24.暴走スラッカーズ 前
ドドドドド
――バターーン!!
「おおおっお助けぇえぇぇえぇええ!!!」
管理室の扉を蹴破って勢いよく入ってきた舞…に、マスター、クレイジーはきょとんと呆けた。
クレイジー「ど、どうしたと言うのだ一体…」
暴走するがままに入ってきた彼女は、すぐさまクレイジーの後ろに隠れてしまう。
「たったっ、助けてパパン、ママン!わて殺されてまうがな!!」
クレイジー「とりあえず落ち着け。
落ち着いた上で我とこいつを夫婦に見立てるのは止めろ、悪寒がする」
マスター「ホットミルク飲むかい?落ち着くよ」
「嬉しいけど、今はそれどころじゃないのよ!今は何よりも――」
だだだだだだ
ガシャアァァアン!!
ガノンドロフ「見ぃつけたぞォ舞ーーーー!!!」
ファルコン「愛・ラブ・ユぅぅぅうう!!!」
「Σギャァアァアァ!!来たぁぁぁぁ!!(滝汗)」
今度は窓を叩き割って入ってきた変態と名高いガノンドロフとC.ファルコン。どうやら、間違いなく舞を追って此処まで来たようだ。
その勢いは凄まじいのだが…
クレイジー「(窓ぶっ壊して入ってくるなよ)」
「ちょっ、何とかしてよマウス!コレ本当に参戦者として認められたモノ達!?」
マスター「既にコレとかモノとか人ではない扱いだね〜」
クレイジー「何だ、いつものように蹴飛ばせばいいだろう?」
管理者がそれを言うのもちょっとな
「そんなレベルじゃないわ!!
こいつら、今日里帰りするからって犯罪行動を好き勝手し放題なのよ!」
ファルコン「何て事言うんだ舞!俺らは愛を囁いてるだけだぜっ」
「愛!?三十路をとうに過ぎたおっさんが女学生のベッドに忍び込んだり人の使用済みタオルを盗もうとしたりする事が愛か!?」
クレイジー「確かにそれはもう犯罪だな」
よく今まで捕まったりしなかったものだ、とクレイジーはある意味関心を持った。
ガノンドロフ「暫く会えない分、俺からのラブ&ピースを贈ろうとしたのだ」
「マジか。生憎あたしにはデス&ヘルしか頂けなかったわ」
ファルコン「頼む舞!暫くキャワユイお前に会えないのだっ、夜の為に使用済み枕をくれーーーー!!」
「Σ何をする気だ貴様ぁぁぁあぁぁあ!!!」
どんだけすれば気が済むと言うのだろうか、怒りを通り越して寧ろ呆れていると、構わず変態親父ズが舞向けて飛び掛ってきた。
この飛距離じゃ避ける事が出来ず、舞は悲鳴を上げながら両腕で自ら守った。
マスター「シールド」
パチンッ!
―ボヨン!
「Σぐお!?」
「お?」
―が、行き届く前にパチンッと指を弾く音が聞こえた。かと思うと、彼女を守るように薄い光の壁がマスターによって作られた。
反動で体が跳ね返される変態親父ども。…の、背後から高速な動きで何かが動いた!
そして――
ゼルダ「うっふふふ、お前らいい加減ウ・ザ・イですわよv」
ソニック「オレっちの舞に何すんだーーーー!!」
メギョッ!ドゴォォッ!!
「「Σぐはぁああぁぁっ!!」」
バタァァンッ!!…と、管理室に騒音が響いて間もなく、さっきまでの騒動が嘘のように静まり返ってしまった。
自分の身が守られたとは言え、見るに無残な姿になった親父ズに冷や汗が流れる。
「舞、大丈夫だったか!」と駆け寄ってくるハリネズミと、清清しい笑顔で勇ましく釘バットを肩に担ぐ姫様。
そして、状況を把握できない世界の統治者のみが平然としていた。
暴走スラッカーズ 前
「はぁー、朝っぱらから体に悪いことしたわね〜」
痛く感じる肩をぐるりと回すと、ポキッと小気味いい音が鳴った。誰もいない食堂に只1人いるあたしは、適当なテーブルにつく。
頭の中に蘇るのは今朝の出来事のみ
――――−−---・
「…あ、ゼルダ姫とソニックも帰られるんですか?」
ゼルダ「はい、一応一国の姫として祖国の安否は確かめなくてはなりませんので…」
クレイジー「(屋敷が静かになって安心だ)」
ソニック「舞〜!オレっち、男を磨いてReturnするからな。待っててくれよ!」
「ええ、さっきの攻撃見た上ではもう十分だと思うけど、一応応援しとくわ!」
ゼルダ「何かありましたらお呼び下さいませ。光の速さでかけつけて、音の速さで敵を撲殺しますわ!!」
「姫が言うと実現しそうで怖いです」
――――−−---・
結局ゼルダ姫が、伸びたおっさんズを蹴飛ばして無理矢理魔方陣乗せて帰っていったんだけど…。
己の身が守られたと言え、何とも後味の悪い。
「姫は無理でも、ソニックはもう少し聞かせとかないとね…」
そうでもしないと後々大変になってしまう。1つ溜め息を零して、あたしは椅子に直しながらテーブルに広がるノートを見やった。
「さて、あたしは帰還者リストを整理しないと」
ミッキーに頼まれた新たな仕事。里帰りをして帰って行った人達の名簿を整理する事…
最初は黒文字だけだったノートには、大分赤丸がつけられていた。
「改めて見ると…大分皆帰ったわね〜」
軋む音を鳴らして、椅子の背凭れに凭れ掛かった。閉じられたノートを口元に宛がい、視線を天井に向けながら呆ける。
やっぱりどんなに思っても寂しい気持ちはある。楽しい事への少しの我慢とは言っても…やっぱり、スマブラキャラがいてくれないと楽しくない。
「まあどうこう言ってどうなる問題じゃないし、さっさと企画プログラムを〜―――」
「…あ、あの人…」
「ん?――ああ、舞か。」
「…はい?」
天井に向けていた視線をゆっくりと横に倒す。視界に入った食堂の入り口に、見知った顔が2つ並んでいた。
「あら、アイクとリュカ!どうしたの?」
アイク「腹が減ったから昼食をとろうと思ってな。リュカとはそこで会ったんだ」
リュカ「お、覚えててくれたんですか?僕の、名前…」
「勿論よ!あたしは老若男女問わず、萌えるキャラなら全把握してるから!!(ぐっ)」
リュカ「ろうにゃく…?」
アイク「モエ…?燃えるのか?」
仲良く2人揃って首を傾ける様子にあたしは少しこけた。しまったコンディション失敗!2人とも天然キャラだったっ(頭痛)
伝わらないもどかしさにテーブルを思わず連打、連打連打!!
リュカ「(だ、大丈夫かな…)」
アイク「舞、すまないが何か作ってくれないか?」
「あ、うん分かった。2人とも座って待ってて」
テーブルに広げたノートとエンピツを片付け、あたしは厨房に向かっていった。
高い椅子に苦戦しているリュカをアイクが抱えて椅子に座らせる光景が見えた。まあ何とも可愛くも萌える光景
「此処は我慢我慢…。2人とも何か食べたいものある?」
リュカ「あ、僕は、何でも…」
「リュカは謙虚ね、何でも言っていいのよ?アイクは?」
アイク「肉」
「シンプルイズベストにも程がある返答どうも」
具体的なものが欲しいし第一昼間っから出せるか
手際よくベージュのエプロンの紐を括りつけると、暫し悩んでアイクは思いついたように顔を上げた。
アイク「じゃあ、オムライス」
「へ?それって前も作ったけど、それでいいの?飽きない?」
アイク「飽きん。舞の作ったオムライス…上手かったからな」
「そう?じゃあアイクはオムライスね。リュカも同じのでいい?」
リュカ「は、はい!」
よし決まり。大きなフライパンを2つ用意して、油を強いてから火にかける。フライパンが温まるまでに卵を4つ冷蔵庫から取り出した。
別々のお椀に2つずつ出して卵を溶く。
リュカ「舞さん、いつも、皆さんの料理…作ってるん、ですか?」
「マリオ達と一緒にならね。似合わなくとも家事は得意なのよあたし」
リュカ「に、似合います!とってもっ」
「あらま。ありがとうリュカ、褒めてもらえると嬉しいわ!」
フライパンが熱されたのを確認して、2つ同時に溶いた卵を入れる。丸く広げて形を作り、あらかじめ用意しておいたご飯を乗せていく。
アイク「流石に手慣れているんだな」
「勉強したからねー。運動とか駄目だけど、料理だけは自信あるわ」
アイク「感服するな。俺なんて破滅的だからな」
「へぇ、そうなんだ…。何を作ったの?」
ご飯を卵で上手く巻いていき、食器棚から出した広いお皿に盛り付ける。因みに、アイクのは2倍の量で盛り付けてある。
よく食べるから、この人は。
アイク「ああ。前にゆで卵作ろうとしたらな、温めすぎて――」
「あ、分かった!硬くなったのね?」
アイク「いや、ドラゴンが孵化した」
「寧ろ教えてくれその方法」
手乗りサイズの卵から何故に身長大のドラゴンが生まれる。
初めて知ったアイクの意外な料理音痴伝説に絶句しながらも、オムライスの乗ったお皿を2人の元まで運んだ。
リュカは手を合わせて「いただきます」と言い、アイクも律儀に手を合わせて頭を下げてから口にいれた。
リュカ「美味しい、です…!」
アイク「上手いな」
「ありがとう!また足りなかったら言ってね、特にアイク」
アイク「ああ」
人一倍の量を口にするアイクはどれほど食べるか今だ分からない。順調に量を減らしていく様子に安心していると、食堂の入り口のほうから誰かがパタパタと駆けて来る音が聞こえた。
その音は徐々に大きくなり、ひょっこり食堂に顔を覗かせた。
ナナ「あっ、舞さん!」
「ナナ?どうしたの慌てて…、―あ。もしかして出来たの?」
ナナ「は、はい!舞さんに、見てもらおうと思って…っ」
息を切らしながら、両手に小さな箱を持ったナナが近くまで駆け寄ってきた。
持ってきた箱の中を暫く探り、暫く待つと鮮やかな色で彩られた細い紐のようなものを取り出す。
「凄い凄いっ、綺麗に出来てるじゃない!初めて作ったのよね?」
ナナ「はい!あ、あの、どうでしょうか…?」
「完璧よナナ。初めてにしては上出来!」
ナナ「えへへっ」
アイク「? 何だそれは」
食事から気が逸れ、珍しくもアイクがあたし達の喜び合うものに興味を示した。
「あ、これ?これはミサンガって言うの!」
アイク「ミサンガ…?聞いた事がないな」
「知らない?手首や足に巻きつけて、自然に切れたら願い事が叶うって言うジンクスがあるの」
説明しながらもナナの手首に巻きつけ、両端部分を括ると見事ミサンガの輪が出来上がった。
少し暇つぶし程度に作っていると、ナナに教えて欲しいと言われたから教えたんだけど…
これがまたナナの飲み込みの速さが凄くて驚いたわ。
「気に入ってもらえた?」
ナナ「も、勿論です!有難う御座いました舞さんっ、私、とっても嬉しいです…!」
ピンクと白のストライプに飾られた手首を見つめて、ナナは瞳を細めてみせる。
その時、アイクの隣に座っているリュカがじっと見つめていた事に気がつかなかった。
「ナナも何か食べる?」
ナナ「あ、いえ…私はお腹空いてないので」
「そう、分かった!」
アイク「舞、水あったか?」
「ああ、ちょっと待って。コップ此処にあるから直ぐに入れるわ」
とりあえず、ナナにも椅子に座ってもらってからコップに水を注ぐ。リュカの分も注いで、先にアイクに渡すと「ありがとう」とお礼を言ってくれた。
さて、次はリュカに渡さないと。そう思い、リュカの座る方に振り返る
「…ん?リュカ?」
すると、何処かぼーっとしながらリュカがあたしを見ていた事に気がつく。名前を呼ぶと、そこで自分が何をしていたのかに気付いたようで慌ててご飯を食べだした。
リュカ「す、すみません!」
「え?あたしは別にいいんだけど…、どうしたの?何かあるの?」
リュカ「あ、いや、その…」
口篭って頬をピンク色に染めながら言う辺り、何かあるんだろう。子どもが何かを我慢する必要はないと思うのに
「いいわよ、何でも言って!あたしで出来る事なら何でもするからっ」
なるべく言い易いように笑顔を浮かべてしゃがむ。するとリュカは、暫くの間戸惑いながらおろおろしていたけど、とうとうその口から思っていた事を吐き出した。
リュカ「じゃ……。そそ、その…、舞さんと、アイクさんにっお願いが、あるんです」
「うん?」
アイク「俺も…?何だ」
リュカ「あっの…っ」
「?」
リュカ「――あの!!お2人をママとパパって呼んじゃ駄目ですか!?」
思わず耳を塞ぎたくなる程、リュカは大きな声でとんでもない事を言ってのけた。勿論あたしもアイクも呆然として見るけど、リュカは耳まで真っ赤にして震えていた。
「ま、ま…?」
リュカ「ぼ、僕…お母さんに、憧れてて…っ。だから、な、何だか舞さん見てると…お母さんが、恋しくなっちゃって…!!」
「えーと、つまりあたしがリュカのお母さんで、アイクがお父さんって事?」
そう聞くとハッキリ首を縦に振って見せた。勇気を振り絞って言ったのに、あたしは何も出来ずに唖然とするだけだった。
リュカ「ああ、あの…、駄目なら、駄目で諦めます…っ」
目に見えて落ち込むリュカに何を言おうか迷うあたしの真横…
すぐ隣から伸びた太い腕がリュカの頭の上に乗っかった。
「!」
アイク「俺は別に構わん。親父なんてどうすればいいかは分からんが…、リュカが願うなら好きにするといい」
リュカ「え…っ!」
アイク「舞はどうだ?」
太い腕の持ち主は、紛れもなくグレイル傭兵団団長、アイクのもの
「え?あ、勿論あたしはいいんだけど…。こんな美形な夫と子どもって凄く萌えるし」
アイク「なら決まりだな。好きに呼ぶといいリュカ」
リュカ「ほ、ホント、ですか…!?」
「アイクがいいって言うならあたしは構わないからね。いやホントあたしみたいな腐った女が母親でいいのかも怪しいんだけど…(汗)」
リュカ「嬉しいです!あ、有難う御座いますっ」
アイクからの承諾に、今まで沈んでいた表情が嘘のようにリュカは嬉しそうに笑う。その様子に微笑んでいるアイクに、申し訳なくも肩を叩いた。
「ありがとうアイク。あたし言葉が出てこなかったから、助かったわっ」
アイク「…男が勇気を振り絞る事は、生死を決める戦場に立つ事と同じだと俺は思っている」
「うん?」
アイク「その勇気を…、ましてやこんな小さな子どもの大儀を見過ごす程、俺は冷酷ではない」
そう言うと、アイクは口元を綻ばせてクールに微笑んだ。
食べ終わった自分の分とリュカの分のお皿を積み上げると、それを厨房へと運んでいく。その後姿に、何だか『漢』を感じてしまうのは必然か?
「流石と言うか何と言うか…、良かったわねリュカ。これからは好きなだけ好きに呼んでくれていいから!」
リュカ「はい、ママ!」
にっこりと笑い、リュカはポスン、とあたしの腕の中に飛び込む。余程嬉しいのか、滅多に見せないような満面の笑顔を浮かべて見上げてきた。
…か、かか…っ!!
「(可愛すぎる…!!)」
ナナ「あ、あの、舞さん…?お話、終わりましたか?」
「んえ?あ、ああうんごめんね!ナナと話してたのにっ」
ナナ「いえ、私は構いません!嬉しそうで何よりですっ」
照れ臭そうに笑うナナも近づいてきて、彼女の頭も一緒に撫でてあげる。目を細めて笑うリュカとナナ…2人の天使が現れたと言っても過言ではないカワユサっ
悶え震える心を表すようにわしゃわしゃと2人の頭を撫でていると、食堂の入り口に誰かがやってきた。
―カツン、カツンッ
「んー…、やっぱりシステム調整に配慮は怠るわけにはいかないしなァ」
「あれ?ミッキー!」
マスター「ん? あ、舞君!それにリュカとナナも、お昼かい?」
資料らしき紙を持ったミッキーが食堂に入ってきて、見つけるなりあたし達の方に近づいてきた。
「ええ、さっき済んだ所なの。ミッキーは何をしてるの?」
マスター「うん、さっきウォーと話をしていてね。管理室の帰りに、コーヒーをと思って」
「え、ウォーと?」
マスター「ああ!」
飛びついている子ども達を見て、ミッキーは2人の髪をくしゃりと撫でた。いつも思うけど、ミッキーは本当にいい父親風味だと思う。
「ウォーと何の話をしていたの?」
マスター「ああ、依頼の話だよ!彼とはちょっと、仕事の話をしていてね」
パラッ、と手元に持っている資料の一枚を捲り、その中の一枚を手渡してくれた。
簡単に一通り目を通すと、何処かの地図とズラリと並ぶ字がたくさん綴られている。
「仕事…?里帰りじゃなくて?」
マスター「ウォーは里帰りしないよ。彼は元々、此処から生まれたようなものだからね…此処が家なんだ」
「へぇ、そうなんだ…。それにしても仕事って?」
マスター「時々仕事で手が込んでる時に手伝ってもらうんだよ!今回はちょっとした調査かな」
ミッキーの言葉の通り、課題欄には『調査』と言う言葉が書かれていた。
それが何かと目を這わすと…――
「『異常気象』…?」
マスター「うん。最近、色んな地で不思議な現象が起こるらしいんだ。頻繁に地震が起こったり、突然動物が群れで暴走したりとね」
「只の事故じゃないの?」
マスター「そうかとも思ったけど、事件直後の現場を見た目撃者によると、人工的な類の証拠が残されていたらしい。」
「人工的な?じゃあ、誰かがさせたって事?そんな馬鹿な…」
マスター「人工的だと言うのならば、統治者として放っとくわけにもいかないだろう?」
資料を見つめるミッキーは、いつものふざけた雰囲気ではなく、ちゃんとした『統治者』の顔になっている。
マスター「まだ幼いウォーに行かせるのも危険で抵抗はあるが…、放っておくにもいかないから」
「うん、分かるわ。ウォーは1人で向かうの?」
マスター「いや、私の部屋にいたカラフルな生き物がいただろう?あの者達を数名手配しているよ」
カラフル、って言うとあの顔のない摩訶不思議な生き物達の事か?
管理室で働きまわっていた彼らを頭の中で思い出していると、不意にナナが服の裾を引っ張ってきた。
「ん?」
ナナ「あの、舞さん…。G&Wさんに挨拶、しなくて…いいんでしょうか?」
リュカ「僕も心配、だな。話したことは、まだないけど…」
子ども2人はつまり、任務に赴くウォーに一言声をかけてやった方がいいと言いたいんだろう。
まあ確かに、小さなウォーが1人頑張ろうとしているのを見逃すわけもなく…
「そうね、少し見てくるわ!」
マスター「そうしてあげると、ウォーも喜ぶよ」
あたしの言葉にミッキーは嬉しそうに目を細めた。丁度いいタイミングで厨房からアイクも戻ってきて、一連の行動に首を傾げている。
アイク「何かあったのか?」
「ううん、G&Wが任務に出るらしいから様子を見てくるだけよ」
アイク「そうなのか…」
ナナ「あの、マスターさん。私もそろそろ、帰ろうと思うんですけど…。ポポも心配、ですし」
リュカ「それじゃあ僕もっ、一度故郷の様子、見てきたいです」
ナナとリュカも一度戻りたいみたいで、2人揃って椅子から飛び降りた。
マスター「あ、そうかい?じゃあ子ども組は私と一緒に管理室まで行こうか!」
「アイクはどうする?」
アイク「俺は腕を磨いてきたいからな、耐久組み手でもしてくる」
アイクも重たい大剣を肩に担ぐ。どうやら食堂から皆いなくなるそうで
ナナとリュカの手を引いて笑うミッキーは、本館通り口玄関のある方向に顔を向ける。
マスター「舞君、ウォーは本館通り口玄関口にいると思うからね!」
視線で辿り、行く先を見つめてあたしは首を縦に頷かせた。
***
++in本館通り++
きゅっ、とツバを持ち上げて帽子を深く被り直す。ズボンのベルトをしっかりと巻きなおすと、今度はバチンッと言う音が響いた。
小さな黒い影がゴソゴソと忙しく身を動かしていると……
「ウオォォォオォォ!!」
G&W「Σ!?」
名前を呼ばれ、黒い影は銀色の髪を靡かせて振り向いた。まるで雄叫びを上げるように駆けて来る影に気付くと、一瞬驚きながらも幼さの残る顔に笑顔を綻ばせて手を振る。
駆けて来た、と言うより爆走してきた影は直ぐ近くに来ると急ブレーキを掻けて止まった。
「ゼー、ハー…。こ、こんにちはウォー。」
肩で大きく息をする舞に、ウォーも笑って頭を下げた。名前を呼ばれた彼が、紛れもない、G&Wことウォーだ。
「ミッキーから聞いたわっ、危険な任務を任されたって。大丈夫?」
一瞬、舞の質問を聞いたウォーがきょとんと呆けた。それも間もなく我に返ると、首を横にふるふると振ってにっこり笑ってみせる。
「…大丈夫、って事?あ〜それでも幼いウォーを危険な場所に送り出すだなんて…!羊を狼の群れに投げ入れるぐらい危険だわ!!
って言うか諸そのまんまだぁぁぁぁぁ!!」
わっ!と泣き出した舞は何か不純な言葉を漏らして顔を覆った。その様子唖然となり、慌ててウォーはポケットからハンカチを出して渡してくれた。
何気にウォーはいつもポケットにハンカチとティッシュを持ち歩いていたりする
――カツッ
「ん?―あ、いたいた!」
舞がハンカチで涙を拭いていると、丁度廊下を歩いていたフォックスが彼女達を視界に納めた。
フォックス「あれ?何だ、舞も見送りか?」
「んぁ、フォックス?」
フォックス「ってええ!?だ、大丈夫か?泣いてるじゃないか」
好青年な彼には刺激の強い予想外だったんだろう。慌てた様子で舞に駆け寄って慌てて背中を摩る。
そんな事をされては何時までも泣いているわけにもいかず舞も涙を拭った。
「ううん、ちょっとね!只…ウォーを野獣どもの巣に放り捨てて無事貞操を守れるか不安になっちゃって…!!」
フォックス「あ〜…、何となく分かったよ(汗)」
分かってしまったか。嫌な慣れがフォックスにもついてしまったものだな
涙を流す彼女の背中をポンッ、と叩いて慰め、フォックスは苦笑しながらウォーへと視線を移した。
フォックス「幸せ者だなG&W、こんなに心配してもらえるなんて」
G&W「! (照)」
フォックスの言葉に照れながら頬を掻くウォー。彼の肩をずっと静かに事を見守っていたカラフルな謎の生き物が突然叩いて呼んだ。
何か言葉を交わしている彼らの姿を見て、舞はようやく涙の止まった顔で見つめる。
「ねぇフォックス、一体あのゴレンジャー紛いの生き物は何?」
フォックス「(ゴレンジャー?)ああ、マスター達に仕える部下みたいなものだよ。
よく組み手の時にも相手になってもらうんだけどな」
組み手?それは…DXの頃にあった『100人組み手』等の事だろうか。この世界でも忠実にそれがあるのかと言うより、舞は先に彼らの姿の違いに驚いた。
…だがそれと同時に疑問点の部分もある。
「(100人組み手の敵って…こんなカラフルだったっけ?)」
DXの時はもっと簡単に描かれた線だけの生き物だった筈…。なのに目の前にいる彼らには色がついてるし、姿形が全て違う。その違和感に首を傾げる以外他はなかった。
そんな舞に違う誤解を持ったようで、フォックスは彼らを指差した。
フォックス「名前は決まってないけど、オレ達はザコ軍団って呼んでるんだ」
「Σ酷っ!!健気に働きまわる彼らをザコですって!?」
フォックス「名前が決まるまでは(汗)
因みに、赤がザコレッド、青がザコブルー、黄色がザコイエロー…ってな具合だからな!」
「義理人情もあったもんじゃない」
確かにザコキャラとしてゲームでは知られていたけど…、そんな所まで忠実に再現されなくてもいいのに(汗)
ザコ軍団に変わって涙を流そうとすると、話を終えたウォーが駆け寄ってきた。
そして、何処からともなくお馴染みのボードを取り出すと、何かを書いて舞達に見せた。
〔依頼時間に遅れると不味いからそろそろ行くね〕
「もう?依頼時間なんてあるのね」
〔ごめんなさい。でも早く終わらせて戻ってくるから〕
フォックス「無理は駄目だぞ?仕事先でもちゃんと食べてちゃんと寝る!いいな?」
注意を聞かすフォックスの言葉に頷くウォー…。やっぱりあんたらは親子だよ、と微笑ましい光景を見て舞がそう思ったとは言えまい。
思わずその光景に頬を緩めていると、舞の視界にサンプルのミサンガが飛び込んだ。ナナに教える時に出したものだが、もう必要のなくなったそれ。
「そうだ、ウォー。これもし良かったら上げるわ、お守り代わりだと思って!」
G&W「?」
「ミサンガって言うの。自然に切れたら願い事が叶うの」
そう言って舞がウォーに差し出したのは、ナナの為に作ったミサンガのサンプルだった。
青と白の二色で彩られている、細いミサンガ。
「あ、勿論いらないならそれでいいんだけどね?」
G&W「(ふるふる)」
戻そうとする舞に首を左右に振ると、ウォーは自分の右手を差し出した。その意図を読み取り、慌てて細い手首にミサンガを括りつける。
フォックス「へぇ、これ舞が作ったのか?上手だな」
「そんな事ないわ。暇つぶし程度に学んだだけだもの、大した事ない」
フォックスへ言葉を返す頃にはミサンガの両端が結ばれた。手首に巻きついた鮮やかな紐をじっ、と見つめて、ウォーは嬉しそうににっこり笑う。
それから間もなく、ボードに何かを書いてあげて見せた。
〔ありがとう!〕
感謝の言葉とウォーの笑顔を見て、初めて舞は此処で安堵する感覚を覚えた。
「ううん、喜んでもらえたならそれでいいわ!」
〔ボク、黒一色だから、他の色がついて凄く嬉しい〕
フォックス「そうだな、G&W黒以外の色欲しがってたからな。一番のプレゼントだよ」
『色』が欲しいとは、また変わった欲だ…。でも、その色でしか統一されない彼を思うと何だか納得してしまう。
捲っていた長い裾を元に戻し、置いていた荷物を肩にかけるとウォーは首だけを振り返らせる。
〔それじゃあ行ってきます!〕
「行ってらっしゃい〜!」
フォックス「気をつけてな」
最後ににっこり笑うと、ウォーはザコ軍団を引き連れて外に出て行ってしまった。
玄関口が静けさを取り戻すと、舞は小さな息を吐き出した。
「ウォー大丈夫かな。まだ幼いのに」
フォックス「大丈夫だろう、ああ見えてG&Wは乱闘の中でも上位に入る実力者だ。心配ないさ!」
「へぇ、上位に…。凄いのねウォー」
子どもと言えど侮れないと言う事だろう。改めて感心しながらウォーの出て行った扉をじっと見つめた。
…すると、隣で同じく静かに見ていたフォックスが何かに気付き、慌てた様子で舞の両肩を掴んだ。
フォックス「そ、そうだよ舞!こんな事してる場合じゃなかったんだ!!」
「へ?」
フォックス「大変なんだよっ、客室に突然お姫様が来てさ。その人、来るなり『舞を出せ』って言って聞かないんだ!」
「な、名指し!?」
フォックス「ああ、何か怒りくらがってるから話も出来なくてさ」
「あ、あたし…名指しされるような事したっけ?」
お姫様と言うと、自分が知っている限りピーチとゼルダしかいない。しかし、自分を出せ!と乱暴に言うような人達じゃないから、多分別の人だろう。
誰だ、と疑問が浮かぶけど、今は急いで行った方がいいのかもしれない。
フォックス「オレ達の話聞かないんだ、悪いけど来てくれるか?」
「分かったわ、心当たりはないけど…あたしを呼んでるならあたしが行かなきゃねっ」
そうと決まれば急がないと。客室の道をフォックスに教えてもらいながら舞は足を走らせた。
まだ見ぬ知らない人に、本当に何かをしたかを頭の中で思い返しながら、慌しくバタバタと廊下を駆けていく。
――――−−---・
++in私室++
陽光の中てられた心地よい空間。その中で、ギシリ、と悲鳴を上げるようにベッドが軋んだ。
そのベッドの上で体を起き上がらせ、遅い起床を遂げたのは―マルス。
マルス「………」
たった今起きたばかりの顔は、明らかに怠り気に眉間に皺を寄せていた。ふらふらと不自然に体を揺らし、重たそうに頭を右手で抱える。
マルス「……だるいな…」
ハァ、と重苦しい溜め息をついてようやくベッドから腰を上げると、無造作に着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
汗の浮かぶ上半身を曝け出しまま、片手を壁につきながらクローゼットを開ける。
…すると、1階辺りから何か騒々しい音が聞こえてきた。
マルス「…?また、何かあったのか…」
上手く力の入らない手で普段の服を掴むと、またベッドに戻って座りながら着替える。掛けてあったマントを羽織ると枕元に置いておいたカチューシャを頭に取り付けた。
いつもの格好に戻ると、なるべく普段通りにしようと体を真っ直ぐ立たせる。
視界が揺れる事も気にせずに、マルスは己の部屋の鍵を閉めて騒々しい騒音が響く1階へ足を歩ませた。
Next Story.