□ □ □


3.
「!?」


両手を掴まれた私は、咄嗟に顔を横に背ける。
やだ、だって、こんなの見られたくない。
1人で喋って、勝手に赤くなって、ホント馬鹿みたい。


「……こっち見てよ」

「嫌、です」

「見てよ」

「嫌です」

「なまえちゃん」

「嫌だって……んぅ!?」


余りにもしつこかったので、罵倒しようと振り返って相手を見るとー


気付いた時には私と彼の距離は0になっていた。


咄嗟の出来事に頭がスパークする。

甘い。甘い。ひたすら甘い。
頭が可笑しくなりそう……
抵抗しようにも両手は塞がれていて、舌を噛んでやる事だって出来たんだろうけど、それを試みようとした時には私の身体は痺れてしまっていた。


「んっ……」


何度も、何度も、臨也さんの舌が私の咥内を揶揄する。
キスなんて初めてで、私はどうしたら良いのか解らなくて、何故だか無性に泣きたくなった。


「……下手くそ」


臨也さんは終わるや否やそう言って顔を顰めた。


「なん、で……コレ……」

「コレって、キスの事?もしかして初めてだった?」

「……」

「図星か。光栄に思いなよ、ファーストキスが俺とだなんて」

「っ……」


そうだ、ファーストキスだ。
ファーストキス、だったのに。

ぽたり、ぽたりと、瞳から零れ落ちた丸い滲がスカートを濡らしていく。
この男の前では絶対に泣きたくなかったのに、結局私は自分に負けてしまった。


「なまえちゃんの泣き顔、最高だね。ゾクゾクする」


臨也さんは私の手を離したかと思うと、私を自分の方に引き寄せる。
臨也さんの胸の中は相変わらず冷たくて、やっぱり人間とは違うんだと認識させられた。


「手を繋いで、キスをして……
どう?君のしたい事、叶えてあげたつもりなんだけど」


違う、こんなの間違ってる。
しかも手は繋いでない。掴まれていただけだ。
そう思ったけれど、私は何も言わなかった。

臨也さんはこんなにも酷くて、冷たくて、怖いのに、どうしてキスはあんなに優しかったんだろう。
どうしてこんなにも優しく抱き締めてくれるんだろう。

ただ、それだけが不思議でならなかった。



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