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1.
「誕生日おめでとう、ユール」
「うん、ありがとう、ユナン!」
その日、16歳の誕生日を迎えた少女―ユールは、ずっと共に過ごしてきた恩人―ユナンに向かってにこりと微笑みを浮かべた。
ふわりと浮かべられたその微笑みと共に、真っ白なルフがキラキラと宙を舞い、遠く彼方へと消えて行った。
「ユールのルフは本当に綺麗だね。僕はかつて君ほど綺麗に輝くルフを見た事がないよ」
「へぇ……」
ユナンのルフ以外を目にした事がないユールは、そんな話を聞いてもピンと来ないらしい。
ユナンは何と無く彼女に対して申し訳無い気分になり、それを紛わすかのようにユールから少し視線を逸らした。
そんな彼の表情に気付いたのか、ユールは慌てて話題を変える。
「そ、そう言えばユナン、今日は何を教えてくれるの?」
ユールは2,3年程前から、毎日ユナンに沢山の事を教えてもらっていた。
『マギ』と言う創世の魔法使いの事、自分がまだ見知らぬ世界の事、魔法、教養……。
ユールは様々な事をユナンから教わるのがたまらなく好きだった。
そして、話を聞く度に、ほんの少しだけ、「世界を見てみたい」と言う気持ちに駆られたのだが、彼女にとっての幸せは『ユナンと平和に暮らす事』であり、それが彼女の全てだった。
彼女はそれ以上、何も望まなかったのだ。
「今日はね、ユールに大切な話をしようと思うんだ」
ユールの質問に応じたユナンが、いつも以上に真剣な面立ちをしているのを見て、彼女は黙って頷いた。
その後、ユナンから聞かされた話が、己の人生を大きく揺るがす内容だとも知らずに。