短編
Outer Science

*遥と貴音が両思い設定
*主人公は遥と貴音の後輩でアヤノの親友
*能力は持ってないけどカゲロウデイズについての知識はある
*とにかく報われない
*原曲を元にした話





幸せだった筈なのに。
どうしてこんな事になってしまったのだろう。

次々と殺されていく仲間達を見つめながら、なまえは涙も流せずに座り込んでいた。

この光景を見たのは何度目だろう。
この男ー全身黒ずくめのこの怪物とこうして出会うのは、何度目の事なのだろう。

悲鳴や銃声はいつの間にやら消え失せ、その場に響き渡るのは自らの吐息と幼子の啜り泣く声だけとなっていた。
だが次の瞬間、カツリ、カツリと自分の方へと向かってくる足音がする。


「……ねえ、どんな気分?」

「……」


なまえを見下ろしながら、男は嘲るようにそう言った。


「……コノハさんを返して。遥先輩を返してよ」


なまえは答える代わりにそう呟いた。
その呟きを聞いた黒い彼は、にんまりと顔に笑みを浮かべる。


「哀れな奴だね。恋い焦がれていた先輩は実はあの目つきの悪いゲーマー女と両思いで、自分の思いを諦めてアイツらを応援しようとした矢先、こんな事に巻き込まれたんだから」

「……」


グッ、と唇を噛みしめるなまえ。
黒い男は、そんな彼女の顎をクイッと持ち上げた。


「君がこうして俺に殺されるのは、これで何度目かな?」

「……」

「ねえ、何回も俺に殺されるってどういう気分なの?悔しい?悲しい?怖い?」

「……」

「あはは、震え上がっちゃって。可愛いなあ」


黒い彼はそう言ってなまえの唇にキスを落とした。
ちゅっ、というリップ音と共に、彼の唇が彼女から離れていく。


「……どうして、こんな事をするの?」


なまえは目に涙を溜め、声を震わせてそう彼に尋ねた。


「どうして?そんなの簡単さ。
理由は2つ。
1つは俺が生き延びる為。そしてもう1つはー
君の絶望に満ちた顔を何回も見て、愛して、壊すため」


素敵だろう?と言って、コノハの顔をしたその化け物は笑う。

ー狂ってる。

なまえはブルリと身体を震わせた。


「何度足掻いても、何度壊しても、何度死んでも、どんな姿の君でも、俺は君を愛してあげる。
だから今回も安心して逝っていいよ」


男はそう言って懐から拳銃を取り出した。


「君の苦しむ顔が見たいな」


楽しませてね、と言って、その男は引き金を引く。


何度か銃声が鳴り響き、少女の呻き声が暫く続いた後、ピタリとその場は静かになった。

黒い彼は静かに横たわる血だらけの少女を抱きしめ、冷たくなった彼女の唇に再び口づけを落とす。

そして、なまえの血を掬ってペロリと指先を舐めると、一言。


「じゃあね。また、次の世界で」


男は愛おしげに彼女の遺影を置くと、蹲るメデューサの末裔の少女の元へと足を進めた。

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