか!」
「ピッカー!」
「…あれ?今声がしなかった?」
「え?何処だ?」
「え?」
「!ピカ!?」
聞きなれない声に振り返ると、ピカチュウはあたしの腕から飛び降りた。
駆け出そうとした足を何故か止めると、また戻ってきてあたしのコートを引っ張る。
「チュゥ!」
…えーと、着いて来いと?
「フォックス」
フォックス「ああ」
何も言わずとも理解したフォックスも続き、ピカチュウを先頭にしてそこの間取り角へ走る。
体が小さい分、先に角を曲がりきったピカチュウの表情が途端に明るくなった。
「ピィカ〜!」
「何処に行ってたんだよっ、心配したんだぞ?」
何か―正確には誰かに飛びついたんだろうピカチュウを追いかけて、少し遅れてあたしとフォックスも曲がり角を曲がる。
…と、
――ドンッ
「わっ!?」
「のわぁ!?」
勢いがつきすぎたのか、曲がった途端誰かとぶつかった。
尻餅をついて、痛みに眉間を歪み…ってハッ!?こ、この少女漫画的展開っあの変態共との初会シーンにそっくり!?まさかあの時のような展開が待ってるのか!?
「(んなの嫌じゃぁあああぁぁあぁ!!!来るなら来いっ、汚物だったら遠慮なくヘッドバット繰り出してやる!!)」
既に自分の中では変態と決めつけていた。
あの時のある意味地獄絵図を思い出すと慌てて身構え、いつでもかかってこい!的に戦闘体制を構えながら相手を見る。
「あいてて…な、何だ今の?」
少女漫画万歳ーーー!!(感涙)
何とぶつかったのは予想外の美形黒髪少年で、見た目はあたしとはあまり年が離れていない感じがする。
「あの、すんません。こちらの不注意でぶつかってしまって」
「え?」
相手はようやく気づいたようで顔を上げた。改めてあたしも相手の顔を見て…ピシィッ!と音を立てて一瞬固まる。
…嫌、萌える事はちゃんとしましたよ?忘れてませんともっ
でもそれよりもこの相手!間違いなくポケモンアニメの主人公、サトシだ!!何故彼が此処にいるかは知らんが、そんな事萌えの前にはミジンコ同然!!(壊れた)
サトシ「――!」
「(うわわっ、生もんだ、生もん!!)」
「おいサトシ!いつまで座ってるんだよ?」
今、間違いなくサトシと呼んだもう一人の少年。彼はピカチュウを肩に乗せて、困ったように笑いながら手を差し伸べてきた。
あたしに向かって、手 を
「ごめんな、兄が迷惑かけて。立てる?」
寧ろもっと迷惑かけてほしいです!!まさか美少年からのお誘い(違)を断れる筈もなく、あたしは遠慮なくその手に掴まった。
まあ只単にお触りがしたかっただけなんだけど
「よっ、と。君えらく軽いね、ちゃんと食べてる?」
「は、はい勿論(こっちは漫画版ポケモンの主人公レッド!あれ、まさかのクロスオーバーですか!?それって滅茶苦茶美味しいんだけどおぉぉぉぉぉ!!)」
外面正しくしてるが、実は内面で絶叫中の舞です。
不意打ちのダブル美少年の登場に必死に抑えているあたしの後ろからフォックスもやってくる。
フォックス「大丈夫か?」
「あ、フォックス!大丈夫、何とか抑えたから!!」
フォックス「オレが聞いてるのと多分違うよな、それ…(汗)」
おっとー、やばい素が出てきそうに。
それでも本当に頑張って抑えたの、分かってくれる人に褒めてもらいたい気持ちだわ
フォックス「それより、舞もそっちも大丈夫か?」
「(ハッ!)ああっあの、さっきは本当に!…って、あれ?」
ごめんなさいね、って謝ろうと振り返ると、さっきの相手―サトシはまだ尻餅をついたままだった。
見上げてくるその整った顔立ちには、仄かに両方の目元辺りに朱がかかっている。
「あ、あのー…怪我でもしました?手、貸しますよ」
サトシ「(ぼー)」
フォックス「どうしたんだ?」
レッド「サトシ?…おいっサトシ!」
サトシ「!! え!?あ、ごっごめん!立つよ、立てるから大丈夫だよ!!」
目元にかかった朱を更に広げ、サトシはものすごく慌てて立ち上がった。
あの、顔の赤みは分からないんだけど…
「そ、そんなに拒否する事ないと思うのですが…(ショック)」
サトシ「え?あっ違…!今のは、そのっ少し恥ずかしくて!べ、別に君を拒んだわけじゃ…!!」
レッド「落ち着けよサトシ、相手が混乱するだろ?」
サトシ「ご、ごめんレッド」
レッド、サトシがそう呼んだ相手は予想通りの人だったらしい。
落ち着けと言われて直ぐに出来るわけないのは目に見えている、サトシもまだ何処か慌てていた。
あんたはバイトの面接に来た女子高生か
レッド「さっきはホントごめんな!少し慌てた所もあってさ、悪気があるわけじゃないんだ」
「いえ、あたしも悪い所あるから。そっちこそ気にしないで」
レッド「ありがとう!まだ自己紹介してなかったよな、俺レッド!…ほら、サトシっ」
サトシ「あ、よろしく!オレ、マサラタウンのサトシ!」
レッド「それでこっちが俺の相棒、ピカチュウのピカだ!」
ピカ「ピッカ!」
ピカ…という事はやっぱり、こっちのレッドは漫画版のレッドなんだ。
「よろしくね、あたしは舞よ!それからこっちは…」
フォックス「フォックスだ、よろしく。あんた達、凄く似てるが…兄弟なのか?」
サトシ「ああっオレ達一応双子なんだ!オレが兄で、レッドが弟!って言っても、いっつも世話してくれるのはレッドの方なんだけど」
サトシは照れたようにハハッと笑った。双子か…なるほど、美味しい設定がまた1つ増えたっ
陰ながらの小さなガッツポーズ
「そのピカチュウはレッドのポケモン?」
レッド「ああ、そうなんだ。」
「って言うことはポケモントレーナーって言う職業なんじゃない?」
フォックス「ポケモン、トレーナー?何だ、それ?」
「ポケモンの育成とかをする人たちの事よ!あたしも詳しいわけじゃないんだけど…サトシは?」
くるり、と振り返るとサトシは指摘されてか顔をまた赤く染めた。
サトシ「へ!?」
「レッドのポケモンはピカチュウって分かったけど、サトシはポケモンいないのかと思って」
サトシ「あ、ああそういう事か!勿論、ちゃんといるぜ!」
サトシが腰元に取り付けたベルトについていた指先で持てる程のボール。彼が真ん中のスイッチを押した途端、手のひらサイズへと巨大化した。
サトシ「出て来いゼニガメ!」
赤と白のボールは地面にバウンドすると口を開いた。どういう仕組みなのか、サトシの手にボールが戻ると、中から飛び出したものも完全に姿を見せる。
フォックス「か…亀?」
サトシ「ゼニガメだよ!オレの2番目のパートナーだ!」
「ゼニゼニッ」
サトシが出したのは青い色と甲羅が特徴的な初代パートナー、ゼニガメ。
レッドのピカもゼニガメに気づくと、2匹で一緒に遊びだした。
…か、
「可愛えぇ…!!」
サトシ「か、かわええ?褒めてくれてるなら、ゼニガメも喜ぶなっ」
「うん、うん!可愛すぎるわっ、このままあたしが連れて帰ってやりたいぐらい!!」
サトシ「Σええ!?だ、駄目だよ!ゼニガメまで連れていかないでくれよ!!」
両腕を広げた事に本気にとったサトシは、慌てて両手を横に振った。くっ、やっぱり駄目か…ゼニガメが駄目ならあんたら双子連れて帰るぞ。
脳内で危険な事を考えていると、後ろのフォックスが怪訝な顔をした。
フォックス「ん?ゼニガメ『まで』?」
レッド「ああ、俺達、既に手持ちのポケモンが一匹ずついなくなってるんだ」
「え?………。あたし攫ってないわよ!?」
レッド「あはは、君が獲ったなんて思ってないよ!多分!」
…あれ?今さらっとぐっさり来る言葉が聞こえたような?
サトシ「だからオレ達、ポケモンを探しに此処に来たんだ。招待状みたいなの貰ったから、丁度いいと思って!」
「!しょ、招待状ですって!?ねえサトシっ、それってもしかして、マスターハンドって人から来たんじゃない?」
サトシ「あれ、よく分かったな舞!オレ言ったっけ?」
やっぱり。一体ミッキーはこんなに招待して、何をする気なんだろう?
スネークさんとソニックに続き、今日は来客が多いものだ。特に、招待客が
「じゃあ、貴方達もミッキー…じゃなくて、マスターに会った方がいいわね。」
フォックス「そうだな、招待したなら、会った方がいいよな」
サトシ「この屋敷って凄く広いから、オレ達も迷いそうになってんだけど」
レッド「もし良かったら案内してくれないかな?してくれないと俺、半永久的に呪いそうなんだけど…」
「全力で案内させて頂きます」
そう?ごめんな!そう言って笑うレッド。その笑顔からは純粋しか見えないから、さっきの言葉が似ても似つかないんだけど…
まさか素か?天然黒なのか?だとしたら尚更性質悪いーーーー!!
「ふぉ、フォックス!マスター達は管理室よね!?」
フォックス「ああ、そうだな!今日は特に何もないから、多分2人ともいると思うぜ」
「決まりねっ!それじゃあ早速向かいましょうか!!」
レッドのまさかの黒発言から目を背けたくて、あたしは無理矢理テンションを上げた。
管理室へと向かう為階段のある方へと振り返る。
…途端、体に何か衝撃が走った。
ゴワッ!!
「Σぶおわぁああぁあぁ!!?」
フォックス「!なっ、舞!?」
突然体が凄いスピードで宙に浮いた!乙女の欠片もない悲鳴を上げてから、そのままフォックス達と瞬時に引き離されて行く事に気づく。
そしてどんどんあたしの体は遠くへ…ってちょっとーーー!?
「ちょーー!これ何ぃぃぃぃ!!?」
「囀るな、大人しくしろ」
何と身を乗り出そうとすると、あたしを攫おうとしている張本人が口を開いた。
低い声…という事は、男か?
フォックス「舞!!くそっ、待ってろ!今助ける!!」
向こうで慌てて追いかけようとしてくるフォックスに気がつく。
「ふぉ、フォックスーーーー!!」
フォックス「!な、何だ!?」
咄嗟にフォックスの名前を呼んだ。
けど、混乱して言葉も見当たらず、何を言ったらいいのか分からないあたしは…
「え〜〜っと……れ、レッドとサトシは短パンの方が絶対似合うと思うわよねぇぇぇぇ!!」
フォックス「Σ攫われる寸前に言う台詞じゃないと思うぞそれーーーー!!?」
ホントだよあたし。
パニックだから叫ぶ言葉が見あたらなかったとは言え、どんだけ芯から腐ってんだあたし。
あたしの叫びも空しく、体を抱えた謎の飛行物体はそのまま窓から外へ飛び出した。
フォックス「たた、大変だ!舞が攫われたっ」
あたふたと慌てながら、フォックスは舞が消えていった窓を見上げた。
その後ろでは、心配そうに鳴くピカチュウの頭を落ち着かせるようにレッドが撫でている。
レッド「大丈夫だよピカチュウ、きっと無事さ。なっサトシ!」
横に立つ己の分身とも言える兄に振り向く。サトシは抱き上げていたゼニガメの頭を撫でながら、何処か遠い所を見つめるようにぼーっとしていた。
レッド「?おい、サトシ?」
呆けるままの自分の兄に首を傾げていると、サトシは頬を桜色に染めてぽつりと呟いた。
サトシ「可愛かったなァ、あの子…」
レッド「……は?」
サトシの恋する乙女視線はフォックスと同じ所へ向かっていた。レッドは訳が分からないと言う様に肩を窄めて、ピカチュウの頭をまた撫でた。
一方、こちらは舞…
「(何であたし今日こんなに厄介ごとに巻き込まれるのー!?)」
フォックス達の姿も見えなくなり、あたしの混乱がピークに達する。
我武者羅に叫んでやろうとした時、丁度図ったように、あたしを抱えた謎の飛行物体は高度を下げ、少しずつ地面に近づく。
「この辺りでいいか」
バサリッ、と羽音を響かせると、完全に足が地面に着いた。
降りた…相手の顔を確かめようとするも先に、自分の体が解放された事に気づく!
「うわぁぁぁ!!痴漢ーーー!!」
ドゴッ!
「はがっ!?」
見事なまでのストレートナックルなるものヒット。
相手は地面を顔面からスライディングして地面にめり込む。自分でやっておきながら少々酷い。
「ぐっ、貴様…」
だがそれも直ぐに打ち破れ、よれよれと相手が体を起こした。
おのれまだやるかっ、女だからと言えどヲトメ戦闘態勢に入れば多少なり自分の身は―――
「何をするカービィ!!」
「何もくそもあんたがあたしを拉致……ん?」
カービィ?
「あ、あのー…?」
「ふんっ、流石はライバルと言う所か。来るなら来いっ、私とやると言うなら受けて立つ!」
「いやん真昼間から『ヤる』だなんてお盛んな…、じゃなくてっ!
誰がカービィですって!?あんたそれはあたしに括れがないと喧嘩売ってるのか!幾らデブでも括れくらいはちょびっとぐらいあるわよ!!」
この野郎乙女の禁句をいいくさがりおって、あたしはカービィほど丸っこくないぞ!
ちゃんと5頭身以上あるし首、胴、足の体三原則は揃ってるし!!何だっ、あたしはボール体系と言うかぁぁぁぁ!?
「…何だと?カービィでは、ない?」
相手はあたしの言葉に怪訝そうに少し武器を下ろした。いつの間に剣を抜き取っていたか知らないけど
「当たり前よ!って言うかどうやったら1頭身と7頭身見間違うのよ!?」
「う、煩い!仕方がないだろう!!」
「何でよ!仕方なくなんかないわ!」
「そうも言えるか! 仮面が邪魔でよく見えんのだぞ!!」
「外せよ仮面!!!第一自分こそ1頭身体系の癖に仲間見抜けず何見抜く!?」
本気で見違えたかあたしとカービィを!
相手の凄まじい感覚の凄さに怒り通り越して大丈夫かと思ってしまうあたし。
「カービィではない、か……ならとんだ働き損だな。他に行くか」
カチン…と来た。相手は本当にそう思っているようで、ため息をついて方向転換をして飛び立とうとした。
…が、あたしがそんな事させると思うか!今正に飛ぼうとする相手の足をむんずと掴んだ。
「!?なっ、何をする貴様!!離せ!!」
「離すもんなら離すわ、でも今は離さない!働き損ですって?人勝手に拉致っておいて何を言うタキシード仮面め!!
礼儀がなってないぞ、これは調教が必要だわ調教がっ(ぐりぐりぐり!)」
「いだだだっ!や、止めろ!!
離さんかーーー!!」
両手で仮面の上からその丸っこい体をぐりぐりと苛めてやる。相手も流石に痛いのか、必死に短い手でバタバタと暴れている。
「言う事は?言ったら離すわよっ、さあ!」
「わ、悪かった!私が謝るっ、だから離せ!!」
人に頼む態度とは言い難いけど…まあ仕方がない。もう少し苛めたい気持ちもあったけど、約束どおり両手を離した。
仮面の奥に隠れた目が微かに潤んでいるのは気のせいじゃないだろう。
「く、屈辱だ…!このような仕打ちっ」
「仕方がない、自業自得と言うことで。ところで貴方、カービィを知ってるみたいだけど、彼の友達なの?」
「………」
相手はさっきのあたしの攻撃が効いたのか、答える事無く只睨んできた。
…………。
「調教が足りないらしい」
「Σ!?ら、ライバルだ!!貴様こそカービィの何だ!?」
妻の浮気現場発覚した夫の台詞か
「何でもないわよ、只の友達。
貴方はそこまで悪に見えないし、自己紹介しておくわね!あたし舞って言うの、よろしく!」
「…ふんっ」
「ねえ、貴方の名前も教えてくれない?」
名前言って笑われたの初めてだ。少しばかりのダメージに苦笑すると、相手はじっとこっちを見つめてきた。
そして何てことか、今まで背中に生えていた悪魔の翼を翻し、瞬時にマントへと変えてしまう。
「メタナイトだ。これで十分か」
「メタナイト………。
タキシードは付けないの?」
メタナイト「さっきから何に執着してるんだ貴様は」
勿論タキシード仮面。仮面と来たらタキシードで揃えてほしいなー!
まあそんな事あれば全力でお腹を抱えてさしあげますがね(爆笑する気満々)
メタナイト「(嫌なものが聞こえた…)
もう用はないか?ないのなら、私は行くぞ」
「貴方ねェ…自分で此処に連れて来た癖に、放って行くってどういうつもり?」
メタナイト「戻る事ぐらい出来るだろう」
「あたしはオランウータンのようにひょいひょい行く自信はありません。と言う事で連れてってプリーズ!」
って言うか本気でこんな所に置いていかれたら溜まったもんじゃない。
雪山とかでならまだマシも、まさか自分の住んでいる敷地内で放置死なんて嫌だ!情けない!
メタナイト「貴様乱闘参加者だろ?そんな事も出来ないのか」
「あ?あたしは乱闘参加者じゃないわよ。只の一般ピーポー、か弱い女子中学生」
メタナイト「!なっ、参戦者じゃないというのか!?」
メタナイトはあたしの発言に驚いたのか、素っ頓狂な声を上げた。
出来る事ならか弱いって所に突っ込んで欲しかった。痛いじゃないかもう
「悪かったわね!そういう事だから連れてってくれない?」
メタナイト「…はァ、私とて、無力な者を野晒しにする程冷酷ではない…」
1つため息を溢して、メタナイトはまたもマントを翻し、瞬時に悪魔の翼に変えた。
空へはいつでも飛び立ち準備OKのようだ。
メタナイト「来るがいい」
「誘ってるのね!!」
メタナイト「断じて違う!!」
ツンデレ仮面は照れを隠す為仕方なさそうに自分から抱えた。(決して照れてない)
またもや足が地面から離れて浮遊感が付き纏い、振り落とされないように慌ててしがみついた。
「!うわっ、凄…」
意外にも大きいメタナイトの体にしがみ付きながら、初めて全体を見渡したスマブラ屋敷に感嘆のため息を溢した。
スマブラ屋敷って、こんなに大きかったんだ
メタナイト「おい、何処へ向かうんだ?」
「え?うーん、そうね〜……じゃあ、一番近い中庭に。」
メタナイト「分かった」
案外素直に頷いて了承したメタナイトが、バサリと音を立てて羽を羽ばたかせる。
向かう先には、何故か山並みが並ぶ荒野へと向かっている。
………はい?
「あ、あのメタナイト?何処へ向かってるの?」
不審を抱き、慌てて彼へと視線を戻す。彼は真っ直ぐと前を見据えたまま怪訝に顔を顰めた。
メタナイト「貴様、今自分で中庭へ行けと言っただろう?」
「言ったけど…何で別の所へ向かってるの?」
メタナイト「何…?どう言う事だ」
「中庭はあっちよ、逆方向」
メタナイト「…………。」
指摘した瞬間、ピタリと進行が止まった。
お互いの間で暫くシーン…と寂しい静寂が響く。密かに見えている彼の体に、汗が這って見えたのは間違いない。
…まさか……
「メタナイト…仮面、やっぱり外した方が」
メタナイト「煩い何も言うな」
メタナイトはクールに見せているものの、まだ少し慌てた感じのするまま方向を180度回る。
言われた通り何も言わずに只しがみ付きながらも、あたしはひっそり
「(今度もう少し視野の広い仮面を探してあげよう)」
と心の中で思っていた。
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