雨宮広斗
もう日付が変わる、そんな時に手元のスマホから着信を知らせる音が聞こえた。
画面に浮かぶ文字を見て口元が綻ぶ。
指を滑らせて、耳に当てると聞こえてくる低い声。


『遅せぇ』
「ごめんね」
『……寝てたか?』
「うーん、寝るとこだったかな」
『悪いな……』


自分から掛けてきてなんなんだ、と思いつつも彼が声を発するたびに口元が緩むのが自分でもわかる。
ベッドに横になり彼の声に耳を傾ける。


「どうしたの?」
『あー……いや……』
「?」


彼にしては歯切れの悪い言葉。
何かあるからかけてきたんじゃないのかな。
そこから少しの間沈黙が流れる。



『…………った』
「えっ?何?」



しばらくして小さく聞こえた言葉。
聞き取れずに聞き返すと、電話の向から唸るように『あ゛ー……』という声。




『……っ!お前の声が聞きたかった!』



少し怒ったように強い口調の彼。
驚いたが、すぐに理解して笑いが出る。
その笑い声が聞こえたのか、不機嫌な声が返ってくる。



『…なんだよ』
「ふふふ、広斗可愛いとこあるなぁって」
『……うっさい』
「私も広斗の声聞けて嬉しいよ」



そう言うと『そうかよ』と短い返事が来た。



『悪いな、寝る所に』
「ううん。私も嬉しかった。ありがとね」
『おう』
「広斗」
『ん?』


彼の名前を呼ぶと低く優しい声が耳に響く。


「おやすみなさい」
『あぁ、おやすみ』


その言葉を聞いて通話を切った。
今日はいい夢が見れそう。

(2017.10.22)
3/4
prev  next