26.悪夢と現実に嘔吐寸前



++in管理室++



「1、2、3,4…。よーし、全員揃ってるな!」

「帰国届けは?」

「全員出てるわよ!」

「ならば全員通過だ、ゲートを開けるか」


クレイジーの言葉を合図に、部屋に描かれた魔方陣が蒼い光を帯びた。


「トワさんにトゥーンでしょ。あとフォックスとウルフね…コレで全員よね?」

「ああ、合ってるよ!」


リストを確認するマスターの隣で、舞は今日の帰還者の顔ぶれを確認
相槌を打ったフォックスの隣にはウルフが。その隣にはトゥーンと手を繋ぐトワがいる。


「成る程、今日はスターフォックス組とゼル伝組か〜…
あら?キジコは一緒じゃないの?」

「キジコ…?」

「ファルコの事だよ。あいつはアーウィンの調整があるから後になるそうなんだ!」

「へぇー、そう…
…ま、まさかアーウィンの噴射口から出る火で焼き鳥になりましたなんてオチ、ないわよね?」

「心配しなくともそんな阿呆な真似をファルコはしないよ」


変な冷や汗を流されてファルコも気の毒だ
誤解を解き、フォックス達から離れると今度はトワとトゥーンの近くへ寄る。


「お2人も気をつけてっ」

「あ、お姉ちゃん!」

「有難う御座います。大丈夫、何の事もなく帰ってきますから」

「分かりました。でも無理はなさらないようにお願いしますね!」

「舞さん…」

「クックック…何だ、いっちょ前に別れ際の恋人みたいな会話しやがって」


スゥ、とトワの影からミドナが現れる。それに気付き舞はミドナに手を振るが、トワは驚くほど慌てて掴みかかる。


「なっ、何言い出すんだミドナ!?」

「何だよ、事実だろ?本当は離れるのが寂しくて昨日愚痴溢してやがった癖に」

「Σなぁっ!!」

「はい?」

「あー、実は昨晩によぉΣうああぁぁっ!!馬鹿馬鹿っもういいから!い、行くぞミドナ!!舞さん帰ってきたらまた挨拶に行きますね!それじゃあっ」


ミドナの口を塞ぐと顔を赤くしてトワは魔方陣に走っていった。
その光景に唖然としてる舞のコートをトゥーンが引っ張る。


「ねえねえ、お兄はどうしたの?風邪引いたの?」

「うーん、よくは知らないけどトワさんを気に掛けてあげてトゥーン。気をつけてね」

「うん!皆にお姉ちゃんの事話してくるんだっ、妹にも!」

「妹さん?トゥーン、妹がいるの?」

「うん、いるよ!!そうだ、今度連れて来てあげる!」

「本当?じゃあ楽しみに待ってるわ!」

「おーいトゥーンリンク〜!そろそろ魔方陣に乗ってくれるかいー?」


向こうから呼ぶマスターの声に反応して、トゥーンは舞に手を振って走っていく。
その後ろ姿と魔方陣の上に乗るメンバーを一通り見渡す。
手元に持っていたノートを開くと、赤いチェックが4つ加わった。





++○月£日++

本日の帰還者…
・フォックス
・ウルフ
・リンク(トワ)
・トゥーンリンク







悪夢と現実に嘔吐寸前








鳥の鳴き声が囁き響く、とてもいい天気の中庭での事。
誰かと会わないかと思ってあたしは適当に散歩をしていた。


「さーて、今日は誰かに会えるかな〜…」

「あれ〜、舞だ〜〜!」

「うん?その間延びした声は………カービィ!?」


何の名推理かと突っ込みたくもなるけど。
振り向いた先にいた彼は身体をボールの様に弾ませて噴水の傍に降りてきた。


「チャオ〜!いい天気だね!」

「本当ね、今日はカービィ1人なの?」

「うんっ。だって皆帰っちゃうから、遊ぶ人がいないんだもぉん!」


小さな2本足でクルクル回る。別に構わないんだけど、後ろが噴水だからいつ落ちても可笑しくない…


「カービィ?そんな所でハシャいじゃ危ないわよ!」

「大丈夫、大丈夫〜!だってボクは無敵の星の戦士〜―――」


余裕そうに笑っていたカービィの足がツンと躓いた。
歌っていた声も途中で止み、カービィの体が噴水に向かって落ちようと傾く


「わー?」

「かっ、カービィ!!危っ」


慌てて手を伸ばすのも遅く…

――バシャーーン!!

カービィは呆気なく噴水に落ちてしまった。
あたしは散ってきた水飛沫を両手で防ぎ、収まった頃に慌てて噴水に駆け寄った。


「ちょっ、カービィ!?カービィ!」

――パァッ

「!?」


あと少し、と言う所で突然噴水が一瞬金色に輝いた。
その光に眩しさを覚えていると、バシャッ!と水を弾かせて何かが…


「え…―――?」


「お主、今この湖に落としたゾラか?」


Σ金の斧銀の斧ぉぉぉ!?ちょちょっ、何で噴水からゼル伝のルト姫らしき人物が…!!」

「質問に答えぬか。おぬしは今何か…、…って貴様!先程から童に何をしおる!!」


ルト姫?は後ろに振り返ると噴水の出水口に向かって怒鳴りつけた。
紛れもないションベン小僧に向かってだ


「(関係性が上手くいってないのか)」

「人が接待中だと言うのに、貴様は恥を知らぬのか!!」

「いや、それ止められたら噴水の水枯れちゃうから…


どうやらルト姫?はそれが本当の人に見えているようで小を止めない石造に怒鳴りつけていた。
とりあえず、出て来る時はションベン小僧と話し合ってからにしてほしい


「少しぐらい我慢しろ!童はゾーラ族のプリンセスじゃぞ!?」

(無茶を言いなさる)

「…ええいっ、鬱陶しい小童め!」(バキッ)

Σうおぉぉぉい!?屋敷の建造物を破損するなあぁあぁぁぁあ!!(汗)


訴えかけるも既にプリンセスの拳で石造はお陀仏。
ミッキーの泣き叫ぶ顔が目に浮かぶわ、ションベン小僧にかはどうか知らないけど


「(ごめんミッキー…あたしは無力だったわっ)」

「さて、本題に戻るがお主は今この湖に何かを落としたゾラか?」

「え?ええ落としたけど…Σてか早く引き上げないと!!この間にもカービィ溺死カウントダウンしてるんだから!」


幾ら乱闘メンバーと言えど何時までも水に浸かっておくのは不可能な筈!
慌てるあたしとは対に、ルト姫?は満足そうに頷いていた。


「良かろう、ならばお主に問おうぞ」

「何っ?どうせ『貴方が落としたのは金のカービィですか銀のカービィですか』でしょ!?」

「いや、お主が落としたのは金のチンクル銀のチンクルか?ゾラ」

Σ三十路妖精かよ!!!あたしが落としたのはそんなブチャイクな妖精じゃないっ!」


ルト姫の両手に掲げられたチンクルもどき。
ブチャイクと呼ばれた事で怒りくらがっているが…


「まあそう言うな。何、簡単なアドベンチャー感覚で選べ」

「そらまたデスアドベンチャーですね。
兎に角あたしが落としたのはどちらでもなくピンクのカービィなの。早く彼を引き上げないと!」

「ふむ、お主は正直者じゃの。良かろう、ならばこのチンクルを2匹ともくれてやるゾラ

「Σいらぁあぁぁあぁん!!」

「童だっていらん」


しかも本音零しやがった!!

持ってきた張本人はこっちに向けてチンクルを投げると水の中に戻っていってしまった。

慌てて追いかけようとすると、目の前にチンクルが立ち塞がってきた…
さっきのやつ、まだ怒ってるの!?


「うわぁぁぁ!!気色悪い!ちっ、近づくな親父ーーーーー!!」


そしてあたしの意識はそこで途絶えてしまった……―――





――――−−---・






「――って言う悪夢を今朝見たんだけど、どうよ?」

「とりあえずお前が阿呆だって事は改めて分かった。
って言うかテメェはそれを教える為だけに此処まで来たのか!?


オイルの臭いが充満した、色んな乗り物が立ち並ぶ倉庫の中
アーウィンの調整をするファルコとその近くで機材道具を抱えた舞がいた。


「何よ、あたしにとっちゃ十分怖かったのよ!?
三十路が接近してきた時に漂うあの悪臭…!ああっ、思い出しただけで虫唾がっ!!」

「ドライバー。」

「あ、はい」

「大体お前チンクルに何かしたんじゃねえか?もしかしたら怨みかけられたとかじゃねえの」


アーウィンの下から潜り出て、ファルコはコックピットに乗り込む。
操縦機を解体すると中から色んなコードが出てきた。


「そんな事あるわけないわ。だってあたしチンクルに会った事ないもの!
あれは絶対何かの予兆よっ、最近悪夢を立て続けに見てばかりなの」

「ははぁーん、どうせ迷路で迷子になったとかしょうもない夢だろ?」

「ち、違うわよっ!本当なんだってば。黒い空間の中にいるのよ!」


赤のコードをバチンと切り、隣の緑のコードに繋げる。
コードの奥にある変な部品と繋げていくが、中々スピードが速い。


「変なおじさんがあたしの身体に何かを埋め込むのよ。こう、禍々しいオーラって言うか…」

「ふーん」

「ちょっとファルコ、真面目に聞いてよ!真剣に困ってるの、貴方に相談しようと思って来たんだから!!」


舞が言う悪夢は以前からずっと見ているものだった。
新参者が来てからと言うもの、毎日のように見てしまうあの禍々しい夢

宇宙のような空間で存在するのは自分と、変な翼の生えた体が透けている知らない男性。
胸騒ぎが収まらないから、ファルコの様子見も兼ねてこうして相談に来たのだが……


「心配しなくともお前なんか狙う奴いねえって」

「Σな…っ!」


ちっとも相手にならないファルコに舞は額に青筋を立てた。
当の本人は操縦席を見直して近くに転がったネジの数を数えている。


「大体何だよ変な男って?そんなの、普段から変態に追われてるお前なら慣れてるだろうが」

「(カチンッ)」

「まあお前の野太い性格なら何の心配もいらねえだろ。
おい、ペンチくれ」

「おらよ」(ブンッ)

ゴチィィッ!!

「Σあいってえぇえぇぇぇえええ!!!」


怒りに任せた舞の投球は見事ファルコにダメージを与えた。
因みに攻撃食らったファルコは顔を操縦席にぶつけた所為で額が赤くなっている。


「テッメェ…何すんだ強暴女!!」

だまらっしゃいキジ!!貴様乙女が悩み打ち明けてるって言うのにっ、ちっとも聞かないなんてデリカシーの欠片も無いわね!」

「お前にデリカシー与えて何になるんだよ!テメェの心は防弾ガラスだからビクともしねえだろっ」

「ミサイル発射っ!!」

―ヒュッ
ドゴンッッ!!

Σおあぁあぁぁ!?ば、馬鹿っボム兵投げてくんなよ!!マジで焼き鳥になっちまうわ!

「ハッ、なってしまえ

「こ の 野 郎 !!」


ぶちぶちと呟きながら凹んだ壁に埋まるボム兵を見て冷や汗が流れる。
こいつといると危険だとファルコの中で危険信号が光った。


「(嘘だろ…まさかこいつ、本気か…?(汗))」

「あーもうっ、ファルコに相談したのが間違いだったわ!」


ドサッと後ろ向きに倒れて舞は大の字に寝転がった。
女が地べたにしかも足広げて寝るなよ…とファルコは心の中で思う。


「マリオだったら優しく気にするなって言ってくれたのに…」

「俺はマリオみたいに優しさなんて持っちゃいねえよ」

うん知ってる

「(殴りてえ…!!)」

「それでもさ、普通ならちょっとは慰めたりするものじゃない?
あ〜〜、くっそーー!!」


溜め息を吐き出して舞は近くにあった鉄の塊を手に取る。
定まらない視線でそれを弄る様子は退屈をしている子どものようだ。

仕事にも集中できないファルコは困ったように溜め息を吐いた。


「…夢に出てきた男は知ってる奴なのか?」

「はい?いや、知らない人だけど…」

「知ってる男ならそいつを用心深く出来るが、知らない奴相手じゃあどうしようも出来ねえだろ。
予兆だとか気にするから余計怖くなんだ」


コックピットから出て最後の点検にアーウィンを入念にチェックする。


「じゃあどうすればいいの?」

「忘れろ。マリオだって気にするなって言ったんだろ?じゃあそうするのが一番じゃねえか。
保護者なマリオが言うんならそれで十分だ。そうだろ」

「…なるほど…」

「それにテメェに何かあれば此処の奴らが守るだろ。
その為の乱闘メンバーなんだ。…分かったんならもうこの件は忘れとけ、面倒くさいだけだ」


そっぽを向いたままのファルコの言葉に、舞は寝転がせていた体を起こし上げた。
確かに、打つ手がないのならこの件は曖昧にしてもいいのかもしれない……

案外簡単に事がついた問題に、何だか呆気としてしまう。


「なぁんだ、こんな簡単に事がつくんだぁ…。何だか逆にガッカリ」

「何だよ、もっと悩みたかったのか」

「まさか。謎が解けたのならそれでいいのよ」

「なら良かったじゃねえか。…よし、異常なし!これで完了だ」


バタンとハッチを完全に閉めてファルコはアーウィンから飛び降りる。
両腕を伸ばすと欠伸を漏らして入り口へと向かった。


「俺の仕事は終わった。フォックス達も帰ったし、俺もこれから故郷へ還るぜ」

「そうなの?今ならフォックス達を還した後だから直ぐに帰れると思うわよ!
ミッキーとマウスもいるだろうし」

「…お前マスターはまだしも、良くクレイジーをそんな名前で呼べるな」


呆れ顔で言うと舞は「言ってみたら案外普通よ」と当然のように言ってのけた。
それに頭を掻いて入り口のゲートを開ける。
出て行こうとするファルコに気がつき、舞は大きな声でファルコを呼んだ。


「? 何だよ」

「里帰り気をつけて、フォックス達にも宜しく言っておいて!
あと、相談乗ってくれてありがとう!」

「…ん」

今度お礼に焼き鳥でも

「止めてくれ」


ファルコのツッコミを最後に自動式のゲートが閉められた。


「さて、誰もいなくなったし…あたしも何処かへ行こう」


入り口を暫く見入っていたが、舞は大きく伸びをして肩を鳴らす。
先程のファルコと同じ要領でゲートにアクセスをすると音を立てて扉が開かれた。

躊躇無く出て行くとゲートが閉まり、自動的に倉庫の電気が落とされた。





***






「…とは言え、1人で居ても何にも面白くないのよね」


ミッキーやマウスは仕事で大変そうだし、邪魔してはいけないし…
仕方なく、あたしは今朝夢でも来た中庭に来てみた。因みにちゃんと噴水は避けて来たとも

そよ風に揺られる色鮮やかなガーデン。
勿論此処に来たのは理由があるからで、あたしは辺りを見渡しながら口を開いた。


「おーい、オリマー!ピクミンー!」

「――…★?」


あたしの声に弾かれ、ガーデンの中でひょっこりと小さな影が現れた。
その影に気がつき、顔を綻ばせて思わず駆け寄る。


「やっぱり此処にいたのね。やっぱりピクミン達と一緒?」

「★★!」

「うーん相変わらず何て言ってるのか分からないけど…まあいっか」


宇宙人、オリマーの近くには赤ピクミンと黄ピクミンがいる。
2匹ともあたしに気がついて片手を上げてきた。彼等なりの挨拶で
それに応える為に片手を上げる。


「オリマーとピクミンと花畑…何かこのまま寝たくなる組み合わせね〜」

「☆?」

「まあ外で寝たら風邪引くから勿論寝ないけど」


オリマーの隣に座って快晴な青い空を見上げる。
ゆっくりと流れていく雲を見つめていると思わず欠伸が漏れた。


「ふあ〜ぁ…あー、本当に寝そう…。オリマーは平気なの?」

「★。……Σ!?

「あたしは今にでも寝てしまいそうだけど…やっぱり慣れてるからなのかしら」

「☆★!☆〜〜!!」

「…ん?どうしたの?」


突然オリマーが顔を青くしてあたしの腕を引っ張ってくる。
お化けでも見た様な顔で、その小さな指先をあたしの後ろへと向けていた。

…後ろ?


「何?後ろに何かあるの―――」


指される方向に首を振り向かせた途端…今まで眠気で半目になっていた目がパッチリ開いた。
あたしの視界の先では…口元に弧を描いた『あたし』がいた。


「…へ?」

「クスクスクス」

「え――Σのええぇぇえぇぇぇ!!?あ、あたしーーーー!?


思わずオリマーを抱えてズザザッ!!と後退。
今まで似た人達を見てばかりだったけど今回は間違いなく本物のドッペルゲンガー!

目の前の『自分』にあたふたと慌てふためいていると…『自分』が噴出した。


「アッハッハ!いーぃ反応っ、思ってた通りの人だな〜!」

「は、はい…?あああの、とりあえず貴方誰…」

「君、舞チャンだよね!?うわぁっ、本物だ!」


にゅっと顔を近づけてくる『自分』はイヤに楽しそうに笑う。
『自分』に会いたかったと言われても…何か違和感ありまくりなんだけど(汗)


「え?はァ…」

「何で知ってるって顔だね?それは君が以前大乱闘の司会進行をしてたから!!
あの時の舞チャンを見てから、絶対面白い子だ!って思ってたんダっ」

「ん〜、ランペル君。その辺りで勘弁してあげたら?彼女、困ってるみたいだヨ?」


突然辺りに別の声が響いた。何か甘い口調の声に慌てていると、目の前の『自分』がポンと手を打った。


「あ、そう言えばまだ変身解いてなかったや。ごめんね舞チャン!直ぐに戻るから!!」


そう言うと、目の前の『自分』が立ち上がる。
ジャンプしてくるりと宙返りすると、まるで漫画のようにポンッ!と音を立てて煙に包まれた。


「うわっ!?」


思わず吃驚して目を一瞬閉じる。直ぐに収まった煙を払っていると、その中から白い影がゆらりと現れた。
まるでその姿は…お化けそのもの。


「え…あ、貴方…?」

「ヒッヒッヒ!吃驚した?吃驚した!?ボクのお得意化け変化〜!とっても楽しかった〜!」

「貴方は楽しかっただろうけど…あたしは吃驚で一杯よ」

「そうそう。レディーに第一印象悪く与えちゃったんじゃない〜?」


目の前にいるお化けの後ろの空間が歪み、歪んだ空間から誰かが姿を現せた。
さっきの甘い声の原因であり、まるで夜のようなイメージを齎す…ピエロ?


「Σどど、どなた!?」

「ボンジュール、マドモアゼル!突然の来訪驚かせちゃったカナ?」

「そりゃ勿論…。何処かでサーカスでもやるおつもりで?

ん〜、そんな予定はないなー

「と、兎に角貴方達誰!?あたしの事知ってるみたいだけど、あたしは貴方達知らないんだから!」


あたしの言葉に腕の中にいるオリマーも頷いた。
一瞬キョトンとなったが、ピエロはにんまりと笑みに戻ると貴族の様に会釈をした。


「これは失礼。僕は魅惑の道化師ディメーン、宜しくネ。
で、こちらはランペル君。さっき見ての通り、変身が大好きな僕の友達さ!」

「ヨロシクね〜ん!ボク達マリオの知り合いなんだよ!」

「え、マリオの?」

「そっ。以前共に戦ってね…とは言ってもやられちゃったけど!」

Σ敵役かい!!敵なのに呑気に出てきていいわけ!?」

「いーのいーの。どうせ今日はマリオ達が帰ってるのを見計らって来ただけだし。
あぁ、そうだ!」


ふよふよと宙に浮かぶピエロ…もといディメーン。
そのまま距離を縮めてくると、真っ黒な掌から何かを出した。


「…?何コレ」

「君にプレゼント。大事にしてね、君の為の物なんだカラ」


有無言わさずにあたしの手を握るとその上に乗せてきた。
指で摘める程度のビー玉…その中にゆらゆらと浮いている髑髏の模様がおぞましい。


「これ…縁起悪くない?」

「そんな事ないよ〜!それはねぇ、ある人が作った舞チャン専用のお守りなのン♪
ボク達はそれを渡す為に今日来たんだ!」

「Σ余計運に見放されそうなデザインなんだけど!?」


本当にこんなのがお守りと呼べるのか!
誰が作ったかは知らないが、少なくとも目の前で笑う2人ではなさそうだ。

けど、わざわざこれを渡す為だけに来てくれたんだ。世界を跨ぐのはそうそう簡単な事じゃないだろうし…


「(とりあえず、お礼は言っておかないと)ありがとう。一応、大切にするわ」

「んっふっふ。そうしてくれると嬉しいネ」

「いつも肌身離さずに持っててよね!」

「ええ、分かったわ。お守りだから…――― …? あれ?」


ランペルに相槌を打っていると、彼の後ろに同じような白い影が見えた。
俯きがちにトボトボと歩いている白い影は重苦しい溜め息をついている。


「ピットじゃないかしらアレ…おーい、ピット〜!」

「…?」


声に気がつき、俯かせていた顔を上げるとやはりそれはピットだった。
あたしと分かった途端若干表情を明るくするが、ランペルとディメーンに気がつくとサッと顔を青くした。

…あ、彼が人見知りなの忘れてたわ。


「誰だい?」

「ピットよ、新参者の1人なの。」

「あ〜、前大乱闘の時に助っ人で来てた人!」

「そうよランペル!ちょっと行って来るわ。彼、人見知りだから初対面の人とはあまり話せないの」


2人に謝り、少し抜けてピットの方へ走った。
駆け寄る先にいるピットが安堵の息を吐き出したのが見える。


「ピット、こんにちは!どうしたの落ち込んで?」

「舞…!い、いや…別に…」

「何もないようには見えなかったけど…。何か悩み?あたし聞くわよ?」

「ぁ…」


ピットは言い辛そうに指を弄りながら視線を泳がせる。
やっぱり、何かあったのか?目の前にいる天使を見つめていると、徐にピットが顔を上げた。


「その…俺、そろそろ、天空界へ…帰ろう、かと……」

「ああ、里帰りの件?いい事じゃない!それがどうかしたの?」

「…、実はっその…。」

「うん」

「…っ。お、俺!天空界へ帰れないんだ!!

「えぇ?」


突然の告白に思わず目を驚愕に開く。
それもそうだ、だって…自分の故郷へ帰れないかもしれないと言う一大事なのだから。


「ど、どうして!?もしかして連絡が不通?あぁっ、もしかして仲間内から虐めにあったとか!?」


嫌な方向にばかり頭が回りあたしは頭を抱えた。大変だっ、可憐な天使身内にいびられる!?
1人勘違いしてパニックしているとピットが首を左右に振って「違う」と言った。

そして、勘違いをしているあたしから誤解を解く為に一言


「実は、俺…天空界まで飛べる程、飛翔力が…ないん、だっ」

「………え、は?」

「だだ、だから…!俺、天使って言ってもそこまで飛べないんだ!
そ、それで…飛べるように、なるまで…帰れないのかなァ、って……」


…えーと、つまりピットは天空界まで飛んで帰ろうとしているわけ?
その距離がどれだけかは分からないけど…


「ピット…あ、あのね?別に里帰りするのに飛ばなくてもいいのよ?」

「へ?」

「だから、送ってくれるの。ミッキー達が異界転送の魔法で自動的に送ってくれるから心配要らないのよ?」

「ええ!?」


効果音を付けるならガンッ!と言う程ピットは衝撃的な顔をした。
本当に知らなかったのか、その事実を知ると一瞬にして首から顔を赤く染めていった。


ごごごごめんんん!!俺っ、俺そんな事知らなくてっ…1人で慌て騒いでうわわわごめんごめんごめんなさ…!!」

Σおぉぉい!!大丈夫かピットーーー!?いや、そこまで謝らなくていいから!
寧ろこっちが謝っちゃうからその勢い!とりあえず落ち着いてっ、ね!?」

「う、うんっ」


恥ずかしさのあまりピット紅潮。深く深呼吸を数度繰り返すと漸く落ち着いてきたのか、顔の赤みも引いていきだした。
純情天使はまだ上がり性が治ってなかった


「えーっと、とりあえず。還る時は管理室行ってみてね、ミッキー達も直ぐ了承してくれるからね。いい?」

「う、うん…ありがと」

「ええ、でもこれで解決ね!いつでも帰れるでしょ?」

「う…うんっ」


ピットはあたしの言葉に頷く。まるでさっきのあたしの様にあっさりと解決案が見つかり、ホッと安堵の溜め息を吐き出した。


「…じゃあ…還る理由、出来ちゃったなァ……」(ボソッ)

「え?何か言ったピット」

「Σ!?いい、いや別に何もっ!!」


小声で呟いた言葉は聞こえず。聞き返すとピットは再び頬を赤くして両手と共に首を左右に振った。
さすが純情、あからさま過ぎて分かり易い。


「(怪しすぎる…)」

「そ、それよりも舞!い、一度…舞も、天空界へ来てみない…!?」

「え?…それってまさかあたしに死ねと!?

Σ違うよ!?天空界って言うのはちょっと…
そうじゃなくて、只単に、遊びに来て…ほしいんだ…!」


天空界…そう言えばあたしはそんな所知らないな。
戦闘ステージとして似せたような偽ワールドはあったものの本物は見た事がない…


「へぇ…何だか面白そう。いいなァ」

「! ほ、ホント!?」


途端に表情を明るくするピット。まああたしも好奇心があるし…
いいかもしれない。楽しそうだし、行ってみようか―――


「アデュー天使君!」

「へ?」


―――シュンッ!


突然、目の前にいたピットが消えた。
目を点にして見ているあたしの目の前から……

………。


「これで良し♪」

Σおいピエロおぉおおぉぉ!!人の話し中断させて何してるかーー!!

「ピエロじゃないよォ、道化師!んー、彼も帰りたがってたみたいだから、手っ取り早く僕が送ってあげようかと思って」


ずっと後ろにいたピエロ、もとい道化師はニヤニヤ笑いながら近づいてくる。
幾ら何でも話している最中の人間を送るか普通!!


「還るにしても一度帰還届けとか出さなきゃいけないのよ!第一貴方何処に送ったの!?」

「勿論彼の言う天空界!僕のイリュージョンなら万事解決サっ」

「あのねー…」

「そんなに帰国届けとか言うの出さなきゃ駄目なの?」


ディメーンの声に素直にあたしは頷いた。今までの人達だって皆書いて出したんだ。
ああぁ、ミッキーにどう言い訳しよう…


「んー…そうだねェ、じゃあ此処は一肌脱ごっかナ。」

え、脱ぐの?(期待)」

期待の眼差し悪いけど。おーい、ランペル君!」

「ハーイ」


ディメーンに呼ばれ、ランペルが遊んでいたオリマーを連れてやって来た。
浮いてきた彼に耳打ちすると、ランペルはにんまりと笑ってまたポンッ!と音を出して煙に身を包んだ。


「これならいいカナ?」

「…あ」


晴れた煙の中から出てきたのは…ピットに化けたランペルだった。


「天使に化けるってのもいいネん♪お空を飛べるかなぁ!」

「遊ぶのは後だよランペル君〜」

「な、何をする気?」

「彼に代わりに帰国届け出して貰って魔法で還してもらえばいいでしょ?ランペル君大活躍!」

「そ、それはいいけど…ん?Σランペル天空界行っちゃうじゃない!?

「大丈夫、後で僕がお迎えに行くヨ」


満更ランペルも嫌じゃない様で楽しそうにはしゃいでいる。
普段控え目で大人しいピットしか見ていない分、こんな天真爛漫なピットも珍しい…


「それじゃランペル君、1つお願いしてもいいカナ?」

「オッケー!ピット隊長行ってきまーす♪」

「ランペル、ピットはもっと大人しくてオドオドしてるからね!?そこ気をつけてよねっ?」

「はーい!」


本当に大丈夫かな、任せて(汗)
心配になりながらも屋敷に向かって走っていくランペルピットを止める事はしなかった。


「頑張ってねー」

「んっふっふ、ああ見えて彼も優秀だから大丈夫だと思うよー

…さて、僕もそろそろお暇しようかな」

「あら、帰るの?」

「ランペル君をお迎えに行かなきゃいけないし、用事は無事に済んだからネ」


「楽しかったよありがとう」そう言うとディメーンは最初の時の様に会釈をした。
彼の後ろの空間が歪み、それに向かって浮き飛ぶ。


「それじゃあネ舞。オ ルヴォワール!」


シャレた挨拶をするとディメーンは歪んだ空間に入って消えた。
あたしはと言うと1人残され、彼が最後に言った言葉の意味を探る。


「オ ルヴォワール…?って、確かフランス語よね。
……Σ何でフランス語知ってるのあの人!?


クッパに続き、この世界に来る人々は何かしら地球の事知ってるのか?
中庭の中、一緒に拉致られていったオリマーの行方に気付かぬ中学生が1人悶えていました。






――−因みにその頃天空界




シュンッ!

「あれ?舞?」

「――あら、ピットではないですか。帰ってきたのですか?」

「へ?…あれ!?ぱ、パルテナ様!?」


使える主君が目の前に現れた事にピットは戸惑う。
パルテナと呼ばれた女神は目の前に突然現れた彼に驚く事はなかった。


「え、え…じゃあ俺っ、まさか強制送還…―――!!(さ、さっきのピエロみたいな人だ!)」

「貴方の活躍は耳にしましたが…また突然還ってきましたね。
一体どうやって来たのです?」

「え、えーとそれは…」


事情を説明しようとピットがオロオロしていると、また誰かがピットの隣にやってきた。
同じくシュンッ!と音を立てて現れた人物に目をやると…

同じ姿のピットがニッと笑っていた。


「へ…?」

「ひっひっひ!ドッペルゲンガーだぞ〜〜!!

Σうわあぁぁあぁぁあ!!?おおお俺がいる!?たたっ、助けて舞〜〜〜!!

「あらあら」

「…★?」

「あら、スマブラ界の方ですか?」


ピットは自分を追いかけてくる偽ピットに怯え、一緒にいたオリマーには気がつかなかった。
暫くして、偽ピットもといランペルを迎えに来たディメーンが来るまで…その場は落ち着く事がなかったらしい。

因みに、オリマーは後でパルテナ様が送ってあげたので問題はなかったそうな



++○月£日++

本日の帰還者…
・フォックス
・ウルフ
・リンク(トワ)
・トゥーンリンク

・ファルコ
・ピット




Next Story.

+++++
アンケートよりゲスト出演…
『ルト姫』『チンクル』
『ランペル』『ディメーン』