19.流れ流され徒然なるままに





よく分からない女。
それがあいつに対しての第一印象だった。

最初はカービィだと思って勝負を仕掛けようとしたが…とんだ勘違いだったようで、挙句の果てには米神をやられてと…本当に厄日だと思った、この時だけは。

今となっては何故かこの女を抱えて中庭へ向かっているのだが
…む、視界が見え辛いな…… だ、だからと言って私は仮面を外さないぞ!!


兎にも角にも、早いところ下ろしてこの場を立ち去る。それが一番だ。


…それにしても、私が女子に触れたのは正直驚いた…自分の、事だが……

まあ半分は無理矢理向こうが掴んできたりしたんだがな


私自身、こんなに大声あげたのは初めてで驚いているなんて
言えるはずもないが…






流れ流され徒然なるままに







――バサァッ


羽の風圧に、花畑から数厘の花が宙に舞い散る。
ゆっくりと丸い体から身を離し、今一度ようやく地面に足をつける。


「着いたぞ、これで構わんのか?」

「ええ、勿論よ!ありがとうメタナイト」


スカートを払いながらお礼を述べると、メタナイトは何事もなかったように振舞う。
香る花々の甘い香りに心を癒されてます女子中学生です、こんにちは。メタナイトへの誤解も解けてようやく和解?出来ましたよ


「やっぱり立てるっていいわね!」

「さあ、知らん……おい、もう用はないのか」

「え?ええ、特にこれと言ってないけど…」

「そうか…なら私はそろそろ退散するぞ。誰かさんのお陰で予定が狂ってしまったからな」


マントに戻す事もなく、メタナイトは悪魔の翼をまたバサリとはためかせた。
どうやら本当に帰るようだ。それは構わないけど、まだお礼も言ってないんだけど…


「メタナイト、またこの屋敷に来る時はある?」

「…何故そんな事を聞く?」

「今度会った時には今日のお礼にお茶でもと思って!ね」


まあ彼の性格を考えると、「お茶なんていらん!!」とか言いそうだけど。
安易に想像できる事に少し笑い顔が苦くなった。メタナイトは只じっとこっちを見つめてくる。


「…いつか、機会があればな…」

「!ほ、ホント?一緒にお茶してくれるのね?」

「……好きにするといい」


ふいっ、と素っ気無く顔を背けるも、メタナイトの言葉に少し心が喜ぶ。
否定される事を覚悟していたんだ、尚更の事だ。引き締める事の出来ない口元はそのまま、丸い彼に向かって「よろしく」と呟いた。


「じゃあ今度までに美味しいお茶の淹れ方を姫に聞いておくわね!
今日はありがとうメタナイト」


見えている彼の手に自分の手を絡ませて、半ば強制の握手をする。
無理矢理向き合わされた彼も嫌な素振りは見せず、それでも自分から手を絡ます事はない。


「構わん…気にするな。それでは私は行くぞ」

「うん。…ってああそうだメタナイト!」

「?何だ」


羽を羽ばたかせ、宙に浮いたまま体を振り返る。1つ重要な事を忘れていたあたしは一度深呼吸をして呼吸を整えた。
そして…


「あのさー、仮面って鼻眼鏡アイマスクとどっちがいい?

「私は仮面を変える気はないぞ!!」


あらま。吐き捨てるように言うと、メタナイトは今度こそバサッ!と羽を羽ばたかせて空へと消えていく。
その際、通り際に木に思いっきりガンッ!!と当たっていたが
やっぱり変えたほうがいいと思うよそれ。


「大丈夫かなあの人…(汗)」


ぶつかりすぎて近いうちに顔が変形してしまうんじゃないのかね。
そうは思っても今更言葉を届ける術もなく、只あたしは頭を掻いた。


「まあ、彼がいいならそれでいいんだけどね」


「あ、あの〜…」

「…?」


ふと後ろから声をかけられる。聞いた事のないソプラノ調の澄んだ声に惹かれ、思わず振り返った。
同じ目線上に顔が見えない為、若干首を下に傾けながら。


「はい、何でしょう?」


顔が見えないのは麦わら帽子の所為だろう、見上げてくる金髪の少年は目を合わせると頬をピンク色に染めた。
…あれ?この子…何か何処かで見たことがあるような……


「(何処だっけ?)」

「えっと、突然すみません!その…この人、何処かで見ませんでした?」


少年は手に持っていた大きなスケッチブックを一枚開いた。
差し出されたものには、大きく使って黒髪の人が描かれている。その傍に座っている黄色い者や赤い帽子は記憶にもまだ真新しいもの。
途端にあたしの頭の中に1人の少年が浮かび上がった。


「これってもしかしてレッド?彼だったら知ってるわよ。さっきまで会ってたから」

「ほ、本当ですか!?」

「ええ!さっきそこの大通路で話してたの、今ならまだいるかもしれないわ」


此処から西向きに見える西通りの通路の事だ。少年はあたしが指す方向を軽くスケッチすると、スケッチブックを閉じて慌てて頭を下げた。


「有難う御座いました、助かります!」

「そんな、いいのよ。探してるなら急いで追いかけた方がいいわ」

「そうですね、早速行ってみます。ホントに有難う御座います!」


ペコリ、ともう一度頭を下げると、少年は西大通路に向かって走り出した。
どんどん小さくなっていく影を最後まで見つめながら、何処で見たことがあるのかを必死に思い出す。


「うーん、やっぱり見覚えがあるような…何処だっけ?」


首を捻るほど頭を悩ませても思い浮かばず、仕方なく答えを迷宮入りにさせた。



舞から道を聞いた少年―に見える少女は、足を急かしく走らせながら舞の事を思い出した。


「綺麗な女の人だったなー…」


身近に女の友達はたくさんいたけど、皆バトルに夢中だからあんなに可憐ってイメージじゃないから…自分もそうだけど
ボクもあの人みたいに綺麗になれたら、レッドさんに近づけるのになァ


「うわ〜、何言ってるんだろボクっ」


自分で言ってて恥ずかしくなり、少女は赤くなった頬を押さえながら走る速度を速めた。
振動で揺れる腰についた赤と白のボールがカタカタと鳴る。












「さてと、これからどうしましょ」


少女を見送った舞は、花畑の真ん中で息を吐いていた。
今日は家事でもやろうと思っていた為、やる事なんて用意してないのだ。

退屈にどうしよう、と頭を悩ませると、頭の中にミッキーが浮かんだ。


「…そう言えばミッキー、どうして今日はお客さんをこんなに呼んだのかしら」


ずっと気になっていた事だが、彼に会おうとするも会えない為に理由もわからない。
やる事がないなら丁度いい、今から彼の所に行って聞いてこようか…


「うん、そうしましょう。暇なら丁度いいわ」


そうと決まれば早速行かないと。確か彼は管理室にいるってフォックスが言ってたし…
頭の中でこれからの計画を立てながら、なるべく花を踏みつけないようにその場を後にする。


…つもり、だったのだが


カサカサカサッ


「…?」


足元を伺いながら歩いていると、視界の中で何かが蠢いた。
よく見てみると、足元に生えているものが動いている。今足元にあるものとすれば…花だけ


「は、花が…動いてる!?」


目を驚愕に開くと、舞は驚きのあまり後ろに倒れ込んでしまった。
そのまま尻餅をついていると、周りを動いている花がピタリ、と止まった。


「あ、あれ?止まった…」


活動を止めた花に首を傾げる。一体さっきから何なんだ…某童話の世界の如く今度は歌でも歌うんじゃないだろうな。
そう警戒しながらきょろきょろと舞は辺りを見渡す。

すると、彼女の膝に何かがふわりと乗った。


「んん?」


直ぐに気づき、舞は視線をまた自分の膝に移した。
…視界に、花が映っている…花が自分の膝の上に乗っている。何故かある二つの黒い目にじっと見つめられ、舞もまたじっと見つめ返した。
(只単に固まって動けないだけ)

花…違う、花を頭に生やせた生き物だ。体全体が赤色で、凶器のように尖った鼻がついた生き物が。
膝に乗った赤い物体は固まった舞に向かって片手を挙げた。

そして


『ピ』

「……


なんとなく舞も返事。(しかもピ)
どうしたらいいもんかと心臓バクバクしていると、赤いその物体に続き、似たような体系の者たちが次々と舞の膝に乗ってくる。
半ば放心状態だったが、多種の鳴き声で正気に返った。


「(な…何ですかこの生き物達ぃぃぃ!!?見た目可愛いけど正直怖いって気持ちも多々あるんですよね!!)」


混乱のあまり何故か敬語の舞。しかしながらこのままでいる訳にはいかないという気持ちが浮かぶ。
どうやら危害を加えてくる様子はないようだ。これなら安心しても大丈夫だろう…掌サイズの生き物達を一通り見渡し、一度コホンと咳を溢した。


「えーっと、あたしは舞って言うんだけど。貴方達何処から来たの?」

『ピ?』

「……言葉が通じない、困ったわね…名前くらい分かればいいんだけど…名前言えない?」

『ピクミン!』

「へ?」

『ピクミーン!』


小さな両手を伸ばし、リーダー格の赤色の物体は声を張り上げた。舞はきょとんとしていたものの、ようやくどういう意味なのかを悟った。


「もしかして…ピクミンって名前?」

『ピ』


こっくり、と首を縦に下ろす。どうやら間違いはないようだ。
色々な色がいるが、これら全部同じ名前―ピクミンだと理解してもいいのだろうか。

そうだとすればピクミンと名乗る生き物は全5種類。
鼻がある赤色、口のついた青色、耳のついた黄色、ずんぐり体系の紫色、そして一番小さく目が赤いのが白色。


「い、一匹一匹個性豊かな事で…」


謎の生き物の正体も分かり、ようやく頭が落ち着いてきた時、

ドテッ!


と後ろで何かが落ちた。


「…『ドテ』?今度は何?」


ピクミンを落とさないよう首だけを後ろへ振り向かせると、そこでよたよたと体を持ち上げている人間がいた。
人間である事は確かだ。確かに人間…なんだ、が…


「(小さっっ!!)」


そう、小さいのだ。身長がどうこうじゃない、赤ちゃんサイズの人間なんだ。
赤ちゃんなら納得できるが相手はそうではない。宇宙服を着た耳が尖っているという異質な姿なんだ。

…この屋敷は珍人がよく訪れるようだ。そして自分にはその珍人と縁があるらしい。


「あ、あ〜〜…大丈夫?」


さっき扱けた事で痛そうに顔を抑える人間に声をかける。


「…?…Σ!!」


すると、ようやく舞の存在に気づいた人間は、彼女の顔を見た途端体を跳ね上げた。
間もなく体を震わせている事から、彼が怖がっている事が伺える。


「怖がってるの?あたし何もしないから大丈夫よ?」


寧ろ自分の方が怖くて心臓バクバクさせてるんですけど…
お互いがお互いを怖がっていると、舞の膝に乗っていたピクミンが全員降りた。その中から赤ピクミンが飛び出し、怯える人間に駆け寄っていく。


『ピ、ピ』


服の裾を引っ張って、何かを伝えようとしている。人間は大人しく聞いているようだが…もしかして言葉が通じているのだろうか?


『ピク、ミン!』

「…☆?」


……今明らかにピクミン以上に解読不能な言葉が…


『ピ、ピク』

「★☆…;」


もう言葉ではなく記号となってしまっているが、まさかの人間も言葉が通じない!?

コミュニケーションの難しさに頭を悩ませていると、赤ピクミンやその他のピクミン達と一緒に人間が近寄ってきた。


「初めまして、あたしは舞!」


友好的な笑顔を作りながら話すも、相手は顔を青くして冷や汗を流している。
まだ震えてる…と言う事は、まだきっと怖がっているんだろう。


「大丈夫、何も危害は加えないから安心して?」

「…☆」


人間に控えめに握手の手を伸ばすと、少し躊躇うものの彼も小さな手で人差し指を握ってくれた。
多分だけど、どうやら和解出来たようだ。


「よかった!最初は驚いたけど仲良くなれたら平気なものね」

「☆」

「…えーっと、貴方も日本語は話せないのね(汗)」

「?」
『ピク』

「困ったわねェ、ピクミンは名前が分かったけど、貴方の名前はどうも分かりそうにないかも」

「!」


ぴくっ、と反応する彼に気づく事無く、舞は困ったように頭を掻いた。


「どうしましょ…とりあえず、マウスに頼めば何とかなるかも―」

「★!」

「ん?」


さっきの赤ピクミンのように、今度は彼が舞の服を引っ張る。
それに気づいた舞も振り返ると、人間は忙しそうにピクミン達の許へ駆け寄っていった。


「(何かしら…)」


気になった舞は成り行きを静かにじっと見守った。
5匹のピクミン達の許へたどり着くと、一通り辺りを見渡して何故か大きく息を吸い込んだ。

そして、その直後の事


ピピーーー!!

けたたましい虹色の光を発するホイッスル音が鳴り響く。キィンっ、と響く耳を押さえながら、舞は少し目に涙を浮かべた。

…その途端、



ポンッ!


「え」


ポンッ、ポンッ!
ポポポポポポポポンッ!!


『『『ピクミーーン!!』』』

「Σギャーーー!!ピクミンの大量発生ぃぃぃぃ!?


何と、花畑の花という花が地面から飛び出した!胴体がついている辺りピクミンなんだろう、ほとんど花がなくなった状態になったガーデンに目が点になる。
って言うか何時の間にガーデンに住み着いていたんだあんた達!?

色々とドキドキと鼓動を早く鳴らす舞を他所に、ピクミン達はパタパタと走り回った。


「…?」


ピッ!と人間のホイッスル音を合図に、今度は突然地面に体を倒した。不可解な行動に、彼女はただただ首を傾げるばかり。


「☆☆!」


すると、さっきと同じようにまたも服の裾を引っ張られる。
彼に引っ張られるまま、舞は寝転んだピクミン達に視線を移す。


「え、何?」


何だろう…と首を傾げるも、そのピクミン達の並び方が普通ではない事に気づいた。何か形が出来あがっているのだ、絵柄ではなく、よく自分が見かけるもの。
目を凝らして見ると、その形が文字である事に気づく。


「えーと……『オリマー』?…ん?オリマー?」

「!」

「オリマー、って…貴方の名前?」


首を傾げると、オリマーらしき人物は飛び跳ねて頭を何度も縦に振った。
そうか、オリマー…まさかピクミンを利用するとは思わなかった。


「そう、オリマー!じゃあ改めてよろしくねオリマー、ピクミンも」


こくり、と首をもう一度縦に振ると、さっきの虹色のホイッスルをまた短く鳴らす。
笛の音を合図にピクミン達も体を起こし、綺麗にオリマーの後ろに並んだ。

101匹わんちゃんならぬ、100匹ピクミンの完成だ


ぐー…


「…あ」


ピクミンの多さに吃驚していると、舞のお腹から小さく音が鳴った。そこでようやく気づく、もう昼も過ぎた頃だと言うのに、全く食べていなかったのだ。
そりゃお腹も空くだろうと自分で自分にツッコミを入れる。


「今から食べたら夕飯心配だけど…我慢出来そうにないからなァ。」

「?」

「うーん、やっぱり食堂行って何か食べてこようかな。オリマー達も一緒に屋敷内に入らない?
折角だし、一緒にお茶でもどう?」

「!…♪」


オリマーはどうやら喜んだらしい。少し考えたものの、首を縦に振った。
彼が来るならきっとピクミン達も来るだろう、頭の中でそう解釈して、舞はしゃがんでいた体を持ち上げた。


「それじゃあ早速行きましょうか!此処からだとそう遠くないし、直ぐに着くと想うわ」

「★☆!」


赤ちゃんサイズだと想っていたオリマーは、立てれば舞の腰元まで身長があった。
意外に大きいんだ、と感心していると、中庭にまた小さくホイッスルの音が響き渡った。






***



++in城内++






「此処の大通路を抜けた先だからね」


仲良く隣を歩くオリマーと共に、そして彼の後ろを着いてくるピクミン達と共に食堂へ少しずつ近づいていく。
オリマーとは言葉を交わす事は出来ないけど、彼から溢れる和やかなオーラのお陰で気まずくなる事なんて1つもなかった。


「(いやー、それにしてもやっぱりいいわねこういう空気。平和感が身に沁みるわ…)」


今日こそは何もないと思っていた分尚更だ。
ちょこちょこと歩くオリマーもそうだし、後ろから着いてくるピクミン達が100匹揃って鼻歌歌いながら着いてくるもんだから、もうホント可愛くって…!!(悶え)

あまりの可愛さにこのまま食堂じゃなくてあたしの部屋に拉致ろうかと思ったほど。


「(はー、幸せだ…もう今度こそ、これ以上厄介事はないでしょ―――)」


ピタッッ


「…?」
『ピク?』


隣の彼らが急に前進を止めたあたしを見上げてくるのが分かる。
うん、あたしも止まる気はなかった。止まる気はなかったんだけど…目の前に、見てはいけなかったようなものがあるから仕方がない。

50mも満たない先にいるのは、全体的に青って感じの…人、だと思う。
形は人間なんだけどね、その顔が見えないからよく分からないのよ。何故顔が見えないか、理由は簡単。

相手は顔を…と言うより、前を全体的に地面に向けてるのだ。
イコール…突っ伏してるってわけで……。こんなところで突っ伏しているって事は………


「いっ、いっ…

生き倒れぇえぇぇえぇぇぇえええ!!?」


もしくは本物の屍
えっ、ちょっと待って!何で小鳥も囀る長閑なお昼時に(決定)がいるの!?絵になるぐらい綺麗に倒れてるもんだから冗談にもならないわ!!(汗)

兎に角放っておくわけにもいかず、オリマー&ピクミンを引き連れてあたしは屍に駆け寄った。


「あ、あのー!大丈夫ですかー!?…って大丈夫なら生き倒れなんかになっちゃいないけどお願いだから目を覚まして下さーい!!」


でないとこのまま火葬場送っちゃうぞ!!
近くで見るとよく分かるガタイのいい体を揺さぶってみても反応はなく、呼吸すら聞こえてこない程静かだ。
…え、まさか本当に死んでるのこの人?その場合この状況だと土葬の方がいいのかな。


『ピクッ』


あたしと手伝ってくれていたオリマーが悪戦苦闘中の事、ピクミン達も手伝ってくれた。
その中でも、群れから離れた赤ピクミンが屍の顔の前辺りに駆け寄る。


『ミン』


ぺちぺち、と頭を叩いたり、覗いている腕を叩いたりしている。
だけど結局同じく反応がない。赤ピクミンはきょとんとしながら首を傾けた。


『ピクー?』


それでも諦めないようで、赤ピクミンは小さな体を活かして様子を伺おうと下から覗き込んでみた。
影で見えない屍の顔……辺りから、何かがギラリと光った。


―――ぐわしぃっ!!


『Σビ!?』

「おわっ!?」


すると、突然屍が今までピクリとも動かさなかった腕で赤ピクミンを掴んだ!
何故か『ゴゴゴ…』という音が似合いそうなほどの勢いで、徐々に顔を上げる。あたしからだと丁度見えないけど、その視線は間違いなく掴んだ赤ピクミンを捉えている。


「…ニン、ジン…っ!!」

『Σピキャー!!』


どうやら相当恐ろしいようで、ピクミンでは出ない筈の言葉を出して驚いた。
じたばたともがく赤ピクミンでようやく放心していた魂が元に戻り、慌てて赤ピクミンに駆け寄る。


「ちょ!ちょっと待って下さい!確かに赤ピクミンはピクピクニンジンが元だと言われるほどニンジンに近いですけど、って何であたしピクミン知らない癖にそっちは知ってるんだ!?
ええい今はどうでもいい!兎にも角にも家の子を返せぇえぇぇぇぇえ!!」


勝手に家の子に昇格させながら、意外に力強い相手から赤ピクミンを奪還!
あまりの力強さに赤ピクミンの体が変形してしまってる。…それも直ぐに戻ったけど。

涙目になった赤ピクミンは屍が怖くなったようで、慌ててオリマーの傍に帰った。それが正しい判断だろう。


「ふぅ、これで一安心…」


ガシッ!!


ではないようです。何故か痛い掌…視線を移すべく横目で見ると、屍があたしの腕を掴んでいるのだ。
え…ま、まさかさっきので怒った?食べ物の恨みは怖いって言うけど、まさか…!?


「……あんた」

「Σすすすすすんません!!でもあたしは別に悪い事したわけじゃないんですっ、ピクミンへの愛情故の行動を起こしてしまったわけで!!悪いのはピクミンの可愛さなわけでっ!!

「…いい匂いがする……」

「ギャーーーッ!お助けぇぇえぇ!!……って…いい匂い?」


此処でようやく落ち着きを取り戻して、あたしは改めて相手の顔を見ることが出来た。
海の様に深い青の髪に巻く緑の…ハチマキ…?鎧やら何やらをしている辺り、剣士さんなのかも。

服の端がほとんど切れてるんですけど…まさかあんた…さっきの生き倒れもあって、ホームレス?
…うわ、それもやだなー、自分で言っておきながら。


「苺の匂い……」

「え?ええ、きっとハンドソープの所為ね。あれ苺の香りがするから」

「いただきます」

「あァ、どうぞ〜………は?


今この人何て言った?何故か本能が危険と察知して手を引こうとした時…時既に遅くとはこの事だろう。
何と屍はあたしの手を逆に引っ張って、そのまま……―――


ガブッ


噛んだ。
……噛んだぁぁ!?


Σいぎゃあぁぁぁああぁあ!!!じゅ、じゅっ、純粋な意味で食われたーーーーー!!?」


さっきの赤ピクミンではないけど、噛まれた腕をバタバタさせる。
けど屍の力は凄く、離す気配は見せない。ちょっと、とれるんじゃないのあたしの手―――!?って言うより歯が食い込んで…いだだだだだぁぁぁあっ!!


「☆★〜〜!!」

『『『ピィクミィィンッ!!』』』


メギョッ!!

「!!」


フッ…――

パタッ


「…あ、死んだ


オリマーとピクミンの共同戦線により、屍はまたもや屍に戻った(意味分からん)
そりゃそうだろう。何せ、さっき紫ピクミンが男のバナナに当たったの見えたから。
痛恨の一撃だな


「あ、ありがとうオリマー、ピクミンも…」

「!」
『ミン!』


ひとまずお礼を言って、それから屍の口から手を離す。
わー、見事に手に歯形が残ってる…何の思い出よこれ。でも何か消すのは勿体無い


「うーん、このまま放っておくのが一番安全だけど…」


ぐるるる…

ちらり、と横目で見れば屍のお腹から盛大にお腹の虫が鳴った。どうやらさっきの発言も加わり、間違いなくお腹を空かしてるんだ。
何故だか自分の中でこの人へのホームレス疑惑着々と定義つけられてくるんですけど


「…事情があるのかもしれないしね」


例えばホームレスとか(もういいよ)
運良く食堂までも道が近いし、このまま運んで行って何か食べさせよう。自分の中で事故解決案を練り出して、屍の腕を掴んで持ち上げる。


「お、重…っ!!」


ガタイがいいからか、屍の体は思った以上に重い。腹の底から力振り絞って何とか背負った。
下にいるオリマーがおろおろしながら見上げてくる。


「大丈夫よオリマー、直ぐそこだもの!それに美形の香りで寧ろやる気が出てくると言うか…!!


はい、腐っててすみません。
兎に角早く介抱するべく、少しずつ食堂へスローペースに進んでいく。でもやっぱり男と女の体格の差は歴然で、完全には背負いきれない。

彼のつま先が地面をずず…、と引き摺られていくが、そこはあえて気にしない事にした。





***

++in食堂++





あれから食堂に着いて15分。あたしは料理を、オリマーは屍の介護を、ピクミンは食器運びをと役割分担をきっちりして動き回った。
小さいながらも集まった彼らは凄く役に立ち、正直、そこいらのメイドよりもよく働くと思った。


「即席料理ってこんなのしか作れないけど…構わないかしら」


ピクミン達と協力しながら、白いテーブルに料理を置く。
早くした方がいいと思って簡単に作ったのは、2人分のオムライスと3人分のサラダ。
どうやらオリマー達は野菜の方が好きらしい。だから簡単に盛り付けたものなんだけど…


「これオリマーの分、こっちはピクミン達ね」


既に大皿3枚分となったサラダをピクミン達に渡すと、100匹皆で嬉しそうに食べだした。
オリマーは行儀よく椅子に座ると、フォークでキャベツを刺して口に運んだ。

美味しい?と聞くと、嬉しそうに笑って首を縦に振る。良かった、好評だ。
さて…


「後はこの人ね」


あたしは今だすやすや眠る屍の横に座る。あたしの前にオリマー、斜め前にピクミン達、そして右手に屍さんがいる。
変わったメンバーだとつくづく思うわ…。


ピクッ…


「―――…ん…」


珍メンバーを見渡していると、丁度タイミングよく屍が起きた。初めて見た双眼は青く、何処かまだボーっとしていた。
けど、料理の香りに気づいたのか、くんくんと鼻を鳴らすと身をガバッ!と起こす。


「…飯…」

「あ、それ貴方のご飯なの。オムライス、食べれる?」

「!俺、の?……食っても、いいか?」

「ええ勿論っ」

「すまん」


一言済ませると、屍…はもう終わったか、青髪の人はがっつくようにオムライスを食べ始めた。
よっぽどお腹が空いていたんだろうか…まあ生き倒れになるくらいだったから。
驚異的なスピードに呆気になりながらも、あたしはサラダに盛られたトマトを食べた。


「よっぽどお腹空いてたのね、貴方。」

「ああ…ずっと、カプセルの中にいたからな」

「へ?カプセル?」


早くも半分を食べ終えた青髪の人は一度水を飲む。


「ああ…S.Cと呼ばれていたようだが、その中にいた」

「シークレットカプセルの事?じゃあ貴方も裏世界から来たのね」

「知っているのか?」

「ええ!貴方と同じような人には、もう何人か会ったから」

「そうなのか…」


ぽつり、と呟くと青髪の人は食事を再開した。気持ちいいほどの食べっぷりを見てると、あたしなんてサラダだけでお腹いっぱいになってしまう。
この人も裏の世界から…もしかして、ディディーと同じくクレイジーに呼ばれて?
例えそうでも意図が見えないけどねー


「…ご馳走様」

Σ早っ!?す、凄いスピードね…喉つっかえなかった?」

「平気だ」


すっかり空になったお皿は、米粒1つ残っていない。綺麗に平らげたお皿を感心して見つめる。
お水はまだあるかな、と思い青髪の人のコップに視線を移す。
…と、青髪の人がじっとこっちを見つめてきていた。正しくは、あたしのオムライスを。

…もしかして……


「…あの、あたしのオムライスいります?」

「!…い、いや…しかし……あんたのが…」


自分が無意識に見ている事に気づいたんだろう、青髪の人は申し訳なさそうにする。
否定しないと言う事は、きっとまだお腹が空いてるんだろう。それなら尚更の事だ


「あたしはそこまでお腹が空いてるわけじゃないですから。サラダだけで十分ですんで」


どうぞ、と言いながらオムライスの乗ったお皿を青髪の人に寄せる。
あたしとオムライスを交互に見ながら考えていたけど、間もなく豪腕な腕がゆっくりと伸びてくる。


「すまない…貰ってもいいか?」

「どうぞ!」


許可を得ると、またもや青髪の人はオムライスをがっつきだした。どれだけお腹が空いていたのかが分かり、あたしも苦笑しながら静かに見守った。
向かい側のオリマーは丁度食べ終わったようで、手を合わせて頭を下げた。


「オリマー、おかわりは?」

「☆」


首を横に振ったのでどうやらいいらしい。
お水は?と聞くと、両手で持った空のコップを差し出してくる。笑顔で頷いて半分くらいまで水を注いだ。

あたしも自分の分を入れなおしてテーブルの上にポットを戻す。
すると、隣でカランッと乾いた音が聞こえた。


「もう食べたんですか!?早いのねー…」

「ああ…腹が減っていたからな、ご馳走様。
…美味かった、凄く」

「そう?なら良かった」


空のお皿を4枚重ね、ピクミン達の大皿は別に3枚重ねる。オリマー達が片付けようと椅子から飛び降りようとするのを片手で止めた。


「…?」

「大丈夫、運ぶだけだから!オリマー達は待ってて、すぐに戻るから」

「…★」


こくり、と首を縦に振って、オリマーはピクミン達にも水をあげ始めた。
よし、さて今はコップをまだ使うだろうから、お皿だけでいいでしょう。


「ちょっと待っててね、よいしょっ」

「……俺が持つ」

「え?」


青髪の人が何か呟いたかと思うと、彼はあたしからヒョイッととった。
カチャカチャと音を立てながらお皿を運ぶ彼を慌てて追いかける。


「お、お客さんだから別にいいのに!」

「世話になったからな。これぐらい、当然だ」

「そんな、オムライス作っただけよー」


厨房の水洗い場に置くと、傍に置かれたスポンジに洗剤を滲みこませた。
ご飯なんかは食べてから時間をかけて置いておくと、固まってこびり付いて洗いにくくなってしまう。だから食べた後には直ぐに洗うのが、一番効率がいい。


「それでも、助けられたから。…この恩はいつか必ず返す」

「大袈裟だってば、あまり深く気にしないで?」

「俺が勝手に思うだけだ、気にしないでくれ。」


そっくりそのまま返されて思わず笑みが零れた。泡塗れになったお皿を今度は水で洗い流す。


「あ、そうだ。まだ自己紹介してなかったわね!あたし舞って名前なの、よろしく。」

「舞、か…遅れてすまない。俺はグレイグ傭兵団団長のアイクだ、よろしくな」

「グレイグ、傭兵団?聞いた事ないけど…ようはリーダーって事よね?」

「ああ、そんなものだ」


きゅ、と最後に蛇口を閉めてお皿を乾燥機にかけてお終い。
濡れた手をタオルで拭きながら、何故か団長と聞いて学ランを羽織ったアイクの団長姿が浮かんだ。

………


「(い、意外に似合ってる…!!)」

「…どうした?急に止まって」

「あ、いや何でも〜…」


まさか貴方の学ラン姿をモーソーしてましたなんて言えないし。
首を傾げるアイクの背中を押して、オリマー達の待つ食堂へ帰る。


「オリマー、ピクミン、片付け終わったわよ」

「!」


ピクミン達を整列させて確認をしていたオリマーが振り返る。
またもや虹色のホイッスルを短く鳴らすと、ピクミン達は散らばって遊びだした。


「…この生き物達は…?」

「ピクミンよ。さっき貴方が倒れてた時、握ったの覚えてる?」

「覚えてる。…すまなかったな」

「★」

「舞も…噛んで、悪かった」

「ああ、いいのよ。気にしないで!」


椅子に座りなおしてまた和やかなムードが流れる。
アイク達と話しながら今日の事を振り返ってみると、色んな人に会ったと痛感した。

最初にスネークさん、その次にソニック、ピットも来てディディーに会って、屋根の上でルカリオに会って…
レッドとサトシにピカの3人、その次にはメタナイトで、中庭でオリマー&ピクミンと出会ってアイクがいる……

わー、何て濃い1日だろ(汗)
結局のところ皆全く関連性のない人たちばかりで…意図が全くと言っていいほど見えないわ。



――ピンポンパンポーン♪


「…?何だ?」

「場内放送かしら?」

【スマブラレギュラーメンバーに報告!今日より、他世界及び裏世界より新参者が新しく加わった!!
既に会った者もいる事だろう、新しい素晴らしき仲間達を快く迎えてほしい!】


新参者?それはアイク達の事だろうか…


【そして…新しき参戦者の諸君!よくぞこの地へ赴いてくれた!
私はこの世界の統治者マスターハンド、このような挨拶で申し訳ないが、心から君たちの来訪を喜んでいるよ!!】

「マスターハンド…クレイジーハンドの相方か」

「まあ、そんなところね」

【近々参戦者リストを掲示するからね!
それじゃあ改めて、これから共に戦う戦士たち!己の腕を試すも腕を上げるにも利用するも好きにしてくれて構わない!この世界でまたよろしくな!!】


最後の挨拶が終えると、ブツッと音を立てて放送が切れた。食堂の中にオリマーの水を飲む音だけが響いた。


「新参者…そっか、ミッキーが言ってたものね。新しい挑戦者が加わるって」

「☆?」

「俺達はこれから、此処で戦に挑めばいいのか」

「そうみたいね。…まあ改めてだけどよろしくね、アイク、オリマー」


笑顔を見せれば、2人も同じように笑って頷いてくれた。
住居者が増えた、ある昼下がりの午後の事





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