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藍毬の不安は的中し、玉井達と谷垣を入れた4人はあれから帰ってくることはなく、数日後鶴見中尉直々に捜索することになった。

吹雪の中、必死に捜索するも手掛かりは得られず、暗くなる前に…と捜索中止の案が中尉に告げられる。
山に慣れている4人の遭難は考えにくい、と雪に覆われた森を眺める中尉に藍毬は離れから聞こえる馬の足音に反応し一人銃を構えた。
少し経つと音の正体が一人の兵を連れ現れる。

「鶴見! 貴様 私の部下たちを勝手に小樽まで引き連れて…ましてや守護鷹を兵舎の外に連れ出すなど、どういうつもりだ!」
「これはこれは 和田大尉殿」

飄々とした鶴見の態度が益々和田の機嫌を損ねたのか鶴見の数々の身勝手な行動について怒鳴り散らしながら和田は馬を降りる。
共に降りてきた月島の視線が鶴見ではなく藍毬に向けられる。監視するような彼の目線が得意ではない藍毬はひっそりと月島の死角に回りこむ。

その間にも繰り広げられる上司二人の様子を黙って見つめていた藍毬だったが、月島の死角に移動する際に鶴見の額から汁が漏れ出す様を見て言いしれる気持ちの悪さに外套の中で顔を歪めた。

もう庇いきれん!と差し出される和田の指を鶴見があろうことか噛み千切る。

―もう、この人はダメだ。

察する藍毬
そして淡々と挑発するように言い訳をする鶴見に、正気ではない、と和田が最後の命令を下す。

「撃て」
「はい!」  ダンッ

月島が銃を構えた時であった。
月島の声が聞こえたとほぼ同時に発砲音が雪山に響き渡ったのだ。

直後和田大尉が地面にひれ伏す、何度かの痙攣をうった後大きく震え上がり動かなくなってしまった。
「服を脱がせて埋めておけ 春には綺麗な草花の養分になれる」

見下すような冷たい視線が横たわる和田大尉に注がれる。

「我々の戦争はまだ終わっていない。」
そういうと鶴見は一行を連れ先に進んでいく、藍毬は冷たい雪に染み付く赤をただ見つめた後、足早に去っていく。

「守護鷹か、お前は何を護っているんだ」

一部始終を見ていた月島は、血を眺めていた藍毬の光のない暗闇のような目を思い出し、誰にも聞かれることなくつぶやく



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