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※人種差別寄りの表現あり




尾形の捜索に出た一行を待ち受けていたのは満身創痍の尾形だった。
すぐに尾形は病院へ運ばれたが、藍毬にとっては大きな誤算であり必死に通常を装うが内心は居ても立っても居られなかった。

尾形は病院に送られ、藍毬達一行は兵舎に戻ることになった。
藍毬は自分を落ち着かせたかった為すぐに自分の部屋に戻ろうとしたが、
鶴見中尉が藍毬を呼び止め、立ち去ろうとする藍毬の腕を掴んだ。

「今日は色々とあって疲れただろう。ゆっくり休みなさい。」

それだけ言うとまたも藍毬の頭を撫でる

「そうそう、くれぐれも尾形上等兵のように単独行動は控えなさい。わかったね?」

一兵にかける言葉ではなく、身内にかけるような、しかし優しいように聞こえるその言葉が彼女を縛り付ける。しかしこれは今に始まったことではない、多々あるスキンシップも…鶴見はスキがあれば藍毬に自分の存在をすり込もうとしてくるのだ。触れられた場所から言いようのない不安がこみ上げる…

―コイツ”ら”、嫌い…
「はい。お言葉ありがとうございます。」

少しだけ微笑み、それではこれで…っと藍毬は音もなく素早くその場から去っていった。





静まり返る廊下、すると唐突に鶴見は声を上げた。
「月島軍曹か」
「はっ、鶴見中尉殿、和田大尉の事でご報告を…」
物陰から現れた月島と言われた兵は何事も無いように淡々と一通りの報告を行っていく、そして報告を終えると一部始終を見ていたのか藍毬が去っていった方を眺めた。

「しばらく見ていませんでしたが、また動きが素早くなりましたね、またこちらの事に気づいていたのでしょう、わざわざ私から死角になる場所に立ち続けていた。
…時に中尉殿、今回の事案は高鳥を使うほどでしょうか?和田大尉も”アレ”の事は気にかけている為あまり得策ではないと…」
その言葉に鶴見は歯を見せるようにして笑い、月島を制した。

「子供は実に良い。洗脳しやすい。特に”アレ”は動きも去るごとながら成長速度の速さ、そして何よりも躊躇のなさ!月島軍曹、肉弾戦の時どんな相手が一番手強いと思うかね?」

盛り上がり演説をするかのように月島に振り替える鶴見、彼の眼はギラギラと月島を移し玩具を与えられた子供のように興奮していた。

「想定外の相手だ。対策の練れない使者ほど怖いものはない!誰が師団にアレほどの戦闘に特化した子供兵がいると思う?ん?」

言い切ると自信を落ち着かせる為かハンカチで丁寧に額から流れる何かを拭く

「しかし、”アレ”はまだ不完全、そのためにも今は極力行動を共にし、我々の存在を教えなければならん。月島軍曹、君も” アレ”との接し方には気を付けろ、時に今は造反しようとたくらむ輩もいる…奴らにそそのかされぬように、特に、な」






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