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3.
「!?」
両手を掴まれた私は、咄嗟に顔を横に背ける。
やだ、だって、こんなの見られたくない。
1人で喋って、勝手に赤くなって、ホント馬鹿みたい。
「……こっち見てよ」
「嫌、です」
「見てよ」
「嫌です」
「なまえちゃん」
「嫌だって……んぅ!?」
余りにもしつこかったので、罵倒しようと振り返って相手を見るとー
気付いた時には私と彼の距離は0になっていた。
咄嗟の出来事に頭がスパークする。
甘い。甘い。ひたすら甘い。
頭が可笑しくなりそう……
抵抗しようにも両手は塞がれていて、舌を噛んでやる事だって出来たんだろうけど、それを試みようとした時には私の身体は痺れてしまっていた。
「んっ……」
何度も、何度も、臨也さんの舌が私の咥内を揶揄する。
キスなんて初めてで、私はどうしたら良いのか解らなくて、何故だか無性に泣きたくなった。
「……下手くそ」
臨也さんは終わるや否やそう言って顔を顰めた。
「なん、で……コレ……」
「コレって、キスの事?もしかして初めてだった?」
「……」
「図星か。光栄に思いなよ、ファーストキスが俺とだなんて」
「っ……」
そうだ、ファーストキスだ。
ファーストキス、だったのに。
ぽたり、ぽたりと、瞳から零れ落ちた丸い滲がスカートを濡らしていく。
この男の前では絶対に泣きたくなかったのに、結局私は自分に負けてしまった。
「なまえちゃんの泣き顔、最高だね。ゾクゾクする」
臨也さんは私の手を離したかと思うと、私を自分の方に引き寄せる。
臨也さんの胸の中は相変わらず冷たくて、やっぱり人間とは違うんだと認識させられた。
「手を繋いで、キスをして……
どう?君のしたい事、叶えてあげたつもりなんだけど」
違う、こんなの間違ってる。
しかも手は繋いでない。掴まれていただけだ。
そう思ったけれど、私は何も言わなかった。
臨也さんはこんなにも酷くて、冷たくて、怖いのに、どうしてキスはあんなに優しかったんだろう。
どうしてこんなにも優しく抱き締めてくれるんだろう。
ただ、それだけが不思議でならなかった。