02.私の幸せ権利券
頭がぐらぐらズキズキ…
妙なオーケストラがあたしの頭の中で行われている最中
邪魔をするように話し声が聞こえてきた。
まだ続けようとする演奏を無理やり止めてあたしはゆっくりと目を開けた。
私の幸せ権利券
あ〜〜頭がボーっとする。どうやらあたしはあの後ベッドにて休んでいたようだ。
視界がはっきりしていないため2、3回瞬きをしてみた。
見えたのは真っ白な天井。……真っ白?
あたしの家に真っ白の天井なんてない。あるのはよどんだ白い天井だけだ。
まだ覚醒しきってない頭に活を入れようとした時、突然隣から声が聞こえた。
「目が覚めましたか?」
「あ〜おかげさまでね。渉、あんたの(ズボンの)所為で姉ちゃん死ぬかと思ったのよ」
「渉?それはどなたですか?」
「どなたってあんたの……ん?」
ちょっと待て。何故渉は自分を知らない?
でもよく考えてみれば渉は敬語なんて使わない筈だ。ましてやこのあたしに対してなんだから。
じゃあ一体自分は誰と話してる?
不審を抱き、今まで寝そべっていた体を勢い良く起き上がらせ声の聞こえた方に顔を向けた。
なんとそこにいたのは、人気任天堂キャラの白衣を着た驚き顔のマリオらしき人物が…
え?コスプレ?(びっくり)
「ど、どうしましたか?」
「……すみません、此処ってコミケですか?」
「はい?」
相手は分かっていないように聞き返してくる。
そりゃそうだろ、コミケなんてまともな一般人なら知らないだろうからな。
…いやいや待て、この人がコスプレをしている時点で『まともな一般人』ではない!!
「コスプレ!!」
「アハハ、先ほどからよく分からないことを言っていますが…とにかく大丈夫のようですね」
良かった、と言いながらカルテのようなものをテーブルに置いてコスプレ(仮)はこっちに近づいてきた。
何をする気かと思いちょこっとだけ警戒する。
でもコスプレ(仮)はただ「失礼します」と言ってあたしの額に手を置いてきただけだった。
「ん〜…熱もないみたいですし、もう大丈夫でしょう」
「(もしかしてさっきの発言で頭のこと気にしてるのかな(汗))」
「失礼ですがお嬢さん、お名前を聞かせていただいてもよろしいですか?」
「え?ああ舞です…」
「そうですか、舞さんと言うんですね?申し遅れましたが、私はドクターマリオと言います。」
はぁ、ドクターマリオ……ドクターマリオ!!?
「何いいぃぃぃぃいいいいぃぃ!!!!???」と叫びそうになる口を両手で押さえた。
そんなあたしを不思議に思ったドクターマリオ。略してドクター。
どうでもいいけど、あんた仕草が可愛いですね(ホントどうでもいい)
「すみませんが、マスターとクレイジーを呼んできますのでここで待っていてくれますか?」
「は、はい…」
ドクターはにっこり笑うと気遣うためか静かに扉を閉めて部屋を出て行ってしまった。
暫く自分硬直状態。…そして復帰。
ちょっ…ちょっと待てよ?ドクターマリオって確か、我が弟、渉がやってた『スマッシュブラザーズDX』で出てきたキャラじゃなかった!?(少なくともあたしが知っているのではそれだけ)
…。ま、まさか、そんな事あるはずないわ。そうよ、これはきっとリアル感溢れた唯の夢!きっと勉強のし過ぎで頭が疲れてるんだわ!
自分の思い過ごしだということで簡単に考えを切り捨てた。
と、そこでコンコンッと扉を誰かがノック。
一応返事を返すと、さっき出て行ったドクターが戻ってきた。正直知らない誰かが入ってきたらと困っていたから安心安心。
…が、ドクターの後ろについてきたモノを見てあたし吃驚。
「Σはぎゃあああぁあぁぁあぁあぁぁ!!手ええぇえええええええ!!?」
「Σええ!?ど、どうしましたか!?」
「…」
「や〜いい反応だねぇ☆」
あたしの叫びに多種多様の反応をする3人。いや、1人と2本の手。
ドクターと共に入ってきたのは、マリオの手袋をでかくしたような手(×2)だった。
「こ、ここここ、こここここここ」
「舞さん!舞さん落ち着いてください!!(汗)」
「言っとくが此処はお化け屋敷ではないぞ〜?」
読まれた!?
何か一方のさっき言葉の語尾に『☆』をつけた手が言ってきたことにあたしは仰天した。
というか今日あたし驚くの多いわね…
「おい娘」
「Σ!?あたしなんか食べても美味しくないですよ!その前に貴方様の口は何処へ!?」
「………(怒)」
「(オーラで殺される!!(汗)」
「まあまあクレイジー、そう怒るな。私が代わりに話そう!」
「お願いしますねマスター」
ドクターに頼まれ、でかい手の一本(明るくて五月蝿い方)が近寄ってきた。
…いくら明るくても怖いよ。
「やあ!キミは確か舞君だったっけ?」
「いえ、決して私はそのような男ではありません」
「いや、『君』は気にしないで(汗)キミは確か地球っていう星で生まれたんだよね?」
「はあそうですけど……、…ん?え、此処って地球じゃないんですか!?」
まさか、と思いながらもあたしはでかい手に話しかけた。
深刻な空気の中、帰ってきた答えはこうだ。
「うん♪」
殴らせてください。
うん♪じゃないでしょ!!ってか手がそんなこと言ってもちっとも可愛くないわぁぁ!(そこじゃない)
「(と、とりあえず落ち着いて)地球じゃないってどういうこと!?」
「実を言うと私達がそこから連れ込んでしまったんだよね〜!」
「つ、連れ込んだ?」
「『達』じゃない。我はちゃんと止めたぞ」
我関せずというようにもう一方(静かで怖い方)の手が付け加えるように呟いた。
って言うか今の言い方だとこの手があたしを此処に連れてきたってことになるんだけども。
「連れ込んだってどういうこと?」
「いや〜いつも通りに仕事をしていたんだがな?もうぶっちゃけ飽きたんだよ!」
「ぶっちゃけるな。それより飽きたのとあたしが何の関係があるの?」
「…(ハァ)」
「よくぞ聞いてくれた!それで何か楽しいことはないかと探していたわけなんだが、丁度いいところに舞君!キミが階段から(ズボンの所為で)こけそうになるのを発見したんだ!!」
「うん?」
「そこで危ない!と思った私が勢いでこっちに呼んだんだよ!」
「それいい言い方で言ってるけど、裏を読んだら『ナイスタイミングと思って暇つぶしにこっちに呼んだ』ってこと?」
「ナイス☆その通りだ!!」
「ナイス☆じゃない!!どうしてくれんのよあたしの自由!!」
読み的中!!なんとこのでかい手の片方があたしをこの世界に連れてきたらしい!
しかも理由が暇つぶし。
あたしの自由は『暇つぶし』なんかに負けるのか!!!
「ちょっとどうするのよ!!あたしまだあっちでやり残したこと一杯あんのよ!?
人の権利を踏みにじるようなことを勝手にするなーーーーー!!!」
「わ、わ、わ、わ!悪かった!だから人の首を揺さぶるなぁぁぁぁ!!」
―これ首なの?―
―ホラ、手首―
ダジャレかよ!!
「ま、舞さん落ち着いてください!マスターもちゃんと考えているんです!!(汗)」
「はぁ!?考え!?」
ドクターに止められ半ギレ気味にあっさり手を離す。ちょっと疲れたってのもあるけど…
因みにマスターとかいう手、ぐったりしてます。手の癖に。
「この様子じゃあマスター説明できませんね…」
「仕方ない、我が話そう。こいつもこんな能天気者ではあるが、多分ちゃんときっと若干は反省していると思うんだ。」
「えらい仮定多いですね」
「だからな、一応一週間後には帰れるようになっている」
「え?じゃあこっちに一週間いれば元の世界に帰れるってこと?」
何だ、意外に結構簡単なのね。
「いえ、それが舞さん…」
「そう簡単に事が終わるわけではないんだよ!!」
「うぉっ!?」
突然さっきまで気絶していた手が還ってもほしくないというのに復活してきた!
それだけでも困るというのに(酷いな)でかい手はとんでもないことを言ってのけてくれた。
「実はこっちに連れてくる前、なんらかの出来事で舞君の体に特殊な魔法がかけられてね。
キミが眠っている間ドクターに調べてもらったところ、どうやらこの魔法はこの世界への呪縛のようなんだ」
「呪縛…?」
「この世界から出てしまうと死の呪いにより死んでしまうということですよ」
「え``!!」
「でもそれではいくらなんでもキミが大変なことになると思ってね。
全力を尽くして一応還れることは還れるようにしたんだけど…」
「どうやら強力な魔力のようでな。
我達の力でも『1週間に1日』しか返せないこととなった。
還ることを決められた日は日曜。その日しかお主は地球に還れん」
…あ〜、つまりはこうだろうか。
あたしの体にかけられた死の呪縛、つまりFFでお馴染みの死の宣告(違う)がかけられたことによりこの世界から抜け出すのは不可能。
この手達が頑張った結果、一週間に1日だけあちらの世界に還れるらしい。しかもそれは日曜日…
「あ、頭がついていけん」
「すみません舞さん、私も全力は尽くしたんですが…」
「ああ、いいの。貴方達が一生懸命頑張ったお陰で一生還れないわけじゃないんだもの。」
そう、あたし自身は別に大丈夫だ。だけど…只1つ心配なのが、弟の渉のこと。
あたしの家は小さい頃に親を亡くしたから祖父母の家に預かってもらっていた。
でも2人もすぐに他界して、結局あたしたちは2人で住むことになってしまった。
あの子も強がりなように見えて実は極度の臆病者だ。
だから一人になっても大丈夫なのかということを心配している。
…うん、大丈夫じゃなさそうね。
「舞さん、大丈夫ですか?」
「強がる必要なんてないんだよ舞君」
「もし泣きたければ泣け」
俯いたあたしを我慢しているものと勘違いしたのか、3人(1人と2本)が多種多様な言葉をかけてきた。
別に泣くつもりはないけど、折角の気遣いだから笑っておいた。
…あ、余計深刻な顔になった。逆効果かっ!(不覚)
…ドタドタドタドタ!!!
バターン!!
「「ドクターーーー!!」」
「Σギャアアアァァァアァアァアア!!?」
地響きのすぐ後にこの部屋の扉が勢いよく開かれる。その勢いは扉をぶっ飛ばしそうなほど。止めてほしい…。それに驚きついつい色気のない叫び声をあげてしまった。
「おやおや、電撃兄弟ではないですか。どうしましたか?」
「おんなのコ!」
「女の子覚めタ?目、覚めタ!?」
「貴方達の目の前で驚いて固まっていますよ」
「「ピ?」」
丸っこくて黄色い物体は二匹揃ってあたしの方に顔を向けてきた。
…ぐはっ(吐血)そ、その瞳は悩殺もん…!そんなあたしにお構いなく近寄ってきた珍獣二匹。
「おはヨ〜!」
「はじめましテ〜〜!!」
「ぐっ…は、初めまして(平常心平常心)」
「ボクピカチュウ!」
「ぼくピチュー!」
「「お姉チャンのお名前ハ?」」
「舞です(キパッ)」
「「舞??」」
や、ヤバイ!あたし明日の朝日が拝めないかもしれないわ…!!
目の前には大きな目をくりっとさせたポケモンファンのアイドル『ピカチュウ』&『ピチュー』がいる。
しかもその二匹があたしの名前を嬉しそうに連呼連呼連呼…
これを萌えと言わずして何と言う!?
「(あ〜萌え死にしそ…)」
「大丈夫かい?(いろんな意味で)
そうだ舞君、折角だからこの館内を見回ってきたらどうだ?
一週間の間は此処に世話になるといいからね!」
「そうですね。そこのピカチュウとピチューにでも案内してもらってはどうでしょう?
ちょっと心配な点はありますが、案内ぐらいなら大丈夫でしょう」
「あんないするノ〜?」
「案内したいヨ〜〜!!」
「舞行コ!」
「何処までも着いて行かせてください」
あたしの邪な考えに気づかずピカ兄弟は嬉しそうにあたしの周りを跳び回っている。
あ``〜目の前にいる獲物を獲って食ってもいいでしょうか(危険)
「行コ!ボクたちのお家案内するヨ!」
「いくノ〜〜♪」
ぐいぐいと前からピカチュウ、後ろからピチューに押され無理やり立たされた。
反論する暇もなくあたしは入り口まで連れて行かれた。
「あ、ちょっと待って!」
「ぅ?」
「どしたノ〜?」
思い出しあたしはドクター達の方に振り返った。
「え〜と、ドクターはいいとしてそこの2本の手、名前なんだっけ?」
「ん?私はマスターハンドだよ!」
「クレイジーハンドだ」
「私たちはマスターとクレイジーと呼んでいますよ」
「そうね〜、じゃあミッキーマウスの手みたいだから、喧しい方がミッキーで暗い方がマウスで決定」
「「(…何で!?)」」
あからさまに嫌そうな顔する2本の手(顔ないけど)
見分けがつかないから分かりにくいけど、まあ話し方を聞いたら分かるでしょう。
ドクターとかも呆然としているけどまあ気にしない。
早く早く〜!と急かしているピカチュウ達に連れて行かれ、あたしは部屋から出て行った。
悪いわねミッキー&マウス。拒否権はないわ(酷)
【一方舞が去った後の部屋にて】
「ハハハ…ミッキーとマウス…」
「マスター達も凄い呼び名をつけられましたね」
未だに少しだけ固まっているマスターハンドとクレイジーハンドにドクターマリオが苦笑した。
「全く…あいつという奴は…」
「でもあの調子ならやっていけそうですね」
「そうだな!大丈夫だろう」
「これに懲りてもう二度と暇つぶし、とか言ってこんなことするんじゃないぞ(睨み)」
「(滝汗)」
(やはりマスターもクレイジーには勝てませんか…)
ドクターマリオは2本の手の争いを冷や汗を流しながら見ていた。
暫くして2本共部屋を出て行き、部屋にはドクターマリオしか残らなかった。
「ふぅ…さて、私も仕事の続きをしましょうか!」
腕の関節をポキポキと鳴らせながらドクターマリオはテーブルの上にある1つのカルテへと向き直った。貼られている紙の一番上には『舞』と書かれていた。
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