22.お父さんといっしょ!?





++in管理室++



ネス「うわぁぁぁぁんっ!!」

子リン「帰りたくないよ〜〜〜っ!」


何時もなら機械の音しかしない静かな管理室の中に、大きな鳴き声が響き渡る。
その原因となる人物―子どもリンクとネスは、舞のコートの裾を掴んだまま離さない。


「2人とも、ちょっとの間なんだから〜(って言うか戻る度に泣かれるとあたしも困る)」

子リン「でもっ、でももし僕たちがいない間に何かあったら!」

ネス「悪の宇宙戦艦がやってきて舞を攫ってかいぼーしちゃったら!!

「そら2人ともテレビの見過ぎだわ。」


やだやだ、と駄々を捏ねる2人組みに思わずも溜め息が出てしまう。マスター達もどうやら魔方陣の準備が整ったらしく、クレイジーと共に待っている。
見兼ねた一緒に帰る事になったドクターがやんわりと2人を舞から離した。


ドクター「ネス、子リン、舞さんが困っていますよ」

子リン「ドクター〜…帰らなきゃ駄目?」

ドクター「そうですね…。別に帰らなくてもいいですよ?もしおっきい注射を受けるなら、ですけどね」

ネス「えぇぇ!?ちゅ、注射ヤダ!!」

ドクター「じゃあ大人しく帰りましょう。痛い注射を受けるのは嫌でしょう?」

ネス「ううぅ……うん、分かったァ」


注射を打つのが嫌で、ネスと子リンは渋々舞から離れた。その様子に苦笑すると、舞は「ありがとう」とドクターへお礼を言った。


ドクター「構いませんよ、私こそ早くに帰らないといけませんし…、舞さん、私が不在な間、医務室の管理をお願いします」

「ええ、分かったわ!気をつけてね」

ドクター「はい!…それではマスター、クレイジー、宜しくお願いします」

マスター「オッケー!じゃあ魔方陣に乗っちゃってっ」


マスターの言葉に頷き、ドクターは片手ずつネスと子リンの手を繋いで魔方陣の上に乗った。3人が乗ると、マリオ達の時と同じように魔方陣から光が発せられる。


ドクター「それでは、行ってきます。
…あ、マスター、例の書類は後日お送りしますので」

マスター「!あ、そうだったね。よろしく頼むよドクター!」

子リン「舞お姉ちゃん!帰ったらまた一杯遊ぼうねっ」

ネス「バイバ〜イ!」

「はい、行ってらっしゃーい」


ひらひらと手を振り返すと、間もなくドクター、ネス、子リンの姿がそこから消える。
今回も難なくメンバーが帰る事が出来、後ろのマスターも安心したように微笑んだ。舞も誰もいなくなった魔方陣を見届け、マスター達の方へ戻っていき大乱闘大会『スマッシュブラザーズDX』の企画打ち合わせを再開した。



++○月×日++

本日の帰還者…
・ドクター
・ネス
・子どもリンク






お父さんといっしょ!?






こんにちは、女子中学生です。ミッキーが激突に発表したある大企画…皆が言われた通り、各々のタイミングで里帰りを済まそうとしていた。
筆頭にリンクを置き、それに続いてピカチュウ、ルイージ、ヨッシー、マリオ、ピーチ…そして何と、ドンキーとディディーも帰るらしい。今日だって、ドクター、ネス、リンクjr.も帰ってしまった。

皆が少しずつ少なくなっていって、何だか寂しい感じもするけど…ほんの数日だから大丈夫よね?うん、大丈夫だ。そう自分に言い聞かせながら、元気を出して今日も1日頑張ろう!
…と、意気込んだのはいいんだけど……


―――バンッ!!

ロイ「そんなの嫌だ!オレはっ、この世界にずっといたいぐらいなんだ!!」


目を大きく開き、冷や汗を1つ流しながら―赤い髪の青年、ロイはテーブルを挟んだ向かい側に座る人物に身を乗り出す。
どうしてこんな事になったんだろう……


事の始まりは数十分前―――





***

++in東通路玄関付近++





ミドナ「――でよぉ、あいつ寝癖の悪さでコーヒー溢してやがんの!あん時のリンクの顔の可笑しい事可笑しい事っ」

「へぇ、そう言う所もあるのね」


思い出し笑いをしながら彼女―ミドナは、あたしの頭をぺちぺちと叩きながら涙を目に浮かばせた。
相槌を打ちながら隣に置いたバスケットの中から一枚クッキーを取ってミドナに上げる。案外甘いものが好きな彼女は美味しそうに口に詰めこんで食べた。


「トワさんが寝相悪いって意外ねェ…、ミドナいつも見てるの?」

ミドナ「まあな、あいつの影に普段いるんだから嫌でもなるんだよ」

「嫌なわけないわ!トワさんの子羊で襲いたくなるほどの無防備な寝顔を拝めるなんて幸せ者よミドナ…っ!!

ミドナ「…おい、お前何で握りこぶし作って熱く語ってんだ?


腐女子の妄想力の豊かさの象徴です。
無意識に固く結んでいた手を解いている内に、隣に降りてきたミドナはまた1つクッキーを食べた。
…ミドナと会って5日目だけど、最近彼女はいつも(一度あたしが元の世界に戻った日意外)あたしの所に来てくれる。ナビィがいない分、傍にいてくれると嬉しいんだけど。


「ねえミドナ、トワさんの所にいなくていいの?一応パートナーなんでしょ?」


疑問に思っていたことを聞くと、ポリ…と口に半分入ったクッキーを食べるのを止めた。


ミドナ「ん〜…別に用はねえし、舞と一緒の方が色々と楽しいし」

「その色々とって辺りが物凄く気になるんだけど」

ミドナ「ボンヤリしとけ〜」


キシシッ、とまた悪戯悪魔の笑みを浮かべて残りのクッキーを口に含む。その様子だと何を言っても教えてくれそうもなく、あたしも肩を落としてクッキーを一枚とった。


ミドナ「それとも、何か?ワタシといるのが嫌なのか?」

「え?いや、それはないけど…、第一それだったらもっと早くに突き放すわ」

ミドナ「そうかよ。」


ミドナの声を聞き届けながら歯に力を入れると、パキッと音を立ててクッキーが2つに割れた。


ミドナ「…じゃあ、お前はワタシといて…嫌では、ないんだな?」


少し、いつもよりも気弱な声色でミドナはポツリと呟いた。目線が地面に向かい、足をパタパタさせているところを見ると、どうやら少し自信がない面があるらしい。
これは勝手なあたしの予想だけど


「勿論よ!1人になるのは寂しいもの、ミドナがいてくれてあたしは嬉しいわ」

ミドナ「…そう、か…
ふんっ、ま、まあこのミドナ様といれるだけ幸せ者だからな!
寂しいってんならワタシが直々に遊んでやるよっ、ありがたく思え」


腕を組んでふわりと体を浮かせたミドナは、定位置となったあたしの頭の上に乗った。
一瞬だけ、浮かび上がる前に見えた頬が赤く見えたけど…照れてるのね、照れてるのね!やー、やっぱミドナはツンデレだと言う事が判明したわね!!
本人に言ったら絶対殴られるから言わないけど


「あー、クッキーなくなってきたわね。また焼かないと」

ミドナ「お〜、今度はアレがいいな。四角くて色が2つあるやつ」

「ああ、あれか。でもあれは冷蔵庫で冷やさないといけないから時間が掛かっちゃうからまた今度に―――」


「すみません、お邪魔になりますが話を中断して頂いても構いませんか?」


ミドナと話していると、あたしの前からザッ、と草を踏みしめる音が聞こえた。
音の聞こえた方には、青い靴が見える。それを辿るように、声の持ち主の顔へと徐々に持ち上げていった。

白いタイツに青い服、青いマント。更に青の鎧を身に纏った…赤髪の気品溢れる男性がそこに立っていた。顔にはこれまた気品溢れる笑顔を浮かべながら


「は、はい!あたし達でしょうか!?」

「楽しんでいる対談を断って申し訳ない、ご婦人方に1つお伺いしたい事がありまして…」

「はァ、何でしょうか?お答えできる事なら答えますよ」

「有難う御座います。実は人を探していまして、このお屋敷に在宅していると聞いたんですが」


困ったように笑いながら男性は頭を掻いた。一つ一つの動作がどれも気品さに長けていて、ついこっちまで手を重ね合わせて背筋が伸びた。
全てが気品に溢れるオーラを纏っている。

…んだが……


「…あの、すんません…探し人とは犯罪者か何かでしょうか?」

「いえ、滅相も。何故そう思うんですか?」

「いや、その腰にささったトゲつきトンファー何に使うつもりなんだろうと

「これはいざという時に現れた愚か者を罰する時のものでして(爽笑)」


わー、その胡散臭い笑顔が眩しい(棒読み)
左腰には立派な剣と鞘、逆隣の右腰にはおぞましいオーラを放つ硬くなった血のこびり付いたトンファーが装着されてる。
あからさまに腹黒神器だあれ!!(汗)


(逆らわない方が身のためだ…!)
あの…そんな畏まった喋り方しないでいいですよ。もっとフレンドリーにいきましょう、ね!?」

「?あ、そうか…ごめんよ、つい身柄上、癖になってしまったようだ。」

「いえ、別に構いませんけど」

「君も普通に喋ってくれて構わないよ、僕に合わせる必要はないさ」


柔らかく笑い、男の人は覗き込むように膝に手をついた。幾ら(多分)腹黒と言えど形は美形。
そんな事されちゃいつ襲い掛かっても可笑しくない、そしていつ反撃されても可笑しくないから止めてください…!!


ミドナ「(なーんかこの男甘ったるいな〜)」

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて…。あ、探し人を探すの手伝いますよ、この屋敷にいる人物なら多分案内出来ますから!」

「そうかい?助かるよ、ありがとう!
あ、そうだ…名乗るのが遅れていたよ」


男性は立とうとするあたしに手を差し伸べて立たせてくれ、尚且つ持って行こうとしたバスケットを持ってくれた。この人は何てよく出来た人なんだろう!


「リキア同盟国有力貴族の出、エリウッド=フェレと申します」

「舞です、こっちはミドナ!
へぇ、エリウッドさん…素敵な名前で―――……ん?

『フェレ』…?」


名前を褒めていたあたしの動きがピタリと止まる。エリウッドさんのファミリーネームが『フェレ』と言う事に気付いた瞬間だった。
まてよ…確かこのスマブラ屋敷にも『フェレ』ってついた人が…そう、あたしもそれを笑いのネタに使った筈。


「―――あ!?ふぇ、フェレ…ってもしかしてっ!?」


パッとある人物の顔が頭に浮かび上がり思い出した。驚愕に開く目をエリウッドさんに向けると、彼はあたしの反応を楽しむかのように柔らかく微笑んでいた。







***



++in食堂++





「ふぇ…へーっきしんっ!!


どでかいくしゃみが食堂の中に響き渡る。
その向かい側に座っていたサムスは眉間に皺を寄せた。


サムス「何で加●茶みたいなくしゃみしてるのよ」

「んー…何だろな、風邪かな?」

サムス「さあねー。誰かがあんたの噂してるんじゃないの?ロイ」


ふふっ、と笑いながらサムスはくしゃみをした青年をロイと呼んだ。くしゃみをした張本人―ロイは、ずず…と鼻を擦って椅子に座りなおした。
どうやら、2人とも昼食を食べようとした時に同じタイミングで食堂に着いたらしい。2人の傍には空になったお皿が2枚置かれている。


ロイ「サムスー、何やってんだ?」

サムス「ん?ゼロスーツの調子を見てるんだよ、もしこれで行動しなきゃいけなくなったら困っちまうだろう?」

ロイ「ふーん。だから今日はパワードスーツ着てないんだな!」

サムス「まあね」


パキンッ、と音を立てて銃の先からビームの鞭のようなものが現れる。
それを操る彼女は、いつもの赤くてゴツいスーツではなく、青色のストリットタイプのスーツで身を纏っていた。
そのお陰で、いつもはパワードスーツのヘルメットで隠される美顔も曝け出されている。


ロイ「んー、リンクも帰るし、マルスは見当たらないし…暇だな〜!」

サムス「そんなに暇だったら、一度故郷に帰ればいいでしょ?いい機会じゃない、今の内に里帰りすれば」

ロイ「オレ里帰りするつもりないもん。企画がある一ヵ月後までスマブラ屋敷にいるつもり!」

サムス「はァ?でも…溜まった用事が向こうにあんじゃないの?」


ストローのささったオレンジジュースを飲む。コップの中に入った氷が、カランッと音を立てて割れた。


ロイ「オレの力が必要なほど向こうは大変じゃないみたいだし、オレ此処が好きなんだ!向こうも好きだけど、だからいいかと思って」

サムス「親御さんに顔を見せてあげたらいいのに…まあ、あんたがそれでいいなら別にいいけどさ」

ロイ「うー、それにしても暇だな〜…百人組み手でもしてこよっかなァ」


ギシィ、と音を立てて椅子の背もたれに圧し掛かる。本当に暇そうなロイに溜め息を吐いて、サムスはまたパラライザーの調子を確認しだした。
話す事もしなくなった為に、食堂には長閑な静寂が広がった。


――コッ


「あら?サムス、それにロイも」

ロイ「ん?…!あっ、舞!!」


今までボーっとしていたロイだが、入り口から現れた影に気付いた途端、尻尾でもあれば振り回しそうな勢いで飛び上がった。
ロイの向こう側に見えるサムスも、舞の影に気付くとひらひらと手を振った。


ロイ「何やってんだ?」

「ん?ちょっと道案内をね、食堂なら人がたくさんいるかと思って」

ロイ「そっか、今日はオレとサムスだけしか…って、Σうぉぉぉ!!?に、人間じゃねえのがいるーーー!?」

ミドナ「それはワタシの事か?まあ、お前のような下等人間と一緒にされちゃ溜まったもんじゃねえしな」


舞の頭の上で頬杖をついているミドナを見て、素っ頓狂な声を上げた。
高飛車な態度に怒りも忘れてポカンとなるが、我に返ると頭を左右に振った。


ロイ「あ〜…っと、そうだ!道案内って誰の道案内してたのさ」

「え?ああ、うん実は…」


―――カツッ

教えようとする舞の声を遮るように、食堂にもう1つの足音が入ってきた。その音に気がつくと、ロイは舞が影になって見えない入り口へ身を乗り出した。


ロイ「(誰だ?)」


身を乗り出すだけでは見えない為、ヒョイッと横に飛んで食堂の入り口を完全に見る事が出来た。
窓から入る風が、備え付けられたカーテンと…入ってきた人物のマントを翻した。舞に続いて入ってきた人物はロイに気がつき、柔らかく微笑んだ。


ロイ「―――っ!?」


「久しぶりだな、ロイ」


ロイは大きく目を開き、頬に集まる熱をピンク色にして現す。自分の名前を呼び、久しぶりと呼んだ人物を再確認すると、舞の時と同じぐらいにパァッと表情を明るくさせた。


ロイ「と…―――父さーーーん!!」

Σ父さんっ!!?え、お兄さんじゃなくてお父さんだったの!?」


フェレ、と聞いてロイの親族だとは分かったが、あまりのエリウッドの若さに兄弟だとばかり思ってた舞。
歓喜の声を上げて、跳躍をしてロイは父さんと呼んだエリウッドに駆け寄った。帰らないとは言っても、やはり久しぶりに会えると家族が恋しくなるものだろう。
煌く笑顔でロイは最後の距離を飛びかかる事でなくした。

感動の再会!


ロイ「父さ〜ん!」

エリウッド「ロイー
――――男とハグってもキモイから

ドスッ!!
ロイ「ぐぼはぁあぁぁっ!!」

エリウッド「Σ親父が息子を裏切ったーーーーーーー!!!」


寸前まで飛びかかろうとしてきたロイを、何とエリウッドは瞬時に抜刀したトゲつきトンファー強打。
ビタン!と地面に落っこちて苦しそうにお腹を押さえている。親が子どもにする事じゃない


エリウッド「ロイ…!久しぶりだな、また一段と逞しくなって、父さんは嬉しいよ」

「いやいやいや。今更嬉しそうにしても遅いし今ので感動もへったくれもないから」

エリウッド「元気そうで何よりだ!(爽笑)

「無視ですかエリウッドさん」

ロイ「いちち…父さんこそ元気そうで良かった!」

「Σあんたさっきの攻撃受けて何その健気さ!?


笑顔を咲き誇らせるロイは、屈託のない笑顔でエリウッドと普通に接する。これには流石に舞も取り乱し、慌ててロイの服を掴んだ。


「ちょ、ちょっとロイっ。あんた今お父さんに何されたか分かってるの!?
少しぐらい怒って反抗しなさいよ!」


幾ら親とは言え、お前さっきのはツッコミなしか!?いつもマルスから黒攻撃を受ければツッコミいれる癖に!
舞の訴えに振り返ると、何故か彼はきょとんとして首を傾げた。


ロイ「何されたか、って…只のスキンシップだろ?」

Σ『只の』!?何処の親類が感動の再会にトンファーブロー噛ますのよ!」

ロイ「え、舞ん家違うのか!?寝る時はキングコブラを抱き枕にして寝ないといけないとか、15歳を迎えるまではパジャマはいつもゴスロリドレスとか常識なんだろ?」

「貴方お父さんに嫌われてるんじゃない?」

ロイ「っつーか父さん若くねえか!?もっと歳とってただろ!?」

「今頃親父年齢詐称に気付くか嫡男ーーーー!!」(バコーン!)

ロイ「あいだぁぁっ!!」

Σああしまった!さっき殴られたばっかなのについいつもの癖で!」

ミドナ「楽しそうだなお前ら」

サムス「舞は疲れてるだろうケドねぇ」


本当ですよ(舞の心の声)
サムスの言葉通り、慌てふためくロイとは対照的に舞はぐったりと肩を落としていた。ナビィがいない分、余計にツッコミが少なくて悲しい。
大変だ、こいついつも腹黒には敏感なのに、どうしてか親父専用の鈍感が発動してしまう為に気付かないらしい。


エリウッド「駄目じゃないかロイ、レディに無理強いさせるのは貴族以前に男としてアウトだろう」

ロイ「えっ、オレ舞滅茶苦茶大事にしてるよ!?」

エリウッド「今のを見てはそうとも言えないがな…大丈夫かい舞?」

「あーどうも。いやァ、今となっちゃ優しさが胸に沁みますねっ」

エリウッド「それは良かった」


にっこりと相も変わらず気品のある微笑を向ける。舞も満更嫌ではないようで口元の端が持ち上がっていた。
その様子を見ていたロイは少しカチンと来たようで…例え相手が親であろうと気に入らないようだ。


ロイ「父さん!わざわざ世界跨いで来たけど、何か用があってきたんじゃないの!?」


割り込むように押しかけるロイ。エリウッドもその言葉で思い出したようで、「ああ」と声を漏らした。


エリウッド「実はお前に話があって来たんだが…少し長くなるかもしれないんだ」

「じゃあ、折角ですから椅子に座ったらどうです?お茶淹れますから」

エリウッド「構わないのかい?そうさせてくれると助かるよ」

「それじゃあどうぞ!ロイ、お父さんと座ってて。ミドナはどうする?」

ミドナ「ん?ワタシはちょいと席を外すぞ、リンクと少し話があるの思い出した」

「分かったわ、それじゃあ――」


ミドナと話しながら、舞は厨房へと姿を消していった。それを見届けると、ロイはエリウッドと一言二言交わしてさっき自分が座っていたテーブルに向かう。
サムスも今になって2人が座るのに気がつき、自分は席を立って厨房へ入っていった舞を追いかけた。


エリウッド「中々いい所なんだな、このスマブラ屋敷は…」


ガタッ、と椅子を引きながら、エリウッドは目を細めて窓の方を見つめた。穏やかな笑顔を浮かべながら、鳥の囀りが聞こえてくる中庭を


ロイ「だろ!?オレ凄く気に入ってんだっ、自分の故郷ぐらい、この世界が大好きだよ」


いつか、自分の力が認められてマスターにこの世界へ招待された時の事を思い出す。
あの時は、自分の世界を離れる事や、全く知らない人達と住むのが嫌で仕方がなかった。今ではその頃が嘘のように、馴染んでしまっている。

大好きな世界を父親に認められ、だらしなく口元が緩んでしまう。


ロイ「父さんの方は?治安が混乱したりしてないか?」

エリウッド「そうだな、良し悪しつけ難いと言った所かな。良いと言えば良いし、悪いと言えば悪い」

ロイ「?」


中途半端なエリウッドの返答に首を傾げる。少しだけ眉間が下がった微笑を浮かべている父親に疑問を浮かべている時に、厨房からトレーを持った舞と後ろに続くようにサムスが出てきた。
小さなポットと4つのカップをテーブルに置く。


エリウッド「すまないな、何か手伝えばよかったのに」

「いいえ、別にいいんですよ。お客さんにさせられませんから」

エリウッド「ありがとう、ご婦人方にさせて申し訳ないな」


カップを4つ配り終えると、エリウッドとロイはさも当たり前のように席を立って椅子を引いた。
この行動で2人が貴族の出だと言うのが沸々と伝わり、舞とサムスは引かれた椅子に座った。


サムス「あたしまで良かったのかしらね」

エリウッド「勿論だ、レディに親切にしないといけないからね」

ロイ「―で、父さん。連絡機を使わずにわざわざ出向いてくるなんて、よほどの事があったんじゃないのか?」


ロイからの質問に、エリウッドは笑っていた顔を引き締めた。それを見てロイも只事ではないと読み取ったのか、闘いの時と同じように顔を引き締めた。
普段とのギャップがこんなに激しいものなのか…


エリウッド「最近、各大陸で小さな戦争が勃発し始めているんだ。エレブ大陸も例外ではなく、その中でも特に敵国はリキア地方に目をつけている…侵略者が多発しているんだ」

ロイ「戦争が!?み、皆は大丈夫なのか!?」

エリウッド「幸い、今の所はな。だが日が経つに連れ敵軍が増援を呼んで増え続けている、負傷者も出ている為に今の状況ははっきり言ってきつい」

ロイ「父さんの力を持ってしてもなのか?」

エリウッド「ああ、手が足りない。まだ危機は迎えていないが…どうなる事やら」


戦争…確かロイ達の世界では人間同士が戦い合う、剣や魔法を使っての戦いがあるらしい。剣と魔法を除けば少しばかり舞の世界に近いかもしれない、そんな世界だと言っていた。
両手を組んでいるエリウッドの眉間に皺が寄る。


ロイ「その状況を知らせに来たのか?」

エリウッド「ああ、そしてロイ…出来る事ならお前にも力を借りたい。指揮官として先頭に立ってもらいたいんだ」

ロイ「そうだよな、人手が足りないんだ。当然だよな!分かった、直ぐに行くよ!」

エリウッド「助かるよ。」


息子の返答に表情を和らげる。ロイは口を出さずにじっと静かにしていた舞に向き直った。


ロイ「そう言う事みたいだから、ちょっと行って来るな!一ヵ月後の企画には間に合うようにするからさ」

「分かったわ、気をつけてよね!」

サムス「良かったじゃない、久しぶりに仲間達に会えて。命は落とすんじゃないよ」

ロイ「任せとけって!直ぐに帰ってくるから、心配ないと――」

エリウッド「言っておくがロイ、一ヵ月後に帰れるという保障はないぞ?」

ロイ「―――…え?」


ニカッと笑っていたロイの笑顔が、エリウッドの一言に一瞬で驚愕へと染まった。
当の本人は淹れられた紅茶を優雅に飲んでいた。


ロイ「ちょ、父さん…え?一ヵ月後までに帰れないのか!?」

エリウッド「それだけじゃない、何日かかるか分からないからな。数年先になるかもしれないし、戻れなくなるかも…」

ロイ「なっ!!そんなっ、や、やだよオレそんなの!この世界に戻ってこれなくなるのか!?」

エリウッド「1つの可能性としてだ。高いとも低いとも言えないが、どうなるかは分からない。
…だが、きっと直ぐには終わらない事は確かだろうな」


愕然と目を開くロイは、頬に冷や汗を1つ垂らせた。目下が仄かに青くなっている、歯がカチカチと震えている。
口と同じく震える拳を止めるようにテーブルを力強く叩いた。


―――バンッ!!

ロイ「そんなの嫌だ!オレはっ、この世界にずっといたいぐらいなんだ!!」


―こうして冒頭の部分へ帰る。
身を乗り出して反抗するロイをじっとエリウッドは見つめる。傍で見守る舞は混乱しながら2人を交互に見比べ、サムスもエリウッドと同じくじっと静かに事の成り行きを見守った。


エリウッド「なら、それでも構わない。僕は頼みに来ただけ、お前が断ろうとそれはお前の自由だ。
…リキア国は僕が守ればいいだけだ」

ロイ「っ!」


伏せ目気味に呟くエリウッドの言葉は、ロイにとって見えない重力がずんと圧し掛かるような重さを持っていた。

自分勝手な私情で動けば、決まったわけではないが国が滅び行くかもしれない。だがもし故郷へ傾けば…今の幸せがなくなるかもしれない。
故郷は勿論大事だ。自分の父親もいるし、共に力を合わせて平和を勝ち取った掛け替えのない仲間たちがいる。自分を待ってくれる人たちがたくさんいるんだ、捨てられる筈がない。

―でも……この世界に来て、色んな友が出来た。いつも馬鹿にされたりするけど、何時でも笑える自分がいて、本当に心から楽しくて…絶対に一緒にいようと心に決めた。
自分が皆の背中を守れば、それに応える様に皆が自分の背中を守ってくれる。闘い合っても、それも絆へといつも代わっていった。

そして何より―――舞に、出会えたんだ。凄く大切だと思える人


「…?」


ロイが向けた視線に気付き、舞は首を傾げた。彼女から視線を外し、またテーブルの下に作る握りこぶしに向かう。


「!(ロイ…)」


そこで始めて、舞はロイが苦しみに耐えている事に気がついた。それでもロイは、心の中で渦巻く2つの選択に胸がどんどん締め付けられていく。


ロイ「(帰りたくない…でも帰らなくちゃいけない…!)」


エリウッドが自分に向けてくる視線に堪えれず、思わずロイは強く目を瞑った。
出来る事なら…ここから今すぐ、逃げてしまいたい…―――


「あ、あの!マスターに頼んでみてはどうでしょう!?」

ロイ「!」


ガタッ、と椅子から立ち上がり、舞がロイに変わってエリウッドに意見した。彼女の声に反応して、エリウッドは視線をそのまま舞へ移す。


「その、増援とか…彼なら手伝ってくれるかもしれないし。もしリミットがつくならそれに相応する事もしたらいいですし!出来る事ならあたしも手伝えると思うから、えーと、だから〜…」

サムス「ロイが戻って来れる方法で行いたいんだろ舞?
…あたしも同じ意見ね、マスターなら何とかしてくれるかもしれないわ。話をしてみるだけしてみたらどう?」

エリウッド「だが、これは僕たちの世界の問題だから…」

「そんなの関係ないですよ!やっぱ困った時はお互い手を貸して協力しあいましょう!

(だからっ、お願いだから美形を1人でも減らすのだけは勘弁!!)」


今読者の方だけに舞の本音が聞こえました。
いや、彼女自身本当に仲間を想ってる所はあるんでしょうが…先に腐った思考が働いてしまうんですね。

(違う意味で)熱く語る舞を見て、ロイは眉間が垂れた。いつも迷惑をかけてばかりの自分を、こんなに大切に想ってくれてるとは思わなかったのだ。


ロイ「(…頑張ってくれてる…)」


心残りの大きい気持ちを抱えて、ロイはもう一度テーブルの下で爪が食い込むほど強く拳を握った。
それをゆっくりと解くと、気持ちを落ち着かせるように鼻で大きく息を吸い込む。


ロイ「…父さん……」

エリウッド「…?何だ」

ロイ「オレ…――…オレ、帰るよ!」

エリウッド「!」

ロイ「やっぱ、故郷は大事だし…仲間にも顔見せないといけないしなっ」


少し寂しさが残るものの、ロイの表情が最初のように笑顔に戻ってきだした。
その笑顔に一瞬目を見張るが、エリウッドも息子の決断に微笑むと、カタリと小さな音を立てて椅子から立ち上がった。


エリウッド「ありがとうロイ、我が息子ながらよく言ってくれたな」

ロイ「ああっ、早い所済まして、早い所また戻ってくる!それでいいんだ、それで」

エリウッド「そうだな、早々に事を済まそう」

ロイ「勿論!!」


力強いガッツポーズを見せて、ロイも見習って椅子から立ち上がった。穏やかに戻った2人の間に流れる空気に、舞はサムスと顔を見合わせて小さく息を吐いた。


「(また1人帰る事になったけど…これでいいのよね)」


直ぐにでも旅立とうとする2人を見送ろうと、さっきの彼のように寂しい気持ちを抱えた舞も椅子から立ち上がった。
それに気付くと、封印の剣を簡単に確認して鞘に収めて駆け寄った。


ロイ「舞、サムス、ありがとな!ウジウジしてたのがすっきり出来たっ」

サムス「いいよ、別に!里帰りの理由が出来たんだ、良かったじゃない。戻ってきたらまた乱闘しよう」

ロイ「ああ!――そうだ、舞」

「ん?」


サムスと握手を交わすと、今度はその隣に立つ舞に向き直る。まるでエリウッドからそのまま受け継いだような気品溢れる笑顔を顔に浮かべて。


ロイ「さっきの…嬉しかった、凄く!
…オレ、いっつも馬鹿ばかりやってるから、舞に嫌われても可笑しくないと思ってたんだ。
だからその分、アプローチを多くかけてたのかも…只、離れられるのが怖くてさ」

「離れるわけないわ、ロイだってスマブラメンバーの一員だもの!
待ってるから、一ヵ月後に間に合わなくても帰ってきてね」

ロイ「!あ、ああ!絶対帰ってくる!!」


す…、と今度は舞に向かって手を差し伸べた。読み取った彼女も彼よりも小さな右手を絡ませ、強く握り締める。
長く感じた握手をゆっくりと解くと、タイミングを計ったようにエリウッドが近づいてきた。


エリウッド「舞、サムスさんも感謝するよ。必ず息子はこっちの世界に帰れるようにするからな」

「帰るって言っても、元はそっちが故郷だからね。遊びに来れる様にしなくちゃっ、エリウッドさんもね!」

サムス「ああ、あんたも終極を迎えたら遊びにおいでよ。何にもないけど、何時でも歓迎するよ!」

エリウッド「それは楽しみだな…ははっ、何だか絶対早く勝ち終わらせたくなったよ。
ありがとう、いつか機会があれば是非訪れさせてもらおう!」


今度はエリウッドが、お礼の言葉と共に舞とサムスと握手を交わす。
全員が笑顔を浮かべ、互いの顔を見渡すと一言お礼と一時の別れの言葉を発し、ロイとエリウッドが食堂の入り口へ向かっていく。

「またなー!」といつもと変わらぬ、屈託のない笑顔を浮かべて手を振るロイに手を振り返すと、間もなく赤毛の親子は食堂から姿を消した。
短そうで長かった出来事に思わず息を吐き、苦笑を漏らした。

少し寂しくなった空間を、窓から入る橙色に染まる光が包み込む。





++○月×日++

本日の帰還者…
・ドクター
・ネス
・子どもリンク

・ロイ





Next Story.

+++++
アンケートよりゲスト出演・・
『エリウッド』