2.2/16(日)《1》謝罪と決意

「誠に申し訳ございませんでした」

翌日、まずは自分の黒歴史を反省し、太刀川と国近と出水に土下座して今までの愚行を謝る苗字。

「唯我ちゃん、急にどうしたの?私はいつも最新のゲームソフトを貰ってるから唯我ちゃんが可笑しい子なのは気にしてないよ」

可笑しい子…グハッ。
国近の言葉で苗字のやわなハートに刃が刺さった。

「唯我が不遜な奴なのは今更だ。俺も気にしてないぞ」

不遜な奴…グハッ。
太刀川の言葉で苗字のやわなハートに刃が刺さった。

「急に謝りだして、お前昨日はいつもに増して変だったし、病院に行った方がいいぜ」

いつもに増して変…グハッ。
出水の言葉で苗字のやわなハートに刃が刺さった。

真剣に謝った結果、気にしていなさそうなのに3倍返しで傷つけられてしまった。
これが太刀川隊エンブレムの三本の刀の威力なのか。
苗字が月になって刀で貫かれているイメージを想像してしまった。

「出水先輩、昨日実は医者に診てもらったんです。記憶障害が出ているそうで、今までの記憶もあるけれど、別の記憶もよみがえってしまって、今までとは違った人格になる可能性が高いそうです」

これは本当の話だ。
帰ったら、車の中で様子が可笑しかったから小さい頃から世話をしてくれている執事兼運転手の山田さんが医者の手配をしてくれていた。
色々と話した結果記憶障害と診断され、親にもそのあと連絡して、少し性格が変わったけれど心配しないでと伝えている。

「えっ、何でそんな事に?おれが髪を引っ張ったから?」

「いえいえ、先生からは衝撃的な出来事があったからと診断されました」

「衝撃的っても、昨日唯我が驚いたのはB級ランク戦でメガネくんが壁抜きで東さんに落とされた時くらいじゃね?」

「よく分からないですけど、日常生活には問題ないし、トリガーも使えるので、私がいつもと違っても気にしないで下さい」

衝撃的な出来事は、おそらく二宮の雪ダルマシーン。
気にする出水を気遣い否定する。

「それよりですね、これからは新生苗字として強くなって、太刀川隊エンブレムの三本目の刀になりたいんです」

「へぇ。いいんじゃね?成れるかは唯我次第だが、強くないたいって気持ちは悪くない」

太刀川が顎に手を置きながら、ニヤリと笑った。

「狙撃手や攻撃手にも挑戦して合った戦法を取り入れます」

「だったら太刀川隊にいない狙撃からやってみたらどうかな?」

そう国近に言われ、他のメンバーも異論はなかったので手始めに狙撃手に挑戦して見ることになった。
隊の皆は強くなりたいと思う苗字の気持ちに賛同し、協力してくれるようだ。
唯我を嫌っていない真面目に教えてくれそうな東に太刀川からアポイントを取ってもらうことになった。
丁度今から東も参加する会議があるそうで、太刀川が部屋からいなくなる。



返事待ちなので、今のうちに出来ることをすることにした。
実は苗字、トリオン体の時に隊服しか持っていなかった。
余程A級1位の隊服が気に入っていたのか、ボーダー本部内では常に戦闘服である。
A級1位の太刀川隊の服は格好良いけれど、はっきり言ってとても目立つ。
目立つ事が苦手な苗字は訓練服を貰いに、ボーダー公認の売店へ向かった。
そこで売っているB級隊員がいつも着ている緑と黒の隊服を練習着として購入。
ここの売店ではトリガーホルダーに登録可能で、これでトリオン体になった時に私服、隊服、練習着の三着が選べる様になった。



売店から帰ってしばらくすると、太刀川が戻ってきた。

「太刀川さん、会議お疲れ様です」

「おう。東さんに頼んでおいたぞ。ランク戦もあるから付きっきりでは教えられないが、出来る限り協力してくれるそうだ」

「そっか。ランク戦の真最中でしたね。悪い事しちゃいました」

「東さんは慣れてるから問題ないって。明日の夕方5時に東隊の作戦室に行ってこい」

「ありがとうございます。頑張ってきます」

「おう。死ぬほど頑張って、早く一人前になれよ」

ぽんぽんっと頭を叩き活を入れてくれる太刀川は意外と良い隊長である。

「近々アフトクラトルの従属国が確実に攻めてくるらしいぜ。楽しみだな」

戦闘バカではあるが、良い隊長である。